こんばんは、キタガワです。
僕はR-1ぐらんぷりが好きだ。M-1グランプリやキングオブコントなど、一年を通してお笑いの賞レースはいろいろある。しかしその中でもR-1は別格の面白さだった。
僕がこう思う理由はひとつ。ノンジャンルだからだ。M-1は漫才、KOCはコント……。お笑いの賞レースというのは全体的に、ネタ自体に何かしらの制約が課せられていることがほとんどである。
しかしR-1は違う。『ピンでやること』という縛り以外は何をやっても良い。濱田祐太郎やあべこうじのような喋くり漫才でも、COWCOW多田のような一発ギャグ集でも。シュールもモノマネも何でもござれ。いわばプロレスで言うところの総合格闘技の如き面白さが、R-1の魅力なのだ。
今回も例に漏れず、各ネタをひとつひとつ紐解いていこうと思うのだが、本題に入る前に言いたいことがある。
それは『観客が邪魔』ということ。
今大会は総じて、観客がやかましくて仕方なかった大会と言える。個人的には、エンタの神様やテレビショッピングがウザく感じる現象と極めて似ていた。
ダウンタウン松本人志もツイッターにて「R-1の客。。。」と苦言を呈していたが、テレビショッピング並みの「わぁー!」「アハハ!」「えぇー!?」「フゥー!」……。まるでADがボタンで流しているレベルだ。こんなにストレスフルなお笑い番組は初めてである。お笑いの賞レースにおいては観客の笑いはなくてはならないものであるが、ここまでとは度が過ぎていると思う。
R-1の場は断じてパリピのパーティー会場ではない。芸人にとってはお笑い番組自体が少なくなっている昨今、全国放送で最も注目を浴びることができる日。誇張でも何でもなく、人生を変える重要な一夜なのである。
本当に面白い部分で笑うのはありがたい。しかし今回のR-1は全く予期せぬ場面で下卑た笑いに包まれたり、笑い声で演者の声がかき消されたり、時には本気の悲鳴が上がったりと、総じて観客のレベルが絶望的に低い大会であったと言える。
詳しい話はネタ解説で触れるつもりだが、まあ酷かった。練り上げたネタで本気で挑む芸人たちと、ただのいちエンターテインメントとして楽もうとする観客の齟齬が浮き彫りになっていた。芸人は何も悪くない。ただただ友人同士で番組閲覧に参加した観客たちの、悪い部分が凝縮された一夜だったと思う。
以下ネタ解説。
- チョコレートプラネット・松尾
- クロスバー直撃・前野悠介
- こがけん
- セルライトスパ・大須賀
- おいでやす小田
- 霜降り明星・粗品
- ルシファー吉岡
- マツモトクラブ(復活ステージ2位)
- だーりんず・松本りんす
- 河邑ミク
- 三浦マイルド
- 岡野陽一(復活ステージ1位)
- おわりに
チョコレートプラネット・松尾
今まで培ってきたIKKOさんネタのオンパレード。出し惜しみ一切なしの、文字通り全力のネタだった。
出演者とのトークを交えたIKKOモノマネには定評があった松尾だが、R-1だとそうはいかない。全てひとりで進行し、なおかつ笑いを生み出す必要がある。そこで彼が選んだ手法は、まさかのコント。
冒頭の「どんだけ~!」で爆発的な笑いが起きたことからも分かる通り、間違いなく『IKKOの4文字セリフ』は松尾の一番大きな武器である。だが逆に言えば、4分のネタ時間で観客が次第に飽きてしまう可能性と、「○○○○~!」に頼りきってしまう可能性のふたつを孕んでいる、危険なネタでもある。
なもんで今回の松尾のネタは、IKKOモノマネ一辺倒の笑いにならないように考えられていた印象を受けた。「これって本当に本当で……本当なんですね」の一幕やファンデーションを塗りたくるなど、ひとつのコントとして完成されていた。
極めつけは『おかげでした』の全落オープンネタをぶち込むという、お茶の間のお笑いファンを唸らせる展開。ラストはダメ押しの「どんだけ~!」による力で捩じ伏せるシメ。
一本目としては申し分ない出来。しかしいかんせん後の出演者のネタも面白かったのと、松尾自身が緊張によって時折噛んでいたのがマイナスか。
クロスバー直撃・前野悠介
観客がウザい……。このネタにおいてはR-1史上、後世に語り継げるレベルで観客が笑いを殺していたと思う。前野は悪くない。悪いのは100%観客。
