キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

映画『HELLO WORLD』レビュー

こんばんは、キタガワです。

 

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今回鑑賞した映画は、現在公開中のSFタイムリープアニメ『HELLO WORLD(ハローワールド)』である。


先に結論を書いてしまうが、今回この作品の総合得点は『星2』とした。これはすなわち当ブログの映画レビューの中では最低得点のひとつであり、はっきり言って個人的には全く面白くなかった。


某映画レビューサイトではかなりの高得点を記録し、考察サイトやファン交流サイトといったものも数多く存在する名作との呼び声が高い今作。しかしそんなファンの方々には申し訳ないが、僕は面白くないものは「面白くない」としか言えない異端者なので、その点については「こいつは難しい話が理解できない馬鹿なんだな」と思って貰えれば幸いである。


今回のみはどうしてもネタバレ部分に関しては書かざるを得ないため、普段タイトルに冠している『ネタバレなし』の一言は抜き、本文中はある程度のネタバレを挟みながらまとめていく所存だ。よって今後観る予定のある人はここでブラウザバックを推奨する。


さて、当ブログでも何度も同様のことを述べてきたが、そもそも『Steins;Gate』や『君の名は。』、『時をかける少女』などタイムリープ作品は数あれど、ある程度面白いとされるタイムリープの題材というのは既にやり尽くされている。……特に『君の名は。』の大ヒット以降タイムリープ作品の頻出に拍車がかかった感覚すらあり、観る側にとってはぶっちゃけ食傷気味なのである。


よって『タイムリープ(過去と現代を題材にする)作品』とするからには、よほど奇想天外なアイデアか、それに勝る何かしらがなければ一気に白けてしまう。いわば諸刃の剣とも呼べる代物なのだ。


加えて、タイムリープものは制作の難易度が極めて高い。


例えば本来であれば『相手を殺す』と選択した人間が、時間を巻き戻して『殺さない』と行動を変化させたとする。すると大前提として『相手を殺す』未来との齟齬が発生することになり、『相手を殺す』場合に出会った人物や日常、行為が『殺さない』未来とごちゃ混ぜになり、大規模な過去改編による悪影響が及ぼされることとなる。これをタイムパラドックスという。


要するにタイムリープものは、まず『Aの世界とBの世界は何がどう違っているのか』という部分に加え、タイムパラドックスなどの絶対に抗えない事象を踏まえつつどうエンターテインメントとして昇華させるかが重要になってくるのだ。


そうした観点で今作を観てみると、どうしても理解できない支離滅裂な言動が非常に多く感じてしまう。


過去から来た10年前の自分がタイムリープし、「お前に彼女を作るためだ」と言う場面から物語は幕を開ける。


具体的には『結果的に3週間後にお前には彼女ができる。だがその彼女は不慮の事故で死んでしまう。俺はそれを阻止するためにタイムリープした』という流れらしく、その3週間後の事故で彼女を死なせないため、手から物理的に物を出現させるといった鍛練を積むことに(この時点で意味が分からなかったが)。


しかしながらそもそも主人公はその時点で未来の彼女とほぼ出会ってすらいないので、まずはそこからスタート。そこで未来の自分のアドバイスに従って、未来の彼女との交流を深める行動を取っていく。


「今すぐ本を落とせ。そうしたら女性がその本を拾ってくれる。それが未来の彼女だ」


「はい!」


「明日は図書室に行け。そこに彼女がいるから交流を深めろ!」


「はい!」


「やっと物を生み出せるようになったな。だがこんなんじゃ彼女を守れないぞ!もっと夜中まで練習だ!」


「はい!」


飼い犬かお前は。


もしあなたが「3週間後に彼女ができる。でもそいつはすぐ死ぬぞ」という状況になったとしても、自分の行動をあれこれ指図されたら嫌じゃないか?僕は嫌である。


というかせめて『彼女と付き合うまで』は自己流でやらせてくれよという話だし、そもそも10年後の自分いわく3週間後には絶対に付き合えるわけなので結果的に未来は収束し、何も言われなくても同じ行動を取るはずなのだ。なのに何でそんなにヤイヤイ言われにゃならんのだと。


僕個人としては「そんなに従順になってる主人公アホちゃう?」との思いが常に頭を駆け巡り、全く感情移入できなかった。


にも関わらず終盤では「未来の収束?知るか!」とばかりにガンガン過去改編するので面白くてしょうがない。もちろん主人公側は本気ではあるのだが、観ている側からすれば「これはやっちゃダメだろ……」という箇所がいくつも見られた。終盤に至っては主人公の『思いを具現化する力』の反動として器物破損や事故の発生は当たり前。何なら台風が5.6回直撃した方が数倍マシなレベルの大災害が街を飲み込んでいき、そうした世紀の大犯罪を行った理由がズバリ「これは全部彼女を守るためなんだ!」というのは、サンドウィッチマン冨澤の言葉を借りれば「ちょっと何言ってるかわからない」である。


特に後半にかけては情報を詰め込みすぎている印象が強く、何が何だか分からないまま終わってしまった。加えて「ラスト1秒でひっくり返る」というキャッチフレーズに関しても確かに驚きはしたものの、それは全てのストーリーを完全に理解している人でもって初めて感動する部分であるため、期待したほどの感動はなかった。


間違いなく個人的には、ここ数年の映画ではワースト3位には入るレベルの映画だった。何故これほど評価が高いのかは皆目分からないが、コアな映画ファンがこの映画を『名作』とするのであれば、僕は一生映画のことは分からなくてもいいと思った。


ちなみに僕のフォロワーは「めちゃくちゃ泣けた。これは神作だ!」と呟いており、本日2度目の鑑賞に赴いたそうだ。やはり映画というのは人それぞれである。


ストーリー★★☆☆☆
コメディー★★★☆☆
配役★★☆☆☆
感動★★☆☆☆
エンターテインメント★★☆☆☆
ラスト1秒度★★★★☆

総合評価★★☆☆☆
(2019年公開。映画.com平均評価・星3.8)


映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』予告【2019年9月20日(金)公開】