キタガワのブログ

島根県在住。音楽ライター。酒浸り。

イベント運営の日雇いバイトに潜入調査してきた話

こんばんは、キタガワです。

 

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アルバイト。それは日本国民の大半が一番初めに経験するであろう労働である。


……もちろん例外がないわけではない。アルバイトを禁止されていて、そのまま高校卒業と同時に定職に就いたとか。奨学金を借り入れもない裕福な大学生活を謳歌し、新卒で入社した会社が最初の『労働』だったとか。経験は千差万別だろうが、とにかく。総じてアルバイトを経験していない人というのは、ほとんどいないのではなかろうか。


そんなアルバイトだが、実際に行動に移すにはかなりの時間が伴う。実際に店に赴いて店内の雰囲気や忙しさを直接目で確かめることはもちろん、「バイト 飲食店 簡単」などと調べては、ああでもないこうでもないと膨大な選択肢から狭めていくのが通例だ。


ではなぜそこまで慎重に選ぶ必要があるのか。理由はひとつ。アルバイトは間違いなく長期化するからである。


簡単に始められるアルバイト。しかしそれは逆に、簡単には辞められないとも言い換えられる。基本的にアルバイトを辞める際は『1ヶ月前に連絡をする』のが最低限の礼儀とされており、これは同時に「めんどくせ」と判断し直ぐトンズラできる性格を持つ人以外の大半の人にとっては、間違いなくダラダラ続ける原因となる。


そこで『何かあったらすぐに辞められて楽、しかも時給も良いバイト』というものを探し求めるわけだが、実際問題そんなものはほとんどない。しかし思い返してみてほしい。あるではないか。最高のバイトが。


そう。それこそが『日雇いバイト』である。


勤務は一日だけ、窮屈な人間関係もなし。時給は1000円超えと好条件の仕事……。長期間のバイトで心身を磨り減らすくらいなら、月に何回か日雇いバイトをした方が幾分マシではないかとも思ったりする。


しかしながら日雇いバイトには、悪いイメージも付き物である。


基本的に日雇いバイトは肉体労働系が多い。そうでなくとも塾の講師やコールセンター、更にはモニターアンケート調査など、何かと敷居が高い印象を受ける。実際何度かやろうと思ったにも関わらず、いろいろ考えて「やっぱやめよ」となった人も多いだろう。


さて、今回はそんな暗黒の日雇いバイトの話だ。絶賛フリーター生活中の僕であるが、先日『イベント運営』の日雇いバイトに行ってきた。今回の記事ではその際学んだバイトの雰囲気、仕事内容について、純度100%のリアルさでもって書き殴っていきたい。


この記事が単発バイトに行こうか悩んでいる人、更には「どんな感じなんだろう」と二の足を踏む人に刺されば幸いである。


それではどうぞ。

 

 

14時00分~会場到着

今回集合会場に選ばれたのはとあるホール。要はここで何かしらのイベントが行われ、集まった僕らはその手伝いをするようだ。


「服装はスーツ。持ち物は特に要りません」とのことだったので、強気にも『スーツ姿+ポケットにスマホと財布を入れた状態』で集合場所に到着。ちなみに流石にラフすぎるため何か言われるかと思いきや、最後まで何も言われなかったのが驚きだった。


集合時間は14時30分ではあったが、いざというときのことを考えて30分早く到着した。しかし誰もおらずあまりにも暇だったので、ホールのWi-Fiを使ってツムツムをプレイして時間を潰すことに。


集合時間15分前になってくると、少しずつスーツを来た『それっぽい人』が集まってくる。取り敢えず「バイトの方ですか?」と声をかけてみるとドンピシャだったらしく、しばらく5人ほどで談笑。


聞けばフリーター、内定が決まった学生や主婦など、境遇も年齢もバラバラなメンバーが揃っており、その中のふたりは姉妹らしく「前参加したら楽だったので、妹も今回誘ってみました」とのこと。日雇いというと殺伐とした雰囲気を想像していたが、皆思ったよりも楽しそうな笑顔。集まる前は「社会不適合者ばかりが集まるのかな」とも思っていたのだが、ある種の「暇潰し感覚」のような軽い気持ちで来ている人が多い印象を受けた。