前野のネタは『○○かと思ったら○○だった』という、観客を巻き込んで笑いを生み出すタイプのもの。そのため「ええ……?」とバラエティー番組じみた声を上げる観客や、中にはガチの悲鳴を上げる観客がいた今回のR-1は、とてつもなくやりにくい環境だったろう。お前らはチンパンジーか。
おそらく毎回繰り出される『実印推し』がひとつの盛り上がりポイントだったと思うのだが、観客の声によって全く頭に入ってこない。それどころか『大袈裟なことをやったらそれだけで笑いが生まれる』という地獄のような状態だったこともあり、小道具を連発する前野は意図しない部分で笑われている感覚さえあったはずだ。
このパターンのネタは、どれだけ毎回笑いが得られるかが一番の鍵となる。そのため4~5回目は笑いが薄まる場合が多いのだが、前野は後半の「メルカリに出品した」というテクニックでカバー。前野としてはここにきての二段構えで、一気に突き進む算段だったろうと思う。
出品者のコメントである「どういうことですか?」や「ヒントをください」はかなり面白かったのだが、前半で笑いが分散していた会場には伝わりづらかったか。特に後半はもっと大袈裟なボケを入れた方がウケたとは思うのだが、そもそも『大袈裟なボケを入れないとウケない』という状況自体がおかしいわけで。
完全にチンパンジー化した観客にやられたと見るべきか。
こがけん
本編では『ダークホース』と紹介されていたが、こがけんは長い間準決勝で涙を飲んできた苦労人である。初の決勝進出は、さぞかし嬉しかっただろうと思う。
『マイクのせいで原曲と全く異なるアレンジになる』というネタ。冒頭の「思ってたのと違う!」でまずひとウケ。その後は洋楽をピックアップした歌詞で笑いを誘っていく。
中盤「コブクロの桜ならわかるな……」と言った後に観客が「おおー!」と盛り上げたり、手拍子をし始めた時は「は?」とぶちギレてしまったけれど。「マイク100万したけど」には「ええー!」とドン引きする観客……。しかも歌い終わった頃には「フゥー!」と拍手喝采。のど自慢大会じゃねえんだぞ馬鹿共。今大会での個人的ワーストキレポイントは、間違いなくここだった。何度も言うが、芸人は悪くない。
『音にも反応してしまう』といった後半の畳み掛けは見事。中でもニュースZEROのくだりはひとつのハイライトか。大きな笑いで終わるという理想的なオチでもって、初の決勝大会を終えた。
セルライトスパ・大須賀
歴代の優勝者である中山功太や三浦マイルドの2本目を彷彿とさせる、爆発力のある発言をひとつずつ落とし込む『1ボケ1オチ』のネタ。
この手法はピンネタの教科書とも言えるものなのだが、このネタは『純粋にどれだけウケる話を量産できるか』が一番のポイントである。それにプラスして大須賀は、ゆっくりした話し方でもって「○○ってあるじゃないですか?」と観客に一度疑問を抱かせる方法を取った。
これらが項を奏し『スーパーカッブはアイスとラーメンの2種類がある』、『メロンパン専門店』といったストーリーがバンバンハマる。更にはネタ完成度もさることながら「ひそひそ声で話す」という斬新なシチュエーションも加わり、唯一無二の世界観を形成していた印象だ。
常に沈黙が与えられるがその分爆発力も大きい。もちろん滑ったら大怪我だが、逆に笑いが生まれればその分「ウケた」と思わせることができる。
結果としてAグループ勝ち抜き。見事2本目に駒を進めたのだが、「面白いネタの大半を1本目にまとめたのかな?」と思うほどに、2本目は少し弱かった。1本目は間違いなくネタに加えて『ひそひそ声』のインパクトが強かったのもあるだろうが、とにかく。面白い着眼点だった。天晴れ。
おいでやす小田
今年で4年目の決勝進出。『はじけろ!怒りのボルテージ』と紹介があったことからも分かる通り、今年も『怒り』をキーワードとしたネタで笑いを誘っていく。
全てを手に入れた富豪が防音部屋で「ロレックス重いー!」「飼ってるシェパード怖いー!」と狂乱する様は予想外で面白い。かつ「フードコート行きたい!」「上の階のメダルゲームやりたい!」という馬鹿客でも分かる日常の風景の切り取りは感情移入しやすかった。
