キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】SUMMER SONIC 2019@大阪(3日目)

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190905213141p:plain


8月16日から18日にかけて舞洲SONIC PARKにて開催されたSUMMER SONIC大阪の各日レポート。約2万字に及ぶ熱量で書き殴った1日目、EDMの圧に揉まれた2日目に引き続き、今回は最終日である3日目のライブレポートを書き記していく。当日のタイムテーブルは上を参照。


→サマソニ大阪2019の1日目レポはこちら
→サマソニ大阪2019の2日目レポはこちら


20周年を記念して3日間開催となったサマソニ大阪も、遂に最終日。


来年は東京オリンピックの影響により開催しない意向を決定しているため、この日をもってサマソニとは2年間のお別れとなる。朝から晩まで灼熱の気温に体を3日間晒し続けているため、正直疲れている感は否めない。しかしむしろ「最後は全力で楽しまなければ!」という思いが強まったことで、テンションは3日間の中で最も高くなっている感覚がある。


そんな3日目は「まさにサマソニ!」な歌って踊れるロックンロールに振り切ったラインナップで、盛り上がるのは必然と言える。


泣いても笑っても、これが最終日。以下、ライブレポートです。

 

 

amazarashi SONIC STAGE 11:00~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212430j:plain

最終日のサマソニ、記念すべき1番目として選んだアーティストはamazarashi。過去も何度かこのバンドの記事は書いているけれども、個人的な話としてはどん底だった最悪の時期を乗り越えさせてくれ、そして同時に生きる活力を与えてくれた、大切なアーティストの一組である。


開場時間である10時より早く到着した僕だったが、ソニックステージ前の光景に唖然とした。人があまりにも多すぎるのだ。


2階の入り口から螺旋状になっているスロープをぐるりと回り1階に抜け、そこから更に一直線の列が延々伸びている。最終的には総合案内所のすぐそばまで列は続いており、その光景を目にした通りすがりの観客は皆一様に「なにこの列!?」と驚きの声を挙げていた。


会場に足を踏み入れると、目を引くのはステージに設置された紗幕スクリーン。amazarashiのライブではもはやお馴染みとなったそれは、ステージをすっぽりと覆い隠しており、背後の機材も全く見えないほど。ここが匿名性と映像を武器に演奏するamazarashiの主戦場となる。


暗転した瞬間間髪入れずに始まったのは、『ワードプロセッサー』


哲学的な言葉の数々が散弾銃さながらの勢いで矢継ぎ早に繰り出される様は圧巻で、家でPCを観ているだけでは絶対に知り得ない興奮と衝撃がある。更には目が眩むほどの目映い光も作用し、意識は異様に覚醒していく。「歌うなと言われた歌を歌う。話すなと言われた言葉を叫ぶ」とはかつて音楽シーンで虐げられてきた秋田ひろむ(Vo.Gt)そのものであり、彼のそんな信念はまさに今、満員のソニックステージに高らかに響き渡っている。


轟音のアウトロの中「サマーソニック2019、舞浜ソニックパーク!青森から来ました。amazarashiです!」と叫んだ秋田に、観客は大きな拍手で祝福する。

 


amazarashi 『ジュブナイル』


その後はPVをそのまま投影した『ジュブナイル』、人形が痛々しい最期を迎える『命にふさわしい』、紗幕を一切使用せずひたすら歌の力だけでやり切った『僕が死のうと思ったのは』と続いていく。


ワンマンライブであればそれら全ての楽曲は『希死念慮に苛まれる人間や人生に絶望している人間に対して鳴り響く応援歌』とも言うべきものであるが、今この場においては夏フェスということもあり、普段のライブではまず見られない腕を挙げる人や口ずさんでいる人も多く、楽曲の持つメッセージ以上に、サウンド面での完成度の高さを改めて感じた次第だ。


最後の楽曲は、先日行われたライブツアー『未来になれなかった全ての夜に』にて事前情報なしで演奏された新曲、『未来になれなかったあの夜に』だ。


30分間、極めてハイカロリーな楽曲を歌い続けた秋田である。特に高いキーを必要とするサビ部分では声が裏返る場面もあったが、体力を気力で超越せんとばかりに演奏と歌唱はぐんぐん熱を帯びていく。ラストは「ざまあみろ」と何度も繰り返し、完全燃焼で幕を閉じた。