ちなみに僕は自転車で来ていたので関係ない話ではあったが、駐車場で後々支払う金額やバス代に関しては、バイト先が全部負担してくれるそうだ。至れり尽くせりである。

 

14時30分~全員集合

事前に伝えられていた集合時間になると、ここぞとばかりに人が集まってくる。おそらく他の場所で、僕たちと同じように談笑していたグループもいたのだろう。


総勢20人はいただろうか。男女比は男3・女7といった印象で、ここに来ると白髪混じりの人や金髪に染めた人、コミュニケーションが苦手そうな人など、僕が当初思い描いていた『日雇い像』のような人たちもいる。中には「お久しぶりです~」と声を掛け合う様子も多く見受けられ、特に女性同士では顔見知りが多いようだ。


そして今回のアルバイトのリーダーを務める、某株式会社の社員の人が現れた。中年で話しやすそうな印象を受けると共にジョークもバンバンぶつけて場を和ませ、一気に『何でも相談できるキャラクター』を作り上げていく。さすがである。


さて、そこからの僕のイメージとしては会場案内や仕事説明、更にはハプニングがあった際の対応や配置確認といった、キチキチっとした話になるのかと思っていた。しかし、実際は全く違ったのだった。

 

14時30分~チラシ作成

「うーん、暇だなあ。18時までやることないんですよ……」と呟く社員さんから端を発した最初の仕事は、チラシ作成。


作成といっても何も難しくない。無造作に置かれた『A』『B』『C』という3つのチラシがあるのだが、それをCが一番下、Bが真ん中、Aが一番上になるように重ね、それを何個も作るだけという単純作業。


長机に全員が一列に並び、一心不乱に作業に当たる。しかし早ければ1個あたり5秒でできるため、気付けば大量のチラシが出来上がっている。言い方は悪いが、小学生でもできる仕事である。


ここでひとつ思ったのは、「この時点で誰かひとりでも話せる人を作った方がいい」ということ。


というのも完全なる単純作業のため、手は動かしているものの暇でしょうがない。友人同士で参加している人は話ながら仕事に当たることが可能だが、僕のように一匹狼のコミュ障には辛い。


無造作に置かれた3枚のチラシを使うため、例えば必然的に最後の方には『Aが20枚残っているのにCはあと5枚しかない』というような状況になってくる。その際に「ごめん君のところにあるC、15枚ちょーだい」と言えるか言えないかでは、大きく違ってくるのだ。なぜならほぼ全員が初対面。見知らぬ人から声を掛けられるほど嫌なことはない。


ちなみにこのチラシは開場時にお客さんに配るものらしい。僕も様々なライブに参加した経験があるためよく分かるのだが、チラシはほぼ捨てる運命にある。それが分かった上でチラシを作り上げるのだ。途中から「どうせ捨てられるのになあ」という気持ちになりつつ、作業を続ける。

 

15時00分~仕事説明

チラシが全てまとまったところで、やっとこさ仕事説明の時間に。


まずはホール全体の案内図を見ながらの説明。「あなたはここ、あなたはここ」というように、各自の配置を言い渡される。


僕が配置されたのはステージ後方の観客入退場口。いわゆるドアマンだ。他の人もホール内の各所に配置されるのだが、ここでまさかの一言が。


「今言った人たちは、特に何もしなくていいです」


これには驚いた。何せ僕が配置される場所は観客入退場口。すなわち入場時こそドアを開き「いらっしゃいませー」と言わなければならないが、それ以降は完全に暇になるからだ。


ライブ中はせいぜい『トイレ休憩に行く客がいたら扉を開けてあげる』くらいなものだが、ライブ中に席を立つ人などほとんどいないわけで、実質フリー。ということは……?


「はい。ドアマンの人たちは2時間半の間、丸々ライブを観れちゃいます」


ひえー!


