夏前に開催されるフェスはあれど、中でも『無料』という金額ゼロの括りで、なおかつロックを主体としたフェスは日本にふたつしか存在しない。名古屋で開催される『FREEDOM NAGOYA』。そしてもうひとつが阪神淡路大震災の復興支援のために立ち上がった、今回レポを記す『COMING KOBE』……通称カミコベだ。ロックが好きな人間は誰しもが名前を聞いたことがある著名なフェスで、チケット代金は様々な場所に設置された募金箱の中に、それぞれが見合った金額を落としてもらうことで成立している。
一方でこれは穿った見方ではあるが、そもそも開催するには数千万〜1億レベルの金が必要となるフェス運営において、今日び『収入源を個々人の価値観に託す』というチャリティーフェスを行うことは難しい問題も孕んでいるとも思う。だからこそ一度、方々でよく聞く「カミコベめちゃくちゃ凄いよ!」との証明をこの目で見るべきと感じ、今回参加を決断した次第である。……ただ目下大切なのは、バンドのライブ。今回は僕が観た全7組のライブレポを記しつつ、帰結に繋げていければと。
ちなみに今回は初参加ということもあり、大まかな目当てのアーティストは決めつつも、当日の疲れや人の流れを見て臨機応変に動けるよう、フワッとしたタイムテーブルで進行。というのも、去年はサマソニとレディクレに行ったのだけれど、本当に三十路に突入してからフェスがキツくなりまして……。しかも翌日は島根に帰ってそのまま仕事なので、今回はメインステージ及び、遠く離れているとウワサの神戸まつりエリアは完全にスルー。なるべく移動範囲が少ないエリア同士を、チョコチョコとシャトルランする感覚で動いた。以下レボです。
- 忘れらんねえよ (PORT STAGE 11:25〜)
- PK shampoo (MOSAIC STAGE 12:15〜)
- 東京初期衝動 (MOSAIC STAGE 13:10〜)
- 愛はズボーン (BLACK STAGE 14:30〜)
- Alaska Jam (BLACK STAGE 16:00〜)
- 四星球 (MOSAIC STAGE 17:45〜)
忘れらんねえよ (PORT STAGE 11:25〜)
1週間前の雨予報を奇跡的に覆し、曇り空で迎えた当日。まずメインステージ周辺でリストバンドと、タイムテーブル表(最近のフェスでは配布されない場合が多いので嬉しい!)をゲットし、その足でPORT STAGEなる場所へ移動。ここは一般道路に面したステージであり、フェス会場に到着した瞬間、一番初めに爆音が鳴っていた印象的な場所。なもんである種の運命感も抱きつつ、都合10年ぶりの忘れらんねえよのライブへ。ただ公式でも発表があった通り、この日の忘れの動員数は異常。後ろまでビッチリというのはまだ分かるが、背伸びしてもメンバーの顔は全く見えない。サウンドだけで楽しむ忘れ、これも貴重と言えば貴重か。
この日のライブはサポートベースとして、Wiennersの∴560∵が帯同。そのためSEとして流れたのはWiennersの“蒼天ディライト”で、SEに乗せて現れた柴田隆浩(Vo.G)は「こんにちは!菅田将暉です!」と早速ライアートーク。1曲目は“だっせー恋ばっかしやがって”で、なかなか思いを言い出せず、失恋を引きずる文字通り『だっせー恋』を音に乗せて届けていく。楽曲が終わると「サンキューセックス!ありがとう!」といつもの言葉を叫び、かと思いきや「改めまして菅田将暉でーす!」とボケを何度も擦り倒すのは恒例ではあるが……。
続く“アイラブ言う”でも恋愛感情を歌った柴田。ここからは代表曲の固め打ちで、“CからはじまるABC”と“この高鳴りをなんと呼ぶ”で更なる興奮へと導いていく。柴田は終始「イエー!」と叫びながらのハイテンションで、MCでは「みんな知ってるだろうけど、忘れらんねえよの曲は俺の人生そのものなんだよ。恋できないしヘタレだし。……でもそんな曲でみんなが盛り上がってくれてるって、めちゃくちゃ夢があると思う」と、バンドの素晴らしさを改めて発信。集まったファンの多くがその言葉に頷いていたのが印象的だった。
