キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『ドキュメンタル』Amazonに怒られてお蔵入りになった幻のシーズンの失敗と成功

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20200904032657j:plain

先程、本日深夜0時に公開された『ドキュメンタリー・オブ・ドキュメンタル Amazon怒りのお蔵入り! 幻のシーズン&誰が悪かったのか!?緊急討論会』を見終わった。僕の記憶が確かならば、前回の記事を執筆したのも、全話を消化しきったこの深夜の時間帯だったなあなどと思いつつ、筆を取っている。


『ドキュメンタル』はAmazon Primeにて好評配信中の、芸人・松本人志が企画構成を担った芸人同士の笑わせ合いサバイバル番組だ。この作品は登場するなり多大な人気を獲得し、昨今では「芸人で知らない者はいない」とのレベルで芸人間で語られるお笑い番組と化した。のみならず現時点でAmazon Prime以外では番組を視聴することがまずもって不可能な関係上、Amazon Prime自体の加入者を飛躍的に高めた契機でもあったのだ。


けれども前回の記事でも触れた通り、前回大会(シーズン7)から1年近くのスパンを経て8月21日に公開された待望のシーズン8は個人的には酷くつまらない出来で、Amazonレビューでも総投稿数が1500以上にも関わらず総合評価は★2という事実上の過去最低得点を叩き出し、レビューには「何故この芸人を出したんだ」「笑えるところがひとつもなかった」「最低のシーズン6を更に下回る出来」など悲痛な声が躍った。


そんなシーズン8のラストに松本人志の口から語られたのが「実はお蔵入りになったもうひとつの回がある」との一節である。彼の発言を鑑みるにコンプライアンス的観点から、そのあまりの下品さにAmazon本社から公開自体を中止する判断を下されたとのことで、続けて「後日問題部分を再修正した形で公開する」と語っていた。そしてそれこそが今回公開された、表題の『ドキュメンタリー・オブ・ドキュメンタル Amazon怒りのお蔵入り! 幻のシーズン&誰が悪かったのか!?緊急討論会』という訳だ。


まず結論から述べると、個人的には非常に面白かった。各参加者のネタの応酬はシーズン8を遥かに凌駕する面白さだったし、コロコロチキチキペッパーズ・ナダルやジミー大西における芸も確かに悉く滑ってはいたものの、それが『絶対に笑ってはいけない』という緊張状態の中上手く作用し、結果としてはまるで原点に立ち返った笑いの始祖のような笑いを生み出していた。参加者の次長課長・河本がポロリと溢していたように、お蔵入りのお達しがなければこの回が実質的な『シーズン8』、そして1か月前に公開されたシーズン8は『シーズン9』と名を変えて誕生していたことになるだろうが、もしもこの幻の回が通常回として投下されていれば、ドキュメンタルの未来は大きく変わっていたのだろうなと心底思う。


そして肝心の問題になったシーン(これが原因となってお蔵入りにならざるを得なかったシーン)については今作の4話目、まさに優勝者が決定する少し前の場面で発生する。結論から述べるととろサーモン・久保田が他者の陰部を口に何度も含むというシーンなのだが、もうこれに関しては誰がどう見ても完全にアウトである。加えてAmazon側はこの回を雪降り頻るクリスマスに公開しようと考えていたことも含めても、もう色々とアウトである。実際この幻の回は結果的に久保田が優勝することになり、そして今回の放送後に松本が「久保田の1000万円は没収」との措置を講じたことで久保田へのある種の贖罪としてチャンチャンで終わったが、それはそれとして……。


もはや記述するまでもないが、この一件でAmazon側から大いなるお叱りを受けたことで、本来シーズン8になるはずだったそれはお蔵入りになり、新たなシーズン8が製作されるに至った。もっとも前回の記事でも述べたように、試合前にまず松本が「実はお蔵入りになった回がありまして。あのAmazonさんでも完全なる無法地帯ではないということなので」と参加者にきつく釘を刺した為か、結果的にシーズン8は他の芸人を笑わせる『攻め』が全体的に少なくなり、低評価の嵐となった訳だが。


ただ、今回お蔵入りになった幻の回はとても面白かった。これこそがおそらく視聴者を悶々とさせる一因だろうと思う。松本自体も「何が悪いか分からない」と繰り返し語っていたように今回のAmazonの審判にはどちらかと言えば否定的なようだったし、参加者に関しても皆シーズン8におけるギスギスした雰囲気は然程なく、霜降り明星・粗品に至っては敗北後に「とても幸せな空間でした」とも語っていた。故に例のシーンを抜きにすれば間違いなく審査は通っていたことを考えると、少しばかりの物寂しささえ感じてしまう。


けれども仕方ないなとも思うのが、番組を製作する上では大前提として、大勢の人間が関わっているということだ。番組を製作する上ではテレビ局の人間がいて、企画構成の人間がいて、照明やカメラ、宣伝……様々な人が関係している。ラストに番組製作総指揮のスタッフが本気の眼差しで久保田を睨み付け、当の久保田は「いや!マジの目してるやん!」と笑いに変えようとしていたあたり「爪痕を何とか残してやろう」ともがく久保田側と、それ以上に多大なプレッシャーの中でひとつの人気番組として成功させようと奔走していたスタッフ側との乖離も絶対的にあっただろうが、そんな中でも本来非公開にすべき今作を『ドキュメンタリー・オブ・ドキュメンタル Amazon怒りのお蔵入り! 幻のシーズン&誰が悪かったのか!?緊急討論会』と名を変えて無理にGoサインを出した製作者サイドには、本当に感謝するばかりである。


ドキュメンタルは、今やM-1グランプリやR-1ぐらんぷり、キングオブコントと並ぶ一大お笑い番組として完全に認知されている。だからこその成功や失敗も当然あるだろうし、それが今回結果として完全なる失敗の形で終幕した訳だが、やはりドキュメンタルは下世話な部分も含めて、手放しで面白いと思える番組なのだ。次回のシーズン9がいつになるかは分からないが、期待して待ちたい。そして松本がラストに語ったように、今回大ポカを犯した久保田も参加するなどの救済措置が取られれば、いちお笑いファンとしてこれ以上の喜びはない。

 


『ドキュメンタル』過激すぎてお蔵入りになりかけた問題作 9月4日(金) 配信決定!「ドキュメンタリーオブドキュメンタル 誰が悪かったのか緊急討論会」トレーラー