キタガワのブログ

島根県在住。音楽ライター。酒浸り。

映画『コーヒーが冷めないうちに』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。


日々猛威を振るう新型コロナウイルス。世間的にはもちろんのこと身の回りで考えてもその余波は確かに存在していて、まず執筆仕事がひとつ足りとも無くなり、所謂『不要不急』と呼ばれる類いの外出も出来ないためフラストレーションが溜まる一方である。よって今現在の僕は日がな1日自室で酒をかっ喰らうばかりで、随分と退屈で自堕落な日々を過ごしている。


さて、外出が出来ないとなると必然家で映画を観る機会も増える。そのため最近は過去当ブログにてレビューした様々な映画を改めて見返すと共に、今まで意図して触れてこなかったジャンルにも手を出してみようと試みている。……という訳で今回鑑賞したのは、「4回泣けます」との挑戦的なキャッチコピーが話題を呼んだ感動系映画『コーヒーが冷めないうちに』である。

 

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舞台はとある喫茶店で、そこにはひとつの都市伝説が噂されていた。それはある席に座ると自身が思い描いた日に戻ることができる、というもの。けれどもそこには『戻れるのはコーヒーが冷めるまでの僅かな間』『店からは一切出ることが出来ない』とのルールも定められており、何より『例え戻ったとしても結果は変えられない』とする大きなデメリットが垂直に立っていた。そのため噂を信じて来る人々は皆ルールを聞いた瞬間に消沈し実行することなく店を出てしまうために、その席に座る人間は長らく存在しなかった。


そんな折、自身の言動が悲劇的な結末を招いてしまった多種多様な後悔を抱く人々が喫茶店を訪れ、ルールを承知の上実行に移すこととなる。果たして悩める人々は戻った先の過去で何を経験し、何を感じるのか……以上が物語の大まかなあらすじである。


個人的に感動系の映画は、深い感情移入が出来るか否かで最終的な満足度が大きく変わってくると思っている。だからこそこの映画で例えるなら『なぜ時間を戻したいのか』『戻った先で何がしたいのか』に代表される5W1H的な心理描写と、最終的に『その後どのように過ごすか』との描写は絶対に必要で、この部分が上手く描けているかどうかが良作か駄作かを決める運命の分かれ道なのだ。


さて、上記の重要部を踏まえて今作を観てみると、前半部分は非常に秀逸な展開で引き込まれるのに対して後半部分は思考が麻痺するが如くのトンデモ展開であり、総合すると『めちゃくちゃ惜しい映画』といった印象である。どうしてこうなった……。


そう。この映画は、ある場面を境に展開が急激に変化する。これは千と千尋の神隠しで言うところの「元の世界に帰れない」→「じゃあ湯婆婆を倒そう!」、ONE PIECEで言うところの突然ルフィが「手っ取り早く秘宝を手にするにはどうすればいいかみんなで考えようぜ」とするような、全体通して「何でそっち方面に行った!?」との思いに駆られてしまう急展開ぶり。更にはその後の未来と過去に焦点を当てる置いてけぼりの感覚も相まって、後半は泣けるには泣けるが話の無理矢理さを考えすぎてしまったがために、泣くことに考えが及ばない感覚に陥ってしまう。


しかし擁護するならば、この急展開は単なる悪手ではなく、純粋に映画化の際に付け加えざるを得なかった要素を付け足した故の結果であると思っている。というのも『コーヒーが冷めないうちに』は元々、全4部作を連続的に舞台上で描く戯曲(演劇)であるためだ。演劇を実際に観たことのある方にはご理解いただけると思うのだが、他愛のない日常会話で幕を閉じたり問題解決を放り投げて暗転するなど、総じて演劇には確固たるオチがないことも多い。無論この手法は目の前で演者がリアルに動く演劇だからこそ成り立つものなのだが、2時間尺の映画に落とし込む際には絶対に『大きなオチ』は必要不可欠で、そこに向かうためには元の演劇では描かれていない強引な展開を映画的な意向で付けなければならなかったのではと推察する。実際前半部分の完成度が極めて高かったのに対し後半が取って付けたようなトンデモ展開であったことも、その証明ではなかろうか。


けれども前述した通り前半部分は非常に引き込まれたし、一言で駄作というべき作品でないこともまた確かである。だがその特徴的なタイトルよろしく、どれだけ些細な横槍でも心が冷めてしまうような、特にどれだけ秀でたポイントがあったとしても全てを混みで全体を評価するような所謂『映画を頻繁に観る類いの人間』が鑑賞した瞬間、どうしても低めの評価を下さざるを得ないのだ。


『Steins;Gate』や『君の名は。』以降痛烈に感じることだが、やはりタイムリープものは難易度が高いと共に、類似作品に慣れすぎている(『時をかける少女』、『打ち上げ花火~』など)ためにマンネリ化の傾向が強い。今作は粗削りな部分は多々あるにしろ、確かにそうしたマンネリを打ち崩すことには成功している。けれどもそうした瞬間、何よりも厚い『全体的な完成度』という壁に直面してしまうため、結局タイムリープ作品の行き着く先は『ぐうの音も出ないものを作る』か『誰も観たことのない新機軸の作風を打ち出すか』以外にないのだなと思い知った一幕でもあった。うーん……


ストーリー★★★☆☆
コメディー★★☆☆☆
配役★★★☆☆
感動★★★★☆
エンターテインメント★★★☆☆

総合評価★★★☆☆

 


「コーヒーが冷めないうちに」予告編