最後の楽曲はもちろん、バンド名と同じ“忘れらんねえよ”。《忘れらんねえよベイベー 忘れらんねえよヘイヘイ》の歌詞を全員で大合唱するのはライブの常だが、例えば「童貞のヤツだけ歌え!」や「ぼっち参加のヤツ!」などアレンジが加えられることでも知られる。ただ今回は「募金するヤツだけ歌え!」と柴田が促すと、この日最も大きな歌声が。そのあまりの大きさに驚く柴田と共に、全員が大合唱して終了する素晴らしいラストだった。“ばかばっか”でのビール一気飲み、客席に降りてのパフォーマンスなど破天荒な試みこそ今回はなかったが、限られた時間でここまで魅せるのは流石。どうやら入場規制がかかっていた様子で、帰る頃には後ろまで人がビッシリだった。
【忘れらんねえよ@カミコベ セットリスト】
だっせー恋ばっかしやがって
アイラブ言う
CからはじまるABC
この高鳴りをなんと呼ぶ
忘れらんねえよ
忘れらんねえよ合掌で募金してくれるやつだけ歌えと言ったら#カミコベ pic.twitter.com/IfNhfINIjQ
— 忘れらんねえよ柴田と公式 (@wasureranneyo) 2025年5月18日
PK shampoo (MOSAIC STAGE 12:15〜)
あまり移動はしないと決めていたものの、せっかくフェスに来たなら多くのステージを観てみたいところ。という訳で続いては神戸港をぐるっと回り、少し離れたMOSAIC STAGEへ。ここに向かうにはショッピングモールの中を通って1階に降りる……という方法が主だが、例えばスターバックスなど、どこにいても音楽が聴こえてくる。本当に地元民が一丸となって作り上げているフェスなのだと分かるし、これこそが積み上げてきたカミコベの歴史なのだろうなと。なおステージについてはかなり小さく、袖で待機しているメンバーの姿は丸見え状態。一方でステージが少し高いので、先程のPORT STAGEよりは見えやすくて◯。
ただ遠いステージだからこそ、ここに集まったファンは熱量が違う。次なるバンドは関西発の若手勢・PK shampoo。特に関西圏ではチケットが軒並みソールドアウトする注目株で、この機会に観るべきだと考えた次第である。ポケモンのジムリーダーとの戦闘BGMと共にメンバーが登場し、フロントマンであるヤマトパンクスは一際盛り上がるフロアをよそに、仏頂面でスタンバイ。突拍子もない行動をすることが多い彼のことだ。「きっといろいろ考えてるんだろうな……」などと思っていると、突然「ダンカン!バカヤロっ!」と肩をカクカクさせながらビートたけしのモノマネを披露。そしてシーンとする我々をよそに「こんな暑かったら……天使になるかもしれない!」とビートたけしのモノマネのまま1曲目を宣言。突如、とてつもない爆音がステージを支配していった。
『ロックに何を求めるのか』というのは人それぞれ異なるだろうけれど、カミコベに集まった人々は取り分け『衝動的な興奮』を求めている人が多かったように思う。大型フェスに引っ張りだこのイケメンバンドとも、売れ線のキラキラした曲調とも違う粗雑な爆音はやはり、ライブハウスで研磨されたバンドにしかない魅力がある。彼らPK shampooもそのうちの一組だが、荒々しい演奏の中にヤマトパンクスのどこか清らかな歌声が入り込むことで、新たなロック感すら抱いてしまう。
曲終わりに「PK shampooです」と自己紹介する以外、今回はMCらしいMCはせず、ひたすら楽曲を紡いでいった彼ら。“SSME”での前傾姿勢のパフォーマンスや随所に絶叫を取り入れた“夜間通用口”で翻弄すると、ラストは1分少々で駆け抜ける“天王寺減衰曲線”で完全燃焼。耳をつんざくようなギターをバックに、ヤマトパンクスは自身のギターをぶん投げるように振り抜いてフィニッシュ。ふと後ろを見ると、PK shampooのTシャツを着たファンでビッシリだった。
【PK Shampoo@カミコベ セットリスト】
天使になるかもしれない
奇跡
SSME
君が望む永遠 (新曲)
夜間通用口
天王寺減衰曲線
COMING KOBE25
— COMING KOBE実行委員会 (@comingkobe) 2025年5月18日
📍MOSAIC STAGE
📢PK shampoo
演奏だけでなく、人生が破天荒なPK shampooが魅せてくれたのは圧倒的な技術力。叙情的な歌詞と合わさり最高のステージを魅せた!