ライブ終了後のソニックステージは出口に向かう客でごった返していた。これはすなわち『amazarashiのライブを観るためだけにソニックステージに来た人』が大半だったことを明確に示す光景でもあり、古参ファンとしては嬉しい気持ちになった。


今回のamazarashiのライブは集まった観客からすれば、サマソニ最終日を飾る1発目としてこれ以上ない衝撃だったのではなかろうか。

 

【amazarashi@サマソニ大阪 セットリスト】
ワードプロセッサー
ジュブナイル
命にふさわしい
僕が死のうと思ったのは
美しき思い出
未来になれなかったあの夜に(新曲)

 

Psychedelic Porn Crumpets SONIC STAGE 12:10~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212452j:plain

続いては同じソニックステージで待機し、サイケデリック・ポーン・クランペッツを観ることに。同時刻、真裏ではグレース・カーターやCHAIといったポップミュージックが存分に鳴らされているが、やはり最終日の前半くらいはゴリゴリのロックで目を覚ましたいところだ。


サイケデリック・ポーン・クランペッツはオーストラリアの最西端で生活するロックバンドだ。『Psychedelic=幻覚』というバンド名からも分かる通り幻覚の如き爆音とノイズが入り交じるサウンドが特徴で、風の影響で音が動かないこのソニックステージにおいては、まさに最適な音楽性と言えるだろう。

 


Psychedelic Porn Crumpets - Hymn For A Droid


緑と赤を基本としたおどろおどろしい映像が大写しにされる中、ライブは『Hymn For A Droid』からスタート。トリプルギターから鳴らされるハードロック調の爆音はとてつもない破壊力で、鼓膜に直接訴えかけてくるよう。長髪を振り乱しながら演奏するメンバーも格好良く、まるで数十年前のロックバンドを観ているような感覚がある。


セットリストは今年発売されたニューアルバム『And Now For The Whatchamacallit』を主として構成されており、勇者がサイケ空間を旅する映像が流された『Bill's Mandlin』や、ゆったり系かと思いきやラストに爆音が響き渡る『Social Candy』と、彼らにしか鳴らせないノイジーなサウンドが終始鳴り続ける異次元空間がそこにあった。


VJには赤い円が外側にグルグル回り続けたり人の顔が分裂したり、目に痛いほどにグロテスクな色のペンキがぶちまけられるという、変な言い方をするならば「マジで頭が狂っている」映像が流れており、次第に意識がトリップしてくる。


中盤に至っては音圧が一段階上昇し、更には数分間に及ぶジャム・セッションまで繰り出すのだから堪らない。最初の方こそ後方で観ていた観客もいつの間にか前へ前へと押し寄せ、ラストの『Cornflake』が始まる頃には超満員となっていた。

 


Psychedelic Porn Crumpets - Cornflake (Official Video)


そんな『Cornflake』がまたとてつもない破壊力で、ノイジーなギターフレーズが延々と回り続けるサイケ曲。MVの映像をそのまま投影しつつ、最後は何度もヘドバンを繰り返して大団円。


今回のサマソニで初来日を果たしたが、海外でも日本でも知名度はまだまだの彼ら。しかし間違いなく今回のライブは『サイケデリック・ポーン・クランペッツ』というバンドを知らしめる、ひとつの通行手形的ライブだったと思う。それは最終的に超満員だったソニックステージを見ても明らかで、ツイッターを開けば賛辞の言葉で溢れていたほど。


もしかしたら、今年大ブレイクするのは彼らなのかもしれない。そう強く感じたライブであった。


【Psychedelic Porn Crumpets@サマソニ大阪 セットリスト】
Hymn For A Droid
Bill's Mandolin
Gurzle
Surfs Up
Found God in A Tomato
Social Candy
Buzz
Cubensis Lenses
Cornflake

 

SCANDAL MOUNTAIN STAGE 13:45~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212520j:plain

