キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

THE ORAL CIGARETTESの変遷から見る、『今』のオーラルの逞しさ

こんばんは、キタガワです。 

 

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https://theoralcigarettes.com/


THE ORAL CIGARETTES(以下オーラル)がロックバンドシーンの代表格とも言える知名度を記録したのは、いつからだっただろう。“狂乱 Hey Kids!!”がアニメ主題歌に抜擢された頃から?『UNOFFICIAL』で緩やかにギアを外向きに変えていった頃から?……少なくともそれが最近のではないことだけは確かで、いつの間にか彼らは動員を増やし、いつの間にかロックの中心部に立っていた。陳腐な表現で恐縮だが、実際その通りなのだから仕方ない。


ただ長きに渡る彼らの活動が一辺倒なものだったのかと言えばそうではなく、ブレイクの何よりの理由は多くの変遷を繰り返し、バンドとしての地力を地道に鍛えた賜物であることは一目瞭然。そこで今回は『THE ORAL CIGARETTESの変遷から見る、今のオーラルの逞しさ』と題し、バンドのこれまでの歩みを回顧すると共に、何故彼らはこれまで愛され続けてきたのか、その真髄に迫っていきたい。

 

 

第一章:妖艶期(結成〜『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』)

現在どれほど売れているバンドでもかつては下積み生活を経験してきた、というのは周知の事実だが、オーラルも長い間、ライブハウスでのライブを月に何度もこなすことで地道にファンを獲得する活動を続けてきた。当時はまだ単独ライブどうこうと言うよりは『期待の新人』の扱いが強く、更にはアルバムリリースも自主制作盤オンリーであった関係上、同じ、もしくは異なる事務所の先輩たちのオープニングアクト的な立ち位置で多くのライブに参加するのを実際に目の当たりにしてきた。個人的には2013年の広島ナミキジャンクションで目撃したavengers in sci-fi、The Flickers、KANA-BOONとの対バンイベント『HighApps Tours』が彼らを観測した最初のライブだったが、その当時は彼らは一番最初の出順で、終演後はファンと談笑したりとインディーならではの距離感にいたように記憶している。


しかしながらまだまだ活動の少なかった彼らは、その頃のライブでも圧倒的な存在感を見せ付けていたのも、また強く印象に残っている。取り分け注目を集めていたのは山中拓也(Vo.G)のある種妖艶な立ち居振る舞いであり、初期の“mist…”や“Mr.ファントム”といったライブアンセムでは粘っこい歌唱や観客への手招きなど視線を一身に浴びる試みが満載。そして初の全国流通盤となるインディーズアルバム『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』がリリースされる頃には、対バンイベントでよくある「今日はどのバンドを観に来ましたか?」とのスタッフのアンケートに「オーラルです!」と答える観客がとてつもなく増えていて、明らかに波に乗っている状況を感じ取ることが出来た。

 

THE ORAL CIGARETTES / mist... Live from 130824 渋谷QUATTRO - YouTube

 

 

第二章:躍進期(『The BKW Show!!』〜『FIXION』)

これまでの下積みで『ライブで衝撃を与え、そこから音源に向かわせる』という素晴らしきサイクルを回し続けてきた彼らは2014年、遂に『The BKW Show!!』のリリースと共にメジャーシーンに足を踏み入れることとなる。無論このアルバムは多大な売上を記録して知名度を飛躍的に高める契機となった訳だが、その起爆剤となったのは間違いなくシングルカットされた楽曲“起死回生STORY”にあり、新人バンドとしては通常あり得ないレベルのYouTubeの再生回数を記録。ロックを好んで聴くライブキッズ界隈で「何かヤバい曲をオーラルってバンドが出したらしい」と噂になり、アンテナを張っていた人々がフェス等でオーラルのライブを観て更に好きになる最高の好循環。あれほど取れていたチケットが全く取れなくなったのも、思えばこの頃あたりからである。


「一本打って!只今より……」から始まる前口上の手拍子がほぼ全員が理解できる規模になった頃には、続く『FIXION』のリリースが発表。特にこのアルバムのリリース時にはほぼ全てのライブがソールドアウトする状況になっていたので、このアルバムからオーラルを知った人も多いのではと推察するが、やはりその中でもアニメ主題歌となった“狂乱 Hey Kids!!”の破壊力は凄まじく、全国各地で何度モッシュ・ダイブが巻き起こったことか……。もはやこの頃になるとフェス開催の報があるたびにオーラル出演を熱望するファンの声も増え、その期待通り大半のフェスに出演するフェスキラー的な立場になってもいて、まさしくBKW(番狂わせ)を体現する注目度になっていった。

 

THE ORAL CIGARETTES「狂乱 Hey Kids!!(Live Mix ver.)」 - YouTube

 

 

第三章:過渡期(『UNOFFICIAL』〜『Kisses and Kills』)

日本武道館公演を大成功に収め、また世間的にも体感的にも「THE ORAL CIGARETTESはどんなバンドなのか?」という問いに対するアンサーが完全に固まったこの頃になってくると、オーラルはメジャーサードアルバム『UNOFFICIAL』を皮切りに少しずつ落ち着きあるロックアンセムを展開するようになっていく。こうした試みについては当然彼ら自身が年齢を重ね、今までのようなストレートなロックサウンドを意図的に外そうという考えもあったろうが、それ以上に様々なメディアで語られていた通り「新たなステージに向かうために新境地を切り開こう」との思いによるところが極めて大きかったようだ。


楽曲の展開を今までと変化させることは、ともすればファンが離れる危険性も孕んでいる。けれどもこれまで真摯に関係性を紡いできた彼らだからこそむしろ好意的に受け止められ、比較的緩やかな“ONE‘S AGAIN”や“トナリアウ”といったリード曲も含めたこれらのアルバムはTHE ORAL CIGARETTES史上最多の売上を記録するに至った。なおライブの動員についても右肩上がりであり、ライブハウスでは申込数とキャパが釣り合わないためか何千人と収容できるホールライブが増え、映像効果を多用したものも多数。言うまでもなくこの頃には初期の楽曲(『The BKW Show!!』や『FIXION』など)は多くがセットリストから外れるようになり現在地を見せ付ける形に変化したが、それら全てが圧倒的な盛り上がりとなっていたことからも、総じて観客側もオーラルの今を楽しんで望んでいるのだな、と言うのがしみじみ伝わってくる幸福な期間だったように思う。

 

THE ORAL CIGARETTES「ONE'S AGAIN」 at 大阪城ホール (2018/2/15) - YouTub

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第四章:黎明期(『SUCK MY WORLD』〜現在)

そして様々な変遷を繰り返してとても逞しく成長した現在のTHE ORAL CIGARETTESはと言うと、もはやどのバンドとも違う独自性を有する黎明期へと突入している。確かに新型コロナウイルスが活動を直撃し、ベストアルバム発売後の2020年からは思うようにライブ活動が出来なかった期間もある。ただそんな渦中で彼らが発売に漕ぎ着けたのは多くの人々が抱える闇に共感し、またロックバンドとしての強みを見せ付ける『SUCK MY WORLD』で、この1枚でもってオーラルは名実共に大空へ羽ばたいたのだ。どこを切っても新鮮な驚きがあり、またどこをどう見ても純度100%のオーラルという名盤……。それはこれまでの歩みを携えて30歳以降の旅路(まさやんはもう少し年上だが)を歩んでいこうとする決意に満ちている。


今年は今回のアルバムを携えてのツアーが実質的に中止となってしまったが、また来年からは大規模なツアー開催も決定しており、新曲『MACHINEGUN』の感触もバッチリ。活動が長くなるにつれて動員が下火になってしまうのはアーティストの永遠の課題とも言われるが、きっとオーラルに関しては全く問題はないだろう。何故ならそう断言できる程の経験を、彼らは愚直に積み上げてきたのだから。

 

THE ORAL CIGARETTES「Dream In Drive」at ONAKAMA 2021(2021.1.31 OSAKA-JO HALL) - YouTube

 

 

あくまで音楽の求心性を主軸に、若手ロックシーンの筆頭に躍り出たTHE ORAL CIGARETTES。日々タイムライン上をふわりと流れるメンバーの呟きに共感する多数のリプライも、楽曲を発表するたびに巻き起こる称賛の声も、今や珍しいことではない。それこそ彼らを知らない人でもオーラルの名前くらいは聞いたことがあるだろう状況に現在はなっているけれど、単にそれらを『売れてるバンドの人たちだから当然注目されるでしょ』と空気的に流すのは得策ではない。彼らが売れたその根源的な理由を紐解けば……。これについては山中のエッセイである『他がままに生かされて』で彼自身が真摯に綴っているため詳しくはそちらを見てほしいところではあるが、音楽シーンを冷静に分析しつつ努力を重ねてきた彼らの姿が見えてくるはずだからだ。


コロナを超え、数々のライブ中止を経た彼らは来たる2022年、どのような活動をしていくのだろうか。アルバムリリース?再びのトークイベント?フェス出演?……。様々な期待は尽きないが、ひとつ間違いないのは長らくの自粛期間ですっかりロックに飢えてしまった我々ライブキッズに、新たな興奮を与えてくれるだろうということ。あらゆる物事を俯瞰しつつも前向きに行動する彼らの動きに、今後とも要注目である。