キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

Vジャンプ連載作品・石塚2裕子著『犬マユゲでいこう』の、とてもゲーム漫画とは思えないステルス表紙を全紹介する

こんばんは、キタガワです。


週刊ファミ通や電撃プレイステーションと並び、多種多様なゲームを紹介する有名ゲーム雑誌・Vジャンプ。その紙面でも長期連載作品として位置しているのが石塚2裕子による漫画『犬マユゲでいこう』であり、内容の大半がPS4をはじめとしたゲームの最新情報で形成される中では珍しい『漫画』として、長年連載を続けている。


ほぼゲーム雑誌連載陣のひとりながら非常にゲーム下手、そして好きなゲーム(戦国無双・テラリア等)は約1年~2年に渡ってプレイする反面、PS4を長年Blu-ray再生機のみとして使用しスマートフォンも未だ持たないなど、興味のないものは一切やらないというマイペースなスタンス、更にはVジャンプ編集長や担当を限界まで弄り倒す漫画家らしからぬ独特の展開が受け、犬マユは今や知る人ぞ知るカオス作品として確立した。


そんな犬マユの特徴のひとつとして挙げられるのが、あまりに予想の斜め上を行くコミックスの装丁であろう。全国各地の書店にて漫画ではなく『旅行』や『料理』の棚に置かれているとの目撃情報が多数、本誌でもそれらをネタにしている通り、犬マユのコミックスは初見では絶対に漫画と分からない装丁ばかりで、日本における様々な漫画と比較してもそのステルスぶりは年々激しさを増している。今記事では1997年に発売された第一作目『犬マユゲでいこう』から今年2021年6月に発売された『犬マユゲでいこう ワクワクいぬりえ』までの全15作品を画像付きで紹介。その特徴的な装丁に驚愕すると共に、ゲームの楽しさを多面的に考える内容にも踏み込んで記述していく。なお所々画像の荒い部分もあるが、これについては絶版のため参考画像が消失しているためであるためどうかご容赦願いたい。

 

 

犬マユゲでいこう
1997年6月25日発売(絶版)

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記念すべきファーストブック。なお『犬マユゲでいこう』『犬マユゲでいこう2』に限り現在は絶版で入手不可の作品になっており、以下『ア・ティエンポ』ではその内容の一部(犬マユ1と犬マユ2から17本)が再度掲載される形が取られているため何話かはそのまま読むことが可能だが、『ア・ティエンポ』収録以外の内容についてはほぼ知ることが出来ない状態にある。


ただ『ア・ティエンポ』前半の下部に記された『犬マユひっそりヒストリー』で初期のストーリーを少し読むこともでき、そこでは連載第1回目から担当編集とバチバチの激突を繰り広げる石塚の暴挙や、中古ソフトを購入するも裏面に持ち主の名前が記されているなどこの時からある種の犬マユらしさは確立されていて、改めて石塚のストーリーメイキングの上手さに脱帽すること請け合い。

 

 

犬マユゲでいこう 2
1999年5月25日発売(絶版)

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こちらも前作同様に絶版となっており、現在は入手困難な1冊。今作からは現在でも漫画の人気ポジションを担っているぬいぐるみの熊田、ロボ、トルネオ、赤い水星といったキャラクターが多く出現し、これまで『石塚+担当編集』の図式で続いていた犬マユからまたひとつ変化。


ファンにはお馴染みの編集長の座を虎視眈々と狙う担当編集・イヨクが初登場したのもこの頃であり、時にはぶん殴られ時には実写で出演と弄りに弄られる役回りで漫画に更なる彩りが加えられた。なお数年後イヨクは副編集長を経て本当に編集長へと成り上がってしまい、更には『最強ジャンプ』との編集長を兼任、現在では第三編集部の副部長まで登り詰めてしまったのだが、そんな彼の若かりし姿を見ることが出来るのは初期の犬マユならではだ。

 

 

犬マユゲでいこう ア・ティエンポ
2006年8月13日発売

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ここからが現時点でインターネットサイト等で購入可能な作品で、その中でも最も古い作品がこの『ア・ティエンポ』。年表を見ると一目瞭然だが、前作の発売からは約7年の年月が経過しており、冒頭に書き下ろされた特別漫画で熊田が発する「オリンピックより間隔が空いてるってどういうことだ」とのツッコミが全てを言い表している。加えて「なんで3、4巻じゃなくてサブタイトルなんだ?」との問いに関して石塚が「何となくだねっ」と返答していることからも分かるように、彼女にとってタイトルは然程気にしないに値するものらしい。