先日解禁された6/18発売の1st Full Albumも要注目!#カミコベ pic.twitter.com/O8CpQ6koV7
東京初期衝動 (MOSAIC STAGE 13:10〜)
続いては同じステージで東京初期衝動のライブを。ずっと前から気になっていたバンドではあったが、活動拠点が東京のためライブは関東圏が多くなかなか観れなかった。そのため個人的には念願叶った形だ。今回はリハの段階から観ていたのだが、しーなちゃん(Vo.G)はコンビニで売っているような巨大な袋に入った氷を常に首筋に当てており、相当暑そうな様子……。早めにセッティングが終わったためリハでも何曲か演奏していたが、そのリハ中も常に氷を持っていた印象。確かにこの時間帯は、おそらく今年のカミコベでも最も暑い時間帯ではあった。
ただ野外とジメジメとした環境で聴くロックほど、素晴らしいものはない。CD音源の時点でも相当なノイズ感があったサウンドは、ライブでは周囲の話し声はまず聞こえないほどの爆音。その中心で歌うしーなちゃんは歌うというよりは叫ぶように熱を届けており、まだ1曲目にも関わらずスタンドを最前まで移動させ、位置がすっかり変わったマイクで叫びまくる様は本当にパンク。今の時代流行りのロックバンドに物足りなさを感じることも多々あったけれど、そんなバンドたちに足りない熱量の全てがそこにあった。
カミコベは出演者が多い関係上、ステージの持ち時間は25〜30分と非常に短い。そのためどのバンドも5曲程度を披露するに留まったが、結果として東京初期衝動はなんとこの短い時間に7曲を収めていた。ただその全てがハイライトとも言える存在感を放っていて、しーなちゃんは時折袋に入った氷のジッパーを開けてファンに投げつけたり、口に含んで吐き出したり、果ては自身の胸の谷間に入れて涼むなど予測不能なアクションで翻弄。更に熱を帯びていく演奏も相まって、パンクバンドの醍醐味を肌で感じた。
中でも「カミコベって撮影禁止でしたっけ?」とスタッフに聞き、独断で「いいよ!撮っていいよ!」と強制OKを出してからの“再生ボタン”は本当に素晴らしかった。しーなちゃんは早い段階でファンの元へ進んでいき、多くの人に支えられながら直立。汗だくになりながら思いを届けると、駄目押しの“LSD”では「私をいつも救ってくれるのはロックとサイケデリック!」と叫び、リズミカルなサウンドで楽しませたトキョショキ。ラストは氷を持って再びファンの元に駆け寄り、残ったそれをファンの頭上からバラバラと投下する壮絶なクライマックスとなった。このパフォーマンスには袖で観ていたしーなちゃんの彼氏であるトップシークレットマン・しのだ氏もニッコリ。血湧き肉躍るライブというのは、こういうことを言うのだろう。
【東京初期衝動@カミコベ セットリスト】
ロックン・ロール
高円寺ブス集合
メンチカツ
恋セヨ乙女
トラブルメイカーガール
再生ボタン
LSD
COMING KOBE25
— COMING KOBE実行委員会 (@comingkobe) 2025年5月18日
📍MOSAIC STAGE
📢東京初期衝動
溢れんばかりの激情をかき鳴らすこのバンドは忘れかけていたパンクロック精神を思い出させてくれる!
