キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【ライブレポート】PEOPLE 1『2022 SS TOUR “PEOPLE+”』@広島クラブクアトロ

こんばんは、キタガワです。

 

チケットが一般発売直後に全公演ソールドアウトとなり、結果的にチケット難民が続出したPEOPLE 1史上2度目となるツアー『2022 SS TOUR “PEOPLE+”』。これまで東名阪で行われていたものとは違って、今回は広島や愛知など更に幅広い地域で行われる、彼らにとっても大きな意味を持つツアーだ。……ただ彼らの場合は他のアーティストとは勝手が違ってもいて、我々的にはその日を迎えるまで妙にソワソワ。「一体どんなライブになるんだ」と、期待に胸を膨らませていた人はきっと多かったはず。


その理由は単純に、PEOPLE 1のライブを目撃したことのある人が圧倒的に少ないため。この日のMCでも「東京から10時間かけて広島に来た」「これまでの人生で日本の西側に行ったのは今日の広島が初めて」と語られていたように、活動拠点が東京にある関係上、地方民がライブに赴くこともほぼほぼ難しかったのである。……そんな中開催されたのがこの日の広島公演。フロアに足を踏み入れるなり、ステージ上に置かれている何やら英語で書かれた縦長の物体、サインペンで書かれた『PEOPLE』の文字が呪詛のように埋め尽くされた白い椅子2脚、背後にはキーボード、PC……。そのロックバンドのライブとしては明らかに異様な光景に、更なる興奮が高まっていく感覚を覚える。 


この日僅かに販売された当日券分の動員が凄まじかったからか、定刻の18時を数分押した時間に開演。本来であれば暗転後にSEが流れるのが世間一般的なバンドのあるあるなのだが、PEOPLE 1のライブではそうしたこともなく。完全無音の真っ暗な中、彼らがステージに現れるのを待っている状態だ。そして次第に暗闇に目が慣れてきた頃、舞台袖からサポートのベントラーカオル(G.Key)、Hajime Taguchi(B.Key.manipulator)5名の人影が登場。先程PEOPLE 1が正体不明の存在であると綴ったが、無論このときには演奏するメンバー数はおろかそのライブ形態も分からないため、どこまでがサポートメンバーなのかも分からないカオスな時間が流れていく。ただ、ステージ中央に1本垂直に立ったマイクの前に立っている人物がおそらくIto(Vo.G)で、まるで精神統一するかのように椅子にダランと腰掛けている謎の人物が作詞作曲者のDeu(Vo.G.B.Key.Per.Sampler.manipulator)、ドラムがTakeuchi(Dr.Sampler.Cajón)であるということは、何となしに理解する。

 

PEOPLE 1 “怪獣” (Official Video) - YouTube

いつしかオープニングを飾るインスト曲“PEOPLE”が流れ初めてもメンバーは微動だにしなかったが、《さあさあ怪獣にならなくちゃ/等身大じゃ殺されちゃう》とのフレーズがどこからか放たれた瞬間、それまで椅子に腰掛けていた人物が勢い良く前へ進み出る。そう。運命のオープナーはいきなりのキラーチューン“怪獣”である。様々な音がごった煮されたカオスなサウンドが蹂躙する中で、Deuは右へ左へと移動し、更にはファンにピースをしたり手をヒラヒラ振ったりしながら、自由に歌声を響かせていく。なおこの歌い方も、敢えて誤解を生むような書き方をしてしまえば「絶対に心に残るライブをしてやる!」という肉体的と言うよりは脱力的に近く、途中の「ラパッパッパッパパ・アォー」の印象的なフレーズさえも低音だったり高音だったりとかなりのアレンジが加えられていて、まるで音楽好きたちの遊び場にフラっと迷い込んだよう。対してともすれば折れてしまいそうな程の細身のシルエットで中央に立つItoは直立不動でギターを弾き、かなり若く見えるTakeuchiは常に笑顔でドラムを叩いていて、そのアンバランスさも面白い。


新曲の情報は数あれど、現状リリースされた正式なフルアルバムは一昨年リリースの1作のみというPEOPLE 1。そのため集まったファンの大方の予想通り、基本的にはこのフルアルバムから“バンド”を除く楽曲を網羅することに加えて、カバーも新曲も投下するという彼らの現在地を見せ付けるものとなった。ただ全く予想外だったのは、その構成がこと『ロックバンドのライブセオリー』に明らかに反している異質な点で、激しい曲とダウナーな曲が混在したり、メンバーが都度全く違う楽器を演奏したり、果ては口笛や咳払い、笑い声までもをパーカッションにする、これまでに観たことのない手法のステージングには驚かされるばかりだった。


