キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【中編】爆速で終わるロックバンドの曲15選

こんばんは、キタガワです。


日本ロックシーンに存在する短い曲、その中でも2分以内に幕を閉じる15曲に絞っての紹介を試みる『爆速で終わるロックバンドの曲15選』前回は前編として29秒で終幕するandymoriの他、様々な系統のバンドに焦点を当てて紹介してきたが、今回は前編を踏まえての中編をお届け。紅白歌合戦連続出場の国民的アーティストの他、2人組の兄弟デュオ、未だ解散を惜しむ声が止まないバンドなど、総勢5組の爆速で終わる珠玉のロックソングを列挙していく。再生した瞬間に心を掴まされる珠玉の爆速音楽の世界に酔いしれる契機となれば幸いである。

 

 

出逢って8秒/ゴールデンボンバー(0分08秒)

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誰もが予想だにしない抱腹絶倒の空間に誘うエアーバンド、ゴールデンボンバー。突発的な危険行為でフロアを沸かせる“抱きしめてシュヴァルツ”然り、メンバーへの黄色い声を起爆剤としてクライマックスへ突き進む代表的アンセム“女々しくて”然り、彼らは楽曲中はもちろん、外部的なパフォーマンスにも目を向けた独自性の高いアクションで人気を得たバンドであることは周知の通り。


今作“出逢って8秒”も例に漏れず『ゴールデンボンバーらしさ』を前面に押し出した楽曲となっている。なお何故この楽曲が僅か8秒という短時間で幕を閉じるのか、その理由については当時流行の最先端をひた走っていたコミュニケーションサービス・LINEにおけるボイススタンプの制作のためで、「ボイススタンプの最大収録時間ジャストの8秒間に収まる楽曲を作ろう」との思いからであったとしている。その短さからか当然の如く、今作はMVはおろかアルバム自体にも収録されていない正真正銘のレア曲となった。


では何故今楽曲のタイトルをインターネット上で検索すると大量の検索結果が出現するのか。それはこの楽曲のライブ映像がSNSとYouTubeを中心に大いにバズったためだ。以下の動画内では、登場から8秒ジャストでステージを退出するメンバーの姿の一部始終が映し出されているが、今も昔も不変のエンタメ性でリスナーに衝撃を与え続けるゴールデンボンバー。彼らが世間一般的に呼ばれる『一発屋』としていつまでも消えないことには、紛れもない理由がある。

 


ゴールデンボンバー、新曲披露は8秒で終了 異例の「8秒フリーライブ」開催

 

 

カレーライス/錯乱前線(1分14秒)

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弱冠20歳のロックの新星、錯乱前戦。彼らの最大の魅力は往年のロックアーティスト的アクションを多大な愛でリスペクトしたそのサウンドメイクであるが、楽曲に関しても凄まじい猪突猛進ぶりを貫いている。事実昨年リリースされた初の全国流通盤『おれは錯乱前戦だ!』では3分以内に幕を閉じる楽曲が何と全体のおよそ3割、歌われる内容もほぼ荒唐無稽な代物というあまりにパンクな代物であったが、以下の“カレーライス”では僅か1分14秒という短時間にロックの初期衝動をこれでもかと見せ付ける、性急なサウンドが鼓膜を揺さぶるロケンロー。


歌詞にこそ《ふつかめのカレーのにおい/君が好きなら僕も好きだよ》と記されてはいるもののカレーについて描かれる場面はこの一幕のみである。おそらく彼らにとってタイトルが“カレーライス”であること自体然程意味はないだろうし、極端な話をしてしまえば、歌詞を完全に蔑ろにして絶叫のみで進行したとしても、全くの無問題であろう。何故なら彼らにとって大切なものは『ロックを爆音で鳴らすこと』ただ一点に尽きるのだから。


“カレーライス”含め彼らの他の楽曲にも言えることだが、例えばメロとサビを繰り返し、Cメロを付け加えれば間違いなく2分50分程度に引き伸ばしたリスナーが聴く上で最適な時間尺に収めることが出来る。ただ彼らが頑なにそうしないのは、あくまで自らの衝動を第一義として捉えているからに他ならない。コロナ禍に誰もが憂う現在でも精力的なライブ活動を行い、熱狂を生み出し続ける錯乱前戦。この勢いを「若さゆえの焦燥」と一蹴することは簡単だが、決してブレないポテンシャルの高さこそ、やはり錯乱前戦に心を突き動かされる何よりの要因であるとも思うのだ。

 


錯乱前戦 - カレーライス

 

 

涸れない水たまり/TarO&JirO(0分49秒)

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アコースティックギターを用いてアグレッシブなサウンドを鳴らす兄弟ロックデュオ、TarO&JirO。ある種カラフルな部分を中心に展開したファーストアルバムとは対照的に、彼らのダークな部分を前面に押し出したセカンドアルバム『OVNI』のオープナーに冠されているのが“涸れない水たまり”である。


以下の動画ではエフェクターを介した広域的なギターサウンドで展開される“涸れない水たまり”から、アッパーな“Once in a while”へシームレスに移行する一部始終が収められている。実際“涸れない水たまり”は動画内と同様に長らくライブにおけるSEとしての役割を果たしていて、この楽曲自体が大々的に鳴らされる瞬間は基本ない。しかしながら、緩やかに熱量を高めていく流れは次曲に繋げるジャブとしてはこれ以上ないスタート。直後に鳴らされる彼らの印象的なギターテクニックにも、更なる光を及ぼすというものだ。