圧倒的なフロントマンを抱えるバンドに敵なし!#カミコベ pic.twitter.com/fVPp3k065u
愛はズボーン (BLACK STAGE 14:30〜)
先程のPORT STAGE周辺まで戻り、続いては『ESP 20th BLACK STAGE』へ移動。ここは神戸港の目の前という絶好のロケーションのステージだが、一応のセキュリティはあるがほぼフリー。そのため結果としてチケットを持っていない『何となく音につられて観に来た一般の人』も割と楽しめる、稀有なステージとなっている。そんな場所で演奏する次なるバンドは愛はズボーン。先日の大阪万博でもライブをし、屈託ない笑いを届けるアメ村出身の4人組だ。いつも爆笑を掻っ攫う彼ららしく、リハの段階でアジカンの“ループ&ループ”をフルで披露して関係各所に謝罪したかと思えば、リハ時間が余ったのか金城昌秀(Vo.G)は「もうこのままやってもええやろ」と話したり、「みんなで次のジングル(フェスのバンド紹介SE)当ててみーひん?」とトークで繋ぎまくり……。楽しさを突き詰める彼ららしいステージングが、早くも展開していく。
愛はズのフェスにおけるセットリストは基本的に、“愛はズボーン”、“ニャロメ!”、“ひっぱられる”、“MAJIMEチャンネル”の4曲を軸に構成される。今回も例に漏れずこれらの楽曲が演奏されることとなり、1曲目に選ばれたのは“MAJIMEチャンネル”。袖から颯爽と現れた、上半身裸にシャツをまとった儀間 建太(Vo.G)のアクションから《じごっくー》の印象的なサビが突き抜ける様は圧巻で、どんどん人を集めていくのがあまりにも痛快。また先述の通りこのステージは構成上、一般の人もライブの光景を明瞭に観ることが出来るエリアだったが、通常では観ることの出来ない(今回のフェスチケットは電子チケットのみなので日本のスマホがない人は入場不可)海外の人たちや子どもたちがいつの間にか客席にいて、笑いながら《じごっくー》ポーズを決めていて思わずウルッと。
「ワンピースは……実在する!」と白ひげの言葉を借りて様々な漫画をイジりまくった”マンガパンチ!“、儀間がやりたかったウェーブもしっかり決まったキャッチーソング”ひっぱられる“と続き、ライブはいつの間にか定番曲の”ニャロメ!“へ。この楽曲は愛はズボーンの伝えたい思いを体現したもので、常にライブのセットリストに組み込まれてきた。《小学生が泣いてる/トランスフォーマー欲しさにピヨピヨ泣いてる》の歌詞が、次第に《泣け泣け 大人になれば/ギターが買えるぜ!!》とのポジティブな感情に変化していく……。それは金城と儀間が父親になったこともあるだろうけれど、きっと「辛いことがあっても笑い話になるよ!」という前向きな精神を彼らなりにバカバカしく表した結果なのだろう。
そして最後はもちろん、これを聴かなければ帰れない”愛はズボーン“でシメ。元々がキラーフレーズ連発の曲ではあるが、儀間はおもむろにステージを降りると、客席後方までファンの側を通りながら移動。自身が着ていたシャツを振り回しながら、全員での《ボンボンズボボン 愛はズボーン》の大合唱へと導いていく。その姿は本当にフロントマン然としていたし、全く何も知らない人々も巻き込んでいく様は、改めて求心力のあるバンドだなと実感した次第だ。関西フェスや関西サーキットイベントの特攻番長・愛はズボーン。その強みを、この日も十二分に味わわせてくれた。
【愛はズボーン@カミコベ セットリスト】
MAJIMEチャンネル
マンガパンチ!
ひっぱられる
ニャロメ!
愛はズボーン
波起こってんじゃ〜ん... pic.twitter.com/OAqdtABvBg
— 愛はズボーン-official- (@iwasborn_band) 2025年5月18日
Alaska Jam (BLACK STAGE 16:00〜)
このあたりでボイガルを数曲観たり、一旦ボーっとしたりと小休憩を挟みつつ、続いては同ステージでAlaska Jamのライブを鑑賞。バンド名の通り彼らの演奏はジャム・セッションを想起させる独特なグルーヴが特徴だが、その母体を作っているのは主に小野武正(G)の卓越したギターテクニックにある。それこそ武正が所属する誰もが知るロックバンド・KEYTALK(現在活動休止中)でもその存在感は圧倒的だったけれど、とにかくAlaska Jamはギターが彼の1本のみなので目に付く。面白かったのは、リハで武正がワイヤレスアンプ内蔵のギターで客席を練り歩き、音を確認する一幕。僕はその時スマホを操作していたのだが、ファンの目線が僕の方に向けられていて「なんだなんだ?」と思っていたら、武正が真横に立っていてビックリ!その後もニコニコ顔で隅々まで歩きまくって”MY CONVERSE“と”少年の樹“をやったり、インスタライブのセッティングをするなどしているうち定刻となった。
