キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『R-1グランプリ2022』準決勝の素晴らしさと、やっぱり気になった運営側の炎上

こんばんは、キタガワです。

 

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https://www.r-1gp.com/


遅れ馳せながら、昨日開催された『R-1グランプリ2022』の準決勝動画をFANYオンラインで観た。既報の通り、見事ストレートに決勝に進出したのはエントリーナンバー順にkento fukaya、サツマカワRPG、金の国 渡部おにぎり、ZAZY、吉住、お見送り芸人しんいち、寺田寛明の7名で、ここに敗者復活枠を勝ち抜いた1名を加えた総勢8組が3月6日、芸人人生を賭けた戦いに挑むことがこれにて確定した形だ。


気になる準決勝の模様だが、総じて本当に素晴らしかった。ネタバレになってしまうのでネタの詳細は省くけれども、映像ネタ、話術オンリー、ギャグの連発などひとつの似通ったものがなく、それでいて普段ゴールデン番組以上に劇場に重きを置いてきたピン芸人だからこそだろう、そのどれもが新鮮な面白さとして没入出来たのも嬉しい。もちろんその中でも群を抜いて爆笑を掻っ攫ったのが今回の7組であることには一切異論はなく、とても公平な審査であったのは断言しておきたいところ。

 

「R-1グランプリ2022」 決勝進出者発表! 生配信 - YouTube


期待すべきは、やはりR-1初出場組であるサツマカワRPG、金の国 渡部おにぎり、お見送り芸人しんいちら3名の動き。ピン芸人同士の漫才トリオ・怪奇!YesどんぐりRPGでも頭角を現しているサツマカワRPGの進出はきっとファンならずとも「おお!」となること請け合いだし、相方が制作したネタで決勝に進んだという渡部おにぎりも、予想もつかない角度からのアプローチには本番も高得点が期待できそう。今年が遂にラストイヤー、決勝進出者発表時にもずっと神に祈り続けていたお見送り芸人しんいちは名前が呼ばれた瞬間に感極まって涙を流していたし、ネタもこれまでの集大成のようなネタで最高だった。しかしながらこうした我々が準決勝で感じていたような盛り上がりも一旦リセット、決勝ではお笑いファンではない一般層を相手にどれだけ魅せるかが肝なので、本当に予想できない。


どれだけ下積みが長くなろうとも、愚直に笑いを取ろうともがくピン芸人たち。その歩みは決して表には出さないまでも過酷だ。それをある程度分かっているから全国のお笑いファンは当然そうした部分にも目を向けるし、それこそM-1やキングオブコントなどのお笑いコンテストで、笑いと共に感動を抱く。そう。もはやこの番組は単なる年イチの特番ではなく、ひとりひとりのピン芸人の人生を賭けた大一番なのだ。……だからこそ、今年こそは良い大会にして欲しいと強く願ってしまったりもする。


あまり声高に言うことではないが、最近のR-1グランプリには否定的な声が一定数挙がっているのは否定できない。ネタ時間の縮小や著作権関係での問題、何故か客席にいる観客がネタ中に悲鳴を上げてしまうなどこれまでもいくつか問題点はあったけれど、特に物議を醸したのは昨年に行われた2021年大会。今大注目の若き新星・霜降り明星のふたりがMCとして抜擢され、審査員が一新したことはまだ分かる。だがピン芸人の芸歴制限を直前で10年以内(つまりこの時点で芸歴10年を超えた芸人は出場資格が強制的に失われる)にしたり、にも関わらず毎年決勝常連で出場資格を剥奪されたおいでやす小田をR-1公式ライターとして任命させたり、本番では大切なネタ終了後の総評がカットされていたりと、言わば『芸人に対しての愛』が明らかに欠如している運営はすぐさま批判の的に晒された。それこそ同じベクトルで考えれば最高の制作だったのがM-1だとすると『M-1>キングオブコント>THE W>R-1』レベルに個人的にR-1は賞レースとして評価が下がっている感があり、今回の発表を嬉しく思う反面「マジで今年は大丈夫なのか……?」という疑問は払拭出来ないでいる、というのが正直な気持ちだ。

 

 

実際、現時点でも『R-1グランプリ2022』は悪手とも呼べる行動を無意識的に続けている。今回の決勝進出者発表についても、これまでは9組だったところを7組に減らした。これについては上記の公式発表動画を参照していただきたいのだが、事前報告が一切ないまま突然7組に減らされた説明により、驚きの表情を浮かべる芸人たちを観ることが出来る(7分40秒付近)。また動画内でも「3月6日の決勝は去年の反省も踏まえながらスタッフ一同、芸人さんが最も輝ける大会となるよう努力しています」というR-1グランプリ総合プロデューサー・藤本氏の発言から、昨年の大会がほぼ失敗してしまったことを暗に示してしまっている始末。ではそんな「芸人さんが最も輝ける大会」を目指した結果がどうなのかと言えば、現状漫画『東京リベンジャーズ』とのコラボだったり、審査員のコメントを増やすために何故か決勝進出者を減らしたりする行動だった訳で、どうやら未だ運営側と我々お笑いファンとの乖離は否めないところ。R-1グランプリ公式ホームページにアクセスしても、発表から数日が経った今でも決勝進出者が発表されていないことも含めて……。


繰り返すが、R-1グランプリはピン芸人の人生がかかった重大な大会である。例えばこの10年間、R-1優勝を目指して突き進んできたお見送り芸人しんいちのあの涙を見ても、この大会か地下ライブでしのぎを削るバイト生活のピン芸人にとって、どれほど大切な蜘蛛の糸なのかは分かるはずだ。だからこそいちお笑いファンとして、声を大にして言いたいのだ。今年こそはしっかりしてくれと。あわよくば先日のM-1グランプリ2021のように、少なくとも決勝進出者の誰もが最終的に注目される番組にしてほしいと……。そのためには何より運営側の寄り添う姿勢が絶対条件であるはずなのだが、おそらくは現状、本気で取り組んだ結果が悪い方向に悪い方向にと向かっている。では今のこの逆風をどうするかと言えば、答えはひとつしかない。全てのお笑いファン、そして選ばれしピン芸人たちの辿る結末は来たる3月6日に、明らかになるはず。ここまでいろいろ綴ってはきたが、正直我々外野は今は何でも言うことの出来る卑怯な立場にあるとも思うから、その証明を是非とも、最高の形で目撃したいと願うばかりだ。