『サンボマスター、結成25周年』。この情報を知ってもあまり実感がないのは、彼らがロックシーンの第一線を走り続けてきたからに他ならない。ともすれば活動が長くなると人気は下火になりがちだが、今ではライブの熱狂がライブキッズの再評価を受け、今最もチケットが取れないバンドとなった彼ら。この日の大阪は、そんなツアーの公演初日。対バン相手はなんと彼らが尊敬してやまないロックバンド、ザ・クロマニヨンズ!もちろんチケットは完全ソールドアウトである。
ライブ前、会場内にはギチギチの人、人、人。筆者は以前この会場でライブを観たことがあり、その際も人が多い印象があったけれど、この日は全くそれとは比較にならないレベル。電波は繋がらず、通路を移動しようとすれば必ず人を押し退ける必要があり、トイレにも長蛇の列が出来る密集度だった。なお集まったのは20代の若者から50代の人まで様々で、改めてこの2組がロックシーンを牽引してきた歴史を感じたりも。

まず先陣を切るのは、後にサンボマスターが『ロックの神様』とまで崇め、大きな尊敬を抱いていると語っていたザ・クロマニヨンズ。小林勝(B)、桐田勝治(Dr)の登場時も歓声は凄まじかったが、真島昌利(G.Cho)、甲本ヒロト(Vo.Harp)の2名が袖から現れた際の歓声は、まるで怒号のような勢いである。そうしてヒロトが「オーライ!ロッケンロー!」と叫び、1曲目に鳴らされたのは“ランラン”。タイトルの通り《ランラン》の印象的なフレーズは随所に挟まれているが、彼らにとって意味はほとんどない。全ては聴く人に委ねるというのが基本スタンスだ。早くもヒロトは前傾姿勢で歌唱をしているし、マーシーも普段通りに涼しい顔でコードを引き倒している。全く変わらないロックバンドの姿がそこにはあった。
相変わらず、彼らのライブは良い意味で頑固一徹。全員が同じ公式Tシャツを着用し、前に記したように歌われる歌詞は意味不明な繰り返し。バンドサウンドも初心者でも練習すればすぐに演奏可能なほどシンプルに削ぎ落とされている。事実ヒロトとマーシーは様々なインタビューで「ロックをやる。ただそれだけ」と語っているし、「ロックだと思えばそれがロックだし、そうじゃないならやらない」との旨の発言を繰り返している。だからこそその楽曲における熱量が全てであり、全力の力で1曲1曲を鳴らすパワーに一気に持って行かれた。
彼らのライブは基本的に、往年のライブ曲にアルバム曲を組み込むパターンで進行する。ただ今回は持ち時間が少ないこともあり、ライブ定番曲を出し惜しみなく投下する灼熱地獄であった。また演奏以外では、MCや休憩をほとんど挟まずに楽曲を演奏し続けるストロングスタイル。事実ヒロトがこの日発した曲間の言葉は次曲のタイトルを叫ぶくらいのもので、結果としては演奏以外の時間を削って削って、40分の持ち時間でなんと計14曲を演奏!更には我々ファンも、まるでオアシスやウィーザーのライブに参加しているような声量で全楽曲を歌いまくる半カラオケ状態。彼らの中に存在するロックが、会場をグングン牽引していった印象だ。
「今日はサンボのファンの前で、大きな声で歌えて凄く嬉しいです。ペース配分なんて考えないで行くぞー!」とヒロトが叫ぶと、屈指のライブアンセムたる“タリホー”と“生きる”、久しぶりに鳴らされた“スピードとナイフ”、そして比較的新しい“イノチノマーチ”と“あいのロックンロール”が立て続けに鳴らされる。チューニングも水分補給もほぼなし、曲が終わった瞬間にすぐヒロトが次曲のタイトルを叫んで曲に行く……という、ある種生き急いでいるような爆速ライブだ。対する我々はと言えばこの時点で声がガラガラな人が大半だったが、「まだまだ行ける!」との気迫が会場中を支配。総じて凄まじいエネルギーに包まれた40分だった。
ザ・クロマニヨンズの1年は、アルバムをリリースしてツアーを回るサイクルが通例。そして「今が一番最高なんだ!」とのバンドの意向から、年が変わるごとにセットリストの大部分は新曲に置き換わり、過去のアルバム曲(シングルカットやMVが作られていないもの)は基本的には二度と演奏されないことでも知られる。ただこの日大きな驚きと共に鳴らされたのは、2010年リリースの『Oi! Umbobo』からの“底なしブルー”。かつてはライブ定番曲でありながら、気付けば演奏されなくなっていたファン垂涎の楽曲である。ここでヒロトはバンドTシャツを脱ぎ捨てて上裸になり、ハープを演奏しつつ鬼気迫る姿をアピール。ヒロトが叫ぶ《ガブガブガブ 空瓶だけ/ガブガブガブ 置いていこう》との意味不明な歌詞も、ここでは興奮を高めるスパイスとして意味を持っている感覚がある。