ライブは”ゴーストピーポー“で緩やかなスタート。ややダウナーな雰囲気をバックに、森心言(Vo)の軽やかなフロウが溶けていくのはやはりAlaska Jamならではで、キメ部分で体を傾けたり腕を広げたり……といった森の一挙手一投足にも目が離せない。一方で《集まれ我々ゴーストピーポー》の合いの手もバッチリ決まり、その音とフレーズの楽しさから人がどんどん増え、気付けば後ろまでビッシリの客入りだ。続く”モラトリアムコレステロール“でも勢いは止まらず、森と武正のふたりが客席に突入したり(以下動画参照)、ファンの目の前でギターを弾き倒して帽子を落としてしまい、その帽子をファンに被らせてもらうといった早くも様々な印象部が。
酒を持ったファンを煽り尽くした”クラフトビール“、キャッチーなサウンドで駆け抜ける”FASHION“、アダルトな魅力に溢れた”焼酎“と、ほぼ全てのアルバムからドロップされたライブ。森は「結成15年、初めての野外フェスです!」と今回のカミコベがバンドにとって大切な代物であることを語り、来たる全国ツアーを告知。更なる申し込みが増えることを悟りつつ、最後の楽曲は”東京アンダーグラウンド“。森と武正は2番に入った瞬間、クラウチングスタートさながらに突如として客席に突撃。大興奮の熱量をバックに暴れ回った彼らは、まさに歌詞の通り《全部巻き込んで》最後まで駆け抜けていった。彼らにとって初の野外フェスは、変わらない強さで戦い続けることを示した素晴らしい時間だった。
【Alaska Jam@カミコベ セットリスト】
ゴーストピーポー
モラトリアムコレステロール
クラフトビール
FASHION
焼酎
東京アンダーグラウンド
カミコベ
— Alaska Jam (@Alaska_Jam) 2025年5月18日
Alaska Jam観に来てくれてありがとうございました‼️
来年も再来年も、この素敵な場所が続きますように、また呼んでいただけるように頑張っていきます!
映像はモラトリアムコレステロールをお届け📹
ライブ後半は2人とも客席を駆け回っていて全然映っていませんでした‼️
〈リプ欄へ続く〉 pic.twitter.com/XIRNP5igmS
四星球 (MOSAIC STAGE 17:45〜)
気付けばフェスも終幕に近付き、八十八ヶ所巡礼やガガガSPなど、各々の推しのバンドに直行し出す観客たち。実際自分もかなり迷ったものの、これまでの歩みで最もステージが見やすく音が良かったこと、また他ステージは相当な客入りでほぼ見えないだろうと予想し、最後のライブはモザイクの四星球に決定!早めに移動したので割と前方で観たのだが、最終的には以下の写真で分かる通り入場規制のパンパンぶり。危なかった……。なお爆笑を掻っ攫うことでも知られる四星球。気になるリハでは、昨年本来は上がってはいけない場所までファンを引き連れて登ったからか、例の場所をガチガチに警備する無表情の警備員さんに向かって「すいません今年は行きません。……顔こっわっ!絶対行きませんて!」とツッコんで早くも大爆笑。そうしている間にもみるみるうちに増えていく観客である。
リハの段階で、早くも爆笑の渦に巻き込んだ四星球。では本編はというと、全員が見覚えのある緑の顔のイラストと緑のエプロンを着用して登場。そして北島康雄(Vo)は開口一番「スターバックスの皆様!うるさくしてしまい申し訳ございません!」と叫びつつ、ステージの上方(2階のテラス)で絶賛営業中のスタバに謝罪。更には誠意を見せるためか、その場で持ち帰ったスタバのコーヒーまで持ち込む始末。もうこの時点で崩壊寸前の笑いが生み出されていた中、オープナーは”鋼鉄の段ボーラーまさゆき“。あらゆる小道具を段ボールで工作するまさやん(Vo.G)に焦点を当てた自己紹介ソングだ。楽曲内ではお手製の音符記号が飛び交った他、モザイクステージということで股間にモザイクをかけたりとやりたい放題。
圧巻だったのは、次なる楽曲”ちょんまげマン“。この楽曲では北島が『ちょんまげマン』なる別キャラクター(北島とは完全に別人という設定)に扮し正義の行いをしていくのだが、今回はカミコベがチャリティーイベントであることを鑑みて「今からこの箱に募金するんだ!」と楽曲中に4つの箱をファン同士のリレー形式で回し、我々が実際にお金を入れていくという離れ業を敢行。自身も巨大な募金箱を持ちつつ板に乗って後ろまで進んでいくちょんまげマン、移動中も「スターバックスの皆さん!カミコベっていう素晴らしいイベントやってます!」と叫んだり、入場規制で入れない人には「ゆっくり来たあなたたちが悪いんですよ!」とさすがのトーク力。なお以降もライブ中に募金箱は回され続け、好きなタイミングで募金をすることが可能となり、最終的な募金金額はなんと46万8499円!……なかなか一歩が踏み出せない『募金』という行動。ただ音楽を通して全員が一丸となればここまでの結果が得られるという、素晴らしい証明となった。
拡散お願いします!
