キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】グループ魂『一年ぶりの再結成!』@中野サンプラザ

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20220126003748j:plain

https://www.g-tamashii.com/sp/

『神々の公開レコーディング~痛風だけど恋愛したい~』 - YouTube


思えばYouTube公式チャンネルで解散発表が敢行されたのは、2020年の年末だった。個々のスケジュールやメンバーの高齢化、新型コロナウイルスの蔓延に伴って活動継続は困難。故にグループ魂は完全に解散する!というスタンスの解散発表は確かにリアリティのあるものだったし、石鹸(Dr。三宅弘城)もその場で大号泣していた(上記動画の1:24:50あたりを参照)のだが、実はこの解散はドッキリ。2022年の春には再結成ライブを行う宣言でもって、最後は前向きな笑顔で彼らは表舞台から一度姿を消した。


そして1月21日。遂にその時はやってきた。会場は大バコの中野サンプラザで、再結成の場としてはこれ以上ない環境である。今回配信組は特典としてライブ前後の楽屋でのやり取りをリアルタイムで観ることが出来たのだが、画面が遷移するなり港カヲル(MC。皆川猿時)が「どうも!グループ魂でございます。……(本番)10分前だろ今!」と激を飛ばす一幕でまずひと笑い。その後も『一年ぶりの再結成』と謳ってはいるもののワンマンライブは3年4ヶ月ぶりであることを明らかにすることで一旦は気を引き締めつつ、女優・筒井真理子とのラインのやり取りや暴動(G。宮藤官九郎)の頻尿、メンバーが使用している白髪染めの話などどんどん話が異次元の方向へと進んでいく地獄絵図。たまらず暴動が「俺ら本当に今からライブやるの?」とツッコミを入れる程、リラックスし過ぎた空間だ。


定刻になると再び遷移し、画面は中野サンプラザのステージに。何故かテレビCMでお馴染みの夢グループ社によるグッズ紹介が始まり爆笑を生むと、“ペニスJAPAN”のコールと共にスクリーンにこれまでの活動記録、そしてその裏にはスリッパを叩き続ける破壊(Vo。阿部サダヲ)の姿が大写しに。紗幕が廃されてのオープナーはもちろん“ペニスJAPAN”で、男性のシンボルをテーマに冠した下世話な内容が早くも中野サンプラザに届けられる。遅刻(G。富澤タク)もバイト君(大道具。村杉蝉之介)も小園(B。小園竜一)も元気そうで何よりだし、ステージ前方にはもちろん『笑え!』と記された赤いカラーコーン。ブランクを全く感じさせないステージングに、ファンも大盛り上がりだ。特に楽曲のラストで「会いたかったよー!オーイ!クソババア久しぶりだな!ババア共久しぶりだなオーイ!」と絶叫した破壊は序盤からフルスロットルの歌唱で、全盛期の立ち居振る舞いと何ら変わらない格好良さだったことは是非とも特筆しておきたいところ。

 

「モテる努力をしないとモテないゾーン」トレイラー - YouTube

 

先述の通り今回のライブは単独としては3年4ヶ月ぶりである関係上、基本的にはグループ魂が27年間で生み出した代表曲を網羅するセットリストで進行。ただこの日集まったファン的には「この曲やってほしい!」という願望がほぼ叶えられたと言って良い中で、解散前にリリースされながらも泣く泣くコロナ禍でライブ披露が出来なかったニューアルバム『神々のアルバム』からも多くドロップされ、今のグループ魂の強みもバッチリ示す形になっていたのも面白い。


“アイサツはハイセツよりタイセツ”と“モテる努力をしないでモテたい節”のライブアンセム2曲を立て続けに演奏した後は、彼らの一年ぶりのメッセージを全てのファンが望んだであろうMCタイム。しかしながら破壊が「3曲続けてお送りしました」と話を紡ごうとした瞬間にファンが鳴らしたスリッパ(注:今回のライブでは物販のスリッパを手拍子代わりで鳴らすことが推奨されていた)の音を聴いて「うるさいわ……。思ったより不快ですこっちは……」と一喝。その一言でまたも爆笑に包まれる会場。ひとしきり話終わると再結成後初のライブということで、メンバーそれぞれに一言要求する破壊。ここで注目されたのはやはり解散ドッキリ時に涙を流した石鹸がどんな発言をするかだったが、早くも「グループ魂、もうこれっきりで解散するとドッキリを仕掛けられて1年と3週間。この日を待っ……待ってましたぁ……!」と大号泣。その光景にドン引きするメンバーたちと爆笑するファンの対比も最高だったが、直後に放たれた破壊の「何かヤダなあ……。今からネタやるんだよ俺たち」とのまさかの展開暴露でまた爆笑が生まれるのもまた最高だった。

