こんばんは、キタガワです。
『個人的音楽アルバムランキング2018』、続いては10位~6位の発表です。
それではどうぞ。
10位
超能力戦士ドリアンの1004円のCD/超能力戦士ドリアン
2018年7月4日発売
今の音楽シーンにおいて、面白い歌詞や社会風刺に焦点を当てたバンドは数知れずいる。売れているバンドで言えば、例えばヤバイTシャツ屋さんやキュウソネコカミなど。「ヤンキーこわい」や「かわE超えてかわFやんけ」など、CDを聴いているだけでもクスリと笑える歌詞。加えてライブパフォーマンスも秀逸。総じてそういった括りのバンドの中では、今最も秀でている存在だと思う。
「次世代のコミカル系バンドは誰?」と問われれば、僕はこのバンドを推したい。名前は超能力戦士ドリアンという。
このCDを聴けば、言わんとすることはわかるはず。ドラム不在のドラムソロ、そして各々の好きな食べ物を紹介する中、誰ひとりとして「ドリアン」と言わないなんでだよ的な自己紹介曲『いきものがかりと同じ編成』あり。WANIMAとキュウソネコカミの超絶パロディー『3人組のうた』『ヤマサキセイヤと同じ性別』あり。餃子の王将のセットに謎のスープが付いてくることを歌にした『チャーハンパラパラパラダイス』あり……。笑いと美メロをごちゃ混ぜにした曲の宝庫だ。
ありそうでなかった独自の視点で世間を見つめる、超能力戦士ドリアン。彼らの故郷である関西では次第に注目されつつあるが、全国的にはまだまだ知名度は低い。なのでこのアルバムから彼らを知ってほしい。アルバム自体も1004円と激安なのでぜひ。
9位
一大事/ポルカドットスティングレイ
2018年5月9日発売
昨年は初のフルアルバム発売とのことで、その完成度の高さから、2017年度のアルバムランキングでも上位に食い込んだポルカ。今年は去年の勢いそのままに、ライブは全てソールドアウトにしながら猛然と走り続けていたわけだが、問題はアルバム。
今年はどうかと首を長くして待っていたわけだが、さすがはポルカ。高く上がったハードルを軽々飛び越える様は、まさに一大事。お見それしました。
前回『こいつらは何でもできる』と書いた覚えがあるのだが、今回のアルバムでもそれは健在。ロックからポップス、バラード、ネタ曲まで。豊富なラインナップながら、引き出しはまだまだあるようで安心した。
『パンドラボックス』と『ICHIDAIJI』では、一度聴いたらリピート必至の必殺ギターリフが炸裂。『少女のつづき』『リスミー』はボーカル雫の変幻自在の歌声に引き付けられる。そしてラストはツイッター上でファンに単語を募集し、その集まった単語をズラリと敷き詰めて歌詞にしたネタ曲『半泣き黒猫団のテーマ』でシメ。
首謀者である雫は、一貫して音楽活動をビジネスとして捉え、そこに自分の意思は介入させまいとしている。ファンの求める曲をファンの求める形で提供する。それだけに全霊をかけて臨んでいる。それはツイッターにて「どんな曲が聴きたい?」とアンケートを取り、その意見を反映して曲を作ったりするほど。どこまでもファン目線でビジネス思考。
来年は早くもアルバムの発売が決定している。ポルカブームはまだまだ続きそうだ。
8位
H.O.T/Nulbarich
2018年3月7日発売
2016年にSuchmosが脚光を浴びてからというもの、汗をかいて踊れる四つ打ちダンスロックが主流となっていた日本のロックシーンが、少し変わった気がする。
要するに今まで人気が出ないとされていた、いわゆる『ゆったり踊れるロック』にも、音楽シーン全体が注目するようになったわけだ。Yogee new wavesしかり、DATSしかり、D.A.N.しかり。各地でそういったバンドが一同に会すイベントが行われたりするようにもなった。……とにかく2016年は、日本ロックシーンにおける重大な分岐点となった年なのだ。
さて、そんな中頭角を現したのがNulbarich(ナルバリッチ)である。CDジャケットにも描かれている謎のキャラクター以外、2年経った今でもほとんどが謎に包まれている。メンバーはボーカルを務めるJQという人物しか明かされておらず、それ以外のメンバーはライブのたびに入れ替わり、人数も変動する。
いろいろと異質なこのバンドが評価された理由はひとつ。曲がいいからだ。
