キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

どこかで見たことがある気がする謎の覆面ユニット・Buyer Client、爆誕。

こんばんは、キタガワです。

 

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チル要素を押し出したサウンド、穏やかな雰囲気漂うMV、高低差をうまく活かしたツインボーカル……。突如現れた謎の覆面ユニット・Buyer Client(バイヤークライアント)の処女作“dubscription”を聴いた瞬間、思わず驚いたファンも多かったことだろう。全く彼らについての前情報が無いリスナーにとっては「どういうこと?」と疑問に感じるだろうし、今記事では彼らの正体を明かすことはしないので各々調べてもらいたいと願うけれど、いやはや。本当に期待を裏切らないバンドである。


まず正式に公表されている彼らのプロフィールについて見ていこう。Buyer ClientはJun(Vo)とRumi(Vo)、$atoshi(Cho)による3人組ユニットであり、毎朝同じカフェで同じフレンチトーストを食べていた事から意気投合し結成。その後もそのカフェでフレンチトーストを食べている人を見つける度に声を掛け、最終的には70人組ユニットとなったが、Rumiとの恋愛トラブルが原因で次々とメンバーが脱退。残った3人で活動を続けているとのこと。また$atoshiは自宅でフラミンゴを2000羽飼育しており、将来的には自身もフラミンゴになることを目標としており、Junは親のコネで入社した会社を半日で壊滅させた経歴を持つらしい。……ここまでを読んでも意味が分からない人間が大多数だろうが、そもそも彼らの『正体』であるとあるバンドでも同様のフィクション満載の設定が記されているので、そこのところはご愛嬌。

 

Buyer Client『dabscription』Music Video - YouTube


そして何よりも驚くのは、楽曲の完成度の高さにあることは言うまでもない。タイトルにもある通りサウンドはチル要素を基準としていて、カフェで流れるような浮遊的な雰囲気が鼓膜を擽る前半は、どこかSuchmosやNulbarichを彷彿とさせる具合。歌詞も意図的に英語も含めたお洒落フレーズを多用していて、彼ら自身が「チルを作るなら歌詞もそれに合わせなければ」と考えた結果であることが分かる。ただそのままラストまで続くのかと思いきや、後半では本人登場のお馴染みパンクに回帰する展開は噴飯もので、《今だけはうるさい歌聴きたくないよ》との前半の伏線回収を担いつつ、BPM200越えで駆け抜ける《君のBGMになりたいの/退屈に溶け込む BGMになれないの/本当ごめんね》との前半と全く同じはずのフレーズには、パンクサウンドも相まって「俺たちにはパンクロックしかない」という強いも感じさせる。


それこそバンドのボーカルである人物が別名義でプロデュースしたMVも多数制作している岡崎体育にも言えることだけれど、彼らのバンドを認知した時から、ずっと感じていた『強いエンタメ性』について、正直な気持ちを綴ってしまえば「話題を作るために無理して行っているのではないか?」と思っていた時期もあった。けれども今作を聴いて明らかになったのは、彼ら自身が誠意を持ってこれらの行動を行っているということ。そして今回のBuyer Clientの結成も総じて、我々が望む『とあるバンド』のイメージを壊さないまま飛躍した、会心の一撃であるということなのだろう。


紐解けば紐解くほど此度の結成の理由が分からなくなる正体不明の謎のユニット・Buyer Client。今後は新曲を出すかも不明ではあるし、母体となるあのバンドの来年からのツアーで楽曲が披露されるのかも不明瞭だ。そんな中でも彼らの歩みに翻弄され続けていたいと願ってしまうのは、ひとえに楽曲の求心力によるものであることは間違いない。ので、次なる第二波にも大いに期待したいところだ。。