こんばんは、キタガワです。
Weezerというバンドがいる。彼らは結成から25年以上に渡って海外ロックシーンを牽引してきた、知る人ぞ知るポップ・ロックバンドである。
中でもかつて『泣き虫ロック』と謳われた楽曲のクオリティは凄まじい。そのキャッチーさから誰にとっても耳馴染みの良いサウンドを確立。
彼らの影響は国内のみならず、遠く離れた日本でもリスペクトする声は多い。著名なアーティストではASIAN KUNG-FU GENERATIONのGotchらがファンを公言しているが、所謂『隠れウィーザーファン』はかなり多いと推測する。
さて、ウィーザーの紹介はこれくらいにしておこう。ここからが本題だ。
僕が今回取り上げたいのは、ウィーザーのアルバムについてだ。タイトルにも書いたが、ウィーザーのアルバムには『Weezer』と冠されたものがかなり多い。その数、なんと6枚。
そう。今までにリリースした12枚のフルアルバムのうち、実に半分が『Weezer』というタイトルなのである。
やっていることは日清食品のラーメンに全て『カップヌードル』と名付けたり、三代目 J Soul BrothersやEXILE TRIBEを『エグザイルグループです』とまとめるのとほぼ同じ。
かつてボーカルを務めるリヴァース・クオモは「特に完成度が高いと思ったアルバムは、全部タイトルをウィーザーにしてるんだ」と語っていた。おそらく彼にとってバンド名でもある『Weezer』という名前には、強い思い入れがあるのだろう。
しかしファンからすれば、これほど同じタイトルのアルバムばかりリリースされる現状は面白くてしょうがない。もしこれらが『Weezer○○』だったらまだ分かるが、全部同じなので区別も難しい。
例えばウォークマンに入れる際は『同じタイトルのものは全部一緒になる』という性質があるため、必然的にごちゃごちゃになるし、人に「ウィーザーのウィーザーっていうアルバムお勧めだよ!」と語ったところで「お前が言ってるのは6枚あるうちのどれよ?」となる。
そこで今回は僕らを翻弄し続ける、ウィーザーの6つのアルバムの特色について記述していきたい。この記事でもって、少しでもウィーザーについて興味を持ってもらえれば幸いである。
ちなみに以下の紹介では、ファンの間では常識とされている『アルバムごとの色で区別する方法』を取り入れて進行していく次第だ。
Weezer(ブルーアルバム)
1994年発売。ウィーザーの歴史はここから始まった。300万枚を売り上げ、ウィーザー史上最も認知されているアルバムと言える。
ライブでは必ず観客が先行して歌う『Buddy Holly』や、バラードにも関わらずYouTube上で8000万回以上の再生数を記録した『Say It Ain't SO』、終始気だるげなムードで進行する『Undone-The Sweater Song』など、ライブアンセムの宝庫。
ジャケット写真を見るとわかる通り、当時のメンバーはかなり若い印象。「ファーストアルバムは初期衝動が一番詰まっているアルバムである」と誰かが発していたが、その言葉を体現するかのようにこのアルバムでは総じて『粗削りな若手ロックバンド』という感覚が否めない。
しかしながらリスナーや音楽関係者に「まだまだ行けるぞ、ウィーザー!」と思わせるほどの魅力が、このアルバムにはある。
Weezer(グリーンアルバム)
2001年発売。視力が悪くなったリヴァース、ここから眼鏡をかけ始める。
ブルーアルバム時代以上にポップロック色が強くなり、より口ずさみやすく盛り上がる作りに。ちなみに個人的には1曲目『Don't Let Go』を聴いた瞬間にガッツリハマってしまい、結果的に6枚の中でも突出して好きなアルバム。
最近のライブでは1曲目に『Hash Pipe』、中盤~後半にかけて『Photograph』『Island In The Sun』を演奏するほど、グリーンアルバムからの楽曲は圧倒的に多い。そこから察するに、グリーンアルバムはウィーザー内でも代表的1枚のようである。
特に『Island In The Sun』のギター1本での弾き語りパフォーマンスは有名で、リヴァースのギターに合わせて観客が大合唱し、合いの手を入れる光景はもはやおなじみ。
しかしブルーアルバムとグリーンアルバムがウケすぎたため、次なるレッドアルバムは駄作の烙印を押されてしまったのは悲しい運命か。今でも「ウィーザーはブルーとグリーンが一番好き!」というファンは多い。完成度が高すぎるあまり他の作品にも影響が出てしまった、罪深い作品でもあると言えよう。