Nulbarich初のフルアルバム『H.O.T』を聴けば、スローながらもダンサブルなサウンドにまず驚くはず。浮遊感溢れるこの雰囲気は今までありそうでなかった。まるで海外にいるかのような独特の曲調。初めてこういった曲に触れる人は衝撃を受けること間違いなし。
今年はなんと階段をすっ飛ばして日本武道館単独公演まで実現してしまったNulbarich。そして来年には早くも2枚目のアルバムリリースも決定している。来年のも、彼らに注視する必要がありそうだ。
Nulbarich – ain't on the map yet (Official Music Video)
Nulbarich - It's Who We Are (Official Music Video) [Radio Edit]
7位
Dont Smile at Me +5/Billie Eilish
2018年12月12日発売
ワンサイズ大きい服をダボっと着こなし、履いているナイキのスニーカーには黒いマジックで「くたばれ」「笑 ビッチ」「あんたはクズ」と書かれている……。あのときはまさか彼女がここまで大きな存在になるとは思ってもみなかった。今月17歳の誕生日を迎えたビリー・アイリッシュが放つ大きな一手。それがこのアルバムだ。
以前ブログでも紹介したのだが、彼女の楽曲はとにかくスローテンポである。最大のヒットソングである『bellyache』がまだ速い方だと感じるほどで、全体を通して見るとやけに遅い。流行を逆手にとったような手法ではあるが、これが歌の魅力を引き立てている要因であるとも思うのだ。
ピアノ、シンセドラム、ボーカル。曲を構成しているのは、主にこの3つ。音数をギリギリまで削ぎ落とした結果生まれるのは、歌声の強調だ。こんな極端なやり方で勝負するのは、ビリー・アイリッシュくらいではなかろうか。
僕は今年最前列で彼女のライブを観たのだが、とにかく自由奔放だった。パジャマと見まがう格好で登場したかと思えば、途中でズボンの紐をおもむろに抜いて放り投げたり、客席にあっかんべーしたり、足をだらんと伸ばしたり。そしてそんな行動とは裏腹に、彼女は終始、感情を無くしたようにほぼ真顔で客席を睨み付けていた。
当時のライブを思い出すと、このアルバム全体が彼女の生き写しのようにも見えてくるのである。さて、このアルバムにも収録されていて、ライブでも披露された1億回再生された動画ふたつを、下に貼り付けておく。まずはこれを見てほしい。話はそれからだ。
Billie Eilish - lovely (with Khalid)
6位
Politics Of Living/Kodaline
2018年10月3日発売
コーダラインの魅力は、その卓越したメロディーセンスだと勝手に思っている。奥行きのあるサウンドが鼓膜を刺激し、心震わせる。これほどメロウな音楽を奏でられるバンドは、世の中にどれだけいるだろうか。加えて自然に体を動かしたくなる衝動に駆られてしまうのはコーダラインならでは。
過去作に続いて今作においてもそれは健在で、美しいピアノの音色とコーラスを何重にも張り巡らせた楽曲が、涙腺を緩ませる。3枚目のアルバムにして、ひとつの到達点なのではないだろうか。
このアルバムで歌われるのは、ただひたすらに物悲しい人生における一筋の光明だ。収録曲の中では『Brother』が特にそう。タイトルだけ見ると兄との楽しい日々が描かれているように感じるだろう。しかし曲を聴き進めるにつれ、死別した兄の幻想を追い求める弟の苦悩と、深い悲しみが描かれていることがわかる。比較的明るい他の曲においても、必ずといっていいほど悲壮感漂う雰囲気がある。下に挙げたPVを凝視すれば、自然と感情移入してしまうことだろう。
2019年の4月には、待望の来日公演も決定している。
それまではこのアルバムをじっくり聴き込むことで堪え忍ぼう。
Kodaline - Brother (Official Video)
Kodaline - Follow Your Fire (Official Video)
さて、いかがだっただろうか。次回はついに最終回、6位~1位の発表です。果たしてCDにバカほど金を注ぎ込んだキタガワが選ぶ、2018年一番勧めたいアルバムとは……。