こんばんは、キタガワです。
MOROHAを知ったのは2年前。某バラエティー番組での俳優、東出昌大氏の発言からだった。
とあるコーナー内で、彼ははっきりとMOROHAの名を口にした。今では世間に広く知られるようになったMOROHAだが、当時の認知度は極めて低かった。
出演者は顔を見合わせて口々に「知らない……」と言っていたし、テレビを観ている僕も同様だったのだが。後に満を持して登場したMOROHAは、人生の酸いも甘いも閉じ込めた応援歌『革命』でもって、文字通り鬼気迫るパフォーマンスを見せてくれた。
〈真っ暗闇の世界に書き殴る 蛍光ペンを求めて〉
〈半径0メートルの世界を変える 革命起こす幕開けの夜〉
飾らない言葉で、裸の思いをぶつけたMOROHA。上がりに上がったハードルを軽々と超えるパフォーマンスに、曲が終わると出演者一同「これは売れる」と太鼓判を押し、ネット上では賛辞の声で溢れた。
しかし僕の心に、MOROHAの曲は刺さらなかった。
漠然と「いいなあ」とは思うものの、それからCDを購入することもなければ、『革命』を繰り返し聴くこともなかった。
そんな僕の気持ちが変わったのは、数ヵ月後。地元でのとあるライブハウスで披露された『革命』で、僕の心は大きく揺さぶられることとなった。
〈今日が終わる いや今が終わる〉
〈そう思えた奴から明日が変わる〉
目を血走らせ、汗まみれになりながら言葉の散弾銃を撃ち込むアフロ。ロボットのような正確さで、超絶技巧でギターを弾き倒すUK……。皮肉なもので、テレビの画面越しでは全く心に響かなかった『革命』がきっかけとなり、僕は一瞬でファンになってしまったのである。
アルバムを買い、ライブがあると知れば足しげく通った。僕の脳天に渾身の一撃を喰らわせた『革命』は、行く先々のライブ全てで演奏され、その度にアフロは血管が浮き出るほどの力を振り絞りながらメッセージを送り続けた。そして地道に、かつての僕のような新たなファンを獲得していった。
現在の音楽シーンにおいて彼らの音楽は、はっきり言って異端である。編成はMC、ギターのふたりだけ。ギターのUKはコード進行を排除し、叩くように一音ずつ鳴らす。MCのアフロはボーカルではなく、もはや詩人だ。彼らの手本となる者も存在しなければ、後続のミュージシャンもいない。だが彼らは一貫して自分たちのスタイルを曲げなかった。
そうしてがむしゃらにもがき続けたひとつの結果が、メジャーレーベル移籍とだと思う。彼らは決して天才という言葉では語れない。言うなれば『努力の凡人』だ。
6月6日に発売されたベストアルバム『MOROHA BEST~十年再録~』に収録された『革命』の冒頭、アフロは語る。「いやーしかしあっという間だよな。俺たち今年で30だぜ」。過去に発売されたアルバムでは「俺たち今年で26だぜ」と言っていた彼らだが、気付けば4年も経つのか。月日の流れは早いものだ。
これからも続いていくMOROHAのライブに、僕はあと何回立ち会えるだろう。もしかしたら以前のように、頻繁にライブに参戦することは叶わないかもしれない。だが彼らはどんなときでも、僕が「行けばよかった……」と後悔するようなライブばかりをやってくれる違いない。
MOROHAの活動は今年で10周年を迎えたけれども、いつかの『革命』の冒頭で「俺たち今年で50だぜ?』と言うくらいまではやってほしいと思う。できるだろ?MOROHAなら。