キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『紅白歌合戦2021』の発表から見る、初出演アーティスト全10組の徹底解説と楽曲予想

こんばんは、キタガワです。

 

緑黄色社会!Creepy Nuts!ジャニーズWEST!と独自の審美眼(?)を駆使して紅白歌合戦初出演予想を当ブログで立てたのが、数週間前。それ以降もどんどん変化する音楽市場とメディアの動きを読みつつ、やれなにわ男子だ藤井風だJO1だと鼻息荒く持論を展開してきたが、遂に『紅白歌合戦2021』の出演アーティストが発表された。

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https://www.nhk.or.jp/kouhaku/

 

続投組はともかくとして、新規の顔触れは紅組4・白組6の全10組。結果事前予想とは全く違う形になってしまって申し訳ないことこの上ないのだが、おそらく今回の発表には自分以外にも「まさかこんな結果になるとは」と驚いた人は少なくなかったはず。それ程までに、今年は本当に読めなかった。


ともあれ個人的には予想外の起用ではあったものの、映画主題歌、話題性、オリコン成績など今年のお初の面々にも納得のいくものばかり。そこで今記事では『紅白歌合戦2021』初出場アーティスト全10組のこれまでの歩みに加え、様々な観点からの当日披露の楽曲予想を敢行。それぞれの紅白出場に至った背景を紐解きながら、来たる紅白への期待底上げの契機としたい。

 

上白石萌音

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https://kamishiraishimone.com/

 

まずは紅白恒例の俳優枠から、佐藤健の恋模様を描いた『恋はつづくよどこまでも』をはじめ、多数のドラマ出演でシーンを席巻した上白石萌音が大決定。あまり馴染みのない視聴者からすれば「上白石萌音って歌手だったの?」と驚いた人も少なくないとは思うのだけれど、かの『君の名は。』でヒロイン役を演じたことが契機となってリリースされたカバーアルバム『chouchou』以降、コンスタントに楽曲を展開。一昨年はオリジナルアルバム『i』、昨年は『note』、そして今年は70年代〜90年代の有名曲をそれぞれカバーした『あの歌1』『あの歌2』を発売。単独ライブも満員御礼と、素晴らしいコンディションが今なのである。


今年はカバーアルバム2作品がヒットしていたり、王様のブランチのメインテーマである“I'll be there”がお茶の間に広がっている関係上、歌われる楽曲は“I'll be there”、もしくは“世界中の誰よりきっと”や“年下の男の子”。可能性が少ないところでいくと“永遠はきらい”や“Woman”あたりか。いずれにしても、上白石の新たな魅力を放出する点で言えば、この紅白はピッタリの大舞台になりそうだ。

上白石萌音「I’ll be there」Music Video - YouTube

 

 

Awesome City Club

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https://www.awesomecityclub.com/

 

言わずと知れたポップアンセム“勿忘”で、音楽番組をはじめサブスクリプションサービスでも圧倒的上位をひた走っていたオーサム。何気に彼らは活動歴8年と長く、フェスでなかなかネクストステージに行けなかったり……という下積みを個人的に多く目にしていたこともあり、感動もひとしお。


特に“勿忘”はサブスクとYouTubeの伸びに加え、映画『花束みたいな恋をした』がヒットしたり、更にはYouTube広告でもハラミちゃんのピアノ演奏とシンクロする形で楽曲が流れたりしていたので、外部的要因の追い風もプラスに作用したような気がする。まさしく春の風の如き爽やかさで、今年の紅白をふわりとした空間に誘う役割は、やはりオーサムしかいない。

Awesome City Club / 勿忘 (MUSIC VIDEO) - YouTube

 

 

BiSH

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https://www.bish.tokyo/

 

『楽器を持たないパンクバンド』こと、BiSHがようやく紅白に降り立つ時がきた。……長らく小さなライブハウスで活動してきたBiSH。清掃員(BiSHファンの俗称)が彼女たちを応援し、また彼女たちも清掃員に感謝を伝え続けるという双方向的な信頼関係が実を結んだ結果がこの紅白なので、その心中はさぞ興奮に彩られていることだろうと思う。


今でこそ広く人気を獲得しているBiSHだが、彼女たちの結成は『BiS』と名付けられた前身グループから。その特徴としてはある種過激な活動内容(裸でMV撮影、今抱けるアイドルのキャッチコピーなど)が挙げられ、当然BiSの解散と共に世に送り出された第2のBiSことBiSHも当初はそのスタンス通りで、それこそ紅白での披露が待たれる“BiSH -星が瞬く夜に-”のMVは泥を投げつけられるショッキングなものだった。しかし現在は完全にいちアイドルとしての地力を高め、唯一無二のパンクアイドルとして君臨した。そんな彼女たちの最大の勇姿は、もはや見ない方が難しい、というものだ。

BiSH/BiSH-星が瞬く夜に- [OFFICIAL VIDEO] - YouTube

 

 

millenium parade × Belle(中村佳穂)

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https://millenniumparade.com/

 