時刻は13時過ぎ。この時間帯は今年の3日間に及ぶサマソニの中で、唯一全てのステージで海外アーティストが出ないという稀有な状況下にあった。


メインステージではマイファス、更には堂本剛率いるエンドリケリーやキュウソネコカミと、どのステージを選択しても邦楽アーティストにぶち当たる環境の中選んだのは、今やガールズバンドの先駆者的存在であるスキャンダルだ。


かなりの大人数が収容可能なマウンテンステージだが正直かなり厳しい客入りで、集まった観客は疎ら。しかし流石はスキャンダル。夏に相応しいアッパーな楽曲の連続でもって、「私たちは私たちらしくやる!」という声が聞こえてきそうなほどの熱量で、マウンテンステージを揺らしていた。


思えば『メンバー全員が女性』という状況はサマソニ全体を通してもある種珍しくもある。会場は灼熱の気温に加えて設置された鉄柵の照り返しも相まってもはや理解不能な暑さだが、スキャンダルが姿を現した瞬間には爽やかな風が吹いたようにも感じる。

 


SCANDAL - 「マスターピース」 / Masterpiece - Music Video


リハの段階で『EVERYBODY SAY YEAH!』のフレーズが繰り返し流れていたにも関わらず結果的には演奏しないというまさかの流れには驚いたが、セットリストについてはここ数年間でリリースした比較的新しめの楽曲を軸に構成されていた。更にその中に『瞬間センチメンタル』や『SCANDAL BABY』といったスキャンダルの名前を広く知らしめた楽曲を散りばめることで、メリハリのある40分間に仕立て上げていた印象だ。


中でも抜群の盛り上がりだったのは、やはり『瞬間センチメンタル』だろう。テレビアニメ『鋼の錬金術師』の主題歌に抜擢されたこの曲は、ギターリフの時点で多くの歓声が上がるほどに大盛り上がりで進行。ボーカルのHARUNAは静かな中に熱を秘めた歌い方に徹し、ギター担当のMAMIはステージを所狭しと動き回って観客を煽り倒しながら高難度のフレーズを弾き倒していた。

 


SCANDAL 「瞬間センチメンタル」/ Shunkan Sentimental ‐Music Video


「知ってる人は歌ってね!」とのHARUNAの一声で始まった最終曲『SCANDAL BABY』に至っては、冒頭の「Let's go!」のフレーズからトップギアで進行。


中盤では中心で歌っているHARUNAに対してMAMIとTOMOMI(Ba.Vo)がパーソナルスペース完全無視の領域まで近付き、キス一歩手前の状態でプレイするアドリブも。しかしながら歌に集中できずに笑ってしまうHARUNAを見られるのもライブならではで、熱量を底上げする一種のスパイスとなっていた。


思えば僕がスキャンダルと出会ったのは、中学生の頃だった。当時『少女S』のPVで観ることのできた彼女たちは学生服姿で演奏していたのだが、それが今でも強烈な印象として残っている。あれから10年が経ち、少女だった彼女たちは今や立派な大人の女性となり、そして今でもスキャンダルとしての活動を精力的に続けている。


そんな彼女たちのいわば『ニュー・モード』とも言うべきライブが、今回のサマソニだったように思う。まさしく『今の自分たちの姿』が存分に詰まった新曲たっぷりのライブは少女の頃のスキャンダルしか知らなかったミーハーな観客にも、かねてより応援し続けているファンにも、鮮烈な印象を残したことだろう。


【SCANDAL@サマソニ大阪 セットリスト】
マスターピース
恋するユニバース
FREEDOM FIGHTERS
STANDARD
瞬間センチメンタル
Fuzzy
テイクミーアウト
SCANDAL BABY

 

YUKI OCEAN STAGE 15:30~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212714j:plain

スキャンダルのライブ終了後はソニックステージで演奏中のSam Fenderをチラ見し、予定より少し早いがオーシャンステージに向かうことに。


JUDY&MARY時代から数十年間に渡り、特に女性ボーカルによるバンド音楽の進化と発展に大きく貢献してきたYUKI。そんな彼女がサマソニ20周年を記念して出演を快諾し、ほぼロックバンドで固められたこのオーシャンステージに立つのは感慨深く、また今後数十年間続くであろうサマソニを占う試金石的な役割を担っていたようにも思う。


