こんばんは、キタガワです。
今や音楽シーンは多様化し、今まで考えられなかった形態のバンドやアーティストが増えてきた印象がある。
例えばアイドルは既存のキャピキャピした楽曲のみならず、欅坂46のように社会風刺やメッセージ性を重視したり、片やPasscodeのようにデスボイスを全面に押し出したり。もはやそこにはジャンルの定義はなく、各々の個性を生かした音楽でもって勝負している感覚がある。
アーティストそのものを見ても、米津玄師や須田景凪といった元ボカロクリエイターが自身の歌声で歌うのはもちろんのこと、VTuberやYouTuberまでもが参入するなど、多種多様だ。そこで僕は思うのだ。「別に顔見せないアーティストがいてもいいんじゃない?」と。
……さて、話が長くなってしまった。今回はそんな『素顔を見せていないアーティスト』に焦点を当てて紹介したいと思う。
アーティストの素顔も含めて評価される昨今、顔を見せずにあくまで音楽のみに絞って人気を獲得するのは、かなりリスキーであると言える。
音楽の力だけで勝負したいから。そもそも顔を見られたくないから……。いろいろな理由はあるだろうが、顔を見せていないアーティストはどことなくミステリアスな雰囲気も醸し出しているし、『顔を見せないこと』の魅力も大いにあると考えている。
一応補足しておくが、今回紹介するのは『アーティスト写真等で、顔を公表していないアーティスト』である。よってライブ会場で顔を出しているものは、これに含む。
本来であれば12組取り上げるつもりだったのだが、思った以上に長文になってしまったので、前後編に分けて公開します。
それではどうぞ。
Gorillaz
海外のバーチャル覆面音楽プロジェクト。
画像を見ると分かる通り、ゴリラズは架空のキャラクターをモチーフに作られている。このキャラクターにはそれぞれアニメ・ストーリーが製作されており、サイボーグに改造される、北朝鮮の浜辺に打ち上げられるといったストーリーがYouTube上で頻繁に公開されている。それに伴ってキャラクターの姿形も毎年変わったり、増減したりする(ちなみに上の画像のメンバーのひとりは去年逮捕されたため、現在は新メンバーが加入)。
数年前まではライブ会場においても素顔を晒すことはなく、暗幕を垂らしてキャラクターを投影し、暗幕の後ろで歌ったり演奏するという、かなり異質なバンドだった(下記動画参照)。
近年のライブでは、首謀者であるデーモン・アルバーンの存在を前面に押し出しており、今までのように『顔を見せない』ということはない。しかしながらキャラクターを投影するライブ方針は変わっていない。
楽曲においては、激しくノらせる形ではなく、ゆったり体を動かすような曲調。デーモンもボーカルもボソボソと語りかけるような歌いかたに徹しており、キーボードとの対比も光る。
ちなみに海外バンドきっての親日家としても知られており、ほぼ毎年来日している。今年も何かしらのアクションをしてくれることを期待したいところ。
Gorillaz - Feel Good Inc. (Live At The MTV EMA's)
ずっと真夜中でいいのに。
2018年に突如として公開された『秒針を噛む』が1000万再生を記録し、一気に注目を浴びた謎のアーティスト、ずとまよ。
昨年発売された初アルバム『正しい偽りからの起床』では、キーボードが印象的なロックサウンドや日用品でのパーカッションを用いた実験的な楽曲。果てはゆったりしたバラードなど、ジャンルレスな楽曲たちで楽しませ、今の音楽シーンにおける強い存在感をアピールしてくれた。
現在明かされているのはボーカルの名前が『ACAね』なる人物であることだけで、このグループは果たしてバンドなのか、ソロユニットなのかも分からない。全くもって無名かつ謎ながら、ここまで有名になったのは驚き。
先日東京で行われたライブ『1st Live まだ偽りでありんす。』にて、初めて顔を明かしたとされている。しかしながら実態は未だ不明のままだ。
初ライブにて未発表の新曲を多数演奏し、次のアルバムへの期待を膨らませてくれたずとまよ。まだアルバム1枚しかリリースしていないが、今後間違いなくメジャーな存在となるだろう。
YMCK
8ビット楽曲の申し子。『ワイエムシーケー』と読む。
彼女たちの特徴はそのサウンド。一度聴いたら耳から離れないファミコン時代を彷彿とさせるサウンドは唯一無二で、海外での活動も活発化している。2003年から活動している息の長いユニットで、現在も不定期ではあるがライブ活動やCDリリースを行っているようだ。
音楽雑誌やメディア等で顔を晒す際は、必ずドットのイラストを合成して被せる。しかしライブは素顔で行っているため、こちらも素顔を確認する方法は現状ライブのみである。
