キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

バックファイア

まだ空も明るい17時。予約していた焼鳥屋に向かうと、何故だかとてつもなく閑散としていた。確かに『営業中』の札は掛かってはいるものの電気は点いていないし、中を覗けば段ボール箱が見える。周囲を見渡しても車も停まっておらず、これは何だかおかしいという話になった。

「ちょっと早めに始めて、その後は家で二次会だ!」とする計画はこの時点で破綻。諦めて周囲の居酒屋を検索していると、一台のワンボックスがギャリギャリ音を立てて入ってきた。ドアを開けて僕らに声を掛けてくれたのはどうやらそこの店員さんで、カギを紛失したため開店が間に合わないとのことだった。……幸運だったのは、我々の関係性。もしもこれがキッチリ企画したサークルの飲み会であれば「ふざけんな!」ともなろうが、僕らは長年連れ添った関係性なのでノーダメージ。ひとりが発した「全然大丈夫ですよー。じゃあまた後で来ますー」を合図に、僕らは近場のラーメン屋で1杯やることにした。

最近、小学校からの付き合いである我々3人は生活的に新たな動きを見せていた。僕は別の仕事を初めたし、ひとりは繁忙期で昼夜問わずいろいろな場所を巡っている。そしてもうひとりは子どもを授かったことを受けて配属が変わった。……つまりは、今まで以上に関わる機会が減ってしまったのだ。ただ「またいつか集まろうやー」の気持ちだけはお互いに持っていて、かくしてこの日偶然休みが重なったことで、数カ月ぶりに集まることになったのである。

結局、ラーメン屋では酒は飲まなかった。ベロベロになることを想定しての集まりだったので変なところだが、そもそも僕らはアルコールを介さずとも、小学校からずっと付き合いを続けてきたのだと実感。濃厚豚骨をペロリとやったところで先程の店に移動し、改めてビールを飲んだ頃には、非日常的な幸福が体を包み込んだ。毎日酒を飲んでいても、何故人と飲む酒はこんなに美味いのか。今後も多分、その謎は解けない。

何を頼んでいるかすら分からないまま、緩やかな時間が過ぎていく。次第に店も混んできてなかなかオーダーも通らなくなり、その頃には僕らはゲームをやりながら、モソモソと焼鳥をつまむ程度になった。いつもならここで2軒目行くかとなりそうな雰囲気だけれど、この日は友人の家にお邪魔することに。「FF10を買ったから進めてほしい」と友人が言っていたので、取り敢えず『ティーダのチ●ポ(自主規制)』を歌って笑い合ったり、まあそんな感じで家へと向かう。

友人の家で僕らは、奥さんとの4人でゲームに興じた。プレイ自体がかなり前のゲームなので、ある種懐古主義的な思いも浮かんだりしつつ、その都度「あの頃はゲームってもっと適当で良かったよね」と盛り上がる。画質だのクオリティだの、今風なゲームを度外視する程の『思い出補正』というスパイスが共有できる、それも同級生だからこそ。そして誰かが欠伸をしたらお開きになる。これもいつもの流れだ。

帰宅後、余ったビールを飲みながらダラケる。人生は辛いことばかりで、今でも何のために生きるのかは分からない。小学生のあの頃思い描いていた理想像とは、とても遠い人生を歩んでいるようにも思う。けれど酒を酌み交わしながら、あの頃と全く同じスタンスで楽しめるのは恵まれている方なのかもしれない。どっちにしろ滑稽な大人だが、少なくとも最悪な状況ではないのだろう。

 

BBHF『バックファイア』Music Video - YouTube