こんばんは、キタガワです。
霜降り明星・粗品が作詞作曲を務めたナナヲアカリの新曲“学校だるい学校だるい学校だるい”を一聴した後、真っ先に抱いた正直な感想は「このネタで粗品R-1出るのか?」だった。そもそもこれまでの粗品は自身の音楽レーベルからリリースした楽曲はともかくとして、テレビ番組内で披露してきた音楽ネタでは必ず最後にオチが挟まれていた。特に“父ちゃんの歌”や“借りた金でパチンコ負けた時の歌”などは明らかにそうした性質を持つ楽曲として広く受け入れられた訳だが、今回の“学校だるい学校だるい学校だるい”はお笑い芸人としての粗品の強みを全方位に見せ付けている点で、およそ芸人・粗品としてもパーフェクトな楽曲として位置している。
学校だるい学校だるい学校だるい / ナナヲアカリ - YouTube
特筆すべきはまさしく『学校だるい』の本質を突いた共感必至の歌詞の数々だろう。家庭科室の机に足を入れるスペースがなかったり、徹夜で勉強するつもりが朝になっていたり、頑張って暗記した部分がテスト当日に問題文として出題されたり……。確かに、ほぼ100%の人間が学生時代「学校だりー」と感じていたにも関わらず、我々は一体何がだるいのか、そのはっきりとした理由についてはあまり語られなかったけれど、今なら分かる。早起き、登校、部活、テスト……。当時のだるさは言わば、学校生活全体を指しての「面倒くささ」だったのだと。
例えば、一般人である我々も“学校だるい学校だるい学校だるい”的な楽曲は作ろうと思えば作ることが出来る。部活動あるあるや情報処理科あるある、男子校あるあるなど範囲を狭めれば難易度は更に下がり、同じ境遇で過ごしてきた人々には一定の共感を生むことも可能だろう。しかしながら粗品は誰しもに刺さる内容でありながら、それこそ楽曲内で言うところの『家庭科室〜』や『吹奏楽部のチューニング〜』といった分かる分からないの絶妙な部分を攻め、楽曲を極めて稀有なあるあるソングとして確立させている。このことには改めて彼の着眼点の鋭さ……もとい芸人としての俯瞰心を感じてしまった次第だ。
もちろん、あるあるの歌詞に命を吹き込むナナヲのボーカル面も秀逸だ。その時々で歌声を変化させ、楽曲ごとにカメレオン的な表現で楽しませてくれるナナヲ。今作では基本的にダウナーな歌い方に終始していて、主人公が感じる学校のだるさを声のみで痛感させる試みは何度聴いても見事の一言。加えてCメロではこれまで意図的に発されることがなかったナナヲの関西弁も炸裂して、まるで漫才のような掛け合いを見ることが出来るのも楽しい。他にもプラスの魅力を与えるぬくぬくにぎりめし作のイラストも可愛らしく「これはライブでVJ付きで聴けばとてつもなく盛り上がるのだろうな」と今から楽しみになってしまうし、“チューリングラブ feat.Sou”のようにTikTokで学生を中心に広がりそうな予感もひしひしと……。
どこをどう切ってもバズる予感しかないナナヲアカリ&粗品による新曲“学校だるい学校だるい学校だるい”。その受け入れられ方はMV、ボーカル面など多種多様だろうが、テーマを学校と位置づけている点においても、歌詞の重要性抜きにしてこの楽曲は語れない。一度聞いたら絶対に虜になる中毒曲をいち早く知るタイミングは今しかないので、日々「学校だるい」と嘆く学生たちはもちろん、在りし日の青春を回顧する意味でも大人になった音楽好きのリスナーにも一刻も広く知れ渡ってほしい。さすればきっと、あのサビが脳内でぐるぐる回り続けて忘れられなくなるはずだから。