キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

『フジロックフェスティバル 2021』のラインナップとヘッドライナーから予想する、祝祭の在りか

こんばんは、キタガワです。

 

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『今年のフジロックを楽しみにしてくれている皆さんへ』……。思えば事務局、及びフジロックの創始者でありプロモーターとしても活動する日高正博氏のアナウンスが突如発表されたのは、今から約3週間前。周知の通り、新型コロナウイルスの影響により今なお苦境に立たされているライブシーン。特に国民の恐怖心が顕著に高まっていた昨年度は様々な音楽フェスが中止に追い込まれ、フジロックも延期の措置を取らざるを得なかった。そんな中、我々フジロッカーの思うところは『今年フジロックは開催されるのか』というただ一点に尽きるものであったが、今年紛れもなくフジロックは開催されるのだと、遂に我々が言質を取ることが出来たのがこの日だった。


フジロックの出演者発表は、決まって4月に行われる。いつだいつだと誰しもの期待が最大限に高まっていた本日、あまりに運命的な今年のフジロックにおける第一弾アーティストが発表された。いやはや、徹頭徹尾素晴らしいラインナップではないか。事前のアナウンス通り今年は海外からのアーティストは召集されない関係上、国内アーティストのみが揃う稀有なラインナップではあるが、そうそうたる面々を見るとこの決断は間違っていなかったどころか、むしろ更なる国内アーティストの魅力を発信する上で何よりの最適解であるようにも感じる。

そして誰もが気になるのは、各日のヘッドライナーだろう。まず初日のラストを飾るのはRADWIMPS。彼らはコロナ禍を憂いたその名も“ココロノナカ”と題された楽曲をはじめ、コロナウイルス下の生活を逆説的に説く『夏のせい ep』、最近では震災から10年の節目を迎えリリースされたコンセプトアルバム『2+0+2+1+3+1+1=10 years 10 songs』など、特に昨年以降は我々の心中に寄り添った楽曲を広く制作、メディアでの発信を続けてきた。加えて今回の彼らのフジロック出演が大きな意味を持つ理由のひとつが、2020年に延期となり今年決行される予定で動いていたドームツアー『こんにちは日本 ~KONNICHIWA NIPPON~ TOUR 2020』が再延期、2022年の夏以降の開催にシフトした点だ。この決断により現状、RADWIMPSは今年の単独ライブについての予定はほぼ白紙状態となったからこそ、フジロックへの思いは非常に強いものであると推察する。もちろん“愛にできることはまだあるかい”や“君と羊と青”といった所謂『RADWIMPSの名を広く知らしめた楽曲』も多数プレイされるだろうが、現在のコロナ禍の状況でセットリスト入りを果たすこれらの楽曲は、また違った意味を込めて響き渡るはず。彼らの現在地を確認する上でも、意味のあるライブになる予感しかない。

 


フジロックの中日に満を持して登場するのは、今や完全に市民権を得た4人組ミクスチャーバンド・King Gnuだ。“白日”で空前のブレイクを果たした彼らだが、今現在でも「“白日”の人」との認識で彼らの音楽を聴いている人間はほぼいないのではないか……。それほどまでに“白日”以降の彼らのアクションは徹底して外を向いていた。過去のインタビューにて昨年の紅白歌合戦を辞退した理由について、紅白を目指して活動することへの疑問を口にしていた常田だが、紅白もMステも、夏フェスさえもほぼ網羅した彼らでさえ実はフジロックは未だ最小ステージ止まりだった。そんな彼らは遂に今年、最も大きなステージのヘッドライナーに抜擢された。故に今回のライブでは「King Gnuにとってフジロックとは?」という質問のひとつの答えを、誰もが知ることになるはずだ。なお昨今はking Gnu以上に常田が主宰する音楽プロジェクト・millennium paradeの活動が活発化していた関係上、昨年と比較しても今年のKing Gnuとしての活動はペースを落としていたので、言わば長らくの間爪を隠していた『ニュー・キングヌー』を観測するという意味合いでも、重要になるのが今年のフジロックだろう。

 


そして運命的なフジロックを締め括るのはやはり、我らが電気グルーヴしかいない。まず何と言っても重要なのは、このフジロックをもって電気グルーヴは(オンラインライブを除いて)ライブ活動再開の狼煙を上げるということ。もはや我々でさえも「そんなこともあったなあ」とある種前向きに回顧しつつある『あの一件』を経て、電気グルーヴが実質的な活動休止状態に陥ったのが2年前。結果電気グルーヴはその年のフジロック出演を直前でキャンセル。代わりに石野がたったひとりでターンテーブルを回した。その翌年にはヘッドライナーに抜擢されてはいたものの、新型コロナウイルスの影響によりフジロック自体が延期。そこで今年やっとこさ活動再開。フジロックへの出演は5年ぶりだ。電気グルーヴは未だ不変の存在なのか?ピエール瀧のふざけたアクションは健在なのか?結成32年目を迎えた彼らは何を鳴らすのか……?答えは全て8月22日に明らかになる。欲を言えばあの2020年度のアフタームービーに用いられ、多くのファンの涙腺を刺激した“虹”を是非とも大音量で聴きながら花火を見上げる、そんな夜を期待したい。

 


……他にも今年のフジロックの見所は山盛りだ。現状僅かにロックフェスの色の強い初日にはRADWIMPS前によもやのMAN WITH A MISSION、超豪華ヒップホップ集団・SUMMIT、日付が変わったと同時に全曲ピアノインスト曲という新作を発表し賛否両論を巻き起こしたドレスコーズ、リトルクリーチャーズらが。2日目には「これを観なきゃ帰れない」的フジロック名物・コーネリアス、サニーデイサービス、カネコアヤノなどなど。ラストデイには待ってましたな面妖グループ平沢進+会人が(おそらくは)別ステージのトリに君臨し、緑豊かな環境に映える穏やかな音楽を奏でるアーティストが終結。繰り返し綴ってきたように、今回はコロナ禍で開催される初のフジロックとなるけれど、同時期に開催される夏フェスのどれとも違う独自性を前面に押し出した「どこを切ってもフジロック」なラインナップがここにある。


無論、今回出演者全組が邦楽アーティストのみで固められたことについては少なからず批判の声が上がっているのも事実としてある。ただ今回のフジロックは様々な意味で意義のある代物となると確信している。例えば目当てのアーティストのみを観に行くのではなく、あの自然豊かな土地を歩きながらフラっと「これいいな」とライブを観る経験はフジロックならではで、「普段邦楽アーティストのロックフェスにしか行かない」という層には多大なる衝撃を与えるはずだし、逆に例年洋楽アーティストを聴くためにフジロックに赴いていた層には邦楽の素晴らしさを再認識する良い機会にもなる。ビールを飲みながら音楽でユラユラ。テントを張ってのキャンプ体験。大雨が降ってライブがより感動的に見えた、なんてこともあるかもしれない。そしてそうした部分を抜きにしても、間違いなくもう1年以上辛い生活を送っている人々にとって、フジロックはひとつの浄化の場となるに違いないのだ。

 

……我らが待ち望んだ夏はもう、すぐそこまで迫っている。それまではくれぐれも各自感染対策を講じながら、来たる祝祭の時に座して待とうではないか。