キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】サバシスター・愛はズボーン・アフターアワーズ『アテンション!!TOUR!!』@心斎橋ANIMA

こんばんは、キタガワです。

まずライブ会場に着いた瞬間に驚いたのは、その熱気だった。今回のライブ会場である心斎橋ANIMAは、路上に面したとある一角から地下二階へ進んだ先にある小さなライブハウスなのだけれど、その地上……つまりは通行人が行き来する『普通の道』に、あり得ないほどの人だかりが出来ていたのだ。

僕が到着したのは18時50分過ぎ、ライブ開始は19時である。にも関わらず、スタッフさんは「整理番号100番の方ー!101番の方ー!続いて102番の方ー!」と、僕の手持ちのチケットの300番台が絶対に呼ばれないレベルの感覚で、チケット番号を読み上げている。ふと版に書かれた案内を見ると『Tichet Sold Out!』の文字と共に当日券の案内が刻まれていて、このライブハウスが本来のキャパを無理矢理増やした状態で当日を迎えたことは、この時点ではっきりと分かった。サバシスターの曲の歌詞を借りれば、まさしく《地下二階はすぐにソールドアウトするさ》である。

集まった人々のお目当て、その大半はサバシスターだろう。メンバーは弱冠20歳で、結成は2022年の3月とごく最近。にも関わらずライブは立て続けにソールドアウトするという、今波に乗りまくっているガールズバンドである。そんな彼女たちのライブには、地元大阪から愛はズボーン、アフターアワーズらマッチョなロックバンドが集結。新進気鋭の後輩を支える布陣で、平日の夜を踊らせにかかった。

https://iwzbn.com/

パンッパンのライブハウスは入場制限により開場時間が大幅に延び、結果的に客電が落ちたのは19時15分頃。1番手は大阪はアメリカ村から、破天荒なライブパフォーマンスに定評のあるロック集団・愛はズボーンである。SEと共に呼び込まれたのはもちろん儀間建太(Vo.G)、金城昌秀(G.Vo)、白井達也(B)、富永遼右(Dr)の4名で、そこからしばらくはジャム・セッションの様相で熱量を高めていく。

愛はズボーン "MAJIMEチャンネル" - YouTube

《死ぬ事忘れて遊びまくり/それ死んだも同然 地獄》と聴き覚えのあるフレーズが放たれると、代表曲“MAJIMEチャンネル”でもってライブは開幕。音圧のあるサウンドの中で、儀間の『じごっく〜』のポーズ(上動画参照)に笑顔になるのはもちろん、CD音源ではあまり重視していなかった《チャンスとパンとコオロギが/フェンスの向こうで見ている》、《屁理屈がジュースこぼして/カーペット汚れた》といったサイケな歌詞も、エンタメ的に耳に入ってきて最高だ。

そしてこちらも代表曲“ひっぱられる”で、ライブは早くもハイライトを迎える。《ひっぱ ひっぱられる ひっぱられないように ひっぱる》のフレーズが頭をグルグル回る中で、楽器隊の演奏は正確。歌いながら単音&リズム変化のギターを弾く儀間と金城のテクニックにも驚きつつ、その間奏ではグワっと盛り上がる煽りも取り入れていて、興奮が途切れることもない。きっと長年のライブがもたらす経験則が、無意識的にそうさせているのだろうけれど、我々的にもここまで引き込まれるライブはないのである。

愛はズボーン / ひっぱられる(Live) 2018.9.16 - YouTube

期待のMCでは、トーク管理に定評のある金城のツッコミが光る。まずは「サバシスター、まだ結成1年やって。ホンマ凄いなあ。でもあのホンマごめん、最初『えっ?ごうけ?』ってならんかった?」とメンバーのひとりのごうけの名前をイジりつつ、再度「あれやろ?なち、るみなす、ごうけの3人でサバシスターやんか。……ごうけ?」とオーバーキル。爆笑に包まれる会場で、金城は「うちのメンバーの名前も紹介しとくな。俺が金城やろ、白井、冨永、ほんで儀間や。……ぎま???」と矛先をボーカルの儀間にチェンジ。すると当の本人は「儀間ちゃんです☆」の独特のポーズ(指拳銃で自分のアゴからこめかみまでを90度移動させる感じ)でガンガン注目を浴びたがっていて、メチャクチャな爆笑が生まれていく。