思えば、2019年に紅白歌合戦に出場したKing Gnuは2020年には出場しなかった。当然「何で落選したの?」とファンからは様々な憶測はあった訳だが、結果として後にメンバーの口から音楽メディアにとある理由を語ったことにより、この2020年の紅白に関しては間接的にだが、自ら辞退を申し出たことが明らかとなった。……のだが、King Gnuの楽曲制作全般を手掛ける常田率いるミレパは、少し勝手が違ったようである。


視覚的にも聴覚的にも、極めて独自性の高いサウンドで翻弄するミレパの今回の演奏曲は、映画『竜とそばかすの姫』主題歌の“U”で100%決まり。今年開催されたフジロックでは総勢10名以上の大所帯、プラス巨大な人間オブジェが中心に立つ異様なライブで度肝を抜いたけれど、紅白では一体どうなるか……。おそらくはとてつもないステージングになることだろうが、思考がぐるぐると誘われる目くるめく異次元空間に、どうか酔いしれてほしい。

millennium parade - U - YouTube

 

 

 

KAT-TUN

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https://www.johnnys-net.jp/page?id=artistTop&artist=14

 

発表を見た瞬間「あれ?KAT-TUNって初だったっけ……?」と、無意識に記憶を辿ってしまった人は少なくないだろう。ただ何故今回に限って起用が決まったのかその理由は不明ながらも、考えてみればKAT-TUNは今年結成15周年。そして定番曲も“Real Face”や“Keep the faith”、“Roar”など長い活動歴で揃っているため、確かに納得の起用でもある。


これまで本当に、本当にいろいろな出来事があったKAT-TUN。もちろん端から見てもかなり辛い状況にあるのだろうなと想像することも時たまあったのは事実だ。ただ亀梨がVTRにて「紅白のステージで僕たちの思い、そして皆さまへの感謝の思いを精いっぱい届けたいと思います」と感慨深げに語っていたように、今の3人の絆は更に強固になりつつある。紅白で何を歌うかというのは決まってアーティストにとっての重要事項のひとつだが、是非ともここで“Real Face”を、と期待してしまうのは、やはり彼らの様々な側面を知っているからこそ抱く理想形か。

KAT-TUN - Roar [Official Music Video] - YouTube

 

 

Snow Man

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https://avex.jp/snowman/

 

昨年正式に紅白内定は出ていたものの、年末直前になりメンバーの新型コロナウイルス感染が発覚。出演辞退という苦渋の決断を迫られたSnow Manが、満を持しての再内定を勝ち取った。


2020年に同日デビューしたSnow ManとSixTONES、この両者の動きはもはや言うまでもないのだが、中でもSnow Manの今年の活躍は目を見張るものがあった。単独番組『それスノ』や各種バラエティー番組への出演、更にはファーストアルバム『Snow Mania S1』と、飛ぶ鳥を落とす勢いというか何というか、1年を通じてSnow Manの歩みをいち一般人である我々も一緒に進んでいたような感覚さえ抱くほど。披露楽曲についてはおそらくは“D.D.”であろうと推察するが、たとえどの楽曲が選ばれようとも納得してしまうキラーチューンの多さがSnow Manの魅力でもあるので、その辺りもいろいろと予測を立てつつ楽しみたい次第だ。

Snow Man「D.D.」MV (YouTube ver.) - YouTube

 

 

 

DISH//

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https://dish-web.com/

 

人気俳優・北村匠海がフロントマンを背負って立つダンスロックバンド・DISH//が初の紅白内定。今でこそDISH//として話題を集める彼らだが、結成は2011年と実は10年選手。北村が俳優として確固たる地位を確立するそのずっと前からDISH//は始動していたという事実は、是非とも認知しておきたい重要部だ。


そんな彼らを後押ししたのが何を隠そう、あいみょんが提供した”猫“。この楽曲はドラマ『僕達がやりました』で若者を中心に大いに広がった他、一発撮りパフォーマンスチャンネル『THE FIRST TAKE』でも披露され、現在は何と1億回を超える再生数を記録。名実共に爆発的に知られる楽曲となった。なお今年は楽曲制作者であるあいみょんもダブルで紅白内定が決定しているので、当日はこの日限りのスペシャルトークも期待できるかも……。

DISH// (北村匠海) - 猫 / THE FIRST TAKE - YouTube

 

 

 

平井大

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https://hiraidai.com/

 

つば広ハットを被ったギターボーイ・平井大の紅白内定は正直な気持ちを綴ってしまうと、ある意味では予想外のタイミングだった。何故ならアルバム『Life is Beautiful』がiTunesで総合1位になったのはもう5年前の話だし、フジロックやライジングサンといったフェスを含めて大規模なツアーを連続して行っていたのは、3年前なのだから。


それでもかねてより悲しみをポジティブに笑い飛ばすスタンスで楽曲を生み出し続けてきた平井は、昨年のコロナ禍でも負けることなく2週間に1度のハイペースで楽曲を量産。決して折れない信念が花開いた、念願の紅白内定である。演奏曲はおそらくチャート1位を獲得した“Stand by me, Stand by you.”。時点で“祈り花”、“題名のない今日”あたりかと思われるが、日本音楽の最大の祭典と呼ばれる紅白の環境で響き渡るギターには、是非とも多くの人々に耳を傾けてほしいところだ。