ファンが一丸となっての「オイ!オイ!」コールが轟いた”エルビス (仮)“、この日最も歌メロ色の強い歌声の”紙飛行機“、ヒロトが「サンボ最高!全員最高!今日は最高!」と叫んで始まった”ギリギリガガンガン“とライブは続き、全編が最高潮の盛り上がりを記録したこの日のライブ。とりわけ印象的だったのは続く”ナンバーワン野郎!“で、ヒロトが「イエー」と言えば「イエー!」と返し、「ナンバーワン野郎」と言えば「ナンバーワン!」と返す……。このほぼ無自覚なコール&レスポンスがバッチリ決まる様子は、特に強い感動を覚えた。演奏が終わった後にはコワモテの男性やその奥様、髪が白くなった男性たちが、そこかしこで号泣していたのを見て思わずウルッと。
最後の楽曲は、これまでフェス等で一番最初に鳴らされることの多かった定番曲”クロマニヨン・ストンプ“。開幕のリズミカルなドラムと共に歌われる《人間 人間 人間》のワードの連発から、全員が《クロマニヨン クロマニヨン クロマニヨン・ストンプ》の歌詞を叫ぶ様はやはり圧巻で、駄目押しのクライマックスを図っていく彼ら。またこの楽曲はザ・クロマニヨンズ史上最も早く終わる楽曲でもあり、時間にしてたったの2分少々。ただこの濃密さと爆音は、どのライブにもない最強の魅力を携えていたように思う。ヒロトは最後に「この後はサンボマスターが、ぶちかます!」と一言だけ発し、ステージを後にしたのだった。
僕自身様々なバンドをよく観るが、終わった後にどこか消化不良というか、観たけど観ていなかったような、フワフワとした感想を抱くライブも多々ある。その理由は何かと考えたとき、おそらくは『ライブに全体的な熱量があるかどうか』だと思うのだ。翻ってザ・クロマニヨンズはどうかと言うと、意味は全くないし演奏は単純。ただその中に、着火寸前の爆弾が常にあるような、本能に訴えかけるロックを常に鳴らしていた。ロックに細かいことはいらない。ただ衝動に任せて鳴らす音楽は、何より心を動かすのだと再認識した次第だ。
【ザ・クロマニヨンズ@大阪 セットリスト】
ランラン
雷雨決行
タリホー
生きる
スピードとナイフ
イノチノマーチ
あいのロックンロール
エイトビート
底なしブルー
エルビス (仮)
紙飛行機
ギリギリガガンガン
ナンバーワン野郎!
クロマニヨン・ストンプ

ザ・クロマニヨンズの熱狂は終わったが、ここからの熱狂もまた別次元。次なるライブはもちろん我らがロックバンド・サンボマスターだ。『全員優勝』と書かれた青いタオルが掲げられる中、定刻になるとゴダイゴの”モンキー・マジック“が通例通りに流れ、山口隆(Vo.G)、近藤洋一(B.Cho)、木内泰史(Dr.Cho)が袖から登場。大歓声に沸くフロアを見ながら、早くも山口はこっちに来いとばかりに全力で手招きしながら「ウゥワィ!ウゥワィ!(文字で書くと変だが実際にこんな感じのテンション)」と叫んでおり、グッと前に進み出るファンたちである。その勢いはオープナーの”輝きだして走ってく“で早くも爆発。また山口の演奏は他バンドと比べても圧倒的にエフェクターを使わないことでも知られており、この日もコンプレッサーと少しのブースト以外は、ほぼほぼクリーンの音で展開。先行のザ・クロマニヨンズがロックに振り切っていたのもあるが、非常に新鮮な音だったのも印象的だった。
多くのライブを行うサンボマスターだが、今回のツアーはアルバムリリース後ではない特殊なもの。そのためセットリストについては全く予想のつかないものではあったが、結果的には2023年にリリースされたアルバム『ラブ&ピース!マスターピース!』を軸に進行するニューモード。一方で”世界をかえさせておくれよ“や”ミラクルをきみとおこしたいんです“といった、これまでライブで必ずといっていいレベルで演奏されてきた楽曲がセットリストから外れたり、新曲としてリリースされていた”とまどうほどに照らしてくれ“に関しては披露なしという点では、攻めたライブだったようにも思う。
早くもライブのハイライトとなったのは、テレビアニメ『NARUTO』の主題歌として広く知られる”青春狂騒曲“。そもそもの大前提として、サンボマスターはライブ中にとてつもなく喋ることで有名である。曲間ではなく曲中に、それもひとつのメロで何度も発せられ、今ではその山口の発言がライブの起爆剤となって多くの感動を生み出している。この楽曲中でも山口は「笑ってっか?」「泣いてんじゃねえ!」「行けますか?」「そんなもんじゃねえだろ!」といった衝動的な発言を幾度も繰り返し、その度に大いに盛り上がる会場である。かと思えば「あれ?ロックの神様の前で踊れない協会の方々じゃないですよね?」と焚き付け焚き付け、もはや原曲を留めているかも怪しい熱量で楽曲が進行していく。
次いで多くの驚きの声と共に鳴らされたのが、ザ・クロマニヨンズのカバーである”クロマニヨン・ストンプ“。木内のドンドンと鳴らす開幕から「まさか……?」と思ったファンは少なくなかったと推察するが、そもそもサンボマスターが誰かのカバーを披露することは稀。しかもこの日はフルバージョンでの披露となったことで、多くの歌声が響き渡った。これも山口が神様と崇める、ヒロトとマーシーの前だからこそのサプライズだろう。
