キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

オミクロン株の急拡大で、正直なところ2022年のライブシーンはどうなるのか?

こんばんは、キタガワです。


そろそろ出社しようと身支度を始めた某日の朝、けたたましく流れたニュース速報に思わず声を上げてしまった。出演者がキャッキャと笑う画面の上部に表示されたのは『沖縄県600人以上感染の見通し』というその内容とは似ても似つかない絶望的なもので、それはつまるところ、ようやく元通りになりつつあるライブシーンにまたも暗雲が立ち込めることと同義だった。


いちお客さん目線として見ても、今のライブシーンは本当に頑張っていると思う。入場の際は電子チケット提示でスタッフとの接触もなし。グッズ列も客席もしっかりソーシャルディスタンス。ひとたびライブが始まっても観客は発声をすることもなく、終了後はほぼほぼ直帰。2年前にはよく発生し問題にもなっていた出待ちもすっかりなくなった。もちろん全部が全部この限りではないのは承知の上だが、個人的にデルタ株がある種下火になったあたりから参戦したライブでは徹底されていて、だからこそ我々も気兼ねなくライブを楽しむことが出来ていた。

 

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正直、徹底した措置をどう見るかは人による。例えば海外のライブでは基本的に距離的確保もマスク着用もなしでいつもと変わらない風景が広がっているのは当然で、ワクチン接種証明書があれば飲酒も発声も問題ないよとする場所はとても多い。総じて海外の音楽好きから見ると、日本のギチギチのコロナ対応は異質に映るはずである。ただ、我々日本人はどれだけデルタが収まりつつある状況下でもルールを遵守し続けた。その理由はひとりの勝手な判断が他者にどう見られるかを無意識的に感じてしまう日本の国民性によるところがひとつ。そしてもうひとつは、ここまで築き上げたライブ市場を無くしたくないという、音楽好きたちの強い思いによるものなのではなかろうか。事実こうした他者を鑑みた行動の素晴らしい結果として現時点まででライブの感染者の報告は日本においてはほとんどなく、このままの模範的ライブが続けばきっと2022年には元通りになるだろうと、きっと誰もがそう思っていたはずだ。


そんな折、飛び込んできた最悪のニュースが冒頭の急激な感染拡大の報である。ただこの時は現時点での一報でしかなかったけれども、次第にその全貌が明らかとなり、最終的には東京でも感染者数390人、大阪でも244人が感染する、オミクロンに置き換わった後としては最多の感染者数を記録してしまった。これについてはもはや政府の水際対策がどうとか規制緩和がどうとかいう話以上に、感染対策と経済の折衷案を模索して経済寄りになっていた結果こうなるのは必然だったようにも思うのだけれど、とにかくこの数字には衝撃を受けた。年末年始に帰省した人々が2週間後に検査に行くことを考えると、ここからどんどん増える。これでもう、遅くとも2月あたりにはニュースがまたもコロナ一色になるのは避けられない状況となった。

 

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当然ライブシーンもこの感染急拡大によって更なる苦境に追い込まれ、それこそこれから2月にかけては特にライブの中止・延期の措置が全国各地で行われることだろう。中でも前回のデルタ株の時とは違うネガティブな要素として挙げられるのは、『既にライブが多数決まっている』、そして我々自身が『コロナに慣れてしまっている』という2点。そもそもデルタ株の感染者が1日数百人レベルに達した頃から、ライブは完全に盛り返す方向に舵を切っていた。なのでツアーに関してはかなりの数開催されている状況下な訳だが、この状況での感染拡大は痛い。加えてGoToイートやWe Loveキャンペーンなど経済活動も見据えた弊害なのか、人々の心にコロナへの恐怖心はデルタほどない状態であるのが現状であるため、一度熱気を取り戻した感情を再びゼロに戻すのは容易ではない。


今後の行方次第ではあろうが、沖縄の感染者数が約3倍になったことからも誰もが考える通り、十中八九今後はオミクロン株が主導権を握り、その根城になり得る我々はまたも振り回されることだろう。故にようやく訪れるかに思えたライブシーンの動きも、ここで一旦ストップ。ライブを好む我々にとっては、いつ直前でライブが中止になるかも分からないビクビク感を抱く日々がまたも続くのだ。しかしながら、まだ我々は屈する訳にはいかない。辛い環境に震えた2020年、音楽シーンは何とかリスナーを奮起させようとしてくれた。デルタ株の襲来により感染者数が東京2000人を超えた時でさえ、アーティストはオンラインライブでもって聴く人に力を、明日を生きる活力を与えてくれた。ならば今年2022年も、きっとアーティストは音楽好きたちを様々な方法で楽しませてくれるはず。だから絶望的な状況でさえ、決して心配はいらないのだ。……どんな過酷なリアルが待ち構えていたとしても、音楽を愛する人々がいる限り、アーティストは全力で歌を届けてくれる。コロナに負けない。音楽を止めない。その気持ちは何ものにも左右されないという、強い確信がある。

 

SUPER BEAVER「予感」MV - YouTube