キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

『いのちの電話』は本当にいのちを救ってくれる存在なのか

某日、大好きな芸人さんが亡くなった。昔から彼が出演していた番組は欠かさずチェックしていて、一時は彼の笑いに勝手ながら助けられていた。あれから数日が経った今でも「嘘であってほしい」とは思うけれど、それについて個人的に何かを書き記すことはしない。その人なりに思い詰めた結果がそれだったのだとしたら、いち個人の思いだけで書き記すのは些か卑怯だと思うから。

必然この度の一報は昼夜問わず、翌日も翌々日も続けて続報が報道番組で取り扱われる形となったが、そんな中でひとつ疑問に思ったことがある。それこそが頻繁にここ数日で知られることとなった『いのちの電話』についてだ。現在芸能人の自死のニュースが流れるたびに決まってテロップに付け加えられてアナウンサーが読み上げる……というのが『いのちの電話』の広がりのセオリーとなっているけれど、まず大前提として、この『いのちの電話』に救われた人が大勢いることを踏まえても、その存在を希死念慮を抱える人々に広く提供することは良くないことだと思っている。その理由は純粋に、このシステムが本当に悩める人々にとってプラスとは到底考えられないためなのだが、今記事では筆者が『いのちの電話』に否定的な考えを固めた理由について、以下にまとめていく。なおこれらは全て個人的な思いに基づいて記したものであり、他意はないことは始めに明言しておきたい。加えて今記事では広告収入を一切受け取っていないこともまた、この場ではっきりさせておきたい。

 

 

①ネット記事における収益の仕組み

冒頭から本筋から逸れるようで申し訳ないが、本題に入る前に理解しておかなければならないのが、そもそもの『ネット記事における収益の仕組み』だ。いくつか例外はあれど、ネット記事の収益発生は主に2通り。ひとつは『企業案件』、もうひとつは『広告収入(Googleアドセンス)』である。

そもそも『企業案件』というのは普段YouTube等を閲覧している人はよく分かるように、特定の商品をレビューして商品購入に繋げる戦略を指している。これはブログでもYouTubeでもそうなのだけれど、紹介をしてもらう、という行動自体にまず企業側から数万〜数十万単位で広告費が支払われて、その後実際に動画ないし広告がきっかけで商品がいくら売れたかで、プラスのマージンが手に入る仕組みになる。ただこれには問題もあって、閲覧者が「今回の動画もPR動画かよ」と判断して再生を渋ってしまったりと、ネガティブなイメージも付きやすい。だからこそ、特にインターネットにおける記事では2つ目の広告収入を是としているものが多い。

そんなこんなで広告収入。こちらはとてもシンプルで、純粋に『記事内に貼られた広告が1回クリックされる』、ないしは『毎月の閲覧者』ごとに数円単位の収益が発生するシステムである。なお現状インターネット経由で収入を得ている人の大多数がこの広告収入を採用していて、例えば『料理 おすすめ』でも『有線ケーブル』でも『運動会 楽しい』でも何でも、記事内に広告が貼られているネット記事はほぼ全てが広告収入を得ていると見て良い。余談だが、違法ダウンロードサイト等に大量に広告が貼られている理由もそれである。今回の『いのちの電話』に関して重要なのは、そのうちの『毎月の閲覧数』という広告収入のもうひとつの部分。これを踏まえた上で、次の項目から進んでいこう。

②いのちの電話の成り立ち

続いて『いのちの電話』の存在意義とも言える成り立ちについて見ていこう。この活動の一部を担っている『社会福祉法人 いのちの電話協会』では、いのちの電話についてこう記されている。『さまざまな問題をかかえて孤独と不安に苦しみ、悩み、生きる力を失いかけている人々に、「電話」を通して対話することにより、生きる意欲を自ら見い出せるように心の支えになることを願うボランティア活動です。 電話相談員は研修を受けたボランティアたちです』……。つまりこのいのちの電話は本当に辛い人々を救うために、善意で悩める人の相談に乗っている、ということ。無給無休で相談に乗る、それは本当に素晴らしいことだとは思う。

ただ悲しいかな、その善意が本心からの善意であるかどうかは、きっと我々には知る由もないのである。例えば最初は「本気で悩める人の相談に乗ってあげたい!」と思って活動を始めた人でも、1日何人も何人も相談を受けたら精神的に辛くなることもあるだろうし、深夜シフトで電話に出るのがストレスになる人もいる。しかもどれだけ相談を真摯に聴いても、実質的に無休なのである。……少なくとも普通の人ならノイローゼになりかねない環境だろう。そんな中で相談に乗ってくれる人全員が善意である保証は、少なくとも100%ではないのではないか。

③ではそもそもいのちの電話は本当に善意なのか?

全ての活動は、絶対に金がなければ続けられない。そしていのちの電話は365日24時間、基本的にボランティアが行っており、そこに収益は発生してしない。……であれば、そもそもいのちの電話はどうやって収益を得ているのだろうか。そこでハッと思い至るのが『企業案件(Googleアドセンス)』と『通話時間』の2つの収入である。

これは本当に辛い生活を送ったことのある人なら分かることと推察するが、例えば『死 方法』や『つらい 生活』等いろいろと検索すると、「本当に辛いことがあればこちらをオススメします!」と突然記事内の最後の最後にいのちの電話に誘導されることがある。例えば、もしそれがいのちの電話側からブロガー側にもたらした逆的な企業案件だったらどうだろう。毎月の閲覧数で活動を維持しているとしたら。他にも、辛い話をずっとし続けていれば通話時間が数十分になってしまうこともおそらくあるけれど、それが回り回っていのちの電話の収益になっている可能性は。正式な情報はないので現状まだまだ憶測の域を出ないが、やたらめったらメディアでいのちの電話が猛プッシュされていることから、最悪な想像をしてしまう自分がいる。

記事とは関係なく、ここからは少し自分の話。僕はこれまで何百回といのちの電話にコールしてきた人間だ。ただその中で繋がったのは片手で数える程で、その内容も僅か数分で言いくるめられたり「考え方を変えたらどう?」とペラペラなアドバイスをもらったり、果ては説教じみた言葉で一蹴されたこともある。……あれから何年も経って今生きてはいるけれど、少なくともいのちの電話が人生を明るく照らす一助になったということは、ただの一度もない。

友人に相談も出来ない。家族なんてもってのほか。でも今が辛すぎる。そんな状況を打開してくれる唯一の手段がいのちの電話だと思ってコールするも、その結果希死念慮が更に高まる悪循環。だからこそ何かとテレビでいのちの電話の存在を伝えられるたびに思うのだ。これは本当に、今にも死にそうな暗中模索の人たちに寄り添ってくれるものなのだろうかと。

ここまで感情の赴くまま書き記してしまったが、上にも記した通りこれらは憶測の域を出ない。もしも本当にいのちの電話が100%の善意で行っているのだとすれば即刻この記事は削除する気持ちでいるし、是非とも辛い人々に寄り添ってほしいと思ってはいるけれど、何というかここまで365日24時間、ボランティアを主軸に置いたこれほど大規模なものを完全善意であるとは到底思えない。少なくとも収入源などの運営情報を明らかにしてもらえれば、悩める人々も胸筋を開いた状態で頼ることが出来るはずだが、多分難しいのだろうなと。……改めて、本当に死にたい人に対してみんなが思っている以上に世間は冷たいよ、ということを考える今日このごろである。