キタガワのブログ

島根県在住。音楽、映画、雑記等。目標はライター。

「オススメありますか?」

こんばんは、キタガワです。


初めて入った居酒屋等で「オススメありますか?」と言う客を見掛ける場面がある。メニューには大量の品々が並んでおり、何を頼んで良いのか皆目わからない……。そんな状況を打破する魔法の言葉こそが、この「オススメありますか?」なのである。


そこからの展開たるや至ってシンプルで、颯爽と駆け付けた店員と交わすトークを全て鵜呑みにし、何を頼んだかも覚えていない謎の品(だいたい肉系)をバクバク食べて満足感に浸る。店員に対する絶対的な信頼感がなければ成し得ない行動だろうと思う。


さて、ここからは個人的な話。僕はこの「オススメありますか?」という言葉は、基本的に使わないように心掛けている。


理由はひとつ。ズバリ、店が勧める商品は決してオススメではないからである。断言するが『オススメの品』というのは、何らかの店側の都合によってそうなる事がほとんどだ。


例えば間違って仕入れすぎてしまって賞味期限が近いとか、旬を過ぎてしまって商品価値が下がり、注文自体が減少しているとか。オススメは決して『店で一番人気の美味しい品』というわけではない。……上記のような都合により、販売数を増やさざるを得ないもの。それを店では『オススメ』と呼ぶ。


例えばテレビショッピングを観ると、今や当たり前のようにスマートフォンの格安販売が行われている。だが誰もその裏側を知ろうとはしない。元々携帯販売会社に務めていた僕みたいな同業者から見れば、その『嘘』は何よりも鮮明に、光輝いて見えるものだ。


「景色にピントを合わせると情報を瞬時に調べてくれるんです!」というオススメポイントは、実は5つものサイトに会員登録し、日々嵐のように通知されるメールに耐えなければ使えない。「少し触っただけで反応します!」という部分は、FGOをプレイした際に誤タッチが頻発して何度も負けたと、友人が発狂していた。「このカメラで撮ると今までのスマホの数倍美しいです!」という点に関しては、iPhoneの方がその数倍綺麗だった。


かくいう僕も営業職に携わっていた時代に、同様の売り文句で商品を売り付けた事がある。クレジットカードの獲得数がピンチになれば「オススメですよ!」と年会費1万円のカードを勧め、『店内一番人気!』と書かれたPOPは、実は最も売れ行きが悪く、在庫を全て売り切らなければ本部からお達しが来るという恐怖に駆られてのものだった。


……長々と語ってきたが、要はそういう事である。『オススメ』というのは、いわば相手にメリットしか伝えていないのと同義で、その裏に潜むデメリットにおいては何ら言及されない。それはさながら詐欺に近い所業ではないかとさえと思っている。


……しかしながら注文が全く決まらなかったり、酒に酔い潰れて「口に入れば何でも一緒だ」と感じる事は往々にしてある。そのため「絶対にオススメを聞きなくない」と意固地になったところで、困ってしまう場面もあるのが現実だ。


そこで僕は毎回、居酒屋の席において使う言葉がある。それは「あなたのオススメは?」というもの。


この魔法の言葉で重要なのは「あなたの」と限定している部分にある。この素晴らしき指定表現により、店員は必然的に店側のオススメを言えなくなるのだ。ここで店員が「えっと……鳥鍋セットで……」などと言おうものなら、「あなたは毎回居酒屋で鳥鍋セットを頼むの?」と横槍を入れる絶好の隙を生み出してしまうため、店側のオススメは完全にシャットアウトできる。


加えてこの質問により、間接的に店員が店で毎回何を頼むかを把握することも可能なのだ。大学生風の店員なら、最近の若者の居酒屋事情を知ることにも繋がるし、歳を重ねてベテランの雰囲気を醸し出している店員なら、今までの人生において食べてきた数多のメニューから、一番オススメできる品をこっそり聞き出すことができるのだ!……自分で書いていて何だが、僕は面倒臭い客である。


「オススメありますか?」はもう古い。今ではインターネットでも実生活でも、本音と建前を使い分ける時代。だからこそこれからの時代は、「あなたのオススメは?」と問う時代に突入していくだろう。そこにあるのは店側の都合を完全無視した、完璧なるオーダーである。


今回の記事を読んでいる諸君も、居酒屋に行く機会があればぜひ「あなたのオススメは?」と低音ボイスで聞いてみてはいかがだろうか。


ちなみにこの言葉には強いて挙げるとすればひとつだけ欠点があって、それは8割の確率で「なんこつの唐揚げ」と言われる点である。なので「あなたのオススメは?」と聞くとほぼ確実になんこつの唐揚げが出てきます。おい。