マイペースな中にも集中力を見せながら楽曲を紡いでいくPEOPLE 1。けれどもMCになると突然グダグダになってしまうのもまだまだ活動歴の短いバンドならではで、Itoが第一声を「広島はじめましっ、うぇあ!」と盛大に噛んでしまったことをきっかけに、Deuがそれに対して「えっ?今噛んだよね?うぇあ!っつって」と執拗に突っ込み、追い込まれたItoが肯定も否定もしない形で逃げ切って沈黙……。というような具合で、どこか掴み所がない。他にも「ちょっと水飲んでいい?」と訴えるItoに「じゃあ10秒ね。じゅー、きゅー、はーち……」と何故かカウントダウンを始めるドSなDeuの姿を見ていると、彼らが気取らずにライブに臨んでいることが分かる。ちなみにライブにおける服装についてはスタイリストが付くアーティストも多い中、Itoがこの日着ていたマリリン・モンローのTシャツは広島のPARCOで先程購入したものとのこと。本当にどこまでも自然体である。

 

PEOPLE 1 "常夜燈" (Official Video) - YouTube

「PEOPLE 1から愛を込めて」と“ラヴ・ソング”、この日会場に来ている大学時代の広島の友人からラインでリクエストがあったという、予想外過ぎるフジファブリック“茜色の夕日”のカバーを挟み、ライブは続く。多数のMVのヒットを量産してきた彼らゆえ、きっと集まったファンそれぞれ『ライブで聴きたい曲』は異なっていたことだろうが、前半部分のハイライトとして映ったのはブレイクの火付け役となった“常夜燈(読み:じょうやとう)”だろう。手拍子しのリズムを完全に狂わせる独特な曲調でItoは心中に潜む漠然とした不安と、思いを圧し殺して順応させなければ生きていけないことを歌っているけれど、確かにそれはこの世界における真理だと思う。……何故なら恵まれているような自覚と共に時たま襲い来るネガティブな感情と戦いながら、僕らは日々を過ごしているから。基本的に明るいはずの彼らの楽曲に抱いていたどことなく憂鬱なイメージを、この楽曲でははっきりと示していたし、ある種ガタガタのテンポ感で突き抜ける様もまた、敢えて抽象的に心情を体現しているようでもあった。

 

PEOPLE 1 “魔法の歌” (Official Video) - YouTube

そして「僕の一番好きな曲をやります」というItoの一言からひとつの区切りとして鳴らされたのは“魔法の歌”。前半に涙に暮れる少女の姿を描き、後半は何か吹っ切れたように舞い踊る少女が描かれた公式MVがこの楽曲が急速に認知されたきっかけとなったのはお馴染みだが、ライブで歌われる“魔法の歌”はこれまで飄々とした佇まいに徹していたItoが声をからさんばかりに絶唱する、とても肉体的なアレンジで進行。よく言われるような「生きてるだけで偉い!」とする漠然とした応援歌ではなく、「生きていれば考え方が変わって楽になる」という、全く別の角度から生き辛さに切り込むフレーズに、どこかPEOPLE 1の心の広さすら感じた感動的な一幕だ。中でも《僕はこういう人だから 自分を愛してあげられない/そんな自分を愛している自分にだって気付いているんだよ》と叫ばれる最後の歌詞には、集まったファン誰しもが個人的な思いをフラッシュバックさせ、じんわりと『今』に思いを馳せたに違いない。

 

PEOPLE 1 "フロップニク" (Official Video) - YouTube

PEOPLE 1 “フロップニク” (BLT LIVE BOOSTER vol.1) - YouTube

この時点でライブ開始から1時間が経過。もちろんここからはアッパーな曲を連発する熱狂時間に突入である。第2部はアルバム同様にインストの“PEOPLE 2”→ゲームチックなサウンドが楽しい“スクール!!”の流れでスタート。これまでとは打って変わって激しいサウンドが鼓膜を揺らす、ロックバンドとしての彼らの動きに誰もが盛り上がりつつ注目している。取り分け印象深かったのは鉄板のキラーチューンたる“フロップニク”で、Dueは巻き舌で「ルルルルルルアァー!」と絶叫したり、「オッオッオウ!」とリズムに合わせて応戦したりとメーターの振り切ったアクションで楽しませ、それに呼応するように一寸先も見えないような照明がビカビカと照らされるカオス時間に。ちなみにこの楽曲でも特に決まった型はないらしく、Dueが叫ぶタイミングや途中でギターに切り替えるタイミングも彼の思うがまま。以下のライブ映像とはまた違ったライブ体験になったことは、是非とも特筆しておきたいところ。

