こんばんは、キタガワです。
当ブログを定期的に読んでいる読者貴君はもうご承知のことと思うが、僕は相当な音楽好きである。
毎月何十枚ものCDをレンタルするのはまだいい。加えて新譜のCDを買い漁り、YouTubeでは若手ミュージシャンを逐一チェック。音楽雑誌は2つ定期講読し、友人に語る会話の大半は音楽である。……正直自分でもどうかしていると思っている。
そのため僕は今までの人生において、様々なライブを観てきた自負がある。『ライブに行きます』という自分勝手な理由で仕事を休み、各地のライブハウスやホールイベント、フェスに参戦してきた。
しかしながら、その中で『マナー違反』と呼ばれると思う場面を目にする機会が増えてきたのが気になった。
そこで今回は『ライブの間違った行動6選』と題し、意外と知られていないライブの禁止事項について、書き進めたいと思う。
それではどうぞ。
水撒き
今も昔もライブで最も悪質な行為のひとつとして挙げられるのが、この水撒きである。
特に激しいバンドのライブ映像などで散見されるため、ライブキッズの中では『観客側が盛り上げるためにするパフォーマンス』と思っている人も少なくないのだが、完全に間違っている。
水撒きがなぜ悪質なのかと言うと、バンドの機材面の問題である。
楽器やアンプ、スピーカーは、総じて水に弱い。ギターとベースは弦が錆びる原因となり、ドラムのスネア部分に至ってはペラペラの紙で作られているため、そこに水が溜まった状態でスティックをズドンと振り下ろすと、簡単に破れてしまう。
音響設備に関しては特に脆く、水を被ると一発アウトである。『コンセントに水をぶっかけたら感電する』という話は有名だが、それがさらに大規模になったイメージ。加えてライブで用いる音響設備は非常に高価なものがほとんどで、金銭的にも多大な損害が出る。
例えば雨天決行のフェスであれば、雨水にも対応できるよう、スピーカーを覆うように防水措置が取られるため、壊れることはない。
しかし通常のライブで、予期せぬ水が飛んできたらどうだろう。もちろん何の防止策も取っていないため、水は完全に直撃するのである。
更には『犯人が特定できない』というデメリットもある。水を撒いた後はそのペットボトルをどこかに放り投げれば、物的証拠は何もなくなるからだ。加えて激しいライブの状況下においては、どこで誰が何をしたのかすら、全く分からない。
そうなると注意も出来ないため、犯人は最悪「お!俺盛り上げたったで!」といい気になり、再度同じ事件を繰り返す可能性すらあるのだ。ちなみに最も悪質なのは、水ではなく清涼飲料水をぶち撒ける客。もしこういう客を見付けたら、即座にライブスタッフへ知らせよう。最悪の場合は損害賠償である。
場所取り
荷物を置いたり長期間居座ることで、アーティストが良く見える絶好のポジションをキープする行為である。
対バン形式のライブや夏フェスでありがちで、特に有名バンド(ワンオクやUVERworld等)の1組前のバンドあたりで、このような光景が見られる。某有名フェスにおいては、明らかに場所取りが多発するであろうアーティストは必ず朝イチに出演させるといった話も聞こえるほど。
この行為の問題点はふたつ。前バンドの士気が削がれることと、ファンの民意が問われることだ。
まずひとつ目の『士気が削がれる』点について。2018年度のサマソニにおいては、ワンオクの前に出演していたアーティストが地蔵状態の観客にぶち切れ、持ち時間の大半を残して去った事件が記憶に新しい。
話を紐解いて見ると、ライブ中にも関わらずスマホを弄ったり、大声で会話をしている人が多かったらしい。ライブを行っているアーティスト側からしたら、たまったものではない。
そんなファンを観た第三者はどう思うか。間違いなく「○○のファンってさあ……」というネガティブな感情を抱くはずである。「○○のファンって、場所取りして前のバンドの曲聴いてないらしいよ」。そんなイメージがついたら、もう終わりだ。アーティストは、ファンがいなければ成り立たない。だが大好きなアーティストを殺すのもまた、ファンなのだ。