今楽曲が収録されたアルバム『OVNI』は激しいロックサウンドが覆い尽くす、TarO&JirOの歴史を鑑みても極めて洋楽色の強い作品となった。そんな中に取り入れられた“涸れない水たまり”は言わば楽曲から楽曲に繋ぐインタールード的な重要部に位置しており、1枚のアルバムのダレない進行を考えたとき『最も全体を効果的に魅せる手法』としてガッチリ噛んでいる。メディア等々ではTarO&JirO=ストリート発のロックデュオであるとの記述が多数見受けられるが、彼らは今でも音源以上にライブ基準で動いている。以下の動画内で“Once in a while”のみのMVを制作するのではなくあえてこの楽曲の存在を残していることについても、彼らにとって強い意味合いがあるように推察してしまうのはあながち間違いではないだろう。

 


TarO&JirO / 涸れない水たまり~Once in a while

 

 

自己愛、自画自賛、自意識過剰/MIYAVI(1分00秒)

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スラップ奏法を駆使した稀有なスタイルで、国内外問わず多くの音楽ファンの度肝を抜いた現代のギターヒーロー、MIYAVI。彼の楽曲の中で特にギター愛好家から広く知られているのが、この“自己愛、自画自賛、自意識過剰”と名付けられたインスト曲である。


前述の通りMIYAVIの代名詞的な魅力といえばその卓越した演奏スキルであり、キラーチューンたる“What's My Name”を筆頭とした様々な楽曲内で、彼のギターテクはサウンドを牽引している。そしてそれは同時に、MIYAVIはたとえギター1本でもほぼ全ての楽曲を完成に導くことが出来るとの証明でもあって、今作が収録されたアルバム『【雅-みやびうた-歌】~独奏~』では収録曲の全てを彼ひとりの演奏でこなす画期的な試みに着手した。


スラップからスライド、スラム奏法(ボディーを叩いて音を出すこと)、果てはフィンガースナップまで、MIYAVIのスキルを網羅するが如くのジャスト1分であることを感じさせない密度で駆け抜けていく“自己愛、自画自賛、自意識過剰”。しかも彼の扱う武器は比較的スラップ難度が低いと言われるエレキではなく、アコースティックギターであるというから驚きだ(なお基本的にスラップはベースのみに使う奏法のため、ギターではまずもって行わないのが通例)。ギター1本で奏でられるその圧倒的なサウンドに触発されてか、この楽曲は現在でもYouTube上の所謂『演奏動画』の超絶難度の楽曲として国内外の様々なギタリストに演奏されていて、結果彼は愛を込めて『サムライギタリスト』と呼ばれるに至った。単なるシンデレラストーリーではなく、愚直にギターテクニックを底上げしての努力の知名度。“自己愛、自画自賛、自意識過剰”は総じて、そんなMIYAVIを語る上でマストな意欲作と言えよう。

 


MIYAVI Guitar Slap

 

 

キェルツェの螺旋/the cabs(1分45秒)

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現KEYTALKの首藤義勝(Vo.B)、現Österreichの高橋國光(Vo.Gt)、元plentyの中村一太(Dr)の3名により結成されたロックバンド・the cabs。彼らは首藤の清らかな歌声に高橋のデスボイスが乗るというあまりに独自性の高い楽曲群で話題を呼んだ。取り分け彼らの登場以降『ロックバンド=四つ打ちサウンド』の認識は定着化したけれど、そうした中でも一風変わったロックバンドとして、目の肥えた音楽好きの注目の的となった理由は間違いなく、彼ら特有の主張に主張を重ねたそのサウンドにある。


セカンドミニアルバムに収録された“キェルツェの螺旋”は彼らの唯一無二の存在感を短時間に凝縮したロックとなっていて、良い意味で異物感溢れる楽曲は彼らの数少ないライブでも代表的アンセムにもなり、後に公式MVも制作される程人気の高い代物となった。楽曲内の印象部としてはやはり高橋によるデスボイスで、逆に考えれば高橋の歌声を廃することで爽やかなポップロックにもなり得るが、断固として絶叫を入れるその穿ったスタンスもまたthe cabsらしさなのだろう。


なおthe cabsは2013年に高橋の突然の失踪により解散。現在は各自が主軸を置くバンドでの音楽活動を行っている。中でもKEYTALKは言わずもがな、高橋の新バンドÖsterreich(オストライヒ)はテレビアニメ『東京喰種』のオープニングテーマを担当する飛躍ぶりを見せている関係上、おそらくthe cabsの再結成の可能性は極めて低いと推察する。ただ現在でもバンドの再結成を待ち望むファンの声は途絶えることはなく、如何にthe cabsの楽曲の持つ求心性が高いものであったのかを感じさせる。変遷を遂げるバンドシーンにおいても取り分け短命のバンド・the cabs。期せずしてメンバーの他バンドの音楽性は当時の時代と大きく異なるものとなったが、こうした活動もthe cabsがあってこその代物であることは、ゆめゆめ忘れてはならない。

 


the cabs / キェルツェの螺旋【Official Music Video】

 

 

……さて、次回はいよいよ後編へと突入。昨今各地のフェスに引っ張りだこのあのグループの他、現在は活動の動向自体が不明のまま数年間沈黙を続けるミステリアスなバンドなどラスト5組を紹介していく所存である。乞うご期待。