キタガワのブログ

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映画『ラーゲリより愛を込めて』レビュー

こんばんは、キタガワです。

 

戦争を題材にした映画は数あれど、こと涙を誘う展開に関してなら『ラーゲリより愛を込めて』に勝るものはないのではないか。鑑賞後、涙に濡れた顔で僕はそんなことを思ってしまった。矢継ぎ早に襲い来る感動の波。衝撃の展開。友情……。あいにく貧弱なボキャブラリーでしか魅力を語ることは出来ないのがもどかしいが、この映画には圧倒的なまでのうねりがあった。しかもストーリーはノンフィクション。実際にあった話だと言うのだから、更に驚きだ。

公開後に口コミで広まり、2022年一番泣ける映画として語られるまでになった『ラーゲリより愛を込めて』。言葉を選ばずに言えば「それなら観てやろうじゃねえか!」というミーハー心が勝っての鑑賞だったのだけれど、なかなかどうして……。結論から言えば僕は片手で収まらない回数泣き、終盤では堪えることに苦心して肩を震わせまくるほどの完全敗北であった。そもそも『泣く』行為自体がある程度の年齢になれば『人前で見せてはいけない姿』なので、日常生活でそんな状況に陥ることはまずない。そんな中でも周りを観ても嗚咽とすすり泣きが響いていて、改めて今作の力を痛感する形だった。

今作の舞台は、第2次世界大戦後の1945年。戦争が終わった後に多くの兵士が帰投する中で、主人公(二宮和也)らを含めた数十名はシベリア(ラーゲリ)の強制収容所に、日本人捕虜として収容。超過酷な労働環境、いつ帰国できるかも分からない絶望の中で、筆舌に尽くし難い労働と体罰が繰り返され、死亡者も多発。ただ主人公だけは希望を捨てておらず、やがて彼の発する前向きな精神は大きな希望となっていく……。簡単ではあるが、これが物語の簡単なあらすじだ。なおここからは重大なネタバレが多発するため、読み進める際には自己責任でお願いしたい。

この作品で注目すべきポイントは、労働施設における4人との人間関係。というのも、この映画では前半部分こそ主人公が周りを引っ張っていくストーリーなのだが、後半では主人公が癌により死去。主人公不在で戦争後の物語が展開するという、全く別物の流れになっており、その残された4人が後日譚として重大な役割を果たすためである。

大前提として、『ラーゲリより愛を込めて』では、主人公は自分を犠牲にして他者を引っ張っていく(助ける)人間であり、それが閉鎖的な絶望状況で確かな光になっていることを記さねばならない。先述の通り彼は最終的に死んでしまうのだけれど、彼に助けられた捕虜すべてに、その主人公への感謝は残り続けているのだ。そして物語において重要な4人全員(ここでは重要人物を①〜④とする)は、それぞれに大切な役割が秘められているのだ。

例えば①。彼は極めて保守的で、自分から動こうとしない。だからこそ様々な体罰を避けてきたのだが、そんな自分を変えたいと思っている。
→主人公が他者を助ける姿を何度も見た。後に主人公を助けるため、大規模なストライキの発起人となる。

例えば②。彼は主人公を捕虜にした(敵国に売った)戦犯であり、もはや日本に戻る可能性はないのだと、生きる希望をなくしていた。
→主人公は自分を赦すことに加え、かねてよりの夢に近付けてくれた。

例えば③。彼は戦争に参加していない一般人、言葉が書けず、文字を教えてほしいと主人公に頼む。
→文字を勉強し、故郷の両親に自分の字で安否確認の手紙を送った。

例えば④。全捕虜の上官で、主人公に体罰を行ってきた側の人間。彼は家族と離れてしまい、再開できることを願って生きてきた。しかし手紙により家族が他界したことを知り、自殺を決意する。
→主人公が静止、命の大切さを説いた後病に倒れる。

ざっくりと書いてしまったが、要は登場人物全員が『主人公に強い恩がある』。その伏線があるからこそ、主人公死亡後の後半部分を爆発させる力にもなっているのだ。そこからの物語は4人が残された主人公の家族の元に、彼の遺書4枚をひとりずつ届ける流れにシフト。ひとりひとりが涙をこらえながら遺書を読み上げるシーンは涙なしでは鑑賞不可能な状況で、映画館という逃げられない環境で泣き続ける拷問タイムに突入。しかもそれが4回繰り返されるという……。総じて突飛な展開もないので、全体的なストーリーとしても非常に良く出来た作品だった。これは今年のアカデミー賞いけるかも。

ストーリー★★★★★
コメディー☆☆☆☆☆
配役★★★★★
感動★★★★★
エンタメ★★★★☆

総合評価★★★★☆(4.5)

映画『ラーゲリより愛を込めて』予告【12月9日(金)公開】 - YouTube