 

PEOPLE 1 “銃の部品” (Official Video) - YouTube

続いてはそのままの勢いから「銃の部品100万再生ありがとうございます」とここに来ての新曲“銃の部品”で一気呵成を図るPEOPLE 1。そもそもメディアにほとんど顔を出さない謎のアーティストが公開1週間も経たずに100万再生を突破すること自体が異常なのだけれど、間違いなくこの楽曲はこれからもどんどん閲覧数を伸ばしていく、彼らにとっても大切な曲になる。そう断言出来る程の圧倒的盛り上がりには、流石と言う他ない。


楽しい時間は過ぎるのが早いもので、気付けば本編は残すところあと1曲に。本編ラストのMCと言うことで、機転を利かせたItoが「最後なんで何か言いたいことないですか?」とTakeuchiに振るも、Takeuchiに「別にないです……」と断られ、それではとDeuに主導権を譲るも「じゃあ僕もないです……」と言われた結果、しょぼくれたItoが「じゃあ……ありがとうございました……」と語って失笑が巻き起こる、自由奔放な彼ららしいMCだ。そして最後に鳴らされるのは“僕の心”という楽曲であることを明言したItoが、ゆっくりと話し始める。「人の気持ちは今でも分からないです。僕もずっと人間関係に悩んできてっていうことがあったので……。だから『自分はこういう人間だから』って悩んでしまうのは、凄く良く分かります。でもそれを『自分はこうだから』って言い訳をして逃げてしまう行為については、絶対に良くないと思っていて」。詳細は不明にしろ、彼はそうしたニュアンスの言葉を発していたと思う。

 

PEOPLE 1 “僕の心” (Official Video) - YouTube

そうして緩やかに始まった“僕の心”は、まるで我々の心の奥底にスッと入り込むように純粋に会場を満たしていった。メンバーは楽曲中長らくハンドクラップを要求し、サビの合唱部分にはSNSで募集されたファンの歌声が重ねられるその光景は言葉に出来ない程幸せなもので、所々声が嗄れながらも後半にかけて熱を帯びるItoの歌唱も、楽曲の持つメッセージ性に拍車をかけていた。MV、激しさ、匿名性……。PEOPLE 1の魅力は意図して混在させているため、おそらくファンの中でも「PEOPLE 1のどこが好き?」という部分を仮に質問したとして、人それぞれ回答は異なることだろう。ただこの日に披露された“113号室”や“常夜燈”、“魔法の歌”、そしてこの“僕の心”を聴いたとき、彼らは言いようのない寂しさや後悔、生き辛さを(なるべく見せないように)楽曲に落とし込んでいることがはっきりと分かった。特にラスト、何度も自分の心の中の思いについて《分かるわけがないでしょう》と力強く繰り返すItoの姿には、どこかライブに来ないと絶対に分からない、彼らの真意さえ見えた気がした。


ここでライブは一旦ブレイク。けれども一向に点かない客電にアンコールを察したファンたちによる手拍子で、ひとりの男が再び呼び込まれる。それはこれまでほとんどMCで発言をしてこなかったTakeuchiであり、ここからはライブの物販をTakeuchiが紹介するコーナーに突入だ。しかしながら「普段隅の方でドラム叩いてるからこんなに見られるの慣れてなくて……。あんまり見ないでください……」と語っていたように喋りは苦手らしく、全体的に訥々とした語り口であることに加えてTシャツの色展開を間違えたり、グッズの紹介時間に明らかなバラつきがあるなど、見ているこちらとしても苦笑いが続く時間に。Takeuchi自身ももう無理だと思ったのか何度もメンバーに助けを求めていたものの、DeuとItoは腕組みをしながらステージ袖でニヤニヤしながら見ているのみで、謎の時間が数分間続く。そしてようやくステージに出てきたDeuとItoに「MCって難しいんですね……」と呟いてからは、「そうだよ!MC大変なんだぞ」「こっちが頑張って作ったグッズなのによお」とDeuによる徹底的なTakeuchiイジりが勃発。常にニコニコしているTakeuchi、気付けばサンドバッグ状態である。ただ完全に挟まれた位置に立つItoは対照的に時折少し笑うのみで直立不動という、PEOPLE 1の不思議な関係性を表したMCだったと思う。


