キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『フジロックフェスティバル2022』を観て泣きそうになった話

フジロックの生配信を観て、何だか泣けてきてしまった。思えば昨年はコロナの爆発的感染を受け、演者側も参加者側もかなりの逆風に晒されたフジロックだった。実際、会場である苗場には「ニュースですっぱ抜いたろ!」というアクセス数目的のメディアが多数いたし、我々もアルコール禁止・発声禁止で試行錯誤。折坂悠太や小泉今日子ら参加者も「こんな時に出演して良いものか」と悩んだ末、出演を辞退することすらあった。

ただ、昨年の辛い経験があったからこそ今年のフジロックは大団円で終わった。基本的に2022フジは、昨年行われていた規制を極力排除した形で敢行。酒も大声もほぼ普段通り。完全ではないまでも、一定の水準まではフジロックが復活したと言っても良いと思う。来日勢についても、それこそ昨年のスパソニでは隔離措置のために観光も出来ずに母国へ帰っていったアーティストも多かった。翻って今年はトリのムラ・マサ(ちなみにアーティスト名前は日本刀の村正から取ってます!)が寿司のうまさに感激してGoogle翻訳で板前に感謝を伝えたりだとか、フォールズが笑顔で東京を歩いたりとか、とてもアーティスト側も日本をエンジョイしているのが伝わってきて、開始前からウルウルと……。

 

そして、フジロックのライブがとても素晴らしかったのは言うまでもない。確かに来日勢としてはマスク・オーディエンスだし、難しい環境になるとは思ってはいた。そんな中でジェイペグマフィアは客席で歌って、スーパーオーガニズムに至っては観客をステージに上げまくるというこれまでのライブでもなかった試みをしていた。こう書いてしまうと暴論だけれど、誰かのアクションに流されやすい日本人の感覚として、来日勢の「コロナなんて知らねえ!っていうかまだみんな遠慮してんの?」なテンションが上手く伝播した形なのかなと。……自粛自粛の世の中、誰かの行動に横槍を入れるのももう何度も何度も見てきた。それは今もそうで、多分フジロックに今年行った人も、職場やら学校やらにいろいろ配慮しながら赴いたと思う。……でもあの数時間だけは何もかも忘れられる。それこそが音楽の素晴らしさなのだと、本当に強く思った。いろんな人のことを考えて、何度も泣きそうになった。

まだまだライブシーンの完全復活は先になる。ただ少なくとも今年のフジの配信を観てアンチがほぼ生まれなかったこと、賛辞の声が多かったことも考えると、好転はしてきているのかなと思ったり。間接的な気持ちにはなるけれど、今年のフジが開催されたことで何か大きな変化がもたらされたような気がする。RPGで言うところのメインストーリーとは関係ないけど武器を強化したり、サブイベントを攻略したりといった、そんな本編とはちょっと違う確実な進行というか。……最後の最後に「このサブクリアとこの武器持ってなかったらバッドエンドだったよ!」と言われるような。あまり気付かれないライブシーン攻略の裏ルートが今年のフジなのかもしれない。

だからこそ、今年のフジの素晴らしさはもっともっと知られるべきだ。3年ぶりに洋楽勢が揃ったフジロック。参加者含め、YouTube配信を観た人はどんどん興奮を拡散していってほしい。そしてこんなことは書くべきではないだろうが、全ての日程が終わった今、もし昨年あれほど叩きまくったメディアが明日からこのフジロックの意義を報道しないようなら、個人的には軽蔑する。……復活の狼煙は上がった。なれば来年再来年と続くように、みんなで応援していこうではないか。

本当に素晴らしいフェスでした。これからもそう。全部大丈夫。

Superorganism - It's All Good (Official Video) - YouTube