何たる僥倖。ライブを観るだけで金が貰える仕事など、他にあるだろうか。夏フェスなどで後ろ向きで立っているライブスタッフとは訳が違う。僕らはその逆向き……すなわち普通の観客と同じ目線でライブを堪能できるのである。


後々知った話だが、その日のライブのチケットはなんと最低でも1万円。更には全席ソールドアウトという驚異のライブだった。もちろん直立不動でなければならなかったり、足に負担がかかるというデメリットはあるが、それを帳消しにするほどのメリットがあった。素晴らしすぎる。


しかしながらもちろん『仕事』なので、細かな指令はいくつかあった。お客さんが目の前を通ったら「いらっしゃいませ」と言うこと、時折「写真撮影は禁止です」と叫ぶこと。席が分からない人がいれば案内すること……。だが「分からないことがあればすぐ社員に声をかけてほしい」とも言われたため、実際にはストレスフリー。


そのため事前に覚えることと言えばせいぜいザックリした席順だけ。しかしそれも案内板があるため、スタッフにわざわざ声をかける人は少ないだろう。「これは最高の一日になるかもしれない」と僕は思った(仕事だけど)。


ちなみに僕はドアマンだったけれども、他の人の中にはチケットのもぎりや物販担当、更には2階席担当もいた。その後はもぎりの説明や物販商品説明といった形で説明が各所で行われたが、僕はこの数分の説明で完全に終わってしまったので、この間が一番暇だった。

 

16時~休憩・夕食

夕食には弁当が出た。夕食とするにはかなり早い時間ではあるが、ライブ終了時には21時を回るので仕方あるまい。


弁当については「せいぜい幕の内弁当とかだろ」と甘く見ていたが、実際はボリューミーなハンバーグ弁当が出てきて笑ってしまった。ちなみにお茶も付いていた。


奇跡的にもここで声を掛けてくれた現役大学生の若者のおかげで、休憩時間は楽しく過ごせた。聞けば彼は内定が既に決まっているらしく、その間は講義もほとんどなく暇なので、このバイトに応募したという。


何度か「正社員ってやっぱりキツいっすかね……」という悩みを孕んだ真面目な相談も受けたのだが、僕自身が『新卒で入った会社を半年で辞めた現フリーター』という立場なので、取り敢えず「何とかなるよ」という薄っぺらいメッセージを届けておいた。本当に申し訳ない。君は相談する相手を完全に間違っていたと思う。


……そんな休憩時間だが「あまりにもやることがない」との理由で17時までの予定だったものが17時30分までに延長された。あまりにも緩い展開に笑ってしまったが、開場時間が18時であることを鑑みるとなるほどとも思ってしまう。こちらとしては嬉しいのだが、「これは果たして仕事なのか?」という気持ちも次第に大きくなってくる。

 

18時00分~お客さん入場

休憩が終わる17時30分あたりから、会場の外にはチラホラとお客さんの姿が見え始めた。


そこで17時50分には全員が配置につき、いつでも対応できる心構えを高める。僕は唯一の入場口である扉を仕切っている立場なので絶対にそこから離れてはならない。緊張のあまり、トイレに行っていなかったことを心底後悔する。


そしてついに18時になり、お客さんが雪崩れ込むように足を進める。物販席では係員が「会場限定グッズ販売しております!」と拡声器で呼び掛け。チケットもぎりの人もてんやわんやで、先程まで「暇だなあ」と僕たちがフラフラ歩いていたホールが一瞬にして人で埋め尽くされる。


しかし前述したように物販ともぎりは忙しさのピークにあるが、片やドアマンである僕たちは暇でしょうがない。というのもホール内に入れるのは18時30分からであり、それはお客さんも重々承知のため「早く入らせなさいよ!」と怒号混じりで中に入ろうとする人は皆無。


よって『人でごった返す中、ただただ直立不動をキープ』という一種の苦行を強いられることとなり、これが暇すぎて逆に辛い。大衆の目があるため鼻クソもほじれない中、僕はといえば目だけを動かして『お客さんのカバンの色は何が多いか調査』や、壁に備え付けられた時計を見ながら『時計の針が1周するたびにまばたきをする』といったクソしょうもない遊びを考案し、空虚な時間を潰していた。


途中で社員の人が耳打ちで「たまにでいいから、会場内は写真撮影禁止ですって言っといて」という指令が飛んだのだが、長い間口を開いていないため『会場内』の『か』の時点で盛大に声が裏返り失笑が起きたため、その後は心が折れて完全に無言になる。

 