先述の通り『ア・ティエンポ』の内容は犬マユ1と2から選りすぐったものを再録する形をとっていて、今となってはかなり古いゲームハードも多数存在する。主に取り扱われるゲームはかまいたちの夜、ウィザードリィ、マリオカート64、ドラクエⅢ、どこでもいっしょなどスタンダードなものばかりだが、現在でも伝説の一話とされるホラーゲームのかまいたちの夜では主人公・透の名前を『透と100人の忍』、ヒロイン・真理を『真理とヒグマ』にすることで全く怖くないかまいたちの夜が成立してしまうよもやの展開の果て、セーブデータが消失する結末へと突き進んでいく。ちなみに『ア・ティエンポ』とはスペイン語で「間に合って」の意。

 

 

犬マユゲでいこう ウルヘンテ
2006年8月13日発売

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『ア・ティエンポ』と同日発売となった新作『ウルヘンテ』。前作は過去作の再収録であったのに対して、こちらには当時における最新話が収められており、以後コンスタントな発売に漕ぎ着けることとなる。主なゲームはマリオカート64、レンタヒーロー、ゼルダの伝説 時のオカリナ、ロード・オブ・ザ・リングの他、遂に出会ってしまった石塚のゲームバイブル真・三國無双などなど。特筆すべきはやはり『真・三國無双』であり、発売以降約3ヶ月間に渡って担当からの電話も「他のゲームをやった方が……」との忠告も無視してプレイし続けて『真・三國無双2』がリリースされても未だ1をやり続けるという心酔ぶりを見せた。


そして担当編集であったイヨクが編集長・ヨシクラから突然の担当解除を言い渡されたのもこの巻であり、きっと感動的な別れになるだろうという少女漫画チックなイヨクの心中とは裏腹に、淡々と承認して新担当に切り替える石塚との対比が笑いを誘った。ちなみに『ウルヘンテ』とはスペイン語で「差し迫った」の意。

 

 

犬マユゲでいこう ソルプレーザ
2007年3月27日発売

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ここから時系列に沿って定期販売される犬マユ。『ソルプレーザ』はイタリア語で「奇襲」の意で、犬マユのコミックスが何の前触れもなく突然発売されることから込められたタイトルらしい。なおこの巻から装丁に何らかのパロディ要素が込められ、なおかつ裏表紙も装丁に合わせ漫画らしからぬステルスさを醸し出すようになり、今作は海外のホラー映画に寄せた形に。


主なゲームはピクミン、どうぶつの森、零、シーマン、マリオゴルフなど。中でも注目は担当から口酸っぱくプレイしないようにと伝えられていた『真・三國無双2』であり、担当の思いむなしく石塚が手にしてしまった瞬間から、前作同様数ヵ月に渡ってこのゲームのことしか描かない事件が発生してしまった。なおそれから数ヵ月後、PS2は『トルネコの大冒険3』のセーブデータの消失がきっかけで押し入れに封印されることとなり、何故か編集部の反対を押し切って白黒のゲームボーイ作品『カエルの為に鐘は鳴る』に回顧するというまさかの展開も見せ、他にも担当編集イヨクが昇進して担当復帰する一幕など総じて衝撃展開だらけの問題作となった。

 

 

犬マユゲでいこう 熊田クリスピー
2007年12月26日発売

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多方面から「犬マユが書店にないんですけど……」との声が聞かれた超絶ステルス総丁が印象的な『熊田クリスピー』。装丁もさることながらページを開くとお菓子の切り込み口、巻末にはクッキーの作り方公開といろいろな意味で危ない作りになっていて、実際かなりの数が書店でゲーム雑誌棚ではなくクッキングの棚に置かれていたという。


主なゲームは塊魂、ドラクエⅤ、逆転裁判、もじぴったん、メタルギアソリッド3など。そのうち『ドラクエⅤ』の展開についてはファンの間でも評価が高く、「ドラクエⅤを2ヶ月やっているのにまだ最初の街から出られない」との衝撃の開幕から、誰もが予想しなかった「1日に1戦だけ戦ったら電源を落とす」という石塚のプレイスタイルが明るみに出るに至った(石塚いわく「世界の危機他人事プレイ」)。他にも最新ハード・ニンテンドーDSを「上画面って何のためにあるの?」と盛大にディスったり、『スーパープリンセスピーチ』では何度も拐われるピーチ姫を指して王国の危機管理の脆弱さに切り込み、最後には「自力で脱出できるでしょ」とプレイ自体を放棄する動きも見せた。本当にゲーム雑誌に連載しているのか疑わしくなるレベルで多方面にトゲを放った名作である。

