キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

日本アカデミー賞優秀賞。映画『孤狼の血』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。


『日本アカデミー賞』なる賞がある。これは年内に上映された映画の最高峰を決めるもので、映画界における最高の名誉のひとつだ。中でも優秀作品賞は、大きな期待と称賛と共に世の中に広がっていく。そこからDVDや原作小説の更なる売上に繋がる、非常に重要な存在なのだ。


もちろん受賞作は必然的に、ブームを巻き起こした作品が並ぶこととなる。悲しき家族の団結を描く『万引き家族』やインディーズ映画の逆襲的作品『カメラを止めるな!』、北の国からの流れを組んだ『北の桜森』など、受賞した作品の多くは言わずもがなな作品ばかりだ。


しかしそんな中でも、一際異彩を放つ作品があった。それこそが今回紹介する『孤狼の血』である。

 

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『孤狼の血』がアカデミー賞に選ばれることは、全く予想外の結果だった。その理由はふたつ。


まず、内容がヤクザ映画であること。この映画はふたつの組に属するヤクザの、血で血を洗う抗争にスポットが当てられる。そのため必然的に、過激な言葉を連発して拳銃をぶっぱなしたり、命の取り合いが頻発する映画となっている。他の受賞作が人間の慈しみや風景描写を売りにしている中、この作風は極めて異質である。


ふたつ目はR15+指定という点。そもそもR15の作品が大衆向けの『日本アカデミー賞』に食い込むことはかなり稀なことで、ここ数年でもほとんど例がない。


このふたつの事柄から鑑みても、『孤狼の血』の受賞は普通ならあり得ない、かなりイレギュラーな結果であることが分かる。


しかし人間は、そこまでイレギュラーな情報を仕入れてしまえば、逆に気になってしまうものだ。ここまでアカデミー賞受賞におけるデメリットを孕んだ作品が、なぜ受賞と相成ったのか。その真実を確かめてみたくなったのだ。


……というわけでDVDをレンタルし、鑑賞してみることにした。鬼が出るか蛇が出るか。


結論を書く。この映画は凄すぎる。ちょっと言葉にし辛いのだが、血みどろのヤクザ映画に現代のエッセンスをふりかけた、完璧な作品だった。個人的には『万引き家族』や『カメ止め』を抑えて、大賞を受賞する可能性も大いにあると感じた。それほどの傑作である。


ネタバレは避けるが「ただのヤクザ映画っしょ」という認識で観ると、痛い目を見る。これはヤクザ映画であってヤクザ映画ではない。バイオレンスも感動もごちゃ混ぜにした、ある種のミステリー映画のようだった。僕は普段任侠映画はあまり観ないのだが、そんな凝り固まった考えを持った人にも刺さる映画だ。観賞後は『晴れやかな気持ち+センチメンタルな気持ち』になること請け合い。こんな映画観たことない。


ただ、ほぼほぼ男にしかウケない……というか理解されない作品であるとも思った。ウンコチンコで笑えるか笑えないか。性に対しての捉え方。暴力やギャンブル、流れる血を見て何を思うか……。男が生まれついて持っている感性でもってこそ、この映画は受け入れられる


そしてもうひとつ。R15の時点でお察しだが、かなりグロいので注意が必要だ。R15作品は今まで20本近く視てきたが、その中でも極めてグロい。冒頭2分(!)で直視できないシーンが続くので、耐性がない人は無理せずに鑑賞を止めるべきかもしれない。


昨年は何本もの映画を観た(映画レビュー参照)のだが、間違いなく個人的なベスト5には入る映画だ。この映画がアカデミー賞大賞を受賞したら、映画界の何かが変わるかもしれない。おそらくアレかアレか、この『孤狼の血』の三つ巴だとは思うが。3月1日を楽しみに待ちたい。大賞の可能性、大いにあると思う。


笑い★★★☆☆
感動★★★☆☆
驚き★★★★☆
ワシらヤクザじゃけえ度★★★★★

総合評価★★★★☆

 


映画『孤狼の血』予告編