キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

お見送り芸人しんいちの優勝と、最高過ぎた『R-1グランプリ2022』

こんばんは、キタガワです。

 

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全てのピン芸人の夢を乗せた大舞台こと『R-1グランプリ2022』が、先日終幕した。この場で詳しくネタについて明言することは避けるけれども、kento fukaya、吉住、サツマカワRPG、寺田寛明、金の国 渡部おにぎりら決勝出場者のネタは本当にどれも完成されていたし、復活枠としてギャグ連発で魅せたYes!アキトも、最終決戦でのZAZY vs お見送り芸人しんいちのバトルもどちらが勝ってもおかしくない満足度だった。前回の記事でも記した通りこれまでのR-1は若干微妙な感覚もあっただけに、ここ数年で最高の大会だったと断言しても良いレベルには。


今回の大会が大成功に終わったのは、やはり歴代大会を踏まえて大幅なブラッシュアップが図られたことが大きい。中でも重要なのが時間の有効活用で、今大会の冒頭で司会の霜降り明星ふたりが何度も『巻き』という言葉を用いていたことからも分かるように、特に昨年度は時間に追われるあまり審査員のコメントがカットされたり、点数を一気に発表したりといった予期せぬ展開が批判に晒されたことの反省から、決勝進出者の人数変更を軸として緩やかに進行。もちろんそれに対してある程度批判の声が上がることは想定内とはいえ、結果としてこの選択が功を奏したような気がする。おそらく今後は今大会の成功体験を考えながら番組作りが行われることだろう。

 

お見送り芸人しんいちR-1グランプリ2022決勝 ネタ - YouTube


そして今大会がほぼほぼ非の打ち所がない形で終幕した背景には、間違いなくピン芸人たちのネタの面白さも影響していた。筆者は準決勝も鑑賞していたので当然既視感はあったけれども、それでも何度見ても面白かった。なお今年は全ての決勝進出者は準決勝と同じネタであり、そのうち細かな部分を決勝用に変えていたのはお見送り芸人しんいち、ZAZYの2名。具体的には準決勝時点でお見送り芸人しんいちは『僕の好きなもの』のネタで4年生ズと前澤友作を取り入れていたし、ZAZYは最後の歌が“ファイト!”と違っていた。ただこうした試みによって「絶対優勝してやる!」という気合が感じられ、準決勝を観た人でも楽しめる工夫にも繋がっていたように思う。加えて、前日にYouTubeで配信された敗者復活戦を観た人なら誰にも共感して貰えることとして、正直誰が決勝に行ってもおかしくないクオリティーのネタだった。総じてたったひとりでネタをやることに全力を注いだ全てのピン芸人たちに、心からの賛辞を送りたい。

 

「R-1グランプリ2022」 決勝進出者発表! 生配信 - YouTube


そもそも、お笑いで食べて行ける人間は一握りだ。今年に入ってから早くもコネオ・インターナショナルやきんめ鯛、夢屋まさるらが引退を宣言したことはお笑いファンの中でも話題になったが、その大半は少ないギャラと年齢、今後の未来を考えた末にひっそりと消えていく。それは今回優勝を果たしたお見送り芸人しんいちも同様で、現在36歳の彼は芸人だけで食べていくのは難しく、日々のアルバイトで食いつないできた。しかも彼は一度芸人さえ辞めており、本当に辛い状況でもがいていたことを察することが出来る。そんな彼が最後まで賭けていたのがR-1であり、今年ようやく準決勝の壁を越えてラストイヤーで優勝するに至ったけれど、その裏には様々な芸人たちの思いがあるということも理解しておくべきだろう。

 

ファイナリスト発表の直後に密着!お見送り芸人しんいち編 - YouTube


ともあれ、今大会の成功が成し得た功績は大きい。優勝したお見送り芸人しんいちは賞金500万とあれほど望んでいた様々なテレビ出演を果たしているし、優勝出来なかったと言えど、出場芸人たちには次々とオファーが舞い込んでいる……。これこそが夢舞台の理想形。そして運命的な大会になったのも、関係者の方々が尽力してくれたお陰なのだ。これまでのR-1はいろいろと難しい立場に置かれていたことは事実として完結させつつ、更なる高みを目指そうとするR-1をこれからも応援していきたいと、心から思った。