以降は儀間が味をしめたのか、先程の「儀間ちゃんです☆」を連発しつつ“Z scream!”、“ラブラブチューイングガムガムチュー”といった楽曲でぐんぐん盛り上げ、初のMCで。ここでは金城が「改めてやけどサバシスター、まだ結成1年目でしょ?20歳くらい?」と後輩を上げながら、自身の高校時代の話へ。そこでは金城が4兄弟で貧乏だったため何かを買ってもらう機会が誕生日にしかなかったこと、ギターを買うためにアルバイトでお金を稼いだこと、何万円もするギターを初めて買ってコードを弾いた際、脳汁が出たことなどを語ってくれた。そして「おい!みんなも平日に金払ってライブハウス来とんねやろ!……音楽で食っていこうと思ったとき、俺は何を歌おうかと思った。金がないとか、メッセージ性のある歌詞とかそんなんやない。俺は『大人になればギターが買えるぜ』ってことを歌いたい!」と金城。

ニャロメ! - YouTube

そこから雪崩込んだのは“ニャロメ!”。奇天烈なフレーズの羅列から、子供時代の思い出を回顧する流れを聞いていると、やはり音源だけではアーティストの良さは語れなくて、ライブは必要なのだとも思わさせた。それこそ愛はズのライブに関してもこの楽曲で言われるように、洋楽を指して《意味なんてひとつも知らないぜ/それでもずっと聴いてんだぜ》というのがひとつの答えのように思う。爆音と興奮と、その中に潜む作詞者の心情。それでオールオッケーと断言できるのが、愛はズボーンなのである。

愛はズボーン『愛はズボーン』 - YouTube

ラストはもちろんバンド名を冠した、これを聴かなきゃ帰れない“愛はズボーン”。中毒性の強すぎる《ボンボンズボボン 愛はズボーン》のサビを熱唱する中、儀間は「行くぜエビバディ!」と叫びながら袋に入った大量の風船をフロアに投下!このパフォーマンスはコロナ前は頻繁に行われていたのだけれど、まさかこの場で復活するとは……。風船がフワフワと舞う下で、喉が潰れるほど叫び続けた最高のライブ。圧巻でした。

【愛はズボーン@心斎橋ANIMA セットリスト】
MAJIMEチャンネル
ひっぱられる
Z scream!
ラブラブチューイングガムガムチュー
ニャロメ!
愛はズボーン

 

https://afterhours3.amebaownd.com/

続いては大阪のスリーピースロックバンド・アフターアワーズ。個人的には関西のライブシーンに精通している人間ではないので、大変申し訳ないのだけれど今回が完全初見。そしておそらくこれは今回集まった観客の多くが同様の状態だったように推察する。ただ、リハーサルの段階で“どうでもいいことばかり”が鳴らされた瞬間、僕も周囲の観客も何か「おっ?」と感じるものがあったのか、そこからはリハそっちのけで歌詞とサウンドに耳を傾けていた。これぞ音楽の力である。

一度ハケてしばらくすると、暗転後にショーウエムラ(Vo.B)、タミハル(G.Vo)、上野エルキュール鉄平(Dr.Vo)の3名がステージに登場。オープナーは”グレイトエスケープ“と題されたロックチューンで、髪をバッチリ決めてフロントマン然としたウエムラ、動き回りながらリードするタミハル、パワフルなドラミングで鼓膜に襲いかかる上野のサウンドが、グッと押し寄せてくる感覚がある。

アフターアワーズ"グレイトエスケープ"(Oficial Music Video) - YouTube

セットリストについては、ファーストフルアルバム『AFTERHOURS』の楽曲が主。《ラララ》で大合唱を生み出した先述の”グレイトエスケープ“、美メロでゆらゆら揺らす”いいのにね“など、その全曲がキャッチー。かつ熱量高いパフォーマンスに耳を揺さぶられた観客が、どんどん腕を高く上げる様は素晴らしかった。MCでは「俺ら3人全員楽曲持ってるから、煽ったりとかなかなかでけへん。(コードが)Aやったらね、腕挙げたり出来るんやけど……」とウエムラがスリーピースならではの状況を口にしつつ、その他はライブハウスへの愛情と感謝を体現するトークが続く。「サバシスターの前に盛り上げるのが仕事!」と叫びつつ、基本的には楽曲をどんどん進めていくのも無骨で格好良い。

アフターアワーズ"どうでもいいことばかり"(Oficial Music Video) - YouTube

印象深い楽曲を挙げるとすれば、それは個人的には”どうでもいいことばかり“に軍配が上がる。泣きメロ的なサウンド面の魅力もありながら、大切な人以外はどうでもよく見えてしまう青春感、更にはサビで一気に爆発するべきライブアンセムのセオリーを考えても、とても高い水準に位置する楽曲だと思った次第だ。それこそライブが終わって何日か経つ今も「〜♪どうでもいいことばかり〜♪」と曖昧ながらも楽曲が頭で鳴り続けたりもしていて、メジャーインディーどうこうと言うより『良い楽曲は良い』という原点に立ち返ったような、そんな衝撃があった。