「今でも覚えてるよ。14歳の頃に俺はもう分かったんだ。特に理由はないけど、はっきり分かったんだよな。『このまま生きててもつまんねえな』って。だから俺、毎日消えてえと思ってたんだ。でもそこに……俺の故郷は福島の会津若松っていう田舎なんだけど、そこにふたりの神様が音楽に乗って来てくれた。ザ・ブルーハーツで《終わらない歌を歌おう》って。ザ・ハイロウズで《生きてるやつが気に食わねえ》って。それで俺、生きててもいいなって思うようになれたんだよな」
「この会場にも、消えたいって思ってる奴がいる!俺は今日、良いライブをしようとして来たわけじゃねえんだよ。格好付けようとしたわけじゃねえんだよ。あんたが生きるために歌いにきたんだ。あんたに生きてほしいって、生きてたら何かでっかいことが起こるって、伝えるために来たんだよ!泣いてる場合じゃねえぞ。笑うんだよ!生きてるなら笑うんだ!」
山口がこの日のMCで語ったのはヒロトとマーシーへの感謝の念、そして悩める者への光だった。後者についてはサンボマスターのライブのハイライトとして位置する恒例のものだが、今回のライブでは山口個人としても、大きな意味を持つものだった様子。そのためこれまで以上に言葉に熱が入っている感覚を覚えたのは、僕だけではなかったはずだ。事実”新しく光れ“以降は「笑ってっか?」「無くんじゃねえ!」と前向きな煽りが多かった印象で、それに呼応するようにファンは全力で腕を挙げ続けていた。
最後に披露されたのは”花束“。山口が「悩みながらも生きててくれる、あんたが花束なんですよ!」と叫んで始まったこの曲はコロナ禍においては、存続してくれているライブハウスに向けて歌われるものだった。けれどもこの日は明確に他者に向けて鳴らされていて、サビ部分の《信じてんぜ君を》の後にはファン全員が割れんばかりの声量でレスポンスを返す、幸福な空間が広がっていた。山口は演奏中にも再度「全員優勝!全員優勝!」と煽り続け、またファンがそれを返す……という循環を繰り広げながら、本編は終了。去っていくメンバーに凄まじい声援が返されたところで、一旦の幕引きとなった。
何やら忙しない様子。この時点でサンボマスターの演奏時間は40分を超えていて、我々的にはまだまだ聴きたいところ。一方で「俺らはロックの神様よりも長くやっちゃいけねえんだよ!」と語り、着々とセッティングを進めていく彼らである。一方で「本当はライブ前に声出すのはあまり良くないらしいんだけどさ。袖でクロマニヨンズのライブ観てたらよ、気付けば叫んでたよね」とは山口の弁だが、この日のライブは彼らにとっても、運命的なものとなったようだ。
思えばこの日のライブ中、山口はヒロトとマーシーを指して「ロックの神様」と幾度も口にしていた。アンコールに披露された楽曲はそんなリスペクトを体現した”ロックンロール イズ ノットデッド“。甲本ヒロトはかつてインタビューでセックス・ピストルズの“God Save the Queen”について「ロックは僕を元気にしてくれるけど、そこに意味は必要ない」という趣旨の言葉を語っていた。ではサンボマスターのこの楽曲はどうかと言えば、《何度だって立ち上がるんだよ 君よもう悲しまないでくれ》との一節からも、明確な意味を持っていたのが印象的だった。
歌詞をサウンドのひとつと捉えるザ・クロマニヨンズと、歌詞を伝えるために煽り倒すサンボマスター……。この2組が互いにリスペクトし合い、熱狂的なライブを見せてくれたことは、きっとライブキッズにとって運命的なものだったように思う。終演後、普段ほとんど自身のことについて呟かない山口はXにて、多くの感謝の念を文字に乗せて放っていた。それは彼にとってこの日が特別なものだった証左だろうし、我々ファンとしても、忘れられない1日になったのは言うまでもないだろう。
【サンボマスター@大阪 セットリスト】
輝きだして走ってく
ヒューマニティ!
青春狂騒曲
クロマニヨン・ストンプ (ザ・クロマニヨンズカバー)
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
ラブソング
新しく光れ
Future is Yours
できっこないを やらなくちゃ
花束
[アンコール]
ロックンロール イズ ノットデッド
#サンボマスター 「全員優勝パレードツアー〜両校優勝〜」🏆
— サンボマスター (@sambomaster_txt) 2025年7月4日
Zepp Osaka Bayside
✨ザ・クロマニヨンズ✨
「夢はバンドをやること、ずっと叶い続けている」そんな先人の背中に魅せられた、忘れられない一夜になりました✨
ありがとうございました🙏
Photo by @kaori_murai #全員優勝 #VICTORY25 pic.twitter.com/ralA72rc5A