すうっと息を吸ってから始まった1曲目は、かつて紅白歌合戦でも披露した代表曲『プリズム』だ。

 


YUKI 『プリズム』


思えばかつて、太鼓の達人やアニメ主題歌、流行歌として無意識的に聴いていたのがYUKIだった。そんなYUKIがあれから何年もの月日を経て、今目の前でCD音源と全く変わらない歌声を響かせている……。それは何よりも感動的で、神秘的だった。彼女の清らかな歌声を聴くたびに当時の思い出がフラッシュバックする感覚があり、気付けば瞳は涙で濡れていた。


話は少し脱線するが、ライブの途中で酒を買いにドリンクエリアに赴いた際、店の店員が涙を流しながら接客をしていたのが今でも忘れられない。「YUKI、良いっすよね……」と僕が話しかけると、「うん……うん……」と泣きながら店員は頷いた。多くの言葉を交わしたわけではなかったが、心中を察するにはそれだけで十分だった。YUKIは本当に多くの人に愛されているのだと、改めて実感した次第だ。


ライブは『ふがいないや』や『ランデヴー』といった比較的古い楽曲を中心に、キャリア全体を網羅する形で進行。イントロが鳴った時点でどよめきが起こる楽曲自体の魅力もさることながら、総勢6人で鳴らす奥行きのあるバンドアンサンブルも相まって、自然に体が動いてしまう。


そして何よりYUKIである。先日47歳の誕生日を迎えたということだが、あまりにも可愛すぎる。左右に設置されたモニターに時折アップでYUKIの姿が映るのだが、どう見ても20代にしか見えない。歌っている最中もくるくる回ったり口を押さえてはにかんだりと、その一挙手一投足に目が離せない。

 


YUKI 『JOY』


中でも一番の一体感を見せていたのは『JOY』。終始ゆったり体を揺らす観客で溢れ、サビでは口ずさむ人も多くいた印象。ラストの「死ぬまでドキドキしたいわ」、「死ぬまでワクワクしたいわ」の観客との掛け合いもバッチリ決まり、YUKIも嬉しそうだ。


最後はひとつ前のアルバム『すてきな15才』から『フラッグを立てろ』をドロップし、ロックテイストな幕引きだ。ステージを去る瞬間「本当に今日は20周年、おめでとうございました!」と叫んだYUKIに対して、大きな拍手が送られた。


前述の通り、この日YUKIが出演したオーシャンステージは、YUKI以外は全てロックバンドで固めている特殊なタイムテーブルであった。例えば後に出演するWeezerやThe 1975といったバンド目当てに来た観客も多く、言うなれば非常にアウェイな環境下であったとも思う。


だが終わってみればYUKIの完全勝利。全身ロックバンドのコーディネートで固めたライブキッズや、日本語が分からない海外の観客でさえも、最終的にはYUKIのサウンドに身を任せていたのだ。


長く音楽シーンを牽引してきた歌姫、YUKI。彼女はこれからも音楽を鳴らし続けることだろう。そんな彼女を今この場所で観ることが出来たのは本当に良かったと心から思えたし、同時に誇りに思う。


【YUKI@サマソニ大阪 セットリスト】
プリズム
ふがいないや
ランデヴー
やたらとシンクロニシティ
2人のストーリー
ワンダーライン
JOY
フラッグを立てろ

 

Weezer OCEAN STAGE 16:40~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212742j:plain

おそらくフェスに赴く人の一般的な思考として、何よりも重視しているのは『誰が出るか』ということだと思う。家からの近さや環境、チケット代……。人によって優先すべき事柄は少しずつ違うだろうが、とにかく。まずもって重要なのは何よりもそのフェスのラインナップなのだ。


思えば僕が昨年初めてサマソニに行ったきっかけはノエル・ギャラガーだった。生粋の島根県民である僕がサマソニに行くのは容易いことではない。しかし「彼のライブを観られるのなら」と、一念発起してバイトに励み、結果的に彼のライブを観ることができた。