アフターアワーズ – 16【One Night STAND Live】 - YouTube

以降は”明日になったら“や”走り出せ、今夜“といった叙情的なロックチェーンをお見舞いすると、ラストは『AFTERHOURS』からリード曲の”16“。これまで通り『わたし』と『あなた』のふたりの登場人物で展開するのはもちろん、今回披露された楽曲の中では最もロック色の強い楽曲でもある。散弾銃のように放たれる言葉と荒々しい音像で、一気にフロアを高めていくアフターアワーズ。楽しそうな表情を浮かべ、最後は大阪で開催される次回のライブを告知しつつステージを去った3人に、大きな拍手が送られた。

【アフターアワーズ@心斎橋ANIMA セットリスト】
グレイトエスケープ
デイジー
いいのにね
どうでもいいことばかり
明日になったら
走り出せ、今夜
バイバイ
16

 

https://lit.link/sabasister

このあたりで、グッと前方に体が押し出される感覚があった。当然その理由はファンが後方から押し寄せたためだけれど、それはつまり次なるバンドへの期待値が異常に高い証左でもあった。……ライブを締め括るのは弱冠20歳、結成1年にしてソールドアウトを続出させるガールズバンド・サバシスターである。

暗転後に観客の手拍子でもってステージに呼び込まれたのは、なち(Vo.G)、ごうけ(Dr.Cho)、るみなす(G.Cho)、サポートのサトウコウヘイ(B)の4名。全員が様々なポーズを決めてテンション高めなのは初々しく、同時に緊張しているようにも感じた次第。なおSEにはビッケブランカの楽曲が選ばれていて「何でビッケ?」と疑問を抱いていたのだが、その楽曲が“Ca Va?”(読み:サバ)であると分かり妙に納得……。

サバシスター - ヘイまま!プリーズコールミー Music Video - YouTube

 

開口一番、AIR JAMのTシャツ(彼女が尊敬する横山健らHi-STANDARDが主催するフェス)なちが「サバシスターです、よろしくお願いしまーす!」と叫ぶと、1曲目は新作EPから“ヘイまま!プリーズコールミー”をドロップ。地元を出て東京で暮らすなちの「たまには電話してきてね」という母への思いを体現したメッセージソングだ。シンプルなロックサウンドの中、なちは時折腰に手を当てたり、《電話してちょうだい》の場面では電話をかけるポーズをしたりと目にも楽しい行動で楽しませ、1曲目にして心をガッツリ掴んでいた印象が強かった。

まだ結成1年のサバシスターが現状リリースしているのは、EPの『鯖ノ壱』と『アテンション!!』の2枚のみ。アルバム系統に関しては1枚もリリースしていない超新星状態だ。そのため今回のライブではこの2枚からの楽曲を全曲網羅したことに加え、CD未収録の旧曲である“しげちゃん”と“サバカン〜”といった楽曲も組み込んだサバシスターの今を惜しみ無く放出した代物となり、また来たる未来の可能性を見せ付ける夜となった。

サバシスター - スケボー泥棒!【ライブ映像】2022.09.29 - 下北沢SHELTER - YouTube

続いてはお気に入りのスケボーを盗まれた実体験を元にした“スケボー泥棒!”。ここ数ヶ月のライブ経験がそうさせるのだろう、なちはサビ前に「はい!」と合図しつつ、《スケボー スケボー スケボー泥棒》の大合唱を生み出していく。この時点で演奏を聴いていて驚いたのは、おそらくギターとベースは基本的にクリーン状態(エフェクターをほぼ使っていない)であることが判明したこと。サウンドの深みは敢えて外し、歌と直アンのバンド演奏のみで攻める時代に逆行したスタイル。同じスタイルで思い当たるバンドと言えばサンボマスターやヤバイTシャツ屋さんあたりか……。そして彼女たちの場合は、これが正解なのだ。多分。
 
MCでは「尊敬する先輩方に囲まれて緊張してます……」となちが語ると、まずはモニター越しに全てのライブを観ていたというなちが、愛はズ儀間のネタをもじった「サバちゃんです☆」で笑いを誘う。以降は大阪のライブが3日連続であることに触れて「大阪の人って大阪府民って言うんですか?じゃあこれで私も大阪府民ってことで……」とボケたり、たこ焼きの塩味を初めて食べた話、新型コロナウイルス感染と体調不良で大阪ライブを2度断念した後悔などを挟み、観客からはパラパラと拍手が。またそれらのMCの大半は、良くも悪くも発語後に一旦沈黙する流れになっているためどこかフワフワ。「私たちはあくまで楽曲で勝負する!」という思いすら漂っていて良かった。