18時30分~お客さんホール入り

30分になった瞬間、ホールを解放した。


焦らしに焦らされたお客さんが我先にとホールに入ってくる。1階の入場口は4箇所あり僕は一番端の扉担当だったのだが、人間の心理なのか分からないのだが、基本的には中心のふたつの扉から入る人ばかりで端の扉から入るお客さんは極めて少なかった。


「お客さんが入るときには挨拶してね」と事前に言われていたが、僕は現在行っている別のアルバイトではバリバリの接客業をしているため、先程の直立不動の時間と比べて、逆にこの時間は楽しく過ごせた。


更には僕自身が音楽バカのため、お客さんが「今から始まるんだ!」というワクワク感を顔に表しながら入ってくる様はとても微笑ましく、嬉しさすら感じた。心の底から楽しんでほしいと思ったし、僕の「いらっしゃいませ」がその楽しみに続く一種のスパイスになるならと、全力で声をかけた。


僕は「いらっしゃいませ」と言うだけで、途中のハプニングはほとんどなかった。ごく稀に「トイレは1階以外にはないんですか?」や「車椅子なんですけどどう席まで行ったらいいですか?」というイレギュラーな問いもあったが、その際は社員の人にバトンタッチし、僕はドアマンを続けた。

 

19時~ライブスタート

ここからの時間は天国だった。


僕はひとりの『観客』として、2時間半のライブを堪能した。もちろん後方なので音響もあまり良くはないし、チラチラとPA(音響担当の人)の動きも目に入ってはくる。ライブ自体も僕が好んで聴くような音楽性ではなかったにしろ、それでも最高だった。


僕の位置は観客からもほぼ見えないため、曲に合わせてリズムを取ったり、知っている曲は口ずさんだりもできた。前述したように、このライブのチケット代は1万円である。そんなライブをチケット代を払うことなく観ることができ、しかも最終的にはお金がもらえるというチート仕様には申し訳なさすら感じた。


長丁場のライブだったため途中で休憩等もあったのだが、それも僕の仕事としては扉を開くだけなので、全く問題なし。何なら足の痛みを忘れさせてくれる行為でもあったため、逆にありがたかった。


こうして2時間半に及ぶライブは、素晴らしい多幸感を抱きつつ終了したのだった。

 

21時~最後の仕事

観客があらかた退場した後、僕らは観客席をくまなく渡り歩き、ゴミがないかを確認する作業にあたった。


今回のライブは銀テープが発射されたわけでも、紙吹雪が舞ったわけでもなかったため、ゴミといってもチラシくらいなもので、それ以外にゴミと呼ばれるものはあまりなかった。


その後は撤収作業の手伝い等もあるのかと思ったのだが、そうした類いの仕事は一切なかった。つまりこれでお開き。曲の日雇いバイトは完全終了と相成ったのだった。


車で来た人は駐車券の処理であったり、バスの人は交通費の支給といった話で待機を命じられたが、僕は自転車なのですぐにその場を去った。事前に口座番号を電話で伝えておいたため、数週間後には今日のバイト代が振り込まれることだろう。額にして7000円ほどだろうか。


結論としては、とても楽しいバイトだった。僕はハローワークにて今回の求人に応募したのだが、正直最初は不安だった。日雇いというと『肉体労働でハード』というイメージがどうしても強い。そのため会場に着いた時点では「やめとけば良かったかな」と思ったのも事実だ。


だが最終的には楽しかった。もちろん僕は後方担当のドアマンであったため、楽だったというのもある。もしも前方のドアマンであれば体勢を崩すことも難しいかったろうし、物販担当は相当ハードだ。2階のドアマンに至ってはライブを観れたかどうかも怪しい。この日の僕はただのラッキーマンだったのかもしれない。


おそらくこの記事に行き着いた人は日雇いバイトについて不安を抱えていたり、他のバイトと悩んだりと様々な葛藤があると思う。


僕は「日雇いバイトは簡単だよ」とは決して言うつもりはない。実際片側交通の道路警備員のバイトで死ぬ思いをしたこともあるし、塾の講師をして保護者からクレームを受けたこともある。


しかしながら少なくとも『この日』の『この割当』で望んだ初のイベント運営の日雇いバイトに関しては、良い経験が出来たと思っている。ひとつの経験として、絶対にマイナスにはならない仕事だ。興味のある人はぜひ考えてみてほしいと思う。


それでは。