こんばんは、キタガワです。
「自分の父親は普段何をしてるんだろう」……。多くの人が1度は幼心として、そんな疑問を抱いたことがあるはずだ。多分一家の大黒柱としてしっかり仕事はしているはず。でもその内容は分かるはずがないし、逆に家でのイメージは真逆でグータラ。おそらく母と比べても、圧倒的にそのリアルが不明瞭なのは父であろうと思う。
今作『さがす』は、そんな父の予想だにしなかった素顔が描かれるサスペンスホラーである。物語は子供が警察から連絡を受け、父が犯した万引きを咎めるシーンから幕を開ける。ポケットの金は僅かしかなく、父と子の2人暮らしで生活が困窮する事態を考えての行動だったと思われるが、父は「ケチケチした店やのお」と反省の色はない。何とか無罪放免になった後父に怒りをぶつける中、父はボソリと言う。「指名手配中の連続殺人犯見たんや。間違いない。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談として受け流すも、翌日から父の姿は消えてなくなってしまう。果たして父はどこに行ったのか。そして、父を『さがす』ために動き出した子が直視したまさかの結末とは……。というのが、簡単なあらすじである。
『さがす』における評価のポイントは、第一に『父を探した結末の納得加減』。第二に『そこに至るまでの道筋』だろう。まず最初の部分に関しては、かなり意外性があって良かった。実は父と連続殺人犯は共犯者であり、ふたりで殺害を協力し合う間柄→最後に父は連続殺人犯を裏切って殺し、血にまみれた状態で子と対面→連続殺人犯を正当防衛で殺したヒーローとして懸賞金獲得→子が父に匿名で「自分を殺してほしい」とメール→「あれ送ったのお前か?」と父が質問、子が泣きながら頷き、バックに警察のサイレンの音でフェードアウト……。一見無理がありそうなストーリーではあれど、殺害行為が父なりの正義のためであったり、最終的には子が父の計画に気付いてしまったりと、物語を紐解いていけばその点も問題なくカバーしていて◯。
逆に『そこに至るまでの道筋』に関しては少し煩雑かな、という印象だ。それこそ父の捜索に一緒に向かった男子学生は不必要っぽかったのもあるし。ここまで殺人を犯しておいて足が付かなかったのか、などなど。ただ多くの人がイメージしたように、犯行的なこの話は2017年に発生した『座間9人殺人事件』を題材にしたような流れに沿っている(詳しくはWikipedia参照)ので、そうした意味では「前例がある」ため許容範囲か。いろいろと思うところはあるが、それらが巧みな展開で良い方面に持っていかれる様はやはり痛快。総合的に見てかなり面白かった。
上映2時間の中で、ひたすら『父の正体』とその裏側の謎にピントを当てた今作。個人的には何よりもハチャメチャにハードルが上がったオチを、全く予想外の形で見事落とし切った部分は心底驚いたので、総合評価は以下の通り。またどんでん返し系の作品はあらかた作られ尽くした感があったけれど、まだまだ先があるのだなと証明した1作でもある。佐藤二朗の狂演含め、気になった方は是非とも。
ストーリー★★★★☆
コメディー★☆☆☆☆
配役★★★★☆
感動★★★☆☆
エンタメ★★★★☆
総合評価★★★★☆