こんばんは。キタガワです。
僕は映画館でアルバイトをしている人間だが、お客様に『今話題の映画は?』と尋ねられることがよくある。そのとき、僕はこう答えるようにしている。
「『万引き家族』です」。
映画『万引き家族』の勢いは、はっきり言って凄い。僕の勤務先である映画館でも連日大勢のお客様が訪れ、ここ数週間はほぼ満席だ。
最近では「従業員が少なくて捌ききれない」との理由から勤務時間が前倒しになったり、ジュースやポップコーンの補充に四苦八苦する日々。「万引き家族コノヤロウ」と思ったことは、一度や二度ではない。
で、「なぜ『万引き家族』はこれほど人気なんだ?」っつー話である。理由はただひとつ。パルムドールを受賞したからだ。
パルムドールとは、カンヌ国際映画祭における最高の賞である。要はフランスという『国』が、「アンタの映画、今年出た作品の中で一番ダヨ!」と認めた証である。
しかも日本人(是枝裕和)での受賞は、なんと21年ぶりだそうだ。ひとつの国が「一番面白い」と太鼓判を押し、ニュースでも緊急ニュースとして報じられた。そりゃみんな観るわという話である。
……というわけで『万引き家族』、観てきた。
結論としては、めちゃくちゃ面白かった。上がりに上がったハードルを軽々越えてきた。素直に「良い映画だったなあ」と思える出来だ。
だが同時に、「万人受けはしない映画だな」とも感じた。以前紹介した『友罪』でも感じたことだが、賛否両論がはっきりと分かれる作品なのは間違いない。
僕は家族一同で観賞したのだが、『友罪』をボロクソに批判していた父親なんかは微妙だったらしいし、逆に『友罪』に好印象だった僕や母親は「もっかい観たい!」と言っていた。
まず大事な部分を書いておくと、『万引き家族』は、かなりスローな作品である。
要は、物語の起伏が少ないのだ。日常を淡々と描くシーンがかなりあるが、それに起承転結は存在しない。例えば大ヒットを記録した『君の名は。』なんかは、随所に盛り上がるシーンが設定されており、飽きずに楽しめた映画だったのだが。
おそらく気が短い人や、心にズドン!と来るシーンが複数ある映画が好きな人には、この映画は向かない。多分途中で眠くなると思うから。
逆に、淡々と進行する、雰囲気を重視する映画が好きな人には、確実に刺さる。類似する日本映画は『あん』や『パレード』などだろうか。
僕が観賞後に思ったのは、この作品がカンヌ国際映画祭で評価されたのは、かなり意外だということ。なんというか『万引き家族』は日本人にしか作れないし、日本人にしかウケない映画だと思うのだ。
日本人初の快挙。連日映画館は大盛況。まさに天晴れな映画と言えよう。僕はあと2回は観れる。
最後に。カンヌ国際映画祭審査員であるCate Blanchett氏が「もし今回の審査員の私たちがこれから撮る映画の中で○○をしたら、安藤サクラの真似をしたと思ってください」と語っていたが、なるほどと思った。安藤サクラの演技、一見の価値ありだ。
『万引き家族』ブーム、まだまだ続きそうである。明日のバイトも面倒くさそうだ。