今年のサマソニ2019の僕の目的は、WeezerとThe 1975だった。この二組は今回の出演者の中では数少ない『全ての曲を知っており、また口ずさむことができる』というレベルで心酔し、聴き続けているアーティストだ。


必然YUKIのライブ終了時には「オラオラどけどけ」とばかりに僕の足は前方へ踏み出しており、結果的にはかなり前の方に陣取ることができた。あと数分でWeezerに会える……。そう思うと何故だか泣けてきた。


テレビの司会者チックなWeezerの紹介が流れた後、雪崩れ込んだのは不朽の名曲『Buddy Holly』だ。

 


Weezer - Buddy Holly (Official Music Video)


テクニックなんぞ知らんとばかりに無骨な演奏を繰り出すWeezer。その全てのサウンドが重く、心臓の奥まで響いてくる感覚がある。そして観客は当然の如く、ボーカルをかき消すほどの大合唱だ。しかもWeezerをWeezerたらしめた『Buddy Holly』が1曲目ともなれば、その興奮は相当なもの。


この日のライブでは、終始観客の大合唱がリードするという多幸感に満ち溢れた極上の空間となった。「日本人は英語の歌を歌えない」と揶揄されて久しいが、この日はまるで何十年間もオリコンチャートに食い込む楽曲と言わんばかりに常に観客が歌い、踊り、笑顔に包まれる環境だった。


更に驚きだったのはそのセットリストで、今年発売された『ブラックアルバム』、更にはその前年の『Pacific Daydream』、そしてその前年の『ホワイトアルバム』からの楽曲はひとつもなし。ではどのアルバムから重点的に演奏されたのかと言うと、なんと25年前に発売された記念すべきファーストアルバム『ブルーアルバム』から大半。更にはこれまた数十年前にリリースされた『グリーンアルバム』や『Make Believe』からの数曲を連続して鳴らすという、古参ファン号泣必死のセットリストだったのだ。


中でも『Beverley Hills』に挟まれた『Buddy Holly』から『My Name Is Jonas』というブルーアルバムゾーンは、特に30代あたりの観客がめちゃくちゃに熱狂していたのが印象的だった。早くも声が枯れている観客も何人か見受けられ、第一線で活動し続けるWeezerの凄さを感じずにはいられなかった。


ボーカルのリヴァース・クオモは日本人女性と結婚し、日本語だけを使って呟く個人ツイッターも開設しているほどに日本との関わりが強い人物。そのため日本語のMCも期待されていたところだったが、夏はジメジメすることに掛けて「はじめじめまして」(ジメジメと初めましてを掛けている)や「暑いですね。でも大丈夫です。ファンがたくさんいるから」(ファンと扇風機を掛けている)といった高度な親父ギャグを披露。以降も「イタダキマース!」や「オオキニ!」、「オオサカのオコノミヤキをタベマシタ」といった流暢な日本語を連発し、大きな笑いを生み出していた。


中盤にかけては今年発売のカバーアルバムである『ティールアルバム』から、タートルズの『Happy Together』、アーハの『Take On Me』を演奏したり、『Island In The Sun』で「ヘッヘッ」の応酬など、笑顔にならない人がいないレベルの楽しい空間を演出。

 


Weezer - Say It Ain't So (Official Music Video)


もはや全曲がキラーチューン状態のライブだったが、ラストは『Say It Ain't So』でだめ押しの大合唱。演奏終了後はメンバーが横並びで腕を挙げ、「ゴチソウサマデシタ!」と言い残して帰っていった。


ほぼ毎年アルバムをリリースし、今年に至っては2枚ものアルバムを出したWeezer。最近では来年発売予定のニューアルバム、更にはもうひとつアルバム制作中との噂もあるほどここ数年のワーカホリックぶりが凄まじい彼らだが、やはりそれはそれとして、初期曲の破壊力は素晴らしかった。


……全曲熱唱したライブは、いつ以来だろう。ガラガラになった声を自覚しながら「次は単独公演で観よう」と強く心に誓った僕であった。


【Weezer@サマソニ大阪 セットリスト】
Buddy Holly
Beverley Hills
Surf Wax America
Undone -The Sweater Song-
My Name Is Jonas
Happy Together(Turtlesカバー)
Island In The Sun
Take On Me(A-HAカバー)
Pork And Beans
Perfect Situation
Hash Pipe
Say It Ain't So