サバシスター - ジャージ Music Video - YouTube

大勢の大合唱が響いた“アイリー”、ごうけと幼少期から側にいるぬいぐるみ(本名はしげちゃんでニックネームはしげっち)について歌ったバラード曲“しげちゃん”を挟むと、なちが「メルカリで売られたジャージの曲です」と語り、遂に鳴らされたのはキラーチューンの“ジャージ”。正直な思いを綴ってしまうと、個人的にこの曲は《可愛かった君とあのジャージは/知らん誰かに盗られたし》とするサビから『ジャージと誰かが盗られた=失恋曲』のイメージで捉えていた。しかしながらこのMCで語られていたようにその実、この楽曲で示されている『メルカリで私のジャージが売却されてた!』と『彼が他人に盗られた!』は完全に別の話で、それを同じ『盗まれた』のテーマで合致させたのがこの楽曲だったのだ。これもライブを観なければ決して分からなかった真実である。

そして素晴らしいのは、この半径数メートルの生活を綴るサバシスターの楽曲はつまり、人生経験を積むにつれて深みを帯びていくこと。ライブにたくさん出たり、大恋愛をしたり、何かを失ったり……。そのたびに彼女たちは出来事を歌詞にして発散するのだろう。今は20歳、上京し立てだからこそ“ジャージ”や“ヘイまま!〜”、“しげちゃん”といった初々しい楽曲を生み出しているけれども、間違いなく来年再来年はガラッと変わったテーマが生まれる訳で。グッと来たる可能性を感じさせるのがこの“ジャージ”だったような気も。

サバシスター - サバシスター's THEME (Live at 下北沢SHELTER) - YouTube

『アテンション!!』における“タイムセール逃してくれ”、更には「サーバ!サーバ!」コールからダメ押しの“サバシスター's THEME”で、ライブ本編は幕引き。サビで多数の手が挙がる幸福空間で、合いの手も入れつつ大団円を図る鯖姉妹たちである。キャッチーなのにアツい楽曲に心を掴まれながらも、いつしか終わってしまった性急さは完全にロック過渡期のそれであり、そうした音楽を2023年現在に20歳そこそこの少女たちが鳴らす重要性すら覚えた爆速の2分であった。

ナイスなガール - YouTube

もうこの時点で夜の21時15分というカオスなANIMAで、サバシスターのアンコールは過去曲から2曲をドロップ。まずは「次の曲は30秒で終わる曲なので、ブチ上げで行けますか?」と鳴らされた“サバカン 〜サバシスターより感謝を込めて〜”で一瞬で駆け抜けると、ラストは“ナイスなガール”で終了。高円寺を舞台に、その付近にいる様々な人の様子を俯瞰して観る楽曲である。ただ楽曲内の主人公(おそらくなち)は友人にバンTをあげたりライブハウスを中心に見ていたりと、“ナイスなガール”は彼女自身の原点すら詰まったロックチューンでもある。この楽曲をある種異様なスピード感で駆け抜け、ライブは終幕。まだまだ荒削りだが、その中に確かなスピリットを見た瞬間だった。……まだまだ行くぞ、サバシスター!

【サバシスター@心斎橋ANIMA セットリスト】
ヘイまま!プリーズコールミー
スケボー泥棒!
生活
アイリー
しげちゃん
ジャージ
タイムセール逃してくれ
サバシスター's THEME

[アンコール]
サバカン 〜サバシスターより感謝を込めて〜
ナイスなガール

 

新進気鋭の若手バンド・サバシスターと、本公演の大阪にちなんだ地元ロックバンドが肩を組んだ今回のライブ。それは名の売れたアーティストが行うホールライブでは決して得られない、言うなれば『ライブハウス最高!』を地で行くような、最高に泥くさい数時間だった。

そしてその中でもサバシスターは愛はズやアフターアワーズら先輩勢から、はたまた我々観客からしても、ロックの未来を託す存在として光っていた。それは彼女たち自身がライブハウスを愛しているからに他ならず、何だかとても嬉しくなってしまったのは筆者だけではないだろう。……繰り返すが、この日のサバシスターは今ある持ち曲をほぼ全て出し尽くしたセットリストだった。これが夏フェスを経てライブハウスツアーを経て、来年に出すアルバムに活かされるのだろうと思うと本当に末恐ろしい。この日を観測出来たことを誇れるようになる日も、きっと近い。……サバシスター、愛はズボーン、アフターアワーズの3組。どのバンドも素晴らしいライブでした。