流石と言うべきか、じんわりとした伏線回収やワインのストーリーなどを織り交ぜることで、ただ叫ぶだけでは終わらないネタに昇華していた印象だ。
ひとつだけ残念だったのは、時折聞こえづらかったことか。僕が感じたのは2箇所ほどだったが、あれらの部分もはっきり聞こえて笑いに落とし込めていたならば、結果は変わっていたかもしれない。
結果はなんと粗品と同率1位。同点ルールにより敗北してしまったが、過去4年間で最高の順位であった。かねてより「ずっと2本目でやろうと温めているネタがある」と語っている小田だが、来年はその伝説の2本目が見れるかも。
霜降り明星・粗品
僕が初めてネタ番組で粗品を見たのは7年前のオールザッツ漫才だった。矢継ぎ早に繰り出される卓越したフリップ芸により、高校生にして初の優勝を勝ち取っていた。
僕はそれを見て感動してしまい、周囲の友人らに「すげー面白い芸人がいる!」と吹聴して回ったものである。その日から僕にとって粗品は、大好きなピン芸人のひとりとなったのだ。
しかし僕は、今回の1本目と2本目の粗品のネタには不満があった。なぜそう思うのかというと、ネタが7年前とほぼ同じだったからである。
今回のネタ、若かりし粗品を知っている人ならば誰しも既視感を覚えたはずだ。下の動画は7年前の『オールザッツ漫才』の実際に披露したネタなのだが、これを見るとはっきり分かる。ほぼ同じだと。
それこそ決勝においてはそれが顕著で、中にはイラストも当時のまま、フリップの形さえ同じといった始末でリテイクした跡すらないものさえあった。新規のフリップはバンクシーの絵くらいで、それ以外は8割方過去のネタと同じものだったのだ。
そう考えると、今回のネタで観客が爆笑していた部分はほぼ7年前のネタそのものなのだ。僕が7年前に「こりゃ面白いぞ!」と思ったのと同様に、おそらく観客や視聴者も「面白い」と感じたのだろう。
しかし過去の粗品を知っている身からすれば同じネタだ。そう。彼は言うなれば、全く同じネタでピン芸人の賞レースを2冠したのと同義なのである。
……とまあここまで酷評してきたが、やはり粗品をネタは面白いなと再認識した大会でもあった。「2本目の3人の中から選ぶなら、何だかんだで粗品かな」と思うほどに。いい映画は何度観ても面白い。名曲は何百回聴いても飽きない。それと同様に、面白いネタは何回見ても面白いのである。粗品、おめでとう。
ルシファー吉岡
『学校の日常を切り取る』というルシファー吉岡おなじみのコント。かつても『生徒の持ちネタ』や『息子のエロ画像』といった独自の着眼点でネタを構成していたが、今回は満を持しての『男子校が来年から共学になる』というシチュエーションでスタート。
ネタは終始、誰も傷付けないほんわかムードで突き進んでいく。特異なことは何もしていない。普通に先生がホームルームで話しているような空気感でもって、じんわり会場を吉岡色に染めていく。
中でも秀逸だったのは、生徒の心に寄り添う話し方。これは生徒に好かれる理想の教師像そのものであり、感情移入しやすかった。特に「俺だって、学食のおばちゃんが大盛りにしてくれるだけで好きになるぜ」の一言はゲラゲラ笑ってしまった。
ネタ後に宮迫が「上手だなあー」と語っていたが、シナリオの構成力といい雰囲気といい、いちピン芸人のコントとしては完全に確立している印象を受けた。『ピンネタの教科書』とも言おうか。
しかしながら、良くも悪くも4回目の決勝進出である。小田もマツモトクラブもそうだが、何度もネタを見てしまうと、観客側はある種のマンネリ感と共に飲み込んでしまう。これが賞レースの怖いところで、『新鮮に見れる』という意味では絶対的に初見の芸人の方がウケる傾向にあると思う。どうしようもないことだけれど。
インタビューにて「もちろん今年も行くっしょ?」という周囲からのプレッシャーから、ストレスも多く抱えていた年だったと語った吉岡。大丈夫。絶対に花開く時が来る。また来年に期待。
マツモトクラブ(復活ステージ2位)
ルシファー吉岡と同様、数年前の復活枠から頭角を現してきたピン芸人。今年も復活ステージを勝ち抜き、決勝へと駒を進めた。
