キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

映画『ジョーカー』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。

 

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先日、今何かと話題の映画である映画『ジョーカー(JOKER)』を観た。


僕がこの映画を観ようと決めた理由はズバリ『話題になっていたから』という至極単純なものだった。映画が制作されたアメリカでは公開初週の興業収入が100億円を突破し、日々インターネット上のトレンドに『ジョーカー』の名が踊った。更には映画評論家たちの侃々諤々とした応酬やキャラクター性、ストーリー構成でもってあれよあれよと注目が高まり、最終的には遠く離れたここ日本でも、大きなムーブメントを引き起こしたのである。


さて、そんなこんなで意気揚々と劇場に足を運んだ僕だったが、鑑賞前から『とある事柄』が僕の頭には大きな疑問として存在した。


それは端的に言うならば『評価のされ方』。話題になる映画というのは絶賛の感想然りヘイト然り、劇中で大半の人間が感じるであろう何かしらの際立つ部分が書かれることがほとんどである。例えば君の名は。なら「景色が綺麗」。カメ止めは「どんでん返し」。コナンは「安室さん」など。そうした映画の内容を一言でズバッと言い表せる言葉がネット上で飛び回った結果、鑑賞前になれば大抵のイメージは想起出来るものなのだ。


だが今作の前情報は何と言うか、煙に巻かれているような感覚が否めないのだ。確かにネットで『ジョーカー』と調べれば様々な言葉は出ては来る。しかしそうして調べた結果出てくる言葉は「凄い」や「前代未聞」、「物議を醸す映画」とどことなくフワフワした表現に終始しているので、基本的な評価のされ方というのはイマイチよく分からない。実際この映画を観た友人に話を聞いたこともあったが、「観てみて!」という曖昧な回答しか得られず、個人的には「一体どんな映画なんだ……」との思いが膨らんでいくばかりだったのだ。


そんな思いを携えながら僕は鑑賞した。結果分かったのは、『この映画は超政治的映画である』というものだった。


イメージポスターを観た瞬間こそ「グロ映画か?」などと思っていたのだが全く違う。この映画が表しているのはアメリカの、ひいては現代社会の闇であった。日本国民である僕らからすればどうでもいいことかもしれないが、思えばドナルド・トランプが大統領に就任してからというもの、アメリカの国はいろいろとぶっ壊れている。


黒人差別問題や国境の壁問題、関税や核放棄と、今やアメリカに存在する問題は山積みだ。そんな中でも最も問題になっているのは、富裕層と貧困層の格差の肥大である。長くなるので詳細は省くが、アメリカ・ファーストを掲げる現政権(共和党)のやり方は「富裕層を優遇して貧困層を冷遇する」というものとほぼ同義であり、低所得者にとってアメリカは間違いなく生きづらい世の中になってきている。


主人公であるジョーカーは決して若くはない年齢ながら、まさに『貧困層』に属する人間だ。派遣のアルバイトで食い繋ぎ、生きているのか死んでいるのかも分からない細々とした生活を送っている。富裕層には足蹴にされ、給料はさっ引かれ、挙げ句の果てにはクビ宣告。


前述したどん底の毎日を過ごすジョーカーに、一丁の拳銃が譲渡されることとなる。その後発生した『ある事件』をきっかけに、彼の転落人生は幕を開ける。そして、誰もが予想できない結末へと帰結するのだ。


怒りに任せて「こいつを殺したい」と思ったことはないか?辛い出来事が頻発し「もう死のう」と人生を諦めかけたことはないか?……言い方を変えれば、人間誰しもジョーカーになる可能性を秘めている。『ジョーカー』は映画という名を冠した痛烈な社会風刺であり、この映画が今公開されて評判を呼んでいることは大きな意味を持つ。


是非ともこの興奮は劇場で体感してほしい。人それぞれ感想は異なるだろうが、2時間の喜劇を観終えた後のあなたには、きっと爆発的な何かが頭を支配しているはずだ。さて、ラストに流れるフランク・シナトラの『That's Life』の歌詞を以下に引用し、この記事を締め括ろうと思う。あなたはこのシーンに、何を思うだろうか。


〈それが人生 愛すべき人生(和訳)〉

〈本当にそう? それが人生(和訳)〉


ストーリー★★★★☆
コメディー★★★☆☆
配役★★★★☆
感動★★★★☆
エンターテインメント★★★★☆
悲劇の喜劇度★★★★★

総合評価★★★★☆
(2019年公開。映画.com平均評価・星4.2)

 


映画『ジョーカー』本予告【HD】2019年10月4日(金)公開