キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

SNS社会、黒人差別、生き辛さ……。思わず考えさせられる歌詞とMV6選

こんばんは、キタガワです。

人の心に密接に関わる『音楽鑑賞』という娯楽。それは一口に音楽と言っても内容としては千差万別であり、取り分けあらゆる考えが落とし込まれているのがその歌詞だ。実際この記事を読んでくださっている方々においても、自分にグサリと刺さったフレーズはいくつか思い浮かぶことだろう。

そして今、現在音楽を語る上で重要視されているものがある。これこそ今回取り上げる『考えさせられる歌詞』で、海外では音楽の歌詞が大統領選やブラック・ライブズ・マター、貧困、ジェンダー問題などに波及。結果大きなムーブメントに発展したケースも存在する程。以下の紹介ではそんな海外シーンの他、新型コロナやSNS利用、社会的弱者への応援歌といった説得力のある多種多様な歌詞をピックアップ。少しでも何かしらを考える契機となれば幸いだ。

 

This Is America/Childish Gambino

https://www.sonymusic.co.jp/artist/childishgambino/

《これがアメリカだ 罪を犯しても捕まらない/見てくれ 俺らがどれだけ怒り狂っているかを》

今回取り上げる楽曲の中でこと海外シーンで衝撃をもたらしたのが、この“This Is America”。この楽曲に関しては是非ともMVも合わせて鑑賞してもらうことを強く勧めるけれど、端的に言えばこの楽曲では黒人に対して行われる不当な扱いについて歌われている。たとえ殺人を含めてどんなことをしても、その対象が黒人ならば大方許されてしまうというアメリカのリアル。一昨年に発生したジョージ・フロイドの殺害から波及した黒人差別撤廃運動(ブラック・ライブズ・マター)にも確実に影響を与えた、重要な1曲。

なお、楽曲内で突然殺害される人物は全て黒人である。彼はこうした不条理を何度も『This Is America(これがアメリカだ)』と言い放っている他、アメリカでは誰もが銃を所持していて銃殺行為が身近な恐怖となっていることから、このMVは炎上も含めた大規模な議論へと発展するに至った。けれどもこのMVがアメリカ国内に今一度黒人差別と向き合わせる力を携えていたのは事実。MVのラストでは《罪を犯しても捕まらない》としていたはずのガンビーノが警察から逃げ惑うシーンが描かれているが、これは『罪を犯しても捕まらない。でも黒人なら捕まる』という最大の揶揄にも感じられる。未だに大激論が交わされている問題作だ。

Childish Gambino - This Is America (Official Video) - YouTube


感染源/感覚ピエロ

http://kankakupiero.jp/

《周りが全員ウイルスに見えている でも一番犯されてしまったのは その脳内なんじゃないですか》

今となってはもう2年も前のこと。全国的に感染者数が1日あたり数十人を推移し国民に絶大な恐怖を与えていた新型コロナウイルス、その爆発的感染拡大の前触れである去る2020年3月11日に公開されたのがこのMVである。今でこそ様々な制限は解除されてはいるが、あの頃は外出制限やいわゆる自粛警察、都道府県あたりの感染者数に誰もが恐れていた。そしてコロナは制限こそ緩和されつつも、今なお収束の見通しは経っていない。

この楽曲が放つメッセージは、何も感染如何についてではない。彼らはコロナが招いてしまった疑心暗鬼、生き辛さといった心情的な思いを綴っているのだ。これは今でもそうだが、グッと自粛しようとする人と経済活動に振り切ろうとする人の溝は未だ深い。でもそれを招いてしまった根本的部分はというとメディアだったり過度な恐怖だったり、「あの人は遊んでるのに私は……」という心持ちだったりもする。だからこそ彼らは敢えてそうした悲しい思いを“感染源”と名付け、どうにか多くの人の心を和らげようと試みていたのだろうと今なら思う。

感覚ピエロ『感染源』OFFICIAL MUSIC VIDEO - YouTube


同じ空の下/高橋優

https://www.takahashiyu.com/

《一人ぼっちでも孤独とは違うよ/同じ空を見てる》

言葉を武器に心を射抜くSSW・高橋優によるシングル曲。インターネットを通して誰とも触れ合える弊害として他者比較で辛い生活に悩んだり、時には孤独感に苛まれる人が圧倒的に多くなった現代に、ある種の真意を突き付けるのが“同じ空の下”とそのMVである。

