キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

あまりにも最高すぎた歴代最高の大会『キングオブコント2021』について書き記したい

こんばんは、キタガワです。

 

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「本当に面白くて。いわゆる伝説の回ってなるんじゃないかっていうくらい、みんな面白いっていう」……ファイナルステージ前、審査員である小峠英二が発した一言が今でも忘れられない。全体的に爆発力に欠けたり、トップ通過のコンビが一気に点数を下げたり。更には決勝進出者完全シークレット制度が炎上したりとこれまでいろいろあったKOCだが、今回のKOCは名実共に歴代最高の大会となったと称して然るべしだろう。


なお今回のKOC2021のみならず、歴代大会についても現在動画アプリ・Paraviにて独占公開中。本来であれば月額料金が発生するけれど、最初の数十日間は完全無料で観ることが可能。今年最大のお笑いの渦に是非とも足を踏み入れてもらいたいと願いつつ、以下出場者の簡単なネタ総評をお届け。鑑賞していない人にとっては「こんな感じだったんだ」と大まかなイメージを感じてもらいつつ、隅々まで鑑賞した人にとっては当日の思いに戻るような感覚で、ゆるりと読み進めてもらいたい。

 

 

蛙亭

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今大会におけるMVPを1組だけ選出するとするならば、おそらくそれはトップバッターという出順にも関わらず爆笑を掻っ攫い、会場の空気を良好なものに一変させた蛙亭だ。ネタは『実験体NO.164』で、それこそこれまでのKOCでも悪い影響として作用してきた悲鳴オンリーの形になりかねないリスキーな形ではあったものの結果杞憂で、トップバッターとしては東京03に次ぐ高得点となった。


これに関してはやはり『千鳥のクセがスゴいネタSP』といったゴールデン番組で彼らのカオスぶりを事前に見せ付けられていた部分も大きく、それこそ後述するマヂカルラブリーと比較すると「蛙亭ってこういうコントだよね」との予測が最終的に最適解として迎え入れられたことに他ならない。加えてこれまでテレビ的にはショートショートのネタ、しかもイワクラがどちらかと言えば拳銃や包丁を取り出しダーク側に付いたものも多かったので、今回中野が異常者(生命体)、イワクラがを多く披露してきたことも功を奏したのかもしれない。審査員長の松本から「もっと高くてもと思ったけど、上が詰まってしまうかもと思って抑えた」との言質を引き出したのも、初出場としては好感触。来年は是非また決勝の舞台で。

 

【蛙亭】コント「実験体No.164」【キングオブコント2021】 - YouTube

 

 

ジェラードン

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基本的にトリオと言えばツッコミに加えて小ボケ+小ボケ(ジャンポケやGAGなど)、若しくは小ボケ+大ボケ(ロバートなど)が主流となっている中『W大ボケ』なる独自の構成で話題沸騰のジェラードン。今回のネタはある種クサイキャラクター性を前面に押し出した『角刈りガール』で、彼らの数あるネタの中でも非常に会場の雰囲気が重要になるコントだ。


故にこのコントに関してはどちらかと言えば元々ジェラードンを深く知るファンばかりが集まる単独ライブ向きの代物だったようにも思えたが、結果は素晴らしい大爆発。アタック西本とかみちぃのキモカワなやり取りを海野が邪魔し過ぎない範囲で突っ込むという彼らにしか成し得ない構成が受け、見事な成果を残すに至った。優勝こそなかったが、少しばかり緊張の雰囲気もあった今大会はこの直後……具体的にはジェラードンの特典発表の時点から緩和していたことも鑑みるに、ジェラードンは蛙亭に次ぐ今大会の立役者と言っても過言ではないはず。当日のTLを見ても子供受けバッチリだったようだし、視聴者に大きな印象を与えたのは間違いない。

 

ジェラードン「角刈りガール」【公式ネタ】【KOC決勝】 - YouTube

 

 

男性ブランコ

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今大会最大のダークホースとの呼び声も高かったツーメガネコンビ・男性ブランコは初出場ながら晴れて総合2位。KOCのみならずお笑いの賞レースではそもそもの認知度(そのコンビのネタを見たことがあるか)の有無が評価に直結しかねないものだが、そうした事前情報がほぼゼロだったのも追い風として作用したようにも思う。


ネタは『ボトルメール』で、審査員長の松本も語っていたように前半と後半で同じ流れにしているにも関わらず裏切ってくるというよもやの意外性がウリの構成となっており、ここまで蛙亭のサイケさ、ジェラードンのコアさときていた中で一気に『計算され尽くしたコントの魅力』に迫った傑作。なお個人的にこのネタは何度か観たことはあったのだけれど、今回のKOC用に細かい部分をブラッシュアップしていたのもとても良かった。約11年間コント一筋で活動しながらもなかなか芽が出なかった彼らだが、ここにきての大躍進。年末のお笑い番組にも出演濃厚だろうし、これからぐんぐん知名度を伸ばして行ってほしいところ。