— ちょんまげマン (@chon_mage_man) 2025年5月24日
COMING KOBEでの「ちょんまげマン募金」の集計額が届いたから、あの日「ちょんまげマン募金」に賛同してくださった全員に届けたいんだ!
ありがとう!
¥468,499
だったよ!
本当にありがとう!https://t.co/2HgsKRt5bk
そして今一度、災害への備えを!
ちょんまげ〜マン! pic.twitter.com/eJDCho086Y
持ち時間が少ないこと、また曲ごとの展開がロングコースになる彼らの性質上、この日のMCは1度のみ。その内容は前日行われたお笑い賞レース・THE SECONDについてで、かねてよりの友人であるツートライブの優勝に触れ「優勝の瞬間を見たときは嬉しさもありましたけど、悔しさもありました。『もっと売れたい』と思いました。そしてもし四星球がとてつもなく売れたら、カミコベに戻ってきてメチャクチャな額を募金したいと思います」と決意を語ると、北島は「次はスターになって戻ってきます。これが本当の『スターバックス』です」と落とし、最後の曲はきってのメッセージソングたる”薬草“。《あなたが死にそうに 消えてしまいそうになったら/忘れちゃいそうになったら 歌が薬草になってやら》との歌詞は盟友・オナマシのイノマーが亡くなった際に記されたものだが、これはカミコベの創立者でもあり数年前に帰らぬ人となった松原裕に宛ててのもののようにも聞こえた。ライブにおける盛り上げ方、加えて未来に繋げる人間力。それらを兼ね備えたバンド四星球は、今後もカミコベに必要な存在だと実感した。そんなライブ。
【四星球@カミコベ セットリスト】
鋼鉄の段ボーラーまさゆき
ちょんまげマン
UMA WITH A MISSION
クラーク博士と僕
薬草
COMING KOBE25
— COMING KOBE実行委員会 (@comingkobe) 2025年5月18日
📍MOSAIC STAGE
📢四星球
去年に引き続き 、MOSAIC STAGEのトリは実行委員会満場一致で四星球!スターバックスの名の通りスターになって帰ってくると誓った四星球の活躍にご期待ください!!#カミコベ pic.twitter.com/wzVoGMrmXv
かくして僕の初神戸、初カミコベは終幕。これほど多彩なバンドが各地大型フェスと比較しても数倍の数出演し、チケット代は実質ゼロ。常識に照らせばあり得ないこのフェスが成り立っているのは、繰り返すが『ライブキッズの寄付金』だ。実際募金をする人を今回数え切れないほど見たし、かく言う僕自身も「夏フェスに参加したらこれくらいだな」という額プラス、シーンへの貢献度やここまで楽しませてくれた事実……などなど、様々なことを加味した額の寄付をさせていただいた。
……正直なところ、僕は駅前などで募金活動をしている人たちを見ても、あまり動けない人間だ。ただ署名運動やアンケートなど他者がある種ノーリスクで強引に獲得するものとは違い、募金は『自分が主体的に身銭を切らなければならない』という点で非常に難しいものだとも思う。ゆえにカミコベの大きな功績があるとすれば、それは紛れもなく『音楽を通して呼び掛ければ全員が募金をする』という事実を、明確にしたことに尽きるのではないだろうか。
今回のカミコベにおける最終的な寄付金額はまだ不明だが、きっと凄まじい額になるはず。素晴らしい音楽に集まったロック好きと、バンドたちに全てを託した運営……。関わっている全ての人たちに拍手を送りたくなるフェス、それがカミコベだった。来年もまた。