 

The 1975 OCEAN STAGE 18:05~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212836j:plain

もう最初に書いてしまうが、今年のサマソニ3日間で最も素晴らしかったアクトは個人的にThe 1975だった。


様々なライブを観てきた自負はあるが、この先The 1975のライブを超えるものは現れないような気がする。そう感じてしまうほどに刹那的で、衝動的で、何より圧倒的だった。


「Go Down……」と突如としてモニターに文字が映った『The 1975』のSEから、メンバーが次々ステージに降り立つ。1曲目はもはやオープナーとしてお馴染みとなった『Give Yourself A Try』。

 


The 1975 - Give Yourself A Try


甲高いギターリフが延々続く『Give Yourself A Try』は、The 1975のニューモードを予感させるロックナンバー。ライブのたびに風貌を大きく変化させるカメレオンぶりを魅せるマシュー・ヒーリー(Vo)は、今回はバウハウスのTシャツでシックな装い。早くも手にはタバコ。マイクを握って歌いながら残った指でタバコを挟むというロックスター然とした佇まいに、まず圧倒される。終盤ではマイクのコードをグルグル回転させて首に巻き付けるなど、早くもフルスロットル。


多数の『TOOTIME』の文字が下部からグーンと引き上がって始まった続く『TOOTIMETOOTIMETOOTIME』では、黒人女性ダンサー2名がマシューの脇を固め、息の合ったダンスを繰り広げる。彼女への電話の回数を数えるサビ部分では歌詞が投影され、観客は自身の指を数字に合わせながらゆらゆらと踊っていた。


今回のライブは完全なる『A Brief Inquiry Into Online Relationship』(昨年発売のアルバム)モードで、セットリストの大半をこのアルバムからドロップしていた。更には時に神秘的に、時にはきらびやかに姿を変える最新鋭のVJも圧巻で、ライブの盛り上がりに火をくべる役割を担っていたように思う。


さて、今回のライブで印象的だったのは、マシューによる最初のMCだった。その中でマシューは「普段はあまり言語の壁があるからたくさんは話さないけど、今回は少し話をさせてほしい」と前置きし、次のように話していた。


マシューは8月14日(この日のライブの4日前)に、ドバイのコンサートで最前列のファンの男に「キスしてくれ!」とせがまれ、キスをしたそうだ。だがドバイでは『反LGBTQ法』なる法律があり、同性愛を厳しく制限している。このニュースはメディアでたちまち話題になった。そう。彼はそのさざ波を受けた状態で、今サマソニのオーシャンステージに立っているのだ。


マシューはそのことについて「入国禁止になるかもしれない」と語った上で「僕は普段は抗議とかしないけどさ、人間と人間との間の関係でやったこの行為は美しかったし、ピュアな行動だと思うんだ。僕が言いたいのは、後悔してないってことだ」と締め括った。


そして「今怒ろうぜ」と語って雪崩れ込んだ『I Like America & America Likes Me』はあまりにも衝撃的だった。

 


The 1975 - I Like America & America Likes Me


The 1975: I Like America & America Likes Me


MVと同様の映像が流れる中、マシューはオートチューンがひび割れて地声が表れてしまうほどに感情を爆発させながら何度も絶唱。時折フラつく場面もあり、後半では大きな音を立てて地面に倒れてしまう。しかしそれでもマイクは離さず歌い続ける様は、心を動かされた。


ラストは『Sex』からの『The Sound』でシメ。『Sex』では「ポップバンド」「危険さがない」、「歌詞に説得力がない」といったアンチコメントが次々投影され、ラストは『ロックンロール・イズ・デッド』、『The 1975に神のご加護を』の文字と共に終了。そして「まだ時間ある?」とスタッフに確認した後、正真正銘最後となる『The Sound』で大団円。マシューは演奏終了と同時にステージに崩れ落ち、やりきった様子でステージを降りていった。


繰り返しになるが、今年のサマソニの個人的にベストアクトはThe 1975だった。というよりこの日のこの時点でもamazarashiやWeezer、YUKIといったアーティストに心打たれてはいたのだが、最終的にThe 1975に全部持って行かれた。