平井 大 / Stand by me, Stand by you.(Lyric Video) - YouTube

 

 

 

布袋寅泰

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https://jp.hotei.com/

 

日本が誇るギター超人・布袋寅泰、紅白に降臨。紅白には10周年記念のYUKI、40周年の竹内まりやなど、決まって『○周年を記念して内定』するアーティストが例年存在する。今回の紅白で言えばその1組は間違いなくKAT-TUNなのだろうと推察するが、もう1人が布袋寅泰だ。今年で活動40年目を迎えた布袋のあの暴れ馬的なギターテクが紅白で鳴り響くことを考えると、それだけでワクワクしてしまう。


楽曲は周年記念ということもあり、おそらくは“スリル”や“バンビーナ”といった誰もが知る定番のキラーチューンと予想。と言っても長年第一線を走り続けてきた功績もあるため、場合によってはメドレー形式もあるかもしれない。そしてその全曲で布袋は真っ黒なお馴染みのエレキを掻き毟るのだろうな、とは容易に想像が出来る(特に片足を上げながらステージを右往左往する動きは是非見たい)ので、ギターサウンドを主とするバンドが少ない今年の紅白において、かなり目立つ存在になるのでは。

布袋寅泰 / HOTEI - スリル - YouTube

 

 

 

まふまふ

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http://uni-mafumafu.jp/

 

「まふくん出てほしい!」と若者の誰もが思いつつも、その実素顔をほぼ公開していない(映像では口元をモザイクやマスクで隠すことが多い。今年はCM上で素顔公開)ことから、一転して「でも出ないだろうな……」との思考変換に落ち着くこと早数年。まふまふ、まさかまさかの大穴起用である。これ、NHKサイドは英断だと思う。NHKでまふまふの特番が放送されたのは2019年のことなので、おそらくはあれから何度も本人に交渉を続けてきたのだろう。スタッフの皆様、本当にお疲れさまでした。


なお前述の通り、まふまふは基本的には素顔を隠す傾向があり、更にはライブの映像が地上波で放映されるのは実質的には初。故に今回の紅白はまふまふ(というかネット音楽史上)歴史的な映像になる予感しかない。披露曲に関してもどれを演奏しても天国な状態であるため、予想すること自体が野暮な感はある。そのためどの曲を歌ってほしいかと問われればほぼ好みになってしまうのだけれど、個人的には“輪廻転生”、今年リリースされたもので考えれば“片恋”あたりはいかがか、と考えてみたり。ともあれ今回のまふまふ起用はつまるところ『今の音楽市場が如何にネットシーンに重きを置いているのか』という事実を雄弁に示す何よりの証左であるため、いろいろな意味で歴史的な時間になりそう。……取り敢えずこの時間のツイッターのトレンド入り、視聴率爆上がり、ひいては翌日に掲載される「まふまふ出場でネット民大歓喜」的なネットニュースについては早めに断言しておきます。

【MV】片恋/まふまふ NTTドコモ「ドコモのロング学割」 タイアップソング - YouTube

 

 

 

さて、テレビの中で考えれば、国内最大級の音楽の祭典とも言える紅白歌合戦。今年は白組・紅組の区別の撤廃、コロナウイルス感染防止対策による制限など時代に則した変更点こそあれ、概ね良い意味での変化に留まる発表となった。


(ちなみに本筋では触れていないが、紅白では例年『初期の発表には名を連ねていないけれども、世間から圧倒的な指示を獲得したアーティスト』は12月に入ってからギリギリで発表する傾向がある(ちなみに2020年はYOASOBI、2019年は米津玄師)。故に誰もが期待する“うっせぇわ”で大バズを叩き出したAdo嬢についてはそのあたりで起用が確定するのだろうなと考えている次第。なので、まだまだ紅白の公式アカウントからは眼が離せない状況が続きそうである)。


紅白の選考基準についても変わらず『今年の活躍』と『世論の支持』、『番組の企画・演出』の3点を鑑みて、今回の出場アーティストは選ばれるに至っている。もちろん緑黄色社会やCreepy Nuts、なにわ男子、ジャニーズWEST、JO1といった明らかに今年認知と市場を動かしたアーティストの起用が至らなかった点については各々思うところがあることだろうが、やはりそこは音楽番組。我々が知る情報以上の番組的要素(視聴率とか話題性とか)を重視するのは当然なので、あまり議論を差し挟む余地はないのかな、という気はする。本当に難しいところだ。


ともあれ当日は、何も考えず音楽を第一に楽しめる空間であることには変わりない。……自分の大好きなアーティストだけを見るも良し。スマホを見ながら何となく番組を観て、新しい音楽に出会うも良し。それぞれが一番リラックスした状態で、どうか今年もより多くの素晴らしい音楽に出会って欲しいと切に願いつつ、最高の満足度で2022年を迎えようではないか。