 

 

犬マユゲでいこうGX
2009年6月30日発売

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当時Vジャンプで連載されていたカードゲーム漫画『遊☆戯☆王GX』を丸々オマージュした1冊。ただ今作のタイトル実現に際しては当然の如く作者の影山なおゆき氏、ひいては『遊☆戯☆王』原作者の高橋和希氏の許可が必要であり流石に無理かと思われたがすんなりOKが出たため発売に至ったとのこと。


主なゲームはマリオ&ルイージRPG2、大神、FFⅤ、レイトン教授など。なお今作では前作同様キワキワの展開が大盤振る舞いの巻としても知られており、『おいでよ どうぶつの森』というタイトルであるにも関わらず木が1本しか生えていない「まずまずの村」に招待される一幕然り、担当イヨクのリフレッシュ休暇により原稿チェックが失われたことからスーパーファミコンの『シムシティ』をやりまくる一幕然り、漫画家であるにも関わらず丸ペンとGペンを一切使えない石塚の仕事ぶりまで、いろいろと大暴走。イヨクが副編集長に昇格したことで再び担当を外れる流れまで怒濤の勢いで突っ走る巻となった。

 

 

犬マユゲでいこう 犬辞林
2010年9月26日発売

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今作は今までとは少し変化させ、集英社で発売されている国語辞典を模した総丁に。タイトルはその名も『犬辞林』。タイトルには実際の辞典よろしく金の箔押しがあしらわれており、これについては後に次作『旅マユ』にて「金の箔押し付ける!でも値段上げちゃダメ!」との石塚による徹底した交渉技術(ゴネとも言う)によるものであることが暴露された。


なおこの当時の石塚は一風変わったゲームを多数プレイする傾向にあったようで、主なゲームはパタポン、クロノトリガー、トモダチコレクション、ドラクエⅨ。それら以外はほぼ名も知られていないインディーゲーを取り敢えずプレイしまくる形を取っており、ある意味では非常に万人受けしづらい1冊に。ただそうした中でも犬マユらしさは変わらず、Vジャンプ創刊15周年であるにも関わらず石塚が今までのVジャンプを全てゴミの日に出してしまったり、増ページを拒否するなどファンを裏切らない展開のオンパレード。今作から長期間に渡り新担当・サイトーが進行を務めることが多くなったことで、サイトー弄りが本格化するのも見所。

 

 

犬マユゲでいこう 旅マユ どっちかというと福岡
2011年11月24日発売

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一見した瞬間分かる通り、犬マユ史上最もステルス装丁との呼び声高い大問題作……。それこそが今作『犬マユゲでいこう 旅マユ どっちかというと福岡』である。なおこうした作りとなった背景には、本編で福岡県にある『ナルティメットストーム2』の制作会社・サイバーコネクトツー本社に石塚が取材をしたことが大きな影響を与えていて、実際本誌の裏表紙にはCC2の目と鼻の先にある飲食店がフルコースの写真+住所と電話番号ありで掲載されている。しつこいようだが、本作はゲーム漫画である。


プレイゲームは428、喧嘩番長5、戦国無双 Chronicle、ナルティメットストーム2など。それらに加えて最新ゲーム機であるWiiや3DSにも触れる石塚であったが、接続した瞬間にWiiのコントローラーをぶつけて破壊してしまったり、3DSをプレイするも3Dボタンをセロハンテープで固定する暴挙を見せ何度もサイトーを困惑させてしまう。そして何を隠そう犬マユ読者に鮮烈な印象を与えたのが遂に編集長へと昇格してしまったイヨクの存在なのだが、祝福の言葉を期待するイヨクを石塚が無視しつつラストに「新編集長の上には真編集長、その上には神編集長ってのが存在してるのよ!」とイヨクを洗脳する流れで切り抜ける流れは犬マユらしさ抜群。

 

 

