こんばんは、キタガワです。
「CDを買う」……。かねてより公言してきたこの行動が、周囲の人々頻りに異を唱えるようになったのはいつからだっただろう。なお彼らの言い分は決まって「サブスクでも聴けるじゃん」「YouTubeもあるし」「そもそもCDって高くない?」から成る三段構えで、僕自身がそうしたことも踏まえた上で購入していることを語ると、批判の声は一層大きくなるのが通例。確かにサブスクは便利だし(かく言う自分も2個登録している)、CD購入に金銭的な問題も生じているのは百も承知だ。ただ、それでも僕は毎月大量のCDを買うのだ。
実際CDを購入することで起こり得るメリットは極めて大きく、その中でもやはり「所持することで得られる意識向上」の利点は絶対だ。例えばサブスクでは何万曲との中から気軽に音楽と出会えるが、その代わり聴き終わった後タイトルも覚えていなかったり、何の印象にも残らずスルーしてしまうことも多い。対してCDは身銭を切って購入するために収録された全曲を必ず聴き込むので、ある種強引な手法で深みに嵌まることが出来る。それこそ昔は『ジャケ買い』という言葉が存在したけれど、やはりしっかり向き合って出会った楽曲は愛着も湧くもの。他にもあまり期待していなかったのにとても良かったとか、繰り返し聴くことで素晴らしさに気付くとか、サブスクで出会っていればまずなかったであろう発見も多々あって面白い。
そして個人的に大好きなのは、ディスクを入れてから歌詞カードを引っ張り出し、音楽を隅々まで聴くあの時間。わざわざ手間を掛けて1曲1曲と対峙するその様はさながら懐古主義的と言われても仕方ないかもしれない。ただ歌詞カードに綴られた思いひとつ取っても、アーティストの心情と響きをしっかりと理解する上ではとても有意義で、本心から「このままずっと過ごしていたい」と思える程の幸福感を手にすることが出来るのだ。特に洋楽に関しては丁寧に和訳された歌詞カードの存在は必須であり、“We Are the World”や“Bohemian Rhapsody”、“Don't Look Back In Anger”など誰もが知る名曲については景色もグッと広がるので、騙されたと思って一度じっくりと陶酔してみてほしいところ。
音質がサブスクと比べて良音となっている点、現物として所持するそのものの満足度と他にも推したい部分はあるが、取り敢えず。言うまでもなく今後はサブスクが今以上に台頭し、逆にCD市場は大きく下降線を辿ることが確実視されている。そしてそんな状況でCDを購入することに理解が得られないことは、購入している側としても「その気持ちも凄く良く分かります」と思ってしまう。先日あまり金銭的に余裕がなく、サブスクのみで音楽を聴いているというとある若者に「CDなんて買ってたら生きてけないすよ」と実際に言われたように、もはやどれほどCDが好きな人間であっても安易に購入を進めることは出来ない世の中だろうな、とも。
でもひとつのCDが、ひとつの音楽と出会ったことが少なくともひとりの人生の大きな転機になる可能性も絶対に捨てきれない。サブスク全盛期のこの時代にCDを買うということ、その意義について強く噛み締めながら、今後もCDと触れ合っていければと思う次第だ。