キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

映画『日日是好日』感想

こんばんは、キタガワです。


映画館を出た僕は、まるで立ち込める霧の中から、久方ぶりに外へ出たかのような気持ちになった。


もう最初に書いてしまうが、この映画は問題作である。おそらく今年のアカデミー賞で名前が上がる可能性大の作品だとは思うのだが、それはそれとして、相当な問題作である。何だったんだ一体。


僕がこの映画を観に行った理由というのは至極単純で、『樹木希林が出演した最期の作品だから』というものだった。あんこ作りを朗らかに指導する『あん』や今年大ヒットした『万引き家族』といった、昨今の樹木希林の出演作品を観るたびに、「この人の代わりはどこにもいないだろうな」と漠然と感じていたし、今年の9月に彼女が亡くなったときは、ひとつの時代の終焉を感じたものだった。

 

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そんな彼女の生前最期の作品こそが、今回紹介する『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』だ。


ストーリー展開としては、樹木希林演じるお茶の先生が、大学生の若い女性たちにお茶の立て方を教える、という流れである。


ではなぜ冒頭に『問題作』と称したのか。それは、この映画があまりにも淡々と進行するからだ。


以前紹介した『友罪』『万引き家族』もかなりのスロー展開であり、確か当時は「物凄く人を選ぶ映画です」といった文を書いたと思うのだが、この『日日是好日』に関しては、その2作品と比較するのもおこがましいほど、常軌を逸したスロー展開なのだ。


この映画ではお茶を立てる様子、お手前、風景が、あまりにも淡々と描写されて進行する。例えば『君の名は。』や『カメラを止めるな!』などの盛り上がる部分が複数あり、カチカチっとピースが填まるような映画が好きな人なんかは、あまり向かないといった印象。


何なら10代~20代前半くらいの若者、加えて全ての男性を、まとめて切り捨てるような作品とも言える。


……というわけでこの映画は、40代~80代くらいの女性が観るべき映画であると断言する。もしくは茶道を習っている人。おそらくそういった人たちには一生ものの映画になるだろう。


心がじんわりと温かくなる映画で、観賞後には当たり前の日常に感動すること間違いなし。興味のある方はぜひ劇場まで。


あとこれは余談だが、樹木希林の演技はやはり凄い。「これは映画会全体の痛手だなあ」と、改めて感じた次第である。

 


『日日是好日』予告 2018 年10 月13 日(土)公開