こんばんは、キタガワです。
人生において最も多くの人々が直面するストレスが一体何かと問われれば、それはおそらく人間関係であろう。では、何故人々は人間関係を辛く感じるのかと言えば答えは単純。相手の真意が分からないからだ。目上の人には二つ返事で対応し、嫌いな相手にも絶対に笑顔を貼り付けながら喋ろう、というのは社会人にとって当然のマナーだが、逆に言えばそれは仮面を被った姿であって、『本当は自分は周囲にどう見られているのか』を気にしだしたらもう終わり。だからこそ、誰もが一度は考える。「相手の感情が読めたらどれだけ楽だろう」と……。
今作『ライフイズストレンジ トゥルーカラーズ』は、これまで口コミで全世界で注目を浴びたライフイズストレンジシリーズの正統派の続編としては3作目となる。細かなシステムについてはこれまでの作品を踏襲しており、例えば秘密を守るか打ち明けるか、楽しかったと伝えるかつまらなかったと伝えるかなど、その都度選択肢を選びながら進んでいくアドベンチャーゲーム。そしてこれまで何となく選んできた選択が結果、誰もが予想だにしなかった流れに突き進むのも、これまでと同様である。
そんな中、今作が過去作と比べて大きく違う部分として挙げられるのはやはり、主人公であるアレックスの感情視認能力だろう。……そう。彼女は生まれながらにして、相手の感情が読めるのである。正確には相手の悩みと怒りの感情をそれぞれ『青』と『赤』の色合いで目視することができ、なおかつその思いが強ければ強いほど、本心では何を考えているか、というのも直接的に分かってしまうのだ。問題なのは、彼女自身もある種の共感覚としてそうした感情に心が引っ張られてしまうこと。相手が悲しんでいたら自分も悲しみを共有してしまうし、逆に相手が誰かに対して怒っていたら、その怒りを共有して気付けばその誰かを殴っていたといった具合に、自制心どうこうではない根深い問題として、彼女の行動の足枷になっているのだ(事実物語上でもアレックスがかつては養護施設に入所しており、現在も精神薬を服用している背景が描かれている)。
望まない能力を人知れず得ながら、これからも生き続けなければならないアレックス。そんな彼女が成長する過程を、今作『ライフイズストレンジ トゥルーカラーズ』は痛烈に描写する。ネタバレになるため詳しくは書かないけれど、ゲームを続けるにつれてアレックスにどんどん愛着が湧いてくるし、現実世界に生きる我々も実は「相手の感情が読めないからこそ楽しく日々を生きることが出来ているのでは?」と思ったりもして、総じて人生観さえもポジティブにさせてくれるゲームであるという見方も出来る。「自分で選ぶから少し人生を好きになれる」とは今作のメインテーマのひとつだが、人生の真理はとてもシンプル。どんな行動をしてもそれが正解なのだ。……貴方の選択がアレックスにどんな結末をもたらすのか。その全ては実際にプレイしなければ分からない。