キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

コロナ禍に開催されたフェスは全て赤字です、という話

こんばんは、キタガワです。

 

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ワクチン接種率が全体の64%を超え、全国の感染者数も下火に。2021年10月現在、コロナウイルスによる悪しき年にも渡る戦いもようやっと見通しが立ってきた。今思い返してもこの期間はずっと辛い制限に四苦八苦してきたので、時間はかかってしまったもののその後の幸福度を加味すれば結果オーライ。様々な規制が緩和される時はもう直ぐ側まで訪れている。しかしながら、我々の生活が完全に元通りになるかと言えばそれはまた違った話。例えば我々が愛してやまないフェスシーンもその限りではなく、収容人数制限や発声制限、Googleの入場フォーム提示などの対策は感染者数減少に関わらずこれまでと同様に行われることが当分確定している。最悪の危機は脱した中で、どう感染拡大防止策との折衷案を取ってライブを行うかが、今後の課題になっているのだ。


当然今後のフェスシーンは少しずつ前傾姿勢で活動していくと思う。ただ今までもこれからも、完璧な形とは行かずともある程度の体裁を伴って行われるフェスであってもそれらは軒並み赤字であるという事実は、音楽ファンとして絶対に認識しておかねばならない。まず第一に2020年〜2021年に行われる、若しくは行われているフェスは基本的に収容人数制限により、1日あたりの来場者数を1万人以下に抑える必要があることが挙げられる。これについては散々多くのイベントで語られていることなので説明不要のようにも思えるが、1万人以下の収容ということはその分チケットと飲食系の売上が明らかに減少することを意味しているため、想像以上に辛い。この計算で言えばチケット代を1万円と見積もった場合例えば全日ソールドアウトになったとして、単純計算で『1万円×1万人』で1億円近い収入が見込めるので一見一見黒字のようにも思えるが実際はもちろんそうではなく、アーティストの出演料、スタッフの遠征や宿泊費、ステージ装飾、飲食店店へのギャラ、他光熱費やら何やらが圧倒的な額で上乗せされるので、1億という額では明らかに足らず、少なくともあと3倍程度はなければ成り立たないことが分かるはず。


加えて今のご時世、直接的な問題ではないにしろ真綿で首を絞めるように襲い掛かってくるのが感染防止対策費だ。先日開催されたヒップホップフェスティバル『NAMIMONOGATARI 2021』が感染防止を怠った結果大炎上したことは記憶に新しいが、そもそも『フェスで感染者が出る』ということだけは今後のことを考えても絶対に避けなければならない。故に感染防止対策を徹底して開催に漕ぎ着けようと尽力する訳だが、これもかなり難しい。消毒機械を大量に設置することは元より、全チケットを電子にする手間であったり、何かあった時の救護班の派遣など注目すべき点は多岐に渡るので、もはや全体レイアウトを『感染対策ありき』で考えなければならず労力的にもキツい部分があるのである。なお世の中にはご存知の通り「ほぼ出歩いてないのに感染した」「マスクはいつも二重にしている」など十分な感染対策を取りながらも感染する例が後をたたないので、もはや感染する時はする丁半博打のような感すらあるが、それでもやらなければならないのだ。この労力が如何ほどのものか、想像するのは部外者の我々でも難しくない。


他にもよくよく考えてみればステージの制作費だったりアーティストのギャランティー+交通費+宿泊費、シャトルバス運営費、当日の警備もカメラ映像もVJもトイレの設営に至るまで、これまで当たり前のように観てきたフェスを俯瞰で見ると相当な金が動いている。だからこそタイトルにも記したようにコロナ禍に開催されたフェスは全て赤字であり、そうした中でフェスを運営する会社はどれも採算度外視で、フェスの灯を消すまいと尽力していることは同時に、絶対に忘れてはならない。特に今冬のフェスからは取り分け『コロナ後』の動きが活発化すると推察されるので、これらの動向を注視しながらフェスの希望を持ち続けようではないか。

 

SHISHAMO「君と夏フェス」 - YouTube