こんばんは、キタガワです。
時が過ぎるのは早いもので、気付けば季節は夏。
各地では記録的猛暑となっているどころか、観測史上初となる47都道府県全てに高温注意警報を発令する異常事態にも発展。うだるような暑さの中「何もしたくない」と思いながら日々を過ごしている人も多いのではなかろうか。
しかしながら、音楽ファンにとって夏は記念すべき季節でもある。そう。夏フェスの開催である。
ロックインジャパンにサマーソニック。ライジングサンにワイルドバンチ……。今年も多くのフェスが夏場に開催されることが確定。全身汗だくになりながら朝から晩まで音楽漬けの一日を過ごせる『最高の非日常』が、すぐそばまで迫っている。
さて、そんな夏フェスだが、読者貴君はどのようなイメージを持っているだろうか。一度も夏フェスに行ったことのない周囲の友人らに聞いてみると「一日中音楽を聞けるライブ」や「パリピが集まる場所」、「めちゃくちゃ暑い」など、その答えは千差万別だった。
そんな中、あるひとりの友人が口にした夏フェスイメージに、僕は心底驚いた。それこそが今回タイトルの一部に冠した『ゴミが多い』という点である。
友人がそう思ったきっかけは、ライジングサンやフジロックに実際に赴いた観客がゴミの多さをツイッターに画像付きで上げ、それが回り回って友人の元へ届いたためらしかった。
あまり気にも留めていなかったものの、確かに夏フェスにおけるゴミ問題は年々深刻化している。昨年のサマソニ大阪では、飲食店が立ち並ぶオアシスエリアはオアシス感の欠片もないほどゴミが散乱していたし、詳しい内容は不明ながら、それこそ前述したフジロックもゴミが多かったと聞く(これに関しては大雨の影響も大きいとは思うが)。
そんな悪いイメージを放つ事態がSNSで拡散されれば、友人の認識が「夏フェス=ゴミが多い」となるのも無理はない。夏フェスの全ての良さを帳消しにし、一瞬にして暗雲立ち込めるネガティブなイメージにしてしまうもの……。それがゴミ問題なのだ。
……そんな悲しきゴミ問題だが、日本には数日間通してゴミがほとんどない夏フェスも存在する。 そのフェスの名は京都大作戦。ロックバンド・10-FEETが主催し、1日あたり約6000円という破格の価格設定で行われる大型フェスである。
京都大作戦はその界隈では「日本一クリーンなフェス」とも称されるほど、会場内に落ちているゴミが全体的に少ないフェスとして知られている。
しかしながらその理由は飲食店が少なかったり、目に見える範囲に大量のゴミ箱が置かれているというわけではない。ステージ間の移動中。サウンドチェック中。飲食物を購入する間……。なんとその時々で集まった来場者が皆、自主的にゴミを拾っているのだ。
一見すると「10-FEETはどれだけ大仰なことをしたんだ」とも思うだろうが、10-FEET側が取った行動は「ゴミは拾ってほしい」と呼び掛けたことのみ。このたったひとつの願いが来場者の意識に刷り込まれた結果、日本中どこにも成し得なかった『ゴミを来場者が拾い合う』という理想が現実のものとなったわけだ。
もちろん10-FEETに対する来場者の思いの強さも大きいとは思う。男気溢れる人間性はもとより、初年度が台風で中止になったこと、かつて最小のステージで演奏していたバンドがメインステージに立ったこと、Hi-STANDARDの横山健と難波章浩が『STAY GOLD』を披露し、10-FEETのTAKUMAが涙を流したこと……。
僕はかつて、米津玄師が発することは何でも受け入れる盲目な信者(ファン)たちに対して『米津玄師は宗教だ』という記事を執筆したことがある。しかし10-FEETに対するファンの思いは、そうした類いとは全く違うように感じる。おそらく京都大作戦に集うファンたちは無意識的に、その時々における男臭い興奮と感動でもって、10-FEETへの信頼に繋げているのだろう。
その信頼が「観客同士がゴミを拾う」という最高の形で還元されていく様は純粋に素晴らしいと感じるし、これこそがフェスの在るべき姿だとも感じてしまう。
……長々と語ってきたがとどのつまり、散々問題視されているフェスのゴミ問題は、観客の意識の変化だけで解決するのだ。
もちろん最初は難しいだろう。実際フェス会場に設置されているゴミ箱は少ないし、それを知っている観客側も「ゴミ捨てるのめんどくせーから、適当に落としときゃ誰か片付けるだろ」という意識はそう簡単に変わるものではない。意識が簡単に変わるとするならば「選挙行け」と言われれば選挙に行くし、「モラルを守れ」と言われればハロウィン後の渋谷はピカピカのはず。それが出来ないから問題が起こるのだ。
しかし、意識は徐々に変えることが出来るはずだ。
ひとりひとりの意識が変われば、絶対にゴミ問題は解決する。まずは次のフェスでゴミを捨てないように。その次はゴミを見付けたら拾うように……。その次は友人にも呼び掛ける……。そうしたひとりひとりの意識の変化が大切になってくる。
思いは伝播する。最初は『意識的なゴミ拾い』だったものが『無意識的なゴミ拾い』に変わった瞬間、夏フェスのゴミ問題はなくなる。
まずは今月から開催される各地の夏フェスで、一丁行動を起こしてみようではないか。目指すは誰もが快適に過ごせるクリーンなフェス。それを形作るのは紛れもない、参加するあなたたちなのである。