キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

何も持ち込まずに、初めての夜行バスで13時間揺られた話

こんばんは、キタガワです。

 

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先日、諸事情により夜行バスに乗り込む機会があった。島根県から東京まで。片道およそ13時間の長旅である。


僕が交通手段として夜行バスを選択した理由は至ってシンプルで、純粋に「交通費を節約したい」というもの。それ以上の理由は全くなかった。


地方都市から東京に出向く金銭的なデメリットは、個人的には所謂『都会』に住んでいる人間には絶対に理解できないと思っている。例えば大阪から東京に向かったり、千葉から東京に向かうのならばいざ知らず、島根県から東京に行くためには基本的に、片道2万円以上は覚悟しておかねばならない。


時間的にも旅行者を苦しめる。僕の住んでいる地域から主要空港までは、およそ2時間。もちろんド田舎なので、数時間に1本飛ぶのがせいぜいである。要するにもしも僕が島根県から飛行機を使って東京に行くとすると、必然的に負担が大きく乗し掛かる仕組みとなっている。


そこで選択肢に挙がったものこそが、夜行バスである。


夜行バスなら片道なんと1万円以下。更には僕の最寄り駅から発車するという親切設計で時間的負担も少ない。到着場所は都心のど真ん中・新宿なので、着いた瞬間に観光を楽しむことも可能だ。


しかしながらただひとつ問題なのは乗車時間だ。その時間は何と13時間。広島まで3時間。大阪まで5時間。アメリカまで10時間……。様々な移動を繰り返してきた僕でさえも、流石に躊躇する長旅である。ちなみに今回乗車したバスに関しては、島根19時半出発の東京7時半着だった。イッテQ!の海外ロケか?


当然の如く、僕は数ヵ月間悩みに悩んだ。極力安い旅行サイトを調べ、比較サイトで吟味し、夜行バス以外の方法で東京に行く方法を模索した。だが結局、月収僅か5万円の僕の金銭的事情を考慮してくれる交通手段は、最後まで見つからなかったのである。


かくして様々な要因も重なって、人生初の夜行バスの旅が幕を開けたのだった。


夜行バスで東京行きを決めてからというもの、まずは夜行バスでの東京行きを経験したことのある知人にアドバイスを募ることにした。


話を聞くと夜行バスを使ったことのある人は一定数おり、その数は予想を遥かに超えていた。中には月イチで夜行バスに乗り込んで東京に行く人もいて、そのアグレッシブさに驚愕したと同時に「じゃあ俺も行けるんじゃね?」という思いが首をもたげた。万が一最悪の旅として収束した場合でも「ブログのネタになるならいいか」と達観した気持ちでいた。


だが、そう簡単には行かないのが夜行バスである。というのも夜行バスはそもそもが『最も格安な手段』であるため、必然的にある種の弊害は覚悟しなければならないそうだ。


中でも多く挙げられたのは、やはり「走行時間が長い」という点。何かしらの暇潰しの道具であったり、アイマスクや耳栓、低反発クッションやネッグウォーマー等の持参物は必須。それらが無ければ退屈すぎて死んでしまう。もしくは翌日の体調に大きく支障をきたすとのことだった。


……さて、そうした助言を全て踏まえた上で夜行バスに乗り込んだのだが、結論から言えば、全てのアドバイスをガン無視して当日を迎えてしまった。


これは脱税問題で活動休止に追い込まれたチュートリアル徳井で言うところの「明日にしよう明日にしようと納税を先延ばしにして、想像を絶するルーズさによって3年経ってしまった」に非常に近い理由であり、これに関しては不徳の致すところである。


にも関わらず今回の夜行バスは、とても楽しく有意義な旅として完結した。今回は何の対策もしてこなかった絶望的に面倒くさがりな人間が、如何にして13時間ものドライブを耐え抜いたのか、記述していきたいと思う。


僕が車内で行ったことは、主に2つある。このたった2つの事柄が全ての明暗を分け、僕を終着点へと導いたのである。


まずひとつは、大量の酒を持ち込んだこと。


気心知れた友人たちには周知の事実だが、僕は毎日大量の酒を飲む。多いときには2リットル近く。もしも体調が悪い場合や「別に飲まなくてもいいか」と感じる場面であっても、最低でも350mlの缶3本分は飲むことを自身のルールに定めている。


よって僕個人としては『夜19時以降に手元に酒が存在しない』という状況は考えられないものであり、何がなんでも避けたかった。


そのため僕は今回夜行バスに乗り込む際、事前に大量の酒をコンビニで調達しておいたのだ。数にして4本。それでも足りない場合を見越して、ウイスキーの小瓶も購入した。


事前にインターネット上で『夜行バス 辛い』等と検索してみたところ、やはり夜行バスの中では『寝る』という行動に落ち着いてしまうらしい。なので要するに、何かしらの疲れを感じた状態で乗り込むのがベストということだ。中には『いっそのこと徹夜の状態で乗ればいいじゃん』というものもあり、心の底から納得したのを覚えている。