 

男性ブランコのコント「ボトルメール」 - YouTube

 

 

うるとらブギーズ

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3度目の正直として決勝に進出したうるとらブギーズ。初回は初参戦にして準優勝、2度目は予想に反して最下位となり、強い決意で臨んだ今年だったが結果が振るわず、特典発表の時点でファイナルステージ進出が出来ないことが確定してしまった。ただ会場ウケは抜群で、おそらく瞬間最大風速的には一番だったのではないか、思わずそう感じてしまうほどの『迷子センター』ネタで、八木のアナウンスのたびに爆笑が頻発する展開を作り上げた。


今回のネタの進行は『キラキラネームの子供の名前を呼び出す』その1点のみで、実は内容的には然程深みはない。しかしながら八木が笑いを堪えながら子供の特徴をアナウンスする一幕が、ある種うるさい印象すら感じさせた前半と上手く噛み合い、絶妙なバランスで笑いを掻っ攫って行ったのが素晴らしく、なおかつ「Hey Yo」や「トヨタの靴」、更には笑いに耐え兼ねて何も言わずアナウンスを終了してしまう一幕も含め、場面展開がないながらも洗練された4分間。惜しむらくは、彼ら自身が語っていた「うるとらブギーズらしい2本」のうちもう1本を観ることが出来なかったことくらいか。

 

キングオブコント 決勝コント 迷子センター!! - YouTube

 

 

ニッポンの社長

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漫才とコントの両刀でブレークを狙う大阪株・ニッポンの社長は前回とは大幅にテイストを変え、ファンにとっては有名な『バッティングセンター』で奇襲を図る。爆発力のあるネタの一部を延々繰り返す手法はニッ社のお家芸のひとつだが、ネタ後に審査員の山内が語っていたように、本当にボールを喰らっているかのようなリアクションが勢いを更に増す良い効果を担っており、すこぶる面白かった。


何度も同じ作業を繰り返せば当然、後半につれて笑いの量は減っていくことも理解した上で創意工夫を凝らしているのはコント師としての手腕によるところだったろうし、ラストの『実はケツが名バッターだった』という予想を超えたオチも、それまで意味不明な行動を取り続けた過程があったからこそ活きてくる。一見永遠に出来るネタと思いきや、しっかり4分間の時間がベストの状態に収めた代物。今回はもう一歩だったが、翌年への期待も大きく高まる舞台だったのでは。
 

ニッポンの社長のコント「バッティングセンター」 - YouTube

 

 

そいつどいつ

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遂に念願のKOC初出場となったそいつどいつ。思えばそいつどいつはもう何年間も「今年は行ける」と言われては涙を飲んでい回発表の瞬間大号泣してしまったという2人のコメントからも心から嬉しく、愚直にコント力を研ぎ澄ませてきた彼らの飛躍は今回の決勝進出者の中でも一層感動的だった。


ネタはホラーテイスト全開の『パック』。蛙亭と同様に悲鳴が上がるかどうかのギリギリを攻める際どいネタではあったが杞憂に終わり、右肩上がりでどんどんウケていたのが痛快で、観ているこちらとしてものびのびとプレイしているのが分かる程だった。ただどうしてもそいつどいつのコントは良い意味でもスコーンと突き抜ける場面が少ないので、審査員によっては平凡なイメージも抱いたのかなあ、という感じ。ちなみにこのネタを選んだ理由について、後の反省会で「松本さんが恐怖と笑いは紙一重と言っていたから」であると言っていて、点数的には低かったが松本からは95点を貰えたことは間違いなくプラスだ。

 

そいつどいつ「パック」キングオブコント決勝ネタ【コント】 - YouTube

 

 

ニューヨーク

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昨年のM-1グランプリとKOCの好成績によりYouTube登録者が急上昇、バラエティー番組にも引っ張りだこと、お笑い街道を駆け上がるニューヨーク。元々漫才よりコントの比重が大きい彼らがKOCに毎年出場するのは当然だとしても、今年も難なく決勝に進出したことには、彼らの地力の高さをしみじみと感じる。


ネタは『結婚式準備』でYouTubeチャンネルに上げられていない代物だったのも意外だったが、昨年と引き続いて結婚モノのネタだったのも予想外。ネタ自体は非常にシンプルで、屋敷が伝えていたプランを嶋佐が都度裏切り、屋敷側の意見と全く違うにも関わらず「オッケーです!」で貫き通すというもの。おそらく単独で会場が温まっている場合であればそこそこウケたのだろうけれど、ある程度期待値の高い状態のニューヨークだからこそなのか苦戦を強いられ、最下位の得点に。ただそれでも歴代の最低点よりは高かったので、総じて今大会のレベルの高さを改めて思い知った次第だ。