今まで録音音声を用いた1対1でのやり取りに定評があったマツモトだが、今回はツッコミ要因を追加。しかもそれが人間ではなく『犬のジョン』というのが、何ともマツモトらしい。
『嘘を読み取る』という能力を持ったジョンが、今回のネタの肝である。しかし逆に言えばほぼ全ての笑い部分をジョンに託していたのは、若干一辺倒な感じも否めなかった。
もう少し言わせてもらうと、人間というのは逆言葉に一瞬考えがちである。「○○じゃなくなくない?」とか、「裏の裏の裏は表」といったものがそうだ。例えば時間が与えられている環境下であれば面白いだろうが、マツモトクラブのネタはスピードが命。中には『俺じゃない→ワン!→本当』といった流れもあるわけで、僕としては「ん?これはどっちだ?」と考えて真実が分かった頃には、もう次の話になっているといった状況が多かった。少し伝わりづらかったかなと。
だが最終的にはオチもバッチリ決まり、完成度の高いネタではあった。毎年良質なネタを携えてR-1決勝に進む彼を見ていると、単独ライブはさぞ面白いだろうなと思う。敗退という結果にはなったが、爪痕を残した一夜だったのでは。
だーりんず・松本りんす
バラエティー番組で公言している通り、松本は『おじさんキャラ』を確立している人物である。それこそコンパあるあるであったり、今回のカツラの一発芸のような、いわゆる『盛り上げるネタ』を複数持っている。
だーりんずがKOC決勝に進むようになってから僕がずっと感じていたのは「ピンネタも見てみたいなあ」という気持ちだった。実際松本は長い芸人人生で今大会がR-1初出場。「面白いネタが出来たから出ようと思った」と述べていたが、まさか決勝進出、しかもCグループを突破するとは思っていなかっただろう。
前述したように今大会は、観客のレベルがあまりにも低かった。だが松本のネタにおいては唯一それが項を奏した結果となったと思うのだ。「カツラです」とのカミングアウトでまず観客の心を掌握し、その後は『歓声が上がってこそ爆発的にウケる』ようなネタを連発した。
「おぉー!」という驚き + バカ観客の笑いでもって、一気に笑いの導火線に火が付いた。これに関しては松本にとって、最良のウケ方だったのではないだろうか。
既視感が芽生えてしまった2本目こそ低迷気味だったが、決勝常連組を押し退け、初出場にしてCグループ突破は素晴らしい。今後カツラ関係の仕事も増えそうな予感。だーりんず、結成8年目にして遂にブレイクか?
河邑ミク
今回披露した関西ディス系のネタで炎上している河邑であるが、実際河邑は関西出身。ネタ中は標準語だったが、日常会話は関西弁。ネタだけで彼女を批判している人は、ぜひこの事実を覚えておいてほしい。
河邑の事務所が東京にあることから、彼女は予選会場を常に東京に絞ってネタを行っていた。もちろん今回のネタも披露しておりバカウケしていたそうだが、もし予選を関西でやっていたら決勝進出は危うかったかもしれないと思う。それほどまでにキワキワのネタであった。
個人的に面白かったのは『大阪のひったくり件数全国1位』からの「もっとコスパいい犯罪あるのに!」という一幕。関西出身でありながら、女優業やお笑い活動で頻繁に東京に訪れている彼女。そんな彼女ならではの着眼点は流石の一言。
なぜここまで会場がウケていたのか考えたのだが、おそらく彼女の発言ひとつひとつが『イメージ通りの大阪』だったからではなかろうか。
例えば僕は島根県出身だが、東京に行った際は周囲の人間から「島根ってパソコンないんでしょ?」や「田んぼばっかりでしょ?」といった話ばかりされていた。実際その地域で長年暮らす人からすればぶちギレる話ではあるが、まあ何も知らない人からすればそういうイメージだろうと思うし、何なら僕が「そうだよー!」という返答をするのを待っている節すらある。
そう考えると今回の河邑のネタは、いわゆる『自虐ネタ』の部類に入ると思うのだ。彼女自身、東京に来た際に関西についていろいろ言われたのだろう。その経験を笑いに落とした今回のネタを批判するのはお門違いであるし、彼女に対して失礼な気もするのだ。普通に面白かったし。
三浦マイルド