 

 

そして破壊の言葉通り、いろいろと予定外だったMC後は何と27年前に制作した時事ネタを一字一句変えずに披露する『岩崎宏美』と『ジェリー藤尾』、『もう限界』の3ネタを立て続けにドロップ。詳しい内容には敢えて触れないし、このネタ名については筆者が勝手に付けているだけなのだけれどやっぱり放送コードギリギリ。取り敢えずは「チ●コは嫁にしか見せてないんですけどね!」「チ●コビッグボスでお願いしまーす!」とのバイト君のセリフだけで内容は想像して頂けますよう、ここはひとつ……。


港カヲルを除くメンバーが袖にハケると、続いては恒例の港カヲルの前説コーナーに移るのだが「女は、マカロンよりもラスクが好きなのである。何故なら、硬いほうが喜ぶから!」の開幕から先程のMCの何倍もドープな下ネタが大量に放り込まれるものだから表情に困る。なお今回のライブは映像化がされることが確定されているらしいのだが、その時最も「これDVDにしたらヤバいんじゃないか……?」と思ってしまったのは間違いなくこのシーンだった。ただそんなことはおかまいなしで暴れ回るカヲルを観ていると、何とかなるだろうという気にもなってくるから不思議だ。飛沫感染防止として声出しが制限されている関係上「おっぱい元気?」のレスポンスはスリッパを叩く行動でカバーしたりと、決しておざなりにならないのも素晴らしい。

 

「神々のアルバム」クロスフェード - YouTube

 

そうした荒唐無稽な流れの果てに「はじめて演奏する曲をはじめて聴く客……。地獄の時間の始まりだ!ワハハハ!」とのカヲルのデーモンボイスが笑いを誘うと、続いては『神々のアルバム』から3曲を連続して披露するニューモード。先んじて語られたMC通り全てのファンがライブで初聴きの楽曲だったが、サポートメンバーの念仏(ASA-CHANG)によるボンゴ演奏で“サ!セ!テ!イタダイテマス”、某タレントのイメージを列挙した“ケーシー高峰”など、思わず驚いてしまう程ファンの反応も良く、初めて演奏された感覚がとても少なかったのはひとつの発見だった。しかしながら3曲連続新曲を披露する算段が予想外に上手く行き過ぎたことに疑問を呈したカヲルの発言により、急遽代表曲“Over 30 do the 魂”を挟んで“Over 50 めんどくさい”を演奏する場面もあり、飽きさせない工夫もバッチリ。

 

 

グループ魂と言えば、やはり新作コントの存在も欠かせない。まず最初にお披露目されたのは『ワクチン』を題材にしたコロナ禍ならではのコントであり、グループ魂と同じ大人計画所属の俳優・荒川良々が突然突然「長老が倒れなすったー!」と叫びながら走る意味深な幕開けだ。どうやら話を紐解くにここは山奥にある田舎で、長老が倒れたことを知る唯一の村民である荒川が、大雨の中家々を回って助けを求めているようだ。けれども人里離れた田舎ならではなのか、荒川が「大変だー!」と家のドアを開けた瞬間『必ず麦茶とゆべしをご馳走される→長老の件を報告→問題解決のために別の家に向かわされる』のループが生み出され、堂々巡りの爆笑が積み重なっていく。3件程行き来を繰り返して長老の体調不良の理由がようやくコロナであることに行き着いたのはコント開始から十数分後のことだったのだが、医者からの「長老はワグヅンは打っだべか?ファイザーか?モデルナか?アストラゼネカか?」という横文字連続の問いに混乱した荒川が完全に内容をド忘れしてしまい、何故か最終的には磯丸水産のワクチンを摂取されて幻覚を見る衝撃のラストで幕を閉じた。……グループ魂は楽曲の素晴らしさも当然として、確かにこうしたコント然とした楽しさも見せ場だなあと、改めて実感する。