いきものがかり『きまぐれロマンティック』のPVも手掛けたりと、映像面での活躍も目覚ましい。至ってマイペースな活動ではあるものの、今後も目が離せない存在だ。
ちなみに公式サイト上で公開されているフリーウェア『ソフトウェア・シンセサイザー』を使えば、誰でもYMCKのような8ビットサウンドを手軽に作ることができる。気になった方はぜひ。
相対性理論
『LOVEずっきゅん』で一世を風靡したロックバンド。
結成当初から現在にかけてマイペースすぎるほど不定期な活動を貫いており、アルバムリリースやライブは行うことは行うのだが、リリース期間が3年以上空いたり、全く音沙汰がない年もあるほど。
インタビューやテレビ出演も一切ないため、メンバーの顔は謎に包まれており、確認する術は現状ライブのみである。しかしながらそのライブも年に1回ほどしか行わないので、ポケモンのラッキー並みに遭遇率は低い。
アーティスト写真は数年前から全く同じものを使い続けているため、成長の過程等を知ることも不可能。音源に関しても謎の記号だらけのアルバムを発売したり、自身の声をサンプリングして曲にするなどの実験的な作品を多く作り出しており、2019年現在でも最もミステリアスな存在であると言える。
「相対性理論のライブ行ったよ」と言うだけでも激レアなので、予定が合えばぜひ行ってみてほしい。ちなみに現状、残念ながらライブの予定は一切立っていない。
H△G
音楽コンポーザー集団。名前はハグと読む。
現在はメジャーデビューを果たし、タイアップも手掛けるようにはなったが、かつてのH△Gのコンセプトは異質だった。それは『「君の知らない物語」のストーリーを元に曲を作る』というもの。YouTube上で公開されている『星見る頃を過ぎても』という曲が顕著だが、歌詞を見ても楽曲を聴いても、どことなく『君の知らない物語』がイメージとして浮かんでくる。
しかしそれはH△Gの認知度を高めるための策略である。一聴すると確かに『君の知らない物語っぽいな』というイメージはある。だが彼らは、徹頭徹尾オリジナリティー溢れるH△Gのサウンドを鳴らしているだけで、別にその楽曲に寄せているとか、そういったことはない。作ろうと思った曲がたまたま『それっぽかった』から、あえて表現しただけなのだ。
僕は『きみしら』云々に関わらずH△Gの楽曲を評価しているし、その結果がメジャーデビューなのだ。先程公式PVを見てみたのだが、以前タイトルに含まれていた『君の知らない物語~』という表記は消えていた。彼らはもう『きみしら』のイメージに囚われるのを辞め、極上のポップスを鳴らし始めている。
Nulbarich
2017年の音楽シーンに突如現れた新星、ナルバリッチ。
彼らの特徴は、その特殊なバンド形態にある。ライブも精力的に行い顔も見せているのだが、メンバーの数は固定されていない。そう。彼らはライブごとに人数が入れ替わる珍しいバンドなのだ。
そこには唯一素顔を明かしているJQの、「曲がよければそれでいい」という強い思いがある。曲に自信があるからメンバーの顔を見せる見せないはどうでもいいし、最高のパフォーマンスが出来るのであればメンバーは減らしてもいいと。
そんな彼らの楽曲は、海外のテイストを存分に入れ込んだナンバーが揃っている。ベースの音色でリードしながらリズムを刻むことで、昨今のロックシーンにはないファンキーな雰囲気で楽しませる。決して踊り狂ったりはできないが、ゆったりゆらゆらノれる魅力がある。
事実昨年は武道館講演を成功させており、CMソングの起用など、楽曲の評価は折り紙つきだ。ニューアルバムのリリースも決定しており、今年は更なる飛躍の年になりそうだ。
Nulbarich - NEW ERA (Official Music Video)
amazarashi
このブログは何度も取り上げているバンドだ。詳しくは記事を一番下まで降りてもらって、検索の部分に『amazarashi』と入れてみてほしい。
彼らはライブにおいても素顔は見せない。ライブでは暗幕を貼って歌詞を投影するスタイルで進行する。彼らが顔を出さない理由は、顔や演奏スタイルといった外的要素を排除し、楽曲そのものの魅力でもって勝負したいから。加えてフロントマン秋田ひろむ自身がコミュニケーションが著しく苦手である、という部分からである。
amazarashiは挫折した経験や自殺願望、喪失感といった、内に秘めた鬱屈した思いを歌にして発信する。それは毎日が楽しく、充実しているような人からしたら受け入れがたい音楽だろう。しかしこの音楽が刺さる人も、間違いなくいるはずなのだ。
彼らのメッセージを聴いたとき、あなたは何を思うだろう。辛いとき、苦しんだとき、もう死にたいと思ったとき。彼らの音楽はきっとあなたの背中を押してくれるはずだ。
amazarashi Live Tour 2016 世界分岐二〇一六 『多数決』
……残り6組の紹介は次回に続きます。