あの壮絶なライブを観て、虜にならない人などいるのだろうか。あの体験は一生忘れられない。久々に『バンドに惚れる』という経験をした。The 1975、罪なバンドである。書ききれなかったので詳しくはまた後日、個別レポを書きたいと思う。


【The 1975@サマソニ大阪 セットリスト】
The 1975(SE)
Give Yourself A Try
TOOTIMETOOTIMETOOTIME
She's American
Sincerity is Scary
It's Not Living(If It's Not With You)
I Like America & America Likes Me
Somebody Else
I Always Wanna Die(Sometimes)
Love It If We Made It
Chocolate
Sex
The Sound

 

Bananarama MASSIVE STAGE 20:00~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212906j:plain

The 1975の密集地獄を何とか潜り抜けた後、Two Door Cinema Clubの前にBananaramaを4曲くらい観れそうだったので、急遽マッシブステージヘ移動。


今回のサマソニ3日間で、個人的にどうしても観たかったアーティストを選ぶとするならば、まずは前述したWeezerとThe 1975。この後トリに観る予定のTwo Door Cinema Club。そしてBananaramaだった。


この日のサマソニで唯一心残りがあるとすれば、Bananaramaを最後まで観られなかったことだ。まさか僕が産まれる前から活動している彼女たちが一番最後に、しかも一番小さいステージで演奏するということは全く考えていなかったので、タイムテーブルが発表されてからは随分と悩んだ。悩んだが泣く泣く、本当に苦渋の決断でツードアに移動した。


……というわけで個人的に観たのは4曲目の『Move in My Direction』までなのだが、そこまでの時点でほぼ立ち止まらずに最前列に移動できるほどにステージはガラガラで、若干の物悲しさを覚えた中でライブを鑑賞。


しかしながらその『ガラガラ感』はむしろ良い方向に作用しているようにも感じた。まずステージが近いので、音がダイレクトに耳に伝わってくる。そして何より御年58歳を迎えるカレン・ウッドワードとサラ・ダリンが、目と鼻の先にいるのだ。海外でのライブは軒並みソールドアウト必死のBananaramaである。こんな光景、どのライブでも絶対に味わえない。

 


Bananarama - I Heard A Rumour (OFFICIAL MUSIC VIDEO)


中でも『I Heard a Rumour』の盛り上がりは格別で、すっかり暗くなった空も相まって、数十年前のディスコの雰囲気を漂わせる演奏となった。サビ部分では腕をくるくる回すおなみじの振り付けも披露され、カレンが「叫んで!」と語ると、観客は一様に「フウー!」の大盛り上がり。今から32年前の曲とは思えない、まさにベテランな貫禄を見せ付けていた。


ちなみに僕は(先程から自分の話ばかりで申し訳ないが)ウイスキー片手に最前列で踊っていたのだけれど、『I Heard a Rumour』で『島根県の超絶陰キャが踊っている姿』を見付けたカレン・ウッドワードが僕を指差して笑ってくれたのは、一生の思い出になった。


そのすぐ後にTwo Door Cinema Clubを観に行ってしまったこと、この場を借りて謝罪させてください。Bananaramaの皆様、申し訳ございませんでした。最後まで観たかったです。多分『Love In The First Degree』か『Venus』か『I Want You Back』聴いてたら泣いていた。……と思ったら終盤で演奏したらしい。くそう。


【Bananarama@サマソニ大阪 セットリスト】
Stuff Like That
I Heard a Rumour
Dance Music
Move in My Direction
Nathan Jones
Look on the Floor
Cruel Summer
Love Comes
I Want You Back
Robert De Niro's Waiting
Looking for Someone
Love In The First Degree
Venus
Na Na Hey Hey(Kiss Him Goodbye)

 

Two Door Cinema Club SONIC STAGE 20:25~

f:id:psychedelicrock0825:20190905212923j:plain

3日間続けてのサマソニ、最後のアーティストはイギリスのロックバンド、Two Door Cinema Clubに決定。


会場内は既に蒸し風呂状態であり、初の日本人アーティストでトリを飾るB'zも、どしゃめしゃのパンクを鳴らすFall Out Boyも、ディスコソングで一昔前にタイムスリップさせるBananaramaも選ばなかったロック好きたちがここソニックステージに終結し、今か今かとその時を待っている。