犬マユゲでいこう イヌマユ オブ アヴェルス
2013年3月27日発売

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どこからどう見ても人気RPG『テイルズ オブ』シリーズを題材にした表紙が目印の、その名も『イヌマユ オブ アヴェルス』。なお石塚がテイルズオブシリーズを実際にプレイしている様子は連載約27年間で一切描かれていないので、おそらくはプレイしたことはないのだろう。その証拠にページをめくると「運命とか宿命とか使命とか、もうめんどい。」という世界を救うことを目標に進む原作とは随分かけ離れた1文が記されている。


主なゲームは立体ピクロス、ファイアーエムブレム覚醒、新絵心教室、とびだせどうぶつの森など。3DS発売から間もないこと、更にはサイトーがニンテンドーのメーカー担当であることも影響してか、本作では3DSのゲームが極めて多く取り上げられている。しかしながらこのタイミングでもスーパーファミコンソフト『バウンティ・ソード』をプレイしてしまったり、Vジャンプ連載陣の元に直接イラストのダメ出しをしたりと傍若無人ぶりは加速する一方で、漫画のラストにはその連載陣のイラストがシールになって付属している(なお石塚のゴリ押しにより値上げはなし)。あらゆる点で石塚という作者の人間性が記された稀有な1冊。

 

 

犬マユゲでいこう かんたん いぬまゆげ
2014年9月30日発売

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異様なレベルで書店のお料理コーナーに置かれたとされるのが今作『かんたん いぬまゆげ』。もはやここまで来ると完全にわざとと言うか、石塚自身も本誌で関係各所に「ご苦労をおかけしてます」と綴っているのだけれど、こうした装丁になった理由については「プロが作るキャラ弁を間近で見たかったから」だそう。


プレイゲームはスーパーマリオ 3Dワールド、信長の野望、逆転裁判5、モンスターハンター4、牧場物語など。他にも石塚の家にパソコンとWii Uが導入されたことにも触れていて遂に時代に順応したかと思われたが、パソコン付属のマイクを鼻の穴に入れてしまう、ゲームディスクを逆に挿入する、買ったは良いがほぼYouTube再生機としてしか使わないといった相変わらずの機械音痴ぶりが露呈する結果に。ちなみに本作の冒頭では「犬マユのコミックスが売ってません」という質問に対し「初版で絶版になるから」という衝撃の一言(つまりこれまでの作品は1、2を含めて書店でもほぼ取り寄せ不可能)が放たれたことで、多くの犬マユファンを絶望に叩き込んだ。

 

 

犬マユゲでいこう 犬まゆ~げコミックス
2016年3月24日発売

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見た目が完全に少女漫画と化してしまった今作。石塚が今回の表紙でモチーフとしているのは有名少女漫画雑誌『ぶ~け』であり、許可を得るため連絡を取ったところ2000年に休刊していたという。


主なゲームはワンピース アンリミテッドワールドR、討鬼伝 極、世界樹と不思議のダンジョン、ガールズモード3など。注目すべきは現在に至るまで石塚のバイブルとなっている『テラリア』との出会いであり、2Dでありながら地面を掘り進めて自分好みの場所を作ることの出来るこのゲームを石塚はいたく気にいっていた。ただ誰もが石塚の一過性のブームかと思われていた『テラリア』が結果何百時間もプレイされていたと知るのは、また別の話。そしてもうひとつ、プレイのたびに借金契約をさせる憎きたぬきちとの最終決戦が行われたのが『どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』の回で、たぬきちに雇われたはずの石塚が顧客の家のコーディネートを完全に放棄するというサボり業務(布団を家に置いただけで終了)をしまくった結果何故か顧客から大評判。たぬきちからとてつもない感謝を受けてゲームをクリアしてしまうという抱腹絶倒の流れは必見だ。

 

 

犬マユゲでいこう ひとりで読める はじめての犬マユゲ
2017年11月21日発売

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アイロンビーズ化した熊田が目を引く犬マユ、その名も『犬マユゲでいこう ひとりで読める はじめての犬マユゲ』。これまで旅行やお菓子など様々なコーナーに置かれてきた犬マユだが、ここに来て未踏の地であった手芸コーナーに置かれることに。