アンコール1曲目は、来たる5月16日から放送予定のドラマ『カナカナ』の主題歌に抜擢された新曲“YOUNG TOWN”をメンバー3人によるアコースティックセットで一足早くお届け。Deuがベース、Itoがアコギ、Takeuchiがカホンを演奏する貴重な場面を見ながら、こうして新曲を聴けるのもライブの醍醐味だと実感。ほぼ集まったファン全員が初見状態ではあったが、細部に口ずさみやすいフレーズも含まれていて「きっとこの楽曲も今後のPEOPLE 1の代表曲になるんだなあ」と確信にも似た気持ちになる楽曲だ。

 

PEOPLE 1 × Spotify on PlayStation - YouTube

そして正真正銘ラスト、Itoが「まだやってない曲がありまして。最後は皆さんで盛り上がって終わりましょう!」と叫んで鳴らされた楽曲はフルアルバム『PEOPLE』から現状の彼らの楽曲で最もアッパーな雰囲気を携えた“エッジワース・カイパーベルト”。イントロが爆音で流れた瞬間から、ファンは当然飛び跳ねまくり踊りまくり。アンコールラストにしてこの日一番の盛り上がりを記録したことは言うまでもない。DeuはItoの背後で彼の頭部にピースを2個繋げて耳のようにしたりと全力で遊びながら、ファンに手を振ったり首を揺らしたりと自由奔放。Itoに関してもハンドマイクでこの日一番ファンに近付きながら、最終的にはマイクを側に置いてあった拡声器に持ち替え、まるで何かの選挙演説のようにザラついたノイズまみれの歌声を響かせていく。かくして特に「踊れー!」という一言もなく敢えてファンの動きに全てを委ねながらも、けれども結果ファンが盛り上がるという、実はライブバンドの全体を考えてもあまりない自主的な興奮を呼び起こして「PEOPLE 1でした。広島楽しかった。ありがとう!」との一言でもって、この日の約1時間40分に及んだライブはその幕を閉じたのだった。

 

ライブを終えて1日が経った今でも、あの日観たライブが一体どのようなものだったのか形容するのは難しい。いわゆるロックバンド然としたライブとも違うし、新しいことばかりに振り切ったものとも違う。多分これまでMVをチェックしてきた人なら『PEOPLE 1のライブのイメージが湧かない』と一度は思っただろうけれど、その疑問符はライブを観ても結果消えないというか……。物書きとしては陳腐な表現にはなってしまうけれど、やはり良い意味で「あれがPEOPLE 1のライブである」ということになるのだろう。ただ“常夜燈”や“魔法の歌”の箇所にも記したように、その楽曲には紛れもなく彼ら自身が感じる思いも含まれている訳で、こうした部分はライブでなければ味わえない『肉体的な彼ららしさ』であるとも感じた次第だ。


断言するが、今年PEOPLE 1は音楽業界に名を轟かせる存在になる。ただ主にその理由はおそらく匿名性と音楽性によるところが大きく、引き合いに出してしまって本当に申し訳ないのだけれど例えばWurtSやEveにも似て、一般的に分かりやすい部分の「PEOPLE 1って曲めっちゃ良いよね!ミステリアスな点も格好良い!」という、本人たちの意見は不明ながら結果としてネット発ならではのバズリ方をすることと思う。でも本当に『分かっている』ファンは彼らのもっともっと深い部分も含めて愛するはずだし、それがYouTubeのコメントなりSNSなりで拡散されて、そこからまだ視点が行かなかった音楽好きもだんだんハマっていくような。何となく、PEOPLE 1はそうした今風のブレイクの仕方を辿るのだろう。よくよく考えれば良い意味でこれほど言葉にし辛いライブも久し振りだったが、それすらももしかすると彼らの策略なのかもしれないなと、これまた漠然と思ったのだった。何が凄いかも言い表せないがとにかく凄かったライブ、PEOPLE 1の魅力はきっと、もっと近くて遠いところにある。


【PEOPLE 1@広島クラブクアトロ セットリスト】
PEOPLE
怪獣
さよならミュージック
BUTTER COOKIES
ゴースト
113号室
ラヴ・ソング
茜色の夕日(フジファブリックカバー)
常夜燈
東京
魔法の歌
PEOPLE2
スクール!!
フロップニク
銃の部品(新曲)
アイワナビーフリー
僕の心

[アンコール]
YOUNG TOWN(新曲・Acoustic Ver.)
エッジワース・カイパーベルト