ちなみに僕は場所取り容認派である。もちろん「場所取り中も最大限楽しむ」という前提ありきだが。それが出来るのならば、別に場所取りをしてもいいのではと思うのだ。これがきっかけで、新たな音楽との出会いにも繋がればいいなと。
モッシュ
四つ打ちダンスロックバンドのライブで散見される行為。サークルやダイブ、リフトといった行為と共に、必ずセットで扱われるのがこの『モッシュ』である。
雑に説明するならば、集団が一斉にグチャっと密集することである。バンドのサビ部分で行われることが大半で、気分を高揚させるために行うとされている。ちなみに上の画像は『サークルモッシュ』と呼ばれるもので、ここから中心に向かって一斉にグチャっとなる。
モッシュ中の痴漢行為や肋骨を折る怪我が問題となり、昨今のフェスにおいては注意事項に必ず明記されているものの、基本的には黙認されている。むしろSiMやマキシマム ザ ホルモン、Hi-STANDARDといったハードロックバンドはあえて容認している場合もあり、「これがないとライブじゃねえ!」と感じるライブキッズも多数。
これについても僕は容認派である。というのも、このモッシュの大きな問題点は『怪我の危険がある』というものなので、「最低限のマナーを守りつつのモッシュならばOKでは?」という思いだ。
僕がこういった認識なのは、かつてマキシマム ザ ホルモンのライブに行ったことが大きいかもしれない。靴紐も結ぶ人がいれば、その周囲に輪を作り怪我をさせないようにし、モッシュの際に落とし物があれば大声で知らせる……。当時のホルモンのライブには、そんな光景があったのだ。
僕は思う。こんな『モッシュ』なら、ロックバンドの恒例行事として認めてもいいのではないかと(もちろん怪我させるのは絶対なしで)。
ダイブ
他者の肩車の協力でもって、人の頭上を転がるようにして前方に進むこと。こちらも国内のフェスの大半が『禁止行為』と定めている。
モッシュよりダイブの方が何倍も悪質とされており、今でも各地の夏フェスにおいて、ダイブを敢行した観客がペナルティとしてリストバンドを切断(完全追放)されたり、会場から連行され入場待機列に戻された話も聞く。
実際この『ダイブ』という行為は一般人が思う以上にメジャー化しており、激しいバンドの中心~前方部分では当たり前のようにバンバン行われている。
この行為の問題点は怪我。人の上を進むため、必然的に足が下になる。すると人の顔や頭に直撃すること必至で、体格的に小さい女性は特に大きな被害を被りやすい。海外の事例では、当たり所が悪くその結果人が亡くなった例もあるほどだ。
ダイブについてはもうひとつ問題点がある。それは『正しいダイブ方法がどこにも載っていない』こと。通常ダイブは、足の位置や転がる体勢をしっかり考えた上で行えば、ほとんど怪我の危険性はないとされる。しかし各々が我流でダイブを行う現在のロックシーンにおいては、どうやっても怪我が多発してしまうのだ。
余談だが、僕自身もダイブに巻き込まれたことがある。とあるライブにおいて体重が50キロを切る僕に対し、100キロ近い巨漢の男が肩をポンポン(今から乗りますよ、の合図)された。興奮するのは分かるが、しっかり体型を確認してほしい。もちろん結果は大失敗で、ライブハウスの床に顔面をしこたま打ち付けた次第である。
そのライブでは終演後、某バンドが「おー!怪我人おらへんなあ。最高や!これからもダイブしよな!」と笑っていたが、僕は血まみれになった口を押さえながら、「おい馬鹿、ここにおるぞ怪我人」と思った。
……ダイブは間違いなく危険である。やる人は完全自己責任で。
撮影・録音
「そりゃダメだろ!」と思った人は多いだろうが、それは国内フェスの話。実は海外では『撮影・録音OK』とされており、全面的に禁止しているのは様々な国の中で日本くらいである。
ライブハウスでは『アーティストの顔は撮るな』という明確な区別がされている。逆に言えば演奏が始まる前のステージ風景や、ライブ終了後の撮影は黙認されている場合がほとんど。