このMVで描かれるのは64歳で金なし配偶者なし、毎日煙草と酒を嗜むのみで1日が終わる、関根さんという一般人にフォーカスを当てたドキュメンタリーが描かれている。「苦しまず人知れず死ねる方法があるなら、いつ死んでもいい」と関根さんはMV内で語っているけれど、20代〜40代の我々が考える消滅願望とそれは重みが全く違う。だからこそパジャマ姿で入れ歯も入れずにフラっと過ごす彼の生活の一部始終に、グッと心惹き込まれるのかもしれない。《一人ぼっちでも孤独とは違うよ/同じ空を見てる》の一節は、まさしく「生きているだけでOK」とするこの世に生を受けた真意を体現しているようにも思える。

高橋優「同じ空の下」 - YouTube


教祖誕生/Creepy Nuts

https://creepynuts.com/

《目の前にPCがあった 匿名の意見飛び交った/リスク背負わずともデカいこと言える/この環境に腕が鳴った》

続いては、我々の生活に今は必要不可欠となったSNSに関する1曲“教祖誕生”をご紹介。……本名も明かさずに思いを気軽に発することが出来るSNS。その持て囃される愉悦に取り憑かれてしまった人物を描いたのがこの楽曲で、“教祖誕生”ではそんな悲しき道化師を宗教的に崇められる存在である『教祖』に例え、現代社会に警鐘を鳴らしている。

そして聴き進めるにつれ楽曲は次第に過激さを増していき、最終的にはフォロワー数で情弱を捻じ伏せ、広告収入を武勇伝としてドヤる姿を《鏡に映ったそのツラは あの日、俺が大嫌いだった/神様気取りのソレでした》とし、主人公が「いや、まさか……」と否定する姿で幕を閉じる。ただ、この一部始終は他人事で終わらせることが出来ないこともまた、SNSを利用する我々はよく知っているはず。SNS利用の悪しき部分を予想外の角度から斬る、痛快な1曲。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 教祖誕生 【MV】 - YouTube


黒い羊/欅坂46

https://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

《そうだ僕だけがいなくなればいいんだ/そうすれば止まってた針はまた動き出すんだろう?》

現在は改名してポップに振り切っている櫻坂46の言わずと知れたもうひとつの絶頂期、欅坂46。その活動後期において、特にダークな存在感を放っていた楽曲こそが“黒い羊”だ。この楽曲では人と交われない自分自身を他とは色が違うが故に集団から除け者にされる『黒い羊』に例え、平手友梨奈の思わず辛くなってしまうパフォーマンスも含めて自傷的な心情をぶち撒けている。

他者と交われない人間はとことん阻害される運命を辿る。しかしながら人と関わらなければ生きて行けないのはこの世の常であって、あまりに酷い悪循環を携えているのが人生だ。では、ネガティブな人間は社会から消えるべきなのか。答えはもちろんNOである。人を励ます音楽は数あれど、ここまで社会的弱者に寄り添う悲しい音楽は稀有。どうか生き辛さを抱える全ての人に聴いてほしい名曲だ。

欅坂46 『黒い羊』 - YouTube


言って。/ヨルシカ

https://yorushika.com/

《あのね、私実は気づいてるの ほら、君がいったこと/あまり考えたいと思わなくて 忘れてたんだけど》

最後に紹介するのは、終盤で歌詞の意味がガラッと変わる衝撃的なポップロック“言って。”。この楽曲では冒頭、上記の歌詞と共にひとりの男の子がダンスを繰り広げる、どちらかと言えばキュートなイメージで進行する。けれども楽曲を紐解いていくと彼は既に亡くなっていて、《ほら、君がいったこと》という言葉は『昔彼が言った言葉』と、『彼が逝ってしまった』とするダブルミーニングであることが分かる。

そう考えれば、彼が一貫して儚げな表情を浮かべている理由も合点がいく。また明るげな歌詞についても再び読み返してみるととても悲しい物語であることが理解でき、その伏線回収には誰もが思わずハッとするはずだ。ヨルシカと言えばその憂いを帯びた歌詞に注目が集まるユニットだけれど、その中でもこの楽曲は衝撃的な展開を携えている点がYouTubeコメント欄で拡散。ある意味では認知を広げる契機になったのも面白い。

youtu.be

ヨルシカ - 言って。(Music Video) - YouTube


目くるめく歌詞世界に浸ってもらったところで、改めて。……現在は音楽に対しての歌詞を重要視する人は圧倒的に少なくなっている、という事実は大前提として記しておかねばならないだろう。確かに歌詞を読み込む人はいるけれど、それも自分が大好きなアーティストが中心。そうしてフィルターにふるいにかけられた音楽は、売れ線だったりドラマ主題歌だったり、どうしても周囲に影響される傾向にある。ただ今回取り上げた6曲の他、世の中のほぼ全ての楽曲の歌詞に深い意味が込められていることは、心に刻んでもらいたいと願っている。貴方が大好きなあの曲も、町中でよく流れているあの曲も……。どうかこれからも表面的な部分を超えてその奥底まで、音楽を楽しみ尽くしてほしい。