そう考えると、今回酒を持ち込んだのは項を奏したと言わざるを得ない。何故なら直ぐ様眠くなるから。アルコールをがぶ飲みするだけで気付けば寝ているのだから、『寝るための方法』としてはこれほど楽な作業はないだろう。


次に、スマホ内に動画をダウンロードしておいたこと。


基本的に、車内にはWi-Fiがない。だからこそYouTubeを観たりネットゲームで時間を潰すといった行動はまず不可能であり、そうなると必然的に手持ち無沙汰の状態に陥ってしまう。


それを避けるための方法のひとつが、何かしらの動画を事前にダウンロードしておくことである。僕はAmazon Primeで映画を3本、バラエティー番組を5本ほどダウンロードしておいた(というより夜行バスに乗る前から何となく入れていた)のだが、これが項を奏した形となった。


酒をあおりながら映画やバラエティー番組を観て、眠たくなったら眠る……。これはまさに『僕が普段行っている日常そのもの』であり、よくよく考えればストレスなく13時間を耐えることが出来たのも、必然と言えた。


という訳で、夜行バスに乗り込んだ際には何かしらの『普段行っていること』と、かつ『没頭出来るもの』をプレイすることで、地獄のような長旅のストレスはある程度緩和される。


最後に『夜行バスにしかない特別な事項』について紹介し、今回の記事を締め括りたいと思う。


まず夜行バスは、通常の高速バスと比較するとかなりの数の休憩が挟まれる。ちなみに僕が乗ったバスでは休憩は計4回だった。


夜になると車内の電気が消されるのも、夜行バスの特徴だ。21時を過ぎると電気は蛍光灯並みの明るさから淡い光(暖色系)に変化し、23時を過ぎれば完全な暗闇に包まれる。こうなるともう眠るしかない。というより、強制的に眠りに誘導されている感すらあるが。


なお、深夜を回ってからも何度かサービスエリアでの休憩が挟まれるものの、寝ている人を考慮して車内アナウンスは一切流れない。運転手いわく「前にちょっとだけ光が灯ったら休憩の合図」だそうで、以下の写真は深夜1時を回った、その休憩時間に撮影したものである。確かにちょっと明るい(ちなみに休憩の終了時刻は前方の掲示板にドでかく貼り出されるので、それを参考にしてもらいたい)。

 

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乗務員は2名。長丁場のドライブなので仕方ないことだが、運転していない方の乗務員はちょくちょく寝る。起きたら運転していた人と交代し、運転していた側が次に寝る、といった感じで、非常に理にかなった手法であった。


しかしよく考えれば、こうして逐一睡眠をとってくれるおかげで万全のドライブが約束されているわけで、何というか「めちゃくちゃ良い職場だな」と思ってしまった。休憩が終わるとひそひそ声で「休憩いただきました……」「はーい……じゃあ次僕休みまーす……」「いってらっしゃーい……」といった乗務員同士の会話が交わされるのも可愛い。


そして何より、自分が座る席である。夜行バスの座席は通常のバスの座席と比較すると若干後ろに傾いており、リクライニングを倒さずとも快適な『睡眠姿勢』を取ることが出来る。加えて丁度頭に位置する部分にはクッションが備え付けられているため、睡眠時の枕の役割を果たしてくれるのだ。


これだけでも至れり尽くせりなのだが、もうひとつ驚くべき箇所が存在する。実は頭の上には目隠し用のフード(パーカーのようなイメージ)があり、要はアイマスクが必要ないのだ。前述した傾斜とクッション、そしてこのフードにより、睡眠についてはほぼノンストレス。


結果、僕の場合は『酒を飲んで動画を観て眠たくなったら寝る』という最強の3コンボが発動したことにより、13時間のドライブをゆったり過ごすことが出来たのである。


無論今回の話は僕個人の話。例えばヘビースモーカーの人なら長時間バスに揺られるのは地獄だろうし、「横に人がいるなんて耐えられない!」というパーソナルスペースが狭い人間であれば絶対にストレスが溜まるはずだ。全員が全員快適な旅を過ごせるなどと言うつもりは毛頭ない。


しかしながら、夜行バスに乗る経験をするのは別段悪くないと思うのだ。実際この記事を読んでいる読者の方々も、多くの経験を経ているはず。昔はバスの料金を支払うことすら怖かったろう。運転手に両替を頼むとき、申し訳ないと感じたはずだ。だが今では何ということはない。そう。全ては経験なのだ。


だからこそ、1度試してみるのも良いのではなかろうか。今回の記事が、夜行バスに恐怖を抱く人々の一筋の光になれば幸いである。