 

グループ魂 『君にジュースを買ってあげる♥』MV - YouTube


どこを切り取ってもハイライト的な興奮が生まれた今回のライブの中でも大爆笑を誘ったのは、ライブの鉄板曲たる『High School』。体重3桁付近、更には50歳を迎えたカヲル(注:公式では永遠の46歳設定)によるセーラー服のコスプレで腹が捩れる程笑ったのは当然として、その両足にテーピングが施されているという、心配もプラスで乗っかった笑いが襲い掛かるので油断大敵。歌われる内容についても目が覚めたらオッサンが女子高生の体になっている衝撃的な代物で、歌詞通りにピョンピョン飛び跳ねるカヲルのスカートからは何度もパンチラが発生。「一体これは何なのか」と問われれば回答に困るが、これこそがグループ魂のライブなのだ。

 

 

気付けばライブは後半戦。ここからはクライマックスに向けて、怒涛のパンクアンセムの連打で天井知らずの盛り上がりに導いていく。特別ゲストとして銀杏BOYZの峯田和伸を招いて披露されたコント『特報!皆川スポーツ』、“モテる努力をしないとモテないゾーン”、“君にジュースを買ってあげる♡”の他、知る人ぞ知るいわき兄弟の楽曲“いわきアンモナイト音頭”、“それでも生きなきゃ死んじゃう音頭”……。結成以来不変のメンバーたちが織り成す演奏は正直ミスタッチもあるし、お世辞にも上手いとは言い難いけれど、彼らがプレイするだけでオールオッケーなどしゃめしゃ感は唯一無二。時折画面に映し出されるファンの表情もマスクを着けていても分かる満面の笑顔で、思わずこちらも喜びが込み上げてしまう。

 

グループ魂 『もうすっかり NO FUTURE!』MV - YouTube


本編ラストに披露されたのは先行シングルとしてリリースされた“もうすっかりNO FUTURE!”。取り分け印象的だったのは《あと何回できるかな あと何回やるのかな/一回一回大事だ もうすっかりNO FUTURE!》とのサビ部分。そもそもこの楽曲はライブでのキラーチューンのひとつになるよう考えてリリースされたもので、当初はあと何回ライブが出来るか分からない、メンバーの加齢に伴っての健康面を歌う意味合いが強かった。だが新型コロナウイルスでライブの中止が続き、一度は解散を余儀なくされた今だからこそこの楽曲が与えるメッセージはまた違う響きを生んでいた。言わば“もうすっかりNO FUTURE!”は、多くの笑いで埋め尽くしてきたこの日のライブにおける深い喜びの代弁だったのではなかろうか。
 

本編は終了したが、まだまだライブは終わらない。再演を求めるアンコールの手拍子(とスリッパ拍子)に答えてライブスタート……と思いきや、なかなかステージ姿を現さないメンバーたち。するとどこからともなく「以上をもちまして、中野サンプラザ新春コンサート第一部、グループ魂『一年ぶりの再結成!』を終了致します」と、何やら聞き覚えのある声でアナウンスが。そして「この後は嬉しい景品が当たる愉快なゲーム大会を挟みまして、第二部、夢グループ新商品直売会を開催します」と放たれると、会場中がわっと沸いた。そう。次なるコントはグループ魂のCDアルバムでほぼ毎回取り入れられる破壊演じる歌舞伎俳優・中村屋華左衛門によるトークショーである。「中村屋!」のコールを呼び声としてステージに現れた中村屋華左衛門は赤いジャケットを着て眼鏡を掛けており、これまでのイメージとは一風変わった風貌。中村屋はステージ中央に歩み出るなりその後のゲーム大会に向けて真面目な説明を始めるも、それを見て瞬時に「関口宏!」と返すメンバーたちの対比が面白い。そうしてファン全員参加の旗揚げゲーム&ジャンケン大会を経て最後の一人に豪華景品が贈呈されると(もちろん消毒済み)、続いてはそのままの勢いで“痛風だけど恋愛したい”に雪崩れ込み。

 