前回に引き続き広島弁ネタで勝負をかけた三浦。更に今回はフリップを大きく使うことで、広島弁特有の言葉の荒さや衝撃を魅せていた印象。
フリップネタのメリットはテンポよくこなせることだが、その分どれだけひとつのフリップで笑いを取れるかが大事になってくる。かつての三浦マイルドもフリップネタを行っていたが、どれも爆発的な笑いを出すフリップが何個も入っていた。
それこそ過去の大会での「うちの母ちゃんええとこづきじゃけえ、宗教4つ入っとるんじゃ」「わし市民税払ろたことなー」「わしパープーじゃけえ、指定高推薦で大学落ちたんじゃ」という破壊力抜群のものと比較すると、どうも笑いが少なかったように思ってしまう。
『広島弁漢字ドリル』という使い方は秀逸であるし、世の漢字の数だけネタができる意味では、2本目のネタも見てみたかった。もし爆発的のあるフリップが量産できれば、優勝の可能性も十分にあった。残念。単独ライブで長尺でじっくり見たいネタである。
岡野陽一(復活ステージ1位)
KOCで2度ファイナルに進出した『巨匠』というコンビがいた。当時岡野の借金800万のクズっぷりを大々的に押し出したネタはかなりウケ、根強いファンがついていた。しかし巨匠は解散。結果として岡野はピン芸人となり今年のR-1に出場した、という背景があるわけだ。
さて、ネタに関してはもう完全に『相方・本田がいない巨匠』だった。「○○だろお前!」と連呼する岡野を観ていると、いつもの岡野が帰って来た感覚があって嬉しかった。
しかし今回のネタはウケなかった。理由はひとつ。観客である。今回の岡野のネタは終始悲鳴が木霊する、ひとつの地獄絵図となった。
今回の岡野のネタは総じて『コアなお笑いファン』と『対して興味のない一般客』の違いが顕著に表れたステージであったと思う。巨匠時代からサイコパス・岡野を受け入れていたお笑いファンと、ひょっこりはんや夢屋まさるで爆笑するような若い一般人。太陽と月。陽キャと陰キャ。肉食と草食……。そんな対極に位置する人たちが混ざり合うわけがない。
決勝で岡野がウケなかったのは必然と言える。岡野にとって、そして敗者復活戦会場で観ていた観客にとっては、あまりにも辛い思いを抱える大会となった。総じて「えぇ……」とドン引きしていた観客たちを一人ずつシバき倒したい思いに駆られた時間だった。お前らは全員帰れ。
おわりに
長々と書いてしまったため、続く2ネタ目については省略する。基本的に似通ったネタであったため、新たに何か書き記す必要もないだろう。
さて、僕が今回のR-1を観て感じたのは「より直接的な笑いがウケる大会になったのだなあ」ということだ。
もちろんそう感じる大きな要因はクソ観客だ。『エンタの神様』レベルの下卑た笑い声。甲高いウェイ系の爆笑。「フゥー!」と盛り上げる馬鹿。驚き。悲鳴。拍手喝采……。間違いなく今年のR-1を歴代最低の大会にした理由は観客である。
だからこそ、今後R-1に挑む芸人は考えるはずだ。「どうすればあの状況でウケるか」と。そうなると必然的に、馬鹿でも分かるレベルの直接的な笑いを軸としてネタ作成をすることになるはずだ。
でも僕は思う。「それってどうなの?」と。R-1はそんな大会だったか?様々なジャンルのネタを考え、それを披露する大事な大会ではなかったか?
R-1は一夜にして人生が変わる、お笑い芸人にとっては年に一度の運命の大会のはずだ。辛い思いでアルバイト生活をしながら、「これしかない」と全力を注ぎ込む。負ければ悔しい。時には涙を流す。しかし今の生活を一変させる最大のチャンス……。R-1はそんなピン芸人たちを救済する、唯一の高尚な大会ではなかったか。
僕は毎回DVDを購入したり、10回以上見返すほどにR-1が好きだ。しかし今回の大会は二度と見ようとは思わない。おそらくこの記事をアップしたら、もうR-1ぐらんぷり2019を見ることは十中八九ないだろう。
製作者よ。R-1はただのバラエティー番組ではない。燻っている芸人が人生を変えるための、重要な大会なのだ。そこを履き違えるな。
来年は今年の反省を活かし、より良い大会にしてほしいと強く願う。僕が言いたいことはこれで全部だ。
→M-1グランプリ2018の感想はこちら
→キングオブコント2018の感想はこちら