逆に、夏フェスではステージを撮影すること自体を禁止していることが多い。しかも夏フェスは監視員がそこらで目を光らせているため、肩を叩かれるや否や「今この場で、さっき撮ったの消してください」と言われることがある。その注意を無視して撮影を続けたり、写真を消さなかった場合は最悪退場処分とのこと。
ちなみに『SUMMER SONIC』と『FUJI ROCK FESTIVAL』に関しては、撮影は黙認される傾向にある。おそらく出演者も観客も、海外国籍の人が多いことの配慮なのだろう。実際参加すると、本当に全員が写真を撮っているのだから驚きである。
YouTubeで『FUJI ROCK』や『SUMMER SONIC』と検索すると、大量のアーティスト動画が出てくる理由はそれである。僕は実際に参加した身だが、最前列でパシャパシャ撮っている人の真正面に係員がいても、一切注意しないのだから笑ってしまう。
撮影、録画は『国内はNG』。『サマソニとフジロックはグレー』。『海外はOK』。このルールを押さえておこう。
出待ち
これに関してはライブ終了後の話で、ライブの出待ち。いわゆる会場から出てくるアーティストを待ち伏せてサインや握手をねだる手法である。
これに関しては、ライブハウス界隈の大きなトラブルの元として挙げられている。というのも、ライブハウスは『○時まではにぎやかにしてもいいよ』という取り決めの元で経営している場所なのである。
出演しているバンドが持ち時間をピッタリ守るのはこのため。たまにアンコール後にファンが「もっと曲やって!」とダブルアンコールを要求するも、それを拒否して強制終了することがあるが、これはライブハウスの都合を考えての行為なのだ。
そんな中で出待ちをされるとどうなるか。もちろん大迷惑である。遠目でしか見えなかったアーティストが目の前にいる!しかも喋ってる!サイン貰った!キャーキャーワイワイキャーキャーワイワイ。ファンは喜びに満ち溢れているだろうが、ライブハウスの店長は内心ぶちギレているはずである。
ライブハウスの印象というのは、世間体にはまだまだ低い。夜まで爆音を鳴らし、マナーの問題やゴミの不法投棄と、いろいろと風当たりが強いはずだ。そんな中、取り決めを破ってワーワーされたら、居心地が悪くなるのは明白だ。
実際問題、ライブハウスが廃業に追い込まれる理由の大きな部分はこの『客のマナー』なわけで。これを守らないことは結果的に、ライブキッズたちの居場所を自分から破壊しているのと同義なのだ。
なので出待ち、やめましょう。時間的なことで言うならば、真っ昼間に開催されるサーキットイベントだと安全圏なので、どうしても出待ちをしたければそのときくらいか。
さて、いかがだっただろうか。ライブの間違った行動の数々。
文章中でも述べているが、僕は全てに対して反対ではない。むしろモッシュなどはロックの高揚感を爆発させる最適な手段だと思っているし、むしろ「やっても良いんじゃない?」とも感じてしまうというのが本心だ。
しかしながら、今の日本社会は『何かが起きたら終わり』なのだ。バカッターが出たら『おでんを盗み食いするのは禁止とする』という文言を規約に加える必要があるし、パワハラが公表されたら辞めるしかない。異物が混入していたら全商品を撤去する……。そんな意味不明な行為を行わない人が大多数なのは良く分かっている。しかし悲しいかな、今の世の中はこうなのだ。
もしダイブで死人が出たら?もし米津玄師の動画を撮影して、彼のライブの様子がネットに出回ったら?もし水撒きで、100万円の機材が使えなくなったら?そんな様々な『最悪の可能性』を予防する方法が、今回の禁止項目なのである。
コンビニの年齢確認ボタンと同じだ。もし未成年がタバコを買ったとして、従業員が「私、この画面タッチしてって言いましたよ」となれば、そのコンビニに非はなくなる。
……繰り返すが、『僕らは責任を負わないよ』とする手段が今回紹介したルールなのだ。よって「最低限の安全を守れれば良いんじゃない?」というのが僕の意見である。ただし、何か起きたら全部自己責任。これだけは忘れないでほしい。
ルールを考えて、最高の音楽ライフを。