キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ノーカット!低予算!無名!映画『カメラを止めるな!』感想(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。

 

 

f:id:psychedelicrock0825:20180820195653j:plain

いやー、ぶったまげた。当ブログでは過去何度も映画を紹介し、絶賛し続けてきた。だがこれはそのどれとも違う。間違いなく2018年台風の目的作品である。

 

 

『ネタバレなし』とタイトルに書いたが、もう何も語りたくない。これは前情報を入れれば入れるほど、実際に観た際の驚きは減る。なんならPVの予告編なんかは「絶対に観るな」と言いたいほどのレベル。

 

 

なもんで、いざ書こうと意気込んだものの、何を書いてもネタバレになってしまうので筆が進まない。本当に何も書けない。そんな映画は初めてである。

 

 

……というわけで今回は『オフィシャルのPVで得られる情報よりも少ない知識』を、タイトルにもある通り『ノーカット』、『低予算』、『無名』という3つのくくりに分けて紹介したいと思う。

 

 

まずは『ノーカット』という部分から。

 

 

この作品の肝のひとつに、カメラを一切止めないノーカット映像がある。皆さんも経験があると思う。カメラを構えながら赤い丸の動画ボタンをピッとやって、そこからファインダー越しに動画を撮影したことが。

 

 

要はそれが何十分も続くのである。そこにあるのは、圧倒的なリアルだ。息づかい、何気ない会話、空気感……。全てが逃げ出したくなるほどの現実味を帯びて、スクリーンに映し出される。

 

 

そのあとに何があるのかは、映画を観て確認してほしい。

 

 

次に『低予算』という点。

 

 

この映画、なんと制作費は300万円だそうだ。安すぎ。SAWの1作目かよ。日本の映画の平均予算は5000万円だから、『カメラを止めるな!』はおよそ16分の1の制作費ということになる。頭がおかしいのか?

 

 

聞いた話によると、例えば血のついたシャツなんかは監督が自宅で血糊をベタベタと塗り、天日干しで仕上げた代物らしいし、物語上に出てくる赤ちゃんは監督の実の息子を起用している。

 

 

徹底したDIYっぷりには恐れ入るがそれもそのはず。この映画は俳優養成所であるENBUゼミナールの作品であり、大手の制作会社が関わったりなどは一切していない。なので意図的に低予算に抑える必要があったのかなと感じる。

 

 

映像を観ていても「金かかってんな!」と思う部分は一度たりともない。だがその分、卓越したシナリオが良い意味で全てをどうでもよくさせている。

 

 

最後に『無名』という点。これは俳優や女優のことを指す。

 

 

劇中は正直、誰も見知った顔がない。天下のWikipedia様で調べても、何も出てこない人がザラにいる。日本で上映している映画の出演者は何らかの会社に所属しているのがお決まりだが、今作の出演者はフリーの人ばかり。

 

 

「無名の中でもあえてポンコツを取った」とは監督の弁だが、逆に良い味を出している。終わってみるとこのメンバーでないと駄目だったろうし、もっと言えばここまでのヒットは見込めなかったとも思う。

 

 

この映画はひとりの主演がズドンと抜きん出たり、特定の人物にばかり焦点が当てられるようには作られていない。あなたがこの映画を観たとき、「○○さん良かったなー」なんて感想はおそらく出てこない。全員が合わさって、ひとうの塊を形成している印象だ。

 

 

さて、3つの部分に焦点を当てて語ってきたわけだが、この記事を観ただけでは何のこっちゃ分からないと思う。そう見越して書いたから仕方ない話なのだけれど、本当にこれ以上書くと核心を突いてしまいそうなのだ。申し訳ない。察してほしい。

 

 

カメラを止めるな!』は監督いわく、当初は「5000人に観てもらえれば御の字だろう」と考えていたそうだ。それが7月25日の時点で、動員数は3万人に達している。このままいけば確実に、数億円規模の映画と同等かそれ以上の利益が見込めるはずである。

 

 

公開初日は東京の2つの映画館でしか上映されていなかったが、現在は全国の映画館で観られるようになっており、今後はさらに拡大していくはずだ。

 

 

僕は大阪のとある劇場で観賞したのだが、連日満席で、当日フラっと観るなんてとてもじゃないが無理だった。

 

 

要は「さっさと観るのが吉」というわけだ。気になったあなた、今すぐ映画館へGOだ。絶対に後悔はさせない。日本映画の新たな可能性を、ぜひ目に焼き付けてきてほしい。

 

 

それでは。