日本マドンナが再結成。なんとも嬉しいニュースだ。これほど心踊る再結成は本当に久々な気がする。
僕が最初に彼女たちの存在を知ったのは、某動画サイトで観た『生理』という曲だった。
望んでもいないのに周期的に発生し、世の女性たちを苦しめ続けるそれは、決して大っぴらにできる言葉ではない。少なくとも僕は女性から「私生理なんだよねー!」などといった話はされたことがないし、常に存在をひた隠しにされるべきものなのだ。
しかし彼女らは、そんな本来言えないことを、全力で歌ってのけた。
〈ああ 女はいつでも 男に散々負けてきた!!!〉
〈でも こんな 生理のある内は 負ける気がしない!!!〉
音質は悪いし、演奏もうまいとは言えない。だが、赤裸々な感情を吐き出し、どしゃめしゃな音の塊でぶん殴る姿は、僕の耳に大きなインパクトを残した。
こんな野性的な音楽を鳴らすガールズバンドは、現代にどれだけいるだろう?
他にも彼女らが高校生時代(!)に作った代表曲『幸せカップルファッキンシット』、痛烈に皮肉る『死ねと言われて安心した』など、独創的な楽曲を数多く発表したが、2013年のラストライブを持って、4年間のバンド活動に終止符を打った。はずだった。
そんな彼女たちが5年の時を経て再結成。その最初の第一歩が、新曲『社会の奴隷』のPVだった。
めでたい。めでたいのだが、正直不安だった。
バンドを解散し、一度は社会に出た彼女たち。歌詞も丸くなり、ポップな路線に変わった可能性も十分にある。そんな一抹の不安を抱えたまま、再生ボタンを押した。
〈月火水木金土働く 私は社会の奴隷だ〉
〈上から言われりゃハイハイ聞いて 会社は燃えりゃしないぜ〉
いやいや、全然変わってない。それどころか数年間の社会人経験を詰んだことで、社会に対する怒りはとんでもなく大きくなっていたようだ。歌詞はより直接的になり、鋭さを増している。恐れ入った。
先日ボーカルのあんなは、自身のブログにて「ニッコリ騙して生き延びるより中指立てて死んだほうがマシだし、不幸や苦しみは飾るもんじゃなくてエネルギーにしてやる」と語っていた。
人間誰しも、本当の自分を出せないものだ。特に会社という組織ではそれが顕著で、みな偽りの仮面を被り、媚びへつらう。『チームワーク』というのは逆に言えば、足並みを揃えられない人間は淘汰されるという意味に等しい。
だから上司の理不尽な命令にも耐えるし、つまらない仕事にも身を粉にして働く。社会の中で自分を殺して生きている人の、なんと多いことだろう!
だが日本マドンナは違う。内心では辛い、苦しいと悩んでいる人に対して「お前は悪くない!社会なんてクソ食らえ!」と背中を押してくれる。かなりひねくれてはいるが、僕は『社会の奴隷』は最大級の応援ソングだと思うのだ。
と、ここまで書いたが、じゃあ自分はどうだと振り返る。明日は朝からバイト、しかも棚卸しで残業が確定らしい。うん、立派な社会の奴隷だ。畜生め。
※この記事は2018年5月9日に音楽文に掲載されたものです。