こんばんは、キタガワです。
いつの間にか酒を飲むことがライフワークのひとつと化している。元々酒好きではあったのだが、最近は特に拍車がかかっているような気がしないでもない。
酒自体も強いものに変え、本数も増え……。現在ではアルコール度数9%の酒を2本飲まないと落ち着かないレベルに達してきた。
普段はスーパーで購入しており、毎回「年齢確認お願いします」と免許証の提示を求めてくるおばちゃんがいるのだが、ついに先日「あ、いいですよー」とスルーされてしまった。あのおばちゃんの牙城を崩したのだ。僕は相当数の酒を買っていることになる。
さて、そんな僕だが、絶対にやらないと決めていることがひとつある。それは『昼に酒を飲むこと』だ。
昼に酒を飲むと、いろいろとマズい。世間体や金銭面の問題もあるが、一番は『アル中まっしぐら』という点だろう。昼も夜も飲んでいると常に酩酊状態になってしまう。こうなると駄目だ。日中眠くなるし、シラフになっていること自体にストレスを感じるようになる。
だからこそ酒を飲み始めた20歳から4年間もの間、『酒は夜だけ飲む』と決め、自分を戒めていた。
そんな長い戒めが解かれた日が、今日であった。厳重に封印していた僕の中のアルコール悪魔が、ついに顔を出したのである。
今日は広島に暮らす友人が島根に遊びに来る予定だった。彼は大学時代の友人であり、僕が一人暮らしをしていた頃は『家にいない方が珍しい』ような存在であった。
僕が地元に戻ったことで、必然的に彼とは疎遠になった。お互い仕事が忙しく、僕が広島に行っても会えなかったり、逆に彼が暇なときに僕が仕事だったりして、卒業後はほとんど会えなかった。
広島と島根との関係で避けられないのは、距離の問題。どう足掻いても片道3時間はかかるし、金銭的にも安くはない。
なもんで、なかなか会えない日々が続き、最近ではたまに電話をする程度の関係になった。
さて、そんな中での今日である。突然彼から「島根に行く」との連絡があったのだ。目的は『僕に会うため』。たったそれだけのために、貴重な休みを使ってくれるとのことだった。しかも日帰り。
僕は心からの感謝と共に、『これは最高の日にしなければならない』と思った。あと何回会えるかもわからない。限られた時間ではあるが、目一杯楽しもうと。
10時。待ち合わせ場所に現れた彼は、大学時代と変わっていなかった。服装も、髭を剃らない癖も、全てそのままの状態で1年が経っていた。
まずは彼の要望を聞いてみる。「どこいく?」、「何したい?」との質問に対し、彼は「何でもいい」と答えた。
思えば彼は相当のイエスマンであった。とりあえず久々の再会を祝し、行き付けのバーに入ることにした。
当ブログでも何度も紹介している『エスパーク』という名のバーである。真っ昼間に入店したことはなかったものの、店員の方いわく「昼飲みもOK」とのことだった。
駅前で真っ昼間に酒を飲む。まるで都会の人間のようなシチュエーションに、気分が高まる。時折「俺はこんな時間に何をしているんだ」という思いにも駆られるが、考えないようにする。もう一度書くが、このときの時刻は朝の10時である。
1杯目は『スプモーニ』という酒をいただく。カンパリとグレープフルーツ、そしてトニックを割ったカクテルだ。見た目は鮮やかで、味わいもサッパリ。1杯目にしては良いチョイスをしたと思う。互いに水のように流し込んでいく。写真は撮り忘れたので、以前来て頼んだときのスプモーニを載せておく。
僕自身は日常的に酒浸りの生活もしていることもあり、酔いは軽め。対して友人は常に笑顔を浮かべていた。
2杯目は島根県ではお馴染みの日本酒『李白』。まろやかな味わいで、喉へと滑り込んでいく。しかしどれだけ飲みやすかろうが、所詮は日本酒である。アルコール度数が高いため、これをきっかけにへべれけになっていった。
ふたりで入るバーでは酒を酌み交わしながら会話をするのが定石であるが、この日のテーマは『仕事』。彼は愚痴や相談というより、仕事の内容について淡々と語るスタイルで話を進める癖があった。その大半が電話越しで一度聞いた内容ではあるのだが、繰り返して聞く。バーの雰囲気も相まって、苦にならない。
3杯目はビターオレンジ。シャンディガフやレッドアイなどと同様、ビールとジュースを半々の割合で割る酒である。初めて頼んだ酒ではあるが、名前の通りビール+オレンジで割るらしく、甘さと苦さが混合した味わいであった。
ここで、彼の顔がトロンとし出したことに気付く。
はっと思い出す。大学で4年間過ごして分かったことだが、彼は酒にめっぽう弱かった。ほろ酔い1缶で歩けなくなり、にも関わらず何杯も飲もうとするものだから、過去に何度も苦労させられた経験があった。
この時点で、僕は自身の過ちに気付いた。彼が再びバスに乗って帰るまで、残り数時間はある。これほど飲んだ状態では、歩くこともままならないだろう。
東京や大阪といった都会ならまだしも、ここは島根県。変わった行動をする人などほとんどいない、和やかな田舎町である。
千鳥足でニコニコした人間が駅を歩く……。こんなのはただの地獄絵図である。どんな目で見られるか分からない。最悪の場合、警察に連行される可能性さえあった。僕のその想像を裏付けるかのように、警察署は目と鼻の先にあった。
試しにトイレまで歩かせてみる。視点は定まらず、テーブルにぶつかり、カウンターにぶつかり。最後には倒れるように自席へ戻ってきた。嗚呼、神よ。
昨日の時点で「イオンに行こう」、「食べ歩きしよう」などと考えてはいたのだが、これを以て不可能と相成った。今日は一日、ここで過ごそうと決めた。
こんな状態になってまでも、彼の酒への探求心は留まることを知らない。続いてはスパークリングワインを頼みだした。ちなみに彼はワインが飲めない。人は酔うと味覚を失うようだ。僕はテキーラサンライズを頼む。
プライバシーの関係上、顔にはモザイクをかけてはいるが、彼の口角が1枚ごとに上がっていくのが印象的。龍が如くであれば「お客さん飲み過ぎですよ」と強制ストップをかけられるレベルである。
ここで僕は強制ストップをかけた。これ以上はヤバい。以前13杯飲ませた際、二日酔いならぬ五日酔いをしたと聞いた。明日には仕事を控えている身であるし、このあとバスに乗って帰らなければならない。やむ無し。ストップだ。
体を支えてお会計。体が鉛のように重い。肩が外れるかと思った。
外に出ると、ピッカピカの晴天だった。時刻は13時を回ろうとしていた。真っ昼間の13時にベロベロのふたりが、駅前で必死になって歩いているこの状況。どうやっても目立つ。頼む。通報だけは止めてくれ。
通りすがった子どもがこっちを見ている。「君はこういう大人にはなっちゃダメだぞ」と、テレパシーで伝える。
通りすがった高校生がこっちを見ている。カメラを向けるな。ツイッターやフェイスブックに上げるのは勘弁してくれ。
この後のことは、皆さんのご想像にお任せする。いろいろすいませんでした。あとIくん、明日仕事頑張ってください。