今までは一切VJを使用してこなかったが、今年に入ってからは積極的にVJを用いるようになったツードア。定刻になると突如緊急を知らせるアラームが鳴り響き、ステージは真っ赤な照明に照らされる。


「Here We Go Rhythm」の合図で鳴らされたのは、最新アルバム『False Alarm』収録の『Talk』だ。


特にニューアルバムはCDジャケット(とアーティスト写真)に顕著だが、昨今のツードアの楽曲は打ち込みを多用したりテンポを変えるなど、ロックバンドの枠に囚われない作りで進行する今まで以上にチャレンジングな試みを行っている。『Talk』では頭を剃ったアレックス・トリンブルは声色を変化させてキャラクターを演じるように歌い、果ては打ち込みやボコーダーも使用するという、変幻自在のパフォーマンスで観客を魅了。

 


TWO DOOR CINEMA CLUB | UNDERCOVER MARTYN


かと思えば続く『Undercover Martyn』と『I Can Talk』ではBPM速めのロック路線に逆戻りし、サビでは観客がギターの音色を合唱するという一種のアークティック・モンキーズ状態に。そして次なる『Are We Ready?(Wreck)』では再び実験作に戻りゆったり聴かせるなど、良い意味でどっちつかずなバラエティー豊かな楽曲群で攻めていく。


やはりと言うべきか、今回のライブで「凄い盛り上がり!」と感じる部分は基本的にファーストアルバム『Tourist History』からの楽曲で、それこそ序盤の『Undercover Martyn』や『I Can Talk』のようにド直球のギターロックが好まれる傾向にあるようだ。……というわけで一番の盛り上がりを記録したのは間違いなく、ファーストアルバムのリード曲『What You Know』だった。

 


TWO DOOR CINEMA CLUB | WHAT YOU KNOW


特に最初のギターリフでは待ってましたとばかりに観客は「ううううーうっうー」の大合唱。思い返すと『サビよりもギターメロの方が有名』という楽曲は、世界中探してもほとんどないのではなかろうか。


今までに発売した4枚のアルバムから満遍なく披露した今回のライブ。ラストは『Sun』でゆったりとした幕引きだ。


背後のスクリーンには大きな日の出が大写しになっているが、サマソニという状況下も相まって、まるで日本国の国旗にも見える。アレックスはハンドマイクで縦横無尽に動き回り、後半ではお立ち台に上がってビシッと天を指差す場面も。


ラストはマイクスタンドをぶん投げ、ビールを飲み干して帰っていったツードア。アンコールはなかったが、むしろ「もう何も演奏出来なくないか?」と感じてしまうほど、聴きたい曲全部乗せの出し惜しみなしのパフォーマンスだった。


【Two Door Cinema Club@サマソニ大阪 セットリスト】
Talk
Undercover Martyn
I Can Talk
Are We Ready?(Wreck)
This Is The Life
Next Year
Do You Want It All?
Once
Bad Decisions
Changing Of The Seasons
Dirty Air
What You Know
Lavender
Satellite
Eat That Up, It's Good For You
Something good Can Work
Sun

 

……さて、以上でサマソニ大阪の3日目のレポートは終了だ。


今年は10年ぶりの3日間開催となったサマソニ。各日ごとに出演者のジャンルを均一化したり、1日目は混乱が起きたりといろいろあったが、今年も楽しかった。


来年は東京オリンピックのため中止が発表されているサマソニだが、今後何年間も続いていくフェスだと確信した。というより、絶対になくなってほしくないと感じた。サマソニ(とフジロック)は、今や海外アーティストを観ることができる貴重な機会。最先端の海外の音楽シーンに触れることができるのはもちろん、日本の音楽シーンの発展のためにも続けてほしい。いや、続けなければならないと強く思う。


本当に最高の3日間だった。また再来年、レポートを書けることを強く願いながらお別れしたいと思う。それでは。