主なゲームはドラゴンクエストビルダーズ、ペルソナ4 ゴールデン、ミートピアなど。そして悲しい出来事を我々が知ることになるのは中盤で、それは『テラリア』のセーブデータが消失し脱け殻になってしまった石塚のワンシーンから。「テラリアってチョコチョコっと弄るだけでしょ?」と必死に励ますサイトーであったが、実際の石塚は本来のスタート地点から遥か下まで掘り進めて広々とした帝国を建設していたことが判明。おそらく数ヵ月は再起不能かと思われたが、ゲームに関してはドMな性格が功を奏して復活した。……テラリアと同じくピクロスやペルソナ4、ミートピアもそうだが、当時の石塚は考えてプレイするゲームを好む傾向にあったようで、そうした意味でも今までとはまた違った1冊に仕上がっていると言える。

 

 

犬マユゲでいこう 石塚の犬眉毛 そこそこいつも通り262g
2019年4月25日発売

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かねてより石塚の嗜好品として取り上げられていた『岩下の新生姜』を大胆にオマージュした装丁で、プレイゲームは巨影都市、ドラクエⅨ、ドラゴンボールファイターズなど。しかしながらゲームのプレイ描写が極めて少ないのも今作の特徴のひとつであり、ドラクエⅨの発売に興奮するサイトーをよそに自宅でパスタを茹でていた石塚の一幕から、3DSを修理に出したところ11箇所の部品交換が必要になったり、岩下の新生姜ミュージアムに赴いたりと今回も平常運転の暴走を見せている。


なおこの巻から遂に長らく犬マユを支えてきた担当・サイトーが昇進。結果よもやの編集長イヨク、副編集長サイトーという犬マユ代表とも言える担当がツートップとなる新生Vジャンプが誕生した。サイトーに変わって担当に選ばれたのは元少女漫画編集のスズキであり、これまた個性の強い人物かと思われたが、石塚のレトロゲームトークに難なく食らい付く順応性を見せて直ぐ様石塚に気に入られるように。他にも連載300回記念企画や駅弁大会と内容も濃密。あっさりな新生姜とは対極に位置する代物となった。

 

 

犬マユゲでいこう ワクワクいぬりえ
2021年6月26日発売

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世界的に様々な変化があった2021年、ようやく発売に漕ぎ着けた現時点における最新刊は『ワクワクいぬりえ』。タイトルの通り漫画内の所々には塗り絵コーナーが用意されていて『本の内部に落書きが出来る漫画』として今までとは全く違うベクトルから攻めた作品。


主なゲームはドラゴンクエストビルダーズ2、みんなで空気読み。ラストラビリンス、囚われのパルマなど当然ながら最新のハードから何本かチョイス。中でも注目は今まで石塚が敢えてプレイしてこなかった『人狼ゲーム』であり、初心者中の初心者である石塚が役職やらルールやらを無視した試行錯誤の果てに突き進む結末は見所抜群で、総じてこれまで長らく続いてきた犬マユに新たな風を吹かせるような1本に。他にもコロナ禍に制作されたことで今までとは異なる部分も多々あるが、ネガティブな部分を一切見せずひたすら馬鹿をやる犬マユらしさは徹底されていて、ファンにはいろいろな意味で嬉しい作品となった。

 

 

……そもそもの話として、ゲームの上手さと漫画の面白さは決してイコールではない。事実ゲームに関して言えば他誌連載陣で考えてもみずしな孝之氏、福満しげゆき氏のようにある種のヘタッピぶりを売りにしている漫画家もいるし、それ以外にも『ゲームセンターCX』や『よゐこの○○で○○生活』などではマリオにおけるクリボーに何度も激突してしまうプレイぶりが好評を博すこともある今、何よりもその人物の人間性が読者を惹き付ける重要な要素になっている。


今回取り上げた『犬マユゲでいこう』作者である石塚も同じく、決してゲームは上手くないながらも傍若無人な振る舞いとストーリーセンスで着々と読者を獲得し、もうじき犬マユとしての活動は28年目に突入。確かに今記事ではその稀有なステルス表紙についてざっくばらんにまとめたけれども、きっと一読すればゲーム方面でも人間性的にも、また新たな面白さに気付くことは間違いない。……本文中にも綴っている通り『犬マユ』はいつどこで絶版になるかも不明で、かつ果たして絶版になったのか、販売が続いているのか、取り寄せが出来るのかといった部分まで石塚いわく「テキトー」主義で進めている。故に通販サイト等で入手しようとすれば、それは今この瞬間にしかあり得ない。石塚が織り成すめくるめく暴走の世界を、是非ともこの機会に堪能して欲しいと強く願っている。