グループ魂 『痛風だけど恋愛したい-神々の公開レコーディングver.-』MV - YouTube


新作『神々のアルバム』に収録されている“痛風だけど恋愛したい”は、アルバムを一聴した時点でもキャッチーな印象を抱いたものだけれど、それこそ今回のライブで『化けた曲』をひとつ挙げるなら個人的にはこの曲!と推したい程に素晴らしい代物だった。この楽曲はマイクをスイッチしながら全員で歌唱するグループ魂としては非常に珍しいボーカルを取っていて、これまで歌声をほぼ知ることのなかった楽器隊も含めて形作る楽曲になる。以前公開されたレコーディング動画でも各自のボーカル面については理解していたものの、やはり生ライブとなると臨場感が段違い。各自に色があり、ひとり欠けたらグループ魂ではなくなるという理想的な塩梅が歌声でもって理解出来るのは稀有で、新たな発見すら感じた次第だ。


アンコール最終曲はアルバム『TMC』から表題曲“TMC”。徹頭徹尾激しいサウンドが鼓膜を揺らす、珠玉のパンクナンバーだ。ラストソングであるためかメンバーたちもステージを所狭しと動き回り、タイトルの通りTMC(魂)を込めた演奏を繰り広げていく。更には暴動が38歳を《平均年齢53歳》、10周年を《27周年のお礼参りも済まないうちに》に変化させて歌った瞬間、改めて歴の重みというか、当たり前だと思っていたことがその実、当たり前ではないような感覚にも陥った。

 

 

この27年、公表していないことも含めグループ魂にはいろいろなことが起こったはずだ。例えばメンバーが俳優・脚本家としての知名度を飛躍的に高めたこともそうだし、結婚した人、体に変化が生じた人、新たな仕事に繋げた人もいるし、それこそネガティブなことで言えばコロナが蔓延して活動がままならなくなり、ドッキリではあったが一度は本当に解散したのも、かつては絶対に予想出来なかった事象だった。けれども彼らはこの日誰も欠けることなく、ともすれば難しくも思える状況で再結成ライブを完全な形でやり遂げてくれた。それもコロナ禍特有のしんみりした雰囲気ゼロ、満面の笑顔でだ。それがどれほど難しいことなのかいちファンとしては把握し切れないまでも、きっと様々な思いを背負ってファンのために実現してくれたのだろう。


ただ、最後までウルッと来る隙も与えないのがグループ魂らしさ。楽曲の終盤では峯田和伸、荒川良々らゲストメンバー勢揃いで楽曲を熱唱しつつ頭上からは色とりどりの紙テープが発射されるも、完全に紙テープがマイクに絡まってしまった破壊が「◎△$♪×¥●&%#?!」と言語化不能の言葉を放ち続ける。それを経てカヲルが「帰れバカヤロー!退館時間だよ!もう限界なんだよ!」と絶叫する超展開で、ライブは幕を降ろしたのだった。


終了後、たったひとりステージに残ったカヲル主導で行われた三三七拍子を観ながら、余韻に浸る。1年ぶりの再結成、しかも単独ライブとしては3年4ヶ月ぶり。……正直何の不安もなかった訳ではなかったけれど、終わってみれば杞憂。笑いも爆音も、全てがグループ魂のイメージそのもので駆け抜けた2時間半。それは総じて活動再開を待ち続けてきたファンと、一面に咲く笑顔の花を作り出そうと試みたグループ魂の思いが双方向的に作用した、誰にとっても『最高』の一言で全て形容出来る程の完璧な空間がそこにはあった。


【グループ魂『一年ぶりの再結成!』@中野サンプラザ セットリスト】
ペニスJAPAN
アイサツはハイセツよりタイセツ
モテる努力をしないでモテたい節
[ネタ] 岩崎宏美
[ネタ] ジェリー藤尾
[ネタ] もう限界
〜港カヲル前説〜
サ!セ!テ!イタダイテマス
ケーシー高峰
Over 30 do The 魂
Over 50 めんどくさい
[コント] ワクチン
職務質問
欧陽菲菲
さかなクン
High School
ラーメン二郎
押忍!てまん部
チャーのフェンダー
[コント] 特報!皆川スポーツ
モテる努力をしないとモテないゾーン feat.峯田和伸
君にジュースを買ってあげる♡ feat.峯田和伸
いわきアンモナイト音頭
それでも生きなきゃ死んじゃう音頭
もうすっかりNO FUTURE!

[アンコール]
[コント] 中村屋華座右衛門
〜ゲーム大会〜
痛風だけど恋愛したい
TMC