 

 

ザ・マミィ

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男性ブランコ、蛙亭、そいつどいつなどなど、毎年あと一歩のところまで迫りながらも準決勝の壁が厚く敗退を繰り返してきたコンビの多くが報われたこの年。その中でも近年メディアへの露出の増加も相まって、今年こそはと芸人間で話題になっていたコンビ。その1組がザ・マミィだ。


ザ・マミィはこれまで飲む打つ買うで多額の借金を抱えていると公言する酒井のキャラクター性をメディアでもライブでも発揮し続けていたけれど、今回のネタ『この気もちはなんだろう』ではまさしく彼の個性を存分に活かしつつ、大衆に良い意味で寄り添った構成になっており素晴らしかった。終盤にかけては感動的なワンシーンもあったし、お笑いの体を成した人間ドラマを見ているような臨場感も相まって高得点。結果全組のうち2位となったのは何より嬉しい快挙。めでたい。

 

ザ・マミィ「この気もちはなんだろう」【キングオブコント2021決勝】【公式】 - YouTube

 

 

空気階段

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そしてそして、決勝進出3度目にして優勝を飾ったのはご存知の通り空気階段。極めてレベルが高かった今大会において、何と過去最高得点での優勝と相成った空気階段のネタはSMクラブから展開しよもやのオチへと突き進む傑作コント『火事』で、審査員平均97点とバイきんぐ超えの代物となった。


賞レースでは爆発力が必要不可欠で、それこそこれまでのKOCでもにゃんこスターやどぶろっく、バイきんぐらが圧倒的な興奮を維持したまま結果を残してきた。ただ今回の『火事』も同列に並べられるものかと言えばそうではなく、終始一貫してストーリー的に進んでいき、一部分がウケると言うよりは全体でひとつの爆発を生み出していたのが印象的。そこに起爆剤を複数埋め込むことで尻つぼみしない安定した爆発が常に緩やかに発生し、気付けばドカン。心から秀逸なコントだと思うし、逆に言えば常にコントと向き合い続け、このKOCを起死回生の一手として賭けてきた彼らだからこそ出来た最高のネタなのではなかろうか。空気階段、本当におめでとう。

 

空気階段「火事」 - YouTube

 

 

マヂカルラブリー

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最後の出順となったのはM-1グランプリ、R-1グランプリと合わせて3冠を狙う言わずと知れたお笑いマイスター…マヂカルラブリー。ネタはゲーム途中に野田が乗っ取られてしまうというらしいミクスチャーぶりを発揮した怪作『コックリさん』。


いつしかコックリさんに操られた野田が操られるがままに縦横無尽に動き回るこのネタは、どこをどう切ってもマヂラブ的でとても面白かった。しかしながら例えば男性ブランコやザ・マミィらがノーマークが故に爆発したことを考えるとマヂラブはその逆で、審査員長の松本が今回のネタを「吊り革(M-1のネタ)と同じ」と半ば禁句のように語っていたことからも分かる通り「マヂラブってこういうネタやるよね」とのイメージをそっくりそのまま体現しすぎたことが、点が伸び悩む要因だったようにも思う。確かにM-1ではそうした不変の部分が評価されて……というものだったけれど、コントでは難しかったか。ともあれとても面白いコントだったし、野田自身も毎年挑戦することを公言していたので翌年に期待したい。

 

 

以上、今年のKOCの決勝ネタについてつらつらと書き綴ってきた。当然ながら当記事を執筆するにあたってParaviの公式動画も繰り返し鑑賞したし、YouTube上に今回披露したネタと同じものがあればそちらも確認したが、やはり改めて思ったのは紛れもなく、今大会が過去最高レベルの代物だったということだ。分かりやすい滑りも平坦なネタもなかったし、大会的にも常に笑いが生まれていてしつこい演出もなかった。誰もが個人に出来るベストを叩き出す何より健全な体制が、結果ここまでの高評価へと繋がったのだろう。


確かに優勝は空気階段、2位はザ・マミィと男性ブランコだった。ただ人それぞれ心中から応援する優勝候補は違ったはずで、そのどれもが本当に面白かったため異論は一切出ない。……長年続いてきたお笑い賞レースだが、『全部が全部ハイライト』な賞レースはこれまでに例を見ないものだったのではないだろうか。今大会を作ってくれた制作者サイドに心からの感謝を表すと共に、今回出演した10組が年末まで全力で駆け抜けてくれることを願いつつ、最後の締め括りとしたい。