キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

今日も嘘をついたのだ。

今日も嘘をついたのだ。

「仕事楽しい?」……。久方振りに再開した友人にこの言葉を掛けてYESと答えるのはごく少数で、大半は「楽しいわけないじゃん」とかぶりを振りながら、以降仕事の不平不満をぶち撒ける。方や職場で同じことを同僚に聞くと、決まって「楽しいですよ」とその表情に刻まれた疲労を隠すことなく返答する。自分もそれらの前向きな返答の数々を半ばおかしいとは感じながらも、これが人間関係やら何やらの『社会人としての常識』であることを知ってからは少しずつ改めるようになり、常に笑顔で、日常会話においてもなるたけ前向きな言葉を選んで職場で語るようになった。

ただそうした感情とは相反する人間が行うハリボテの行動が満足に行くわけもなく、少しばかり対人関係が良好になったその弊害として笑顔が上手く作れないことが増えたり、思考を宙に浮かせた直立不動のまま数分間経過して焦ったりと、気付けばネガティブな感情は日増しに拡大していった。金なし欲なし未来なしな社会不適合者の1日はこうして、今日も何の価値もなく過ぎていく。

「んなこと考えるなや」「思うのは良いけど口に出さんでくれ」「前向き生きた方が人生楽しい」……。これらは実際ここ数年で直接的に他人から放たれた言葉の数々だが、そもそも自己否定的な思考自体、絶対に公言するべきではないのは重々理解している。ひとたびインターネット上で鬱や自殺、希死念慮について検索しても『鬱っぽい人がやるべき5つの行動』とか『自殺を考えている人用のいのちのダイヤル』、『鬱は甘え』といったポジティブ思考ばかりが並ぶことから考えても、明らかに精神的に問題を抱える人間は社会から蔑まれる立場にいるし、この記事にしても人を不快にさせる害悪の何物でもない。ただこれこそが自分で、決して変えられないアイデンティティーでもあり、それが酷く苦しい。おそらくこの先生きていれば何かしら素晴らしいイベントも待っているだろうが、それ以上にあと何十年もこの思いを引き摺りながら生きることの方が、圧倒的に辛いのである。

そうした思いを悟られないように。きっと僕は、明日も嘘をつくのだ。

 

ハルカトミユキ "Vanilla" (Official Music Video) - YouTube