Weezer(レッドアルバム)
2008年発売。今までウィーザーが培ってきたロックテイストを大きく変え、スローバラードやループ進行、打ち込みを多用した実験的なアルバムとなった。
アルバムリリース前にはリヴァースが日本人女性と結婚し、待望の第1子を授かっている。はっきりと明言されてはいないものの、愛する家族について歌ったと見られるフレーズも散見される。方向性をガラリと変えた理由のひとつはリヴァースの結婚なのはほぼ間違いないだろう。
当然ながらこのレッドアルバムはファンの間でも賛否両論となった。しかし当初は人気がなかったリード曲『Pork And Beans』は何度も演奏されるうちにどんどん変貌し、今ではライブに欠かせないアンセムとなっているため、別段アルバム自体が悪いわけではないのだ。
ちなみに日本版では、ボーナストラックとしてBoAの『メリクリ』が日本語バージョンで収められている。「ホラ、ユーキーダーヨー♪」と覚えたての日本語で歌うリヴァース、可愛い。
Weezer(ホワイトアルバム)
2016年発売。「初期の頃のウィーザーが帰ってきた!」とファンが大喜びするようなポップロックサウンドは幅広く受け入れられ、グラミー賞にもノミネートされたほど。
音楽性としては『グリーンアルバム』に近く、歌って踊れるロックテイストに回帰した印象。中でもリード曲である『California Kids』の破壊力は抜群で、多くのウィーザー・ファンに支持された。音楽評論家からのイメージもすこぶる良く、海外音楽誌では称賛の声が寄せられた。
個人的にはウィーザーの中では最も聴いたアルバムで、その回数はグリーンアルバム以上。やはり昔の彼らも低迷している彼らも知っている身としては、どうしても「おめでとうウィーザー!」という気持ちになってしまうのだ。なもんで、今までの悪評を帳消しにするかの如く聴きまくっていた。
その後に発売されたアルバム『Pacific Daydream』は再びスローなアルバムとなったけれども、内なるロックテイストは失っていなかった。そんなロックロックしたウィーザーを聴いていると、「やっぱりウィーザーはこうじゃないと!」と思う。
Weezer(ティールアルバム)
2019年発売。今年は同じ月に2枚ものアルバムをリリースするという記念すべき年となったわけだが、その中のひとつがこのティールアルバムだ。内容は何と全編カバー曲。
A-HAやマイケル・ジャクソンなど、有名曲を多数カバーしたこのアルバムは一見するとイロモノ感満載なのだが、聴くとしっかりウィーザー。しかもカバーとしても高いレベルで完成されているから驚き。
一体何が彼らをカバーに駆り立てたのかは不明だが、今までのイメージを変える変化球としては非常に面白い。おそらくライブで丸々演奏することはないだろうが、ここまで良質なカバーを出されると、ぜひ「ライブでも聴きたいな」という気持ちになるのはファン心理か。特にA-HAの『Take On Me』。
だがひとつ気になるのは「何で青緑色なの?」ということ、これが単にカバーだからなのか、はたまた全く違う理由なのか……?こちらも真偽は不明である。
Weezer - Take On Me (Official Video)
Weezer(ブラックアルバム)
2019年発売。度重なる発売延期を繰り返し、ようやく発売された最新アルバムがこれ。
真っ黒に染められたCDジャケットからも分かる通り、今作は今までウィーザーが表沙汰にしてこなかったどす黒い感情やネガティブな気持ちを、赤裸々にぶち撒けるアルバムとなっている。
更には全編ピアノを導入。レッドアルバム時代とは行かないまでも、今作もロックとは若干の距離を置いた作風に仕上がった。
しかしホワイトアルバムで回帰したかつてのウィーザーらしさもしっかりと残っているため、ただブラックなだけではなく新旧のファンを唸らせる出来となっている。
おそらく8月のサマソニは、このブラックアルバムを軸としたセットリストで構成されると予想される。今から聴きまくって期待値を高めたいところだ。
Weezer - High As A Kite (Official Video)
……僕が今回この記事を書いたのは、僕が無類のウィーザーファンというのもあるが、一番の理由は最新アルバム『Weezer(ブラックアルバム)』が素晴らしかったからに他ならない。
この記事を読んで少しでも興味を持った人がいるならば、ぜひアルバムを聴いてみてほしいと思う。8月にはSummer Sonicにて来日も決定している。脂の乗り切った最高の状態のウィーザーを見逃すな。