キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

胃腸炎患者が新型コロナウイルスの抗原検査を受けてきた話

こんばんは、キタガワです。


言いようもない違和感が体中を襲ったのは、突然だった。いつも通りの機械的なレジ打ちもどこか身が入らない。どころか、自分が何を話しているかも何をスキャンしているかも、よく分からない時間が続いた。ただ、「多分何かの風邪だろ」と思い風邪薬をガブ飲みした矢先、腹痛やら熱っぽさやら吐き気やらが同時にのしかかった瞬間、僕は瞬間的に「これはコロナかもしれない」と思った。


人間というのは変なもので、一度最悪の方向に思い込んでしまうと身体も心も引っ張られる。その時はよりによって多忙を極める日曜日だったので、レジから一瞬離れることすら出来ない状況。……もしも自分が感染者であるならば、この商品をスキャンしている瞬間も誰かにうつしているかもしれない。そもそも、店の長期的な休業は避けられないし、現在70歳を超える家族に感染させれば文字通り命に関わる。更に悪いことを考えてしまえば風評被害……。それこそ感染者ゼロをキープしているこの地元で感染したとなれば、どこからか情報が漏れて、居場所がなくなる可能性だって、決してなくはないのだ。


そうした堂々巡りの思考を繰り返した結果、僕は初めて仕事を早退した。症状が悪化し始めていたこともあったが、何よりも自分が加害者になる可能性があることを数分置きに考えてしまうことが怖かったからである。帰宅後も症状は良くならなかったが、日曜日なので病院も空いていない。なので暫くは、家族との関わりも最小限に留めた上で自室で横になって過ごす。この時点で、症状から察するにコロナの可能性は低いだろうなという漠然とした感覚はあったが、まだ油断は出来ない。詳しくは明日判明するだろうからと、この日は泥のように寝た。


翌日。たっぷり10時間寝たことが良かったのか体調はは昨日と比べても格段に良好で、熱はないし、怠さも緩和された。ただ元気一杯には程遠くもあり、流石にここは診察に行くしかないと腹を括る。診察時間は15時からとホームページには記載されていたものの、今回は万が一にもコロナの可能性がある状況なので確認の電話を1本。すると来るわ来るわ、質問の数々。ちなみに質問が詰問じみてきたのは間違いなく僕が「昨日は少し熱があってー……」と語った後のことで、以降は「症状は?」「県外行きました?」「コロナ患者との接触は?」「最近どこに行きました?」「今日はどんな生活をされてましたか?」といった、おそらくはコロナに関係のありそうな人に聞かれるような話をたくさんしてくれた。インターネットでいろいろと調べて、コロナには倦怠感と熱、味覚障害の3点はほぼ必ず症状として表れることは理解していたつもりではあったが、これらのうち『熱』の部分が医者からすれば何よりの重要項目なのだろう。


そして電話の最後に受付の方からされた印象的な案内が「お車で来られますか?それなら前の駐車場からぐるっと回った裏口に車を回して、そこに着いたら連絡をください」というものだった。これについては後述するが、全く理由の分からないまま取り敢えず了解の旨を伝えて直ぐ向かうことに。


病院の裏手(もちろんいつもは入ったことも見たこともない場所)に到着すると、普段のこの時間には珍しい程の車の量に驚く。車を停めて受付の方に伝えられた通り1本電話をかけると、看護師さんが車まで直接小走りで突撃してくれるシステムだ。後で知ったことだが、どうやらこの措置は電話での事前問診で熱があった人にのみ適用されるものらしく、例えば毎週の持病の通院などの患者さんは通常通り、表の受付から入ることが出来るらしい。今回の場合僕が「熱があります」と言ったため、コロナの可能性を考えて裏手に回ってもらった、とのこと。なので看護師さんも全員防護服。万全の体制である。


看護師さんはまず保険証を受け取ると、体温計で熱を計るよう僕に指示。結果はギリ37度に行かないくらいで、平熱よりやや高めといったところ。そこからの流れはスピーディーで、第2段階として「じゃあ抗原検査しますねー」の予想外の一言から裏手にある小さなコンテナに案内される。中に入ると看護師2名、お医者さん1名がこちらを見詰めていて、その圧迫的な雰囲気から逆にコロナの怖さが再度襲って来る。


まずはお馴染み、服を脱いでの触診と喉の奥を調べる作業から、鼻にとてつもなく長い綿棒を入れられるというSNS上では「かなり痛かった」と話題の抗原検査へ。これに関してはお医者さんのスキルが高かったのか、とてもスムーズに終えることができ痛みもなし。以上僅か5分程度の診察の末、僕は「多分胃腸炎だろうねえ」とのお医者さんの感動的な一言を背に車へと帰還したのだった。


……という訳で、結果は陰性。単なる胃腸炎との有り難い(?)診断が下り、薬を貰って家に戻る。正直「コロナだったらどうしよう」と考え過ぎてある種『病は気から』と言われる通り診察中も気分が落ち込んでいたのだが、PCR検査と比べて精度は下がるとは言え、やはり陰性の結果が出たことには思わず声を上げてしまったほど。と同時に、これまで対岸の火事として思っていたコロナ関係の出来事が自分の身に降り掛かるとこんなにも怖いものなのかということも知ることが出来た。
 

後で知ったことだが、どうやら冬場にかけて胃腸炎患者は多くなる傾向にあるらしく、更にはその症状とコロナへの恐怖感から僕のように「コロナかも?」と考えて受診に訪れる人はもかなり多いと看護師の方は語ってくれた。そしてお医者さん・看護師の方々から見ても上記の流れのように当然これまで以上にひとりひとりに割く時間は長くなってしまうため、我々患者側についてもそれ以外の点についても、いろいろと難しい時期なのだなあと感じたりもした。


余談だが、胃腸炎は基本的に時間経過で治る病気とされ、身も蓋もない話をしてしまえば僕はこの診察から帰った直後から、薬も何も飲んでいないにも関わらず症状は改善した。今回の診察では合計5000円程の金額を必要としたので、見方によっては金だけ払いに行った感も否めない。ただ、何よりも『コロナじゃなかった』という確証を得ることが出来ただけでも大きな収穫だった。……現在はオミクロン株も流行しかけているし、今後はこうしたコロナ関連の診察を考える人も多いことと推察するが、基本的な感染対策を講じていれば意外と陽性反応は出ないものである。読者貴君におかれましては怖くなる気持ちは正直な本心として残しながら、是非とも家族との相談&早めの診察を心がけてほしい。

 

Gabrielle Aplin - Home (Official Video) - YouTube

《小さな不幸のたび 水の中でもがく/どこか息のできる場所に連れて行ってね(和訳)》