キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ライブハウスとコロナ5類

こんばんは、キタガワです。

去る5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けは、季節性インフルエンザと同じ5類に移行となった。……コロナが蔓延し始めてから約3年経ってようやく、今後は海外と同様に制限がほぼ撤廃された生活に突入していくことになる。

そんな中で音楽好きとして考えてしまうのは、長年苦境を強いられてきたライブシーンのこと。言わずもがな、日常的な制限がなくなることイコール、ライブ上の規制もなくなる訳だが、「そこに元々あった問題はどうなるのか?」という疑問は無視出来ないようにも思う。

ここからは、これまでのライブハウスにあった問題について記していこう。まずひとつは、その環境的要因である。身も蓋もない話をしてしまえば、ライブハウスは他の娯楽施設と比べてもクリーンな場所とは言えない場所で、地下室の立地的な意味も、タバコや汗のイメージも当然の如くある。またコロナ禍ではいわゆる『三密』と呼ばれる3要因をライブハウスが解決できなかったことも課題となって、風当たりが悪いまま時が過ぎていった印象が強い。

そしてもうひとつ、個人的にはここが最も重要だと思っていて、それはダイブ&モッシュ、クラウドサーフといった『危険行為』についての問題。特に激し目のバンドに多いこれらの行為は今では再び問題視される傾向にあり、コロナ禍でのライブが安全だったことも踏まえると、是非とも折衷案を模索したい部分ではある。当然これに関しては『興奮の実体化』のような面もあるので、演者視点からすると良い動きなのだろうが……。ただ元々こうした激しい動きが苦手な人もいるので、その住み分けもしっかり整えたライブが理想なのは変わらない。「モッシュ解禁だー!やらねえやつはモグリだぜ!」ではなくて、どちらの考えも尊重できるような、一歩引いた目線でのモラルを持って楽しめることを期待したいところだ。

ここまでいろいろと綴ってきたけれど、ライブハウスへのこわごわとした気持ちは、今や足しげくライブに通っているキッズも通ってきた道。それが何度も参戦するうちに平気になり、楽しさを共有できる場になる。そのため今後は初心者にも目を向けつつ、それこそ盛り上がりたい人は前でグッチャグチャになって、ゆったり観たい人は壁側で……といった住み分けがもっと明確になれば、新たな層の獲得にもなるのかなあと。人それぞれの価値観を、お互いに理解し合えるライブハウスになればWin-Winである。

最後に、やはり気がかりなのはライブシーンそのものの話。言わずもがな、コロナ禍でライブは減少。それに伴い様々な痛手をライブハウスは被ったが、最も辛いのは『一度お客さんが離れてしまったこと』にある。例えばダイエットを1日止めてしまえば二度とやらなくなるように、ライブに行かなくなる期間が長くなれば必然、生活の優先順位としては下位に追いやられる存在になるからだ。「行きたいけど、まあ金もかかるしどっちでもいっか……」が3年続いた今だからこそ、ライブの素晴らしさを知ってもらわねばならない。

コロナ禍の真っ只中において『ライブは人生に必要不可欠ではない』、そう結論付けられた。あの頃はそうした言葉を聞く度に憤慨したものだが、金も時間もなくなむた今となっては、やっぱりライブは結局は『娯楽』であり、生活に余裕があってこその楽しみだと今は思う。しかしながら、そんな中でも音楽を必要とする人はいる。この5月からのライブハウス完全復活の狼煙も、それを望んだ人が多数いたから実現したものだし。金や時間の問題はあるにしろ、頭ごなしにこうした『娯楽』を全否定することは、最も良くないことなのではないか……。ライブハウスが戻りつつある世界の中で、つらつらとそんな思いを巡らせる日々である。

空音 / Hug feat. kojikoji (Album ver.) -Official Music Video- - YouTube