キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

『月姫』はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。

こんばんは、キタガワです。
 

今でこそ音楽ライターとしての夢を追い掛ける『キタガワ』という平凡な人間は、音楽以上にその人生の大半をゲームと共に生きてきた。総ソフト数は300本をゆうに超え、PS4内のトロフィー数の合計は約4000。それは端から見れば名誉もクソもないゲーム歴に違いないが、とにかく僕はゲームに救われてきた人間であることだけは疑いようのない事実として垂直に立っている。


ただ実際問題、年齢を重ねるにつれて当然ゲームと触れ合う時間は減っている。それどころかゲームを購入してもすぐに積みゲーと化してしまったりと、どちらがそちら側なのかは別として、かつての自分が見れば「何だその堕落っぷりは!」と激を飛ばされること請け合いの有様である。……学生時代の先に辿り着いた、仕事仕事のつまらない毎日。だからこそ「連日の仕事のストレスを2時間、いや1時間でも忘れることが出来る良質なゲームをプレイしたい」と心底願っていたのだが、遂に見付けてしまった。心からハマってそれでいてキッカリ終わる、そんな運命のゲームを。

 

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http://typemoon.com/products/tsukihime/

 

PS4・Nintendo Switchで絶賛発売中の『月姫 -A peace of blue glass moon-』。心をグッと掴んだ正体はこれである。ジャンルは一般的に『ノベルゲーム』と呼ばれる小説のようにテキストを読み進める形で進行する類のもので、シナリオは奈須きのこ、キャラデザは武内崇が担当。なおゲームビジュアルを見ても分かる通り、開発は『Fate』シリーズでもおなじみのTYPE-MOONが手掛けている。正直、多種多様なゲームジャンルの中でもノベルゲームは敷居が高い印象が強く「小説に声と音楽を足しただけでしょ?」とする意見や、他にも「プレイ時間が長そう」「集中力が必要そう」などの声が今でも根強くあるのは否定できない。ただそうしたことも踏まえて、今作は最高のゲームであると断言できる。


その理由は一にも二にも、ストーリー展開の素晴らしさにある。主人公である遠野志貴が大豪邸を無意識に脱出し、そこで謎の殺人鬼に遭遇。その後記憶が途絶えてしまい場面は病院へ。医師から「交通事故に遭ったらしい」と現実とは全く異なる経緯を聞かされる中、気付けば志貴は目を開けるだけで視界に線が見える、つまりは『全ての弱点を視認する能力』を得ており、例えば病室のベッドをその線に沿ってなぞると壊れたりと超人的な存在となってしまった。以降、彼はそれを封じる眼鏡をかけて学生生活を送ることになるのだが、『ある事件』をきっかけに彼の運命は再び急転することとなる……というのが、物語の主なあらすじである。本当は更に重要な事項はあるのだけれど、公式からネタバレ禁止の厳重注意が飛んでいるのでここまでに留めておく(なお今作はそれ以外にもゲーム実況や録画、ゲーム内のスクリーンショット保存に関しても全面禁止の措置が取られている)。


そしてここまでの簡単なあらすじを把握して「面白そう」と思った貴方に、嬉しい報告をひとつ。今作では主人公の行動を自分自身が選択できる分岐システムを搭載しており、放課後に『家に真っ直ぐ帰る』『帰らない』や昼食を『食堂で食べる』『席で食べる』のみならず、重大な事項でさえも『指摘する』『見なかったことにする』など大量の選択肢が存在。貴方の選択によってその未来が変化する独自のスタイルになっているので、こうしたコンプリート要素もゲームとしてとても楽しい。ちなみにこの作品がCERO Z(18禁)になっている理由について疑問に感じる人も少なくないだろうが、これはこの選択肢によるところも大きい、と聞けば、更に期待は高まるはずである。


ここまでゲームの内容について鼻息荒く書き綴ってきたが、冒頭に記した『やはりゲームをする時間がなかなか取れなくなった』側の人間としても、まるで小説を少し読んで栞を挟んで寝る、というような流れに関しても素晴らしく好印象なのだ。これが「もう一試合やろう!」と友人に諭されて無理やりやらされるオンラインゲームでは、決してそうはいくまい。寝る間際、この1時間の間に起きたゲーム内の出来事やら出てきたキャラクターやらを振り返りつつ「明日はどうなるんだろう」「もしかしたら○○が○○で、○○になるのでは?」などと妄想しながらいつの間にか寝ていて朝になってしまうのもまたオツで、何というか、学生時代には出来なかった新たなゲーム体験に没頭している感もあって楽しい。


約20年前に発売された『月姫』以上に、今ではすっかりTYPE-MOONとしても『Fate』のイメージが強くなってしまった感もあるが、何故この作品がその間切望され続けてきたのか、その最たる理由を『月姫』は見事に体現している。故に絶対に後悔しない珠玉のノベルゲームの沼に浸かるのは今しかない。間違ってもアルコール関係は一切飲まずに、恐ろしくも儚い世界観に没入してみてほしいと願う。

 

「月姫 -A piece